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第四話
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ようやく目が覚めた俺は体を起こし、頭をむりやり働かせ、今の状況を整理する。
え~っと、王様に聖剣を売り付けに行ったら勝手に勇者に仕立てたげられて、更に姫との結婚を断ったら襲われて……。で、眠らされたと。
そんで今、俺は牢獄のなかに押し込められている。
これが善良な一般市民にする仕打ちかよ……。平和と謳われているセレンティア王国も堕ちたものだ。
特に持ち物は没収されていないようだが、あの忌々しい聖剣だけ忽然と姿を消していた。
ラッキー、おそらくあの女騎士が持っていったんだろう。
勇者になんかなりたいやつの気が知れんが、俺には好都合だ。
そういえばネヴィの姿もない。どこに行ったのだろうか?
「後はここから出して貰えればハッピーエンドなんだがなぁ」
「それは無理です」
俺の呟きに返答する女。
そちらに視線を移すと、いつからいたのやら、例の女騎士フィオナが眉をつり上がらせたままそこに立っていた。
その腰にはエクスカリバーがぶらさがっている。
「やぁ、フィオナ。その腰の剣似合ってるよ」
「白々しいこと言うのはやめてください」
誉めただけなのに……。ぴしゃりと言い放つフィオナ。
「……聖剣も渡したしもう俺は用済みだろ、早くここから出してくれ」
「あなたは聖剣を売ろうとしたと聞きました。どうしてそんなことが出来るんですか? 神の祝福をその身に受け、魔王と対峙する唯一の存在。誇りに思わないのですか? 」
「思わないね」
「神は全ての生けるものに平等で、恵みを与えてくれるのです! 勇者はその恩義を胸に、神をお守りするのですよ」
はぁ、俺はこいつのこと、ただの勇者オタクだと思っていたが訂正だ。
勇者オタクの前に"狂信者"とも付け加えといてくれ。
「俺の知ったこっちゃないね。大体そんなにスゲー神様なら自分で魔王倒せば良いじゃん。どうして人間なんかに頼るんだよ」
「え? ……それは」
途端に口ごもるフィオナ。
ほらみろ答えられない。
「別に神を信じるお前さんを否定するつもりはないさ。ただ俺にそれを押し付けるなってことだ。俺は俺の意思だけでやりたいことをやる」
反論出来なくなったフィオナが顔を真っ赤にしたままぶるぶる震える。
「……神に逆らうなんて! その時点で罪なのですよ! 」
リーーーーーン
するとフィオナの声をかき消すように、耳障りな警報音が辺りに響き渡った。
「何だこれ!? 」
思わず耳を塞ぐ俺。フィオナは
「これは警報……。 魔物が、接近しています! 」
まずい、行かなくては! とバタバタ外へ飛び出していくフィオナ。
騎士長さんは大変だな~とひらひら手を振って見送る俺。
ん?
おい、待て、牢獄の鍵は開けてから行け!
「……おーい」
一人ぽつーんと残された俺。ま、いっか。あいつもこの仕事が終われば戻ってくるだろ。
やることがない俺はごろんと地べたに寝っ転がる。ひんやりとした冷たさが背中に伝わる。
ここから出たら次はどんなお宝を狙おうかな、なんてどーでもいいことを考え始めていると、
『大変だよ! ユリウス! フィオナさんが危ないよ~』
何にもないところからいきなり飛び出してきたネヴィ。
額に玉のような汗を滲ませ、焦っている様子だ。
「ネヴィいたのか。姿が見えないから消えてしまったのかと思ったぞ」
『勝手に消さないでよ! フィオナさんにくっついてたの。……って、そんなことはどうでも良くて、大変だよユリウス。フィオナさんが死んじゃう』
「死ぬ? あいつ強そうだしそうそう魔物なんかに負けないだろ」
『ただの魔物ならね。でも今回襲撃してきたのは魔王直属の部下ブラックドラゴン! きっと勇者誕生の話を聞いて襲いに来たのよ』
魔王直属のとか言われても……あんまり強さが分からないんだが。
『それにフィオナさんの部下はみーんなユリウスが気絶させちゃったじゃない! 彼女一人で戦わなきゃいけないんだよ』
うっ、確かに。
でも先に勝負仕掛けてきたのは向こうだし……。
『もしフィオナさんが死んだりしたら一生後悔するよ! 後味悪くなりたくないでしょ』
「まー、確かに……」
俺ははぁとため息をついた。狂信者のイカレ女でも死んだりなんかされたら確かに寝覚めが悪そうだ。
仕方ない、助太刀に行くとするか。
『さっすがユリウス!! でもどうしよう……牢獄の鍵はフィオナさん持ってっちゃったし……』
「ふふ、ネヴィ。あまりトレジャーハンターを舐めない方が良い。この程度の鍵、俺にとっては赤子の手を捻るようなものだ」
『最初からそうやって出れば良かったのに~』
じとーっと俺を見るネヴィ。そんな目をするな、どんなことだって手間がかかるんだぞ。
おっと、そんな軽口を叩いている間に……。
「ほーら開いた」
ガシャンと固く閉ざされていた扉が開く。伊達に色んなダンジョンを渡り歩いただけのことはある。
『いきましょうユリウス! こっちです』
「はいはい」
ネヴィに導かれるまま、俺は牢獄を後にしたのだった。
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