3 / 5
第二話
しおりを挟む「ほはよー、ユリウス」
精霊様の朝は早いようで、俺が目を覚まして食堂に行く頃にはとっくにテーブルにつき、大量の朝食を頬張っていた。
テーブルの上にはもう食いつくしたのだろう食べ物の皿が塔のように積み上がっている。
「口一杯に頬張るなネヴィ。というか精霊って飯食うのか」
ネヴィの正面に座った俺はサラダを一口。朝からよくそんなに食べれるなぁと感心する。低血圧に朝は辛いのだ。
「はにをはくそう、わたひほどのほういせいれいは、たべほのもたべえるのれす! 」
半分以上何を言ってるのか分からなかったが、要は高位精霊になると飯も食えるらしい。
「何でもありだな、高位精霊ってやつは」
「んん……ごっくん。崇めても良いんですよ? 」
「口についてるパンの欠片取ったら考えてやるよ」
「わわっ! レディがなんたる粗相を」
慌てて口元を拭うネヴィを見て思わず笑みを浮かべる。ころころ表情が変わって見ていて飽きないやつだ。とは思う。
「あ、勇者になる気出てきました? 」
「それはない」
きっぱりと言い切る。
がっくりうなだれるネヴィ。
「もぉ~~!! どうしたら勇者になってくれるんですか~~!! 」
「100億貰ったって俺は勇者にならねーからな」
とりつく島もない俺にいい加減ネヴィも諦めたのか、もう何も言わなかった。
「お食事中すいません、ユリウスさん、お会計宜しいですか」
すると、伝票を手にした女将がにっこりと笑う。
「あぁ済まない。いくらだ」
「2人合わせて10万ゴールド、頂戴致します」
ん? 10万?
俺は自分の耳を疑った。おいおい女将、桁が一つ多すぎるんじゃないか。
10万なんて村人の月収ぐらいだぞ。
そんな俺の心の声を察してか、女将が更に言葉を続ける。
「宿泊費は半額でしたのでお二人で1万ゴールドでした。しかしお連れ様の食事費が9万を超えていまして……」
俺は反射的にネヴィを睨み付ける。
ただならぬ気配を感じてか、ネヴィが汗をだらだら流し、ステーキをフォークに刺したまま静止した。
「……おいネヴィ」
「なんでしょうユリウス様」
白々しく『様』なんてつけちゃってこいつは……。
「お前食い過ぎだ!! 9万ゴールド分も食べるやつどこにいる!! 」
「わ~~~、ごめんなさい~~~」
口では謝りつつもステーキを離そうとしないネヴィ。
「お前払えよ! 9万ゴールド、ぴったりな」
「精霊……お金……持ってない……」
だったら、と俺はにやりと笑う。
「お前を売った金でその分補填してやるよ」
決まった!!! これでもうネヴィも何も言えまい。彼女は渋々、売られることを了承したのだった。
◇◇◇
エクスカリバーを肩に担いで、俺は王様のいる城へと向かう。しっかしこのエクスカリバーってやつはやけに軽いな。両手剣なのに片手で扱えるぐらいだ。
『うえ~~ん、私売られちゃうんですか~~。お金ならいつか返しますから~~』
「いつかなんて言葉信用できるかな。あーあ残念。お前があんなに飯食わなきゃ勇者になってたかもな」
嘘つき、とネヴィが呟く。なんだよく分かってるじゃないか。
さて、と固く閉ざされている門の前まで来た。そういや城ってどうやって入るんだろう? 入場券でも買うのだろうか。
すると、オロオロしてる俺を見つけてか、門番がやたら笑顔で俺に駆け寄ってきた。
「お待ちしておりましたユリウス様ですね。ささ、どうぞどうぞ、お入りください」
おおぅ、やけに丁寧な扱いだな。これもエクスカリバーを拾った功績ってやつか?
悪い気はしない俺は、案内されるまま足を進めていく。
すると
パンパカパーーーーン!!!
降り注ぐ紙吹雪、軽快なメロディを奏でる吹奏楽団、わっと昂る兵士たち。そして極めつけは。
「見て見てユリウス! 『勇者様ようこそお越しくださいました』って垂れ幕が下がってるよ! 」
頭に降り積もる紙吹雪を落とす気も起きない。
一体何が……起きてるんだ?
