1 / 5
プロローグ
しおりを挟む人里離れたところで見つけた古いダンジョン。何か金目のものがないかな~なんて奥へ奥へと進んでいったら、最深部に錆び付いた剣が大層豪華な台座にぶっ刺さっているのを発見した。
おーけい、ここまでは理解できる。
そして俺はそれを抜いた。
するとそのボロい剣の刀身が金色に輝き始めたかと思うと、女の声でベラベラ喋り始めたのである。
え? どういうことだ?
『私はずっとあなたをお待ちしていました。偉大なる勇者よ! あなたに神のご加護があらんことよ!』
「は?」
『私は聖剣エクスカリバー。この台座から私を引き抜ける者こそ、勇者の証』
「聖剣エクスカリバーって、あの伝説の!?」
そういった伝説に興味がない俺でも名前は聞いたことがある。
『そうです! 一振りで闇を絶ち、悪夢を切り裂くというあの伝説の!』
「やべえ! 街で売ればいくらになるかなぁ」
『え?』
あの神話に登場するエクスカリバー本当に存在するとは思ってなかった。おまけに喋れるなんて、これはマニアに高い値がつくだろう。
「1億ゴールドはいくだろうな……そしたら豪邸を建てて……」
『あのー?』
「一生働かずに悠々自適な生活を送れるぞ……! 」
『ちょっとちょっと! あなた何言ってるんですか』
すると俺の目の前に、少女がふわりと舞い降りた。
真珠のように滑らかな白い肌に、風にサラサラとなびく金色の長い髪。街を歩く男なら皆振り返ってしまう整った顔立ち。そんな美少女が、眉をつり上がらせて矢継ぎ早に捲し立てた。
『エクスカリバーを売ろうなんてどういう頭してるんですか!! 信じられません! 』
「だって俺勇者じゃないし。ただのトレジャーハンターだし」
『とれじゃぁはんたぁ? あぁ、盗賊のことですね』
待て、その言葉は聞き捨てならない。
「違う! 俺はトレジャーハンター! お宝が眠ってるダンジョンに足を運んでは目当ての物をゲットしてそれを売りさばくの! 人様から盗むような盗賊と一緒にしないでくれ」
『……似たようなものです』
おーい、小さい声で呟いても聞こえてるんだからな。
「てことだ。俺は勇者なんかじゃないからお前を売って悠々自適な生活を送ろうと思う」
『いやいやいやいや!! 待って下さい! 勇者ですよ? あの皆の憧れる勇者! 歴史の一ページに名前を残せちゃったりするかもなんですよ?』
「興味がない。そんなことより、俺はお前がいくらで売れるのか気になって仕方ない」
『そんな~~~。そうそう、私、エクスカリバーの精霊なんですけど勇者に相応しい者にしか見えないんです。あなたちゃんと見えてますよね? これは勇者の素質ありありですね』
「いや見えないが? 」
嘘つかないでください、と精霊が俺を睨み付ける。バレたか。
『第一ここは最難関ダンジョン、精霊の社ですよ? 迷路みたいに入り組んでいるのにあなた一体どうやってここまで……』
俺はドヤ顔で人差し指を立てる。
精霊がそれに釣られて上を見上げる。
そこにはでっかい穴が空いており、パラパラと破片が降り注ぐ。
「迷路だろうと何だろうと道がなければ作れば良い」
『まさか……一階からここまで床をぶち抜いて降りて来たと……? 正しいルートは無視して? 』
「最短距離を選んだと言って欲しいね」
『あのダンジョン作るのに百年は費やしたのに……』
100年費やしたダンジョン、10分でクリア出来ましたよ。
顔を覆ってしくしく泣く精霊さん。え、これ俺が悪いの?
そうだわ、と思い出したように精霊が顔を上げる。おお、切り替えが早い。
『聖剣を守る聖獣は!? 歴戦のバトルマスターですら一人で戦うのは自殺行為のはずです』
「聖獣……? あぁ怖い獅子みたいなやつか。床ぶち抜いてたら瓦礫の下敷きになっちゃってそのまま……」
まさか下に生物がいるなんて思わなかったんだもん。これは素直に悪かったと思っている。
『な、何て人…… 』
呆れ返ったのか精霊が精気の抜けた顔でへたり込む。
「んじゃ、俺は早速これ売りに行くから。じゃーね」
何だかめんどくさいことになりそうなので、その隙にエクスカリバーを手に取り、俺はそそくさと帰ろうとする。
しかし、精霊はがっしりと俺の腕を掴んで離さない。豊満な胸が腕にぽよんと当たって何だか落ち着かない。
『……あなた名前は?』
「え、あ? ユリウスだけど」
『ユリウス……私決めました……』
「何を? ちょ、早く離してくれ、早く行かないと武器屋が閉まっちゃうから」
『エクスカリバーの精霊の名に懸けて、あなたを立派な勇者にしてみせます! 』
ぽかぁんと呆気に取られる俺を無視して精霊は弾けんばかりの笑顔を浮かべる。
いや、そんな笑顔されてもな……。絶対売りに出してやるからな。
俺は心の中でそう固く決意した。
0
あなたにおすすめの小説
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
器用貧乏を理由に円満追放された俺が重傷を負った元パーティのために奔走していたら、気づけば片腕を失っていたので今度は彼女たちに過保護にされてる
ベリーブルー
ファンタジー
上位パーティ『蒼穹の剣』の一員として活動していた冒険者レイドは、器用貧乏ゆえの力不足を理由に、円満な形でパーティを追放される。退職金を受け取り、いつか復帰することを目標に自己研鑽を続ける日々。仲間との関係は良好なまま、穏やかな時間が流れていた。
だが一年後、信じられない噂が届く。
『蒼穹の剣』が壊滅——メンバー全員が再起不能の重傷。
駆けつけた先で見たのは、利き腕を失った幼馴染、両目を失った魔法使い、両腕を失った回復役。絶望に打ちひしがれ、自暴自棄になった仲間たちの姿だった。
レイドは決意する。何があっても、彼女たちを支え続けると。
治療費を稼ぐために危険な依頼をこなし、高価な薬を買い集め、高機能な義肢を作れる職人を探し回る。自分の怪我を後回しにしながら、ボロボロになっても走り続けた。
そして仲間たちが回復した時——レイドは、自分の片腕を失っていた。
これは、全てを捧げた男と、彼を決して離さないと誓った女たちの物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。
アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】
それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。
剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず…
盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず…
攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず…
回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず…
弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず…
そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという…
これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。
剣で攻撃をすれば勇者より強く…
盾を持てばタンクより役に立ち…
攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが…
それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。
Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに…
魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし…
補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に…
怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。
そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが…
テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので…
追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。
そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが…
果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか?
9月21日 HOTランキング2位になりました。
皆様、応援有り難う御座います!
同日、夜21時49分…
HOTランキングで1位になりました!
感無量です、皆様有り難う御座います♪
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる