勇者なんかなりたくないので聖剣売って悠々自適な生活を送りたいと思います

寿司

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第三話

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「そんな……」

 フレイヤが口に手を当てて大袈裟に驚く。

「なんだと!? 娘との結婚を望まないと申すか」

「はぁ……何と言われようと勇者になるつもりはないです」

 大体そんな雲上人と結婚なんて息が詰まって仕方ない。こんなことが魔王討伐の報酬になっていると思っているなら驚きだ。
 それなら城一個くれるぐらいの方がまだ魅力がある。

「うう……酷いわ」

 泣き崩れるフレイヤ。いや、そこまで泣くことか?

 姫様なら他国の王子やら貴族やらと結婚がすぐ決まるだろうに。

 すると、顔を真っ赤にした王様が声を荒げた。

「フレイヤはなぁ! 勇者様との結婚を夢見て毎日花嫁修行に勤しんでいたんだぞ! なんたる侮辱! 辱しめだ! 」

 えぇ……これ俺が悪いの……。

 俺にだって結婚相手を選ぶ権利ぐらいあるだろうに。

「王族侮辱罪で処刑、処刑だぁ!! 皆のもの、こやつを取り押さえろ! 」

 かしこまりました! と言う返事と共に、辺りを取り囲んでいた兵士たちが一斉に俺に飛びかかった。

「ちょっとおーさま、キャラ変わってるぞ! 仕方ねえなぁ」

『わわっ、大ピンチだよユリウス。どうしよ~』

 俺は腰に差してある短剣を構える。
 小振りで飾り気もないが、使い込まれたその剣はよく手に馴染む。

「ははは、そんな短い剣で一体何が出来ると言うんだ」

 高笑いする王様。今のあんたの方がよっぽど魔王っぽいよ……。

「何が出来るって? 何でも出来るさ」

 俺は短剣の柄の部分で次々飛びかかる兵士たちのうなじを叩く。こうすれば脳震盪を起こしてしばらくおねんねだ。

 もちろん言葉で表現するのは簡単だが、あいつらは大群で! 長剣で! 殺意をギラギラさせて! 襲いかかってくるのだ。その攻撃を避けながらこの作業をするのは結構大変だ。

 だが俺にはそれが出来てしまう。

「何だこの男!? 全然攻撃が当たらないぞ」
「こいつら気絶してる、信じられない、たった一人でこんな……」

 なぜかって?

「俺は強いからさ」

 兵士たち全員沈めるのにそう時間はかからなかった。残されたのは俺と王様と姫と、……あ、あとネヴィ。

「信じられぬ……このような者が存在するとは」

 フレイヤに至ってはへたりこんだまま動けないようだ。

『すっご~~い!! ユリウス流石! 』

「じゃあ、そういうことなんで。俺は勇者にはなりません。これ置いていきますね」

 皆の頭が働いていない内に俺は地面にエクスカリバーを置き、さっさと逃げようとする。

 金は貰えそうにないが、まぁこの際諦めよう。
 
 じゃあなネヴィ! 9万ゴールドは仕方ねえから奢ってやるよ! 

 そんなことを考えていると、

 どんっ!

 正面門を塞いでいた誰かとぶつかった。

 弾き飛ばされた俺は、その相手の顔を見る。
 どんなごっつい野郎かと思ったのだが、そこにいたのは一人の少女。

 灰色の髪を後ろで三つ編みにし、まだ幼さが残るもののその顔は整っている。その可愛らしい容姿には不似合いな重たい甲冑で身を包んでいる。

「行かせません、勇者ユリウス」

 威圧感のあるその声に思わず怯んでしまう。エメラルド色の瞳は獲物を狙う鷹のように鋭い。

「誰……? 」

 「聖騎士長フィオナ=ルーンベリス、ただいま戻りました。失礼ながら一部始終見させて貰いました」

 フィオナ=ルーンベリス!

 名前だけ聞いたことある。若くして女ながら聖騎士長まで登りつめた天才だと。その剣の腕前はセレンティアでもトップクラスらしい。あれ? 確か何か格好いい二つ名があったような……?

 フィオナは俺の喉元に細身の剣を突きつける。

「この男は勇者にふさわしくない。そう判断致しました」

 だからさっきからそう言ってんじゃん!! 

「そうそう、俺、勇者なんて出来ないから。だからさっさとそんな物騒なもの下げて、ここ通してよ」

「そうはいきません、あなたは私の大切な部下たちを傷付けました」

「誰も殺してないし! 襲いかかってきたのは向こうだし! 」

「言い訳無用! 第一、私がどれほど……」

 声を震わせるフィオナちゃん。どうやら思うことがあるようだが。

 すると、ネヴィがあっ! と思い付いたように声をあげた。

『この人だ。私を取りにダンジョンに来て、結局抜けずに諦めて帰っちゃった人』 

「なんだって……あっ! 清廉の勇者姫フィオナって……まさか」

「その二つ名で呼ばないで下さい! 」
 
ぎっと目に大粒の涙を溜めてフィオナが俺を睨み付ける。

 思い出した。神を信じ、王の矛として勇者のように強い、可憐なる女騎士。そんな彼女を人々は尊敬を込めて『清廉の勇者姫』と呼んでいた。

「どうして、私が勇者に選ばれなくて、この軽薄そうな男が選ばれるんですか!? こんなのおかしい、間違ってます! 」

 その通り、間違っている!

「私は幼き頃から鍛練を積み、神を信じ、王をお守り致しておりました。それなのに……それなのに……」

 あ、フィオナちゃん今にも泣きそう……。

「どうしてこんな何の努力もしてなさそうな男が聖剣に選ばれるんですか~~~!? 」

「俺だって選ばれたかったわけじゃねーよ! そうだフィオナちゃん、1億ゴールドで聖剣買わない? 今ならおまけに回復ポーションも付けるよ」

 ここで商談をする抜け目ない俺。いや、騎士長さんならお金持ってそうだなーって……。

 しかしこれが逆効果だったようだ。

「どこまで私を馬鹿にすれば気が済むんですか!? もう許せませ~~ん!! 」

 その途端、ガクンと視界が歪み始めた。
 しまった。騎士だから魔法なんて使ってこないとたかを括っていたが、眠りの魔法をかけられたらしい。

 まさか俺が、こんなヘマするなんて……。俺は強いとかドヤ顔で言っといて恥ずかしい限りだ。

 蝕む睡魔に抗うことが出来ないまま、俺は再び深い眠りへと吸い込まれていった。
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