「ようこそお越しくださいました。勇者様」
人々を掻き分けて俺の前に進み出てきたのは王様。厳つい顔した一見怖そうなナイスガイだ。
「え、えっとこれはどういうことですかね……」
状況を未だに飲み込めない俺はおそるおそる尋ねる。
「武器屋から連絡を受けました。エクスカリバーを抜いた者がいると、そしてそれがあなたであると」
まぁそれは間違ってないですけど……。
「聖剣を抜くことが出来るのは神からの祝福を受けた勇者様のみです。さぁ勇者様、ってあれ……? 」
俺はおいおいどういうことだよとネヴィに掴みかかる。
抜くことが出来るってあんなの誰でも出来るだろ、そんなことで勇者押し付けられちゃたまらねえよと。
『あぁ、私は普通の人には抜けませんよ』
さも当たり前のように言い放つネヴィ。
『ちょっと前に勇者志望の女の子がダンジョンに来たんですけど、どうしても私を抜けずに諦めて帰っちゃいました』
「……お前が人選んでるんじゃないだろうな? 」
『そんなわけないでしょ! 選べるんだったら私だってもっと勇者様に憧れてる人のものになりたいですよ』
精霊状態のネヴィと喋っていたからか、王様がやべーやつを見るような目でこちらを見ている。
「ユリウス殿……? 」
はっと我に返った俺。
うーむこの際仕方ない、はっきり断ってしまおう。
「王様、残念ですが、俺は勇者にはなりません。今日はこの剣を売りに……じゃなくて、献上しに参りました」
まさか勇者にならないなんて言われると思っていなかったのだろう、ぽかーんと間抜け面をする王様。
周りの外野たちも口々に「嘘だろ!? 」「勇者を拒否するなんて」と言い合っている。
「……勇者になれば地位、名誉、全てがユリウス殿のものだぞ」
「興味ないっす」
「……旅の軍資金に1000ゴールド支援するぞ」
俺は思わず鼻で笑ってしまった。その程度の金、酒場で1時間でもバイトすれば余裕で稼げる。
「ぬぅぅ仕方ない……フレイヤ、ここに! 」
「はいお父様」
しずしずと姿を現したのは一人の女。
毛先までよく手入れされた見事な栗色の髪を腰まで伸ばし、垂れ目がちで大きな目や小さい鼻は子犬のように愛くるしい。日焼けを知らない白い肌は艶やかだ。
セレンティア王国の美姫と名高いフレイヤ=セレンティアだ。
国民なら誰でも知ってる有名人で、俺も生で見るのは初めてだ。なるほど確かに美しい。
「初めまして、フレイヤ=セレンティアと申します」
上品な笑みを口元に浮かべたまま、ドレスの裾をちょっと持ち上げ、優雅に頭を下げる彼女。
「どうだ? 我が自慢の娘だ。勇者となり、魔王を倒した暁には彼女の婿となることを認めよう。」
「そんなお父様……勇者様と結婚だなんて……照れますわ」
ぽっと顔を赤らめるフレイヤ。
「フレイヤ姫との結婚だと……!」「羨ましい……俺がなりたい」ガヤガヤとやかましい外野。おいちょっと黙っていろ。
「悪くない条件だろ? さぁさぁ、勇者になろうじゃないか」
フレイヤと結婚すれば毎日家に美人な奥さんが待っててくれるのか。それに夫婦ならここで言えないようなあんなことやそんなことも出来ちゃう……。
だが。
「お断り致します」
俺の決意はもちろん変わらなかった。
0
あなたにおすすめの小説
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。
アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】
それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。
剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず…
盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず…
攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず…
回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず…
弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず…
そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという…
これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。
剣で攻撃をすれば勇者より強く…
盾を持てばタンクより役に立ち…
攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが…
それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。
Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに…
魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし…
補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に…
怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。
そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが…
テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので…
追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。
そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが…
果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか?
9月21日 HOTランキング2位になりました。
皆様、応援有り難う御座います!
同日、夜21時49分…
HOTランキングで1位になりました!
感無量です、皆様有り難う御座います♪
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる