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プロローグ
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3月11日。某高等学校の卒業式。
恙無く終了し、在校生卒業生が入り交じる校門前では、
一人の男が様々な生徒から声を掛けられていた。
「会長!今までお世話になりましたっ!!」
「はは、もう随分前に会長じゃぁなくなったんだけどなぁ」
「かいちょ~卒業しないでくださいよ~」
「会長ー!」
掛けられる声ひとつひとつに返し、手を振り、柔和な笑顔を浮かべ
少しずつ校門へと足を進めていく。
握手を求める中には教員も居た。同じ卒業生から写真を求められたが丁寧に断った。
校門も目前。沢山の人の輪から一歩踏み出し外れる。
彼らを振り返り、気持ちの限りを笑顔とともに言葉に込める。
「本当に、今までありがとうございました」
その言葉に先程までの引き止めるような態度から一転、励ましの言葉が送られる。
「遊びに来てくださいね会長!」
「今年も楽しい文化祭にしますから!」
「頑張ってくださいね~!!」
彼らに手を振り教員に頭を下げ、校門から、外へと出る。
そしてそのまま振り向くことはせずに、歩きだす。
遅れて後ろから着いてきた人当たりの良さそうな男は
そのまま隣に追いつき、声をかけた。
「若、頭から本家で待っていると連絡がきました」
「…あぁ。わかった」
先程とは打って変わって低く、力強い声で応える。
今までの僕はもう既に置いてきた。
もう、後戻りは出来ねぇ。
そうして『僕』は「俺」になった。
-----------
3月11日。同高等学校での卒業式中。
体育館で行われているそれを窓から少しだけ眺め、
お情けで貰ったような紙切れが収まった筒を片手に
裏門からそっと、帰ってくることのない学校から、一歩、外に出た。
そのままふらふらと、しかし迷いなく裏通りを進む。
目的地まであと少し。
何人かの人相のよくない男に取り囲まれた。
「おい、お前が『赤獅子』だな」
一際体格のいい男が進み出る。
「…なら、なんだ?」
「昨日は俺の舎弟が何人か世話になったなぁ」
「何でもいいが、俺は今機嫌が悪いんだ。---どけ」
「減らず口がッ!おい!やれぇ!!」
その言葉に男どもが一斉にかかる。
ある男は鉄パイプを片手に。
ある男は後ろから殴りかかろうとし。
ある男はタックルをしようと突進する。
四方八方から向けられた暴力は荒々しく、まさに命を刈り取らんとした力の塊は
一切合切目標物には届かなかった。
一瞬後、すべてが地に平伏していた。
おもむろに挙げていた足を下ろし、
革靴に微かに付着してしまった血痕を倒れているやつの衣服に擦るつける。
ピリリリリリ
唐突に鳴り響いた着信音に少しの戸惑いを見せた後、素早く携帯を耳に当てる。
「はい。…ええ…もちろん承知しております」
「近々本宅へと戻らせていただきたいのですが…」
「えぇ、はい、改めてご挨拶さしあげます。それでは、失礼します、父上」
画面の暗くなった携帯を数秒見つめ、チッと舌打ちをしてその場を後にした。
全てはもう遅いのだ。
そうして『俺』は「僕」になった。
恙無く終了し、在校生卒業生が入り交じる校門前では、
一人の男が様々な生徒から声を掛けられていた。
「会長!今までお世話になりましたっ!!」
「はは、もう随分前に会長じゃぁなくなったんだけどなぁ」
「かいちょ~卒業しないでくださいよ~」
「会長ー!」
掛けられる声ひとつひとつに返し、手を振り、柔和な笑顔を浮かべ
少しずつ校門へと足を進めていく。
握手を求める中には教員も居た。同じ卒業生から写真を求められたが丁寧に断った。
校門も目前。沢山の人の輪から一歩踏み出し外れる。
彼らを振り返り、気持ちの限りを笑顔とともに言葉に込める。
「本当に、今までありがとうございました」
その言葉に先程までの引き止めるような態度から一転、励ましの言葉が送られる。
「遊びに来てくださいね会長!」
「今年も楽しい文化祭にしますから!」
「頑張ってくださいね~!!」
彼らに手を振り教員に頭を下げ、校門から、外へと出る。
そしてそのまま振り向くことはせずに、歩きだす。
遅れて後ろから着いてきた人当たりの良さそうな男は
そのまま隣に追いつき、声をかけた。
「若、頭から本家で待っていると連絡がきました」
「…あぁ。わかった」
先程とは打って変わって低く、力強い声で応える。
今までの僕はもう既に置いてきた。
もう、後戻りは出来ねぇ。
そうして『僕』は「俺」になった。
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3月11日。同高等学校での卒業式中。
体育館で行われているそれを窓から少しだけ眺め、
お情けで貰ったような紙切れが収まった筒を片手に
裏門からそっと、帰ってくることのない学校から、一歩、外に出た。
そのままふらふらと、しかし迷いなく裏通りを進む。
目的地まであと少し。
何人かの人相のよくない男に取り囲まれた。
「おい、お前が『赤獅子』だな」
一際体格のいい男が進み出る。
「…なら、なんだ?」
「昨日は俺の舎弟が何人か世話になったなぁ」
「何でもいいが、俺は今機嫌が悪いんだ。---どけ」
「減らず口がッ!おい!やれぇ!!」
その言葉に男どもが一斉にかかる。
ある男は鉄パイプを片手に。
ある男は後ろから殴りかかろうとし。
ある男はタックルをしようと突進する。
四方八方から向けられた暴力は荒々しく、まさに命を刈り取らんとした力の塊は
一切合切目標物には届かなかった。
一瞬後、すべてが地に平伏していた。
おもむろに挙げていた足を下ろし、
革靴に微かに付着してしまった血痕を倒れているやつの衣服に擦るつける。
ピリリリリリ
唐突に鳴り響いた着信音に少しの戸惑いを見せた後、素早く携帯を耳に当てる。
「はい。…ええ…もちろん承知しております」
「近々本宅へと戻らせていただきたいのですが…」
「えぇ、はい、改めてご挨拶さしあげます。それでは、失礼します、父上」
画面の暗くなった携帯を数秒見つめ、チッと舌打ちをしてその場を後にした。
全てはもう遅いのだ。
そうして『俺』は「僕」になった。
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