外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

寿司

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幼馴染たちとパーティーを組んだものの…

第1話 旅芸人ノア

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「俺たち三人で邪神ニュクスを倒して世界を救おうぜ! 」

「うん! じゃあ私は僧侶で、アスベルは勇者! ノアは頭が良いから魔法使いかな? 」

「分かった! じゃあ後は戦士なんか仲間に入れたいね! 」

「それ、良いな。俺たち、ずっと友達だよな? 」

「もちろん! 」

 そうやって僕たち三人は顔を見合わせて笑い合った。


。。。。。。


 遠い昔の約束。そういえばそんな話もしたっけなぁ、と僕、ノアは朝早く起きて、パーティ全員分の朝ご飯を作りながらそんなことを思い出していた。あれから十年が経ち、僕たちは十八歳になった。
 アスベルはその剣と魔法の才能、そしてカリスマ性を生かして勇者となり、僧侶を志していたユキナは国中に名を轟かせるぐらい有名な女僧侶になった。そして僕は……。

 旅芸人という最底辺の職業に就いていた。

 この職業のことを簡単に説明すると、何でも出来るが何にも出来ない中途半端な職業だ。
 剣も魔法も使えなくはないが特別優れているという訳でもなく、良く言えば万能だと言えなくもないが器用貧乏といった方がしっくりくる。

 一応僕だって二人に追いつけるように努力はしたつもりだ。魔法の勉強だってしたし、魔力を少しでも高められるように訓練だってした。しかし、やはり僕は旅芸人にしかなれなかったのだ。

 この世界は神によって職業クラスが決められる世界。
 どんな人も十歳を迎えると神からお言葉を頂き、それぞれの職業を授かる。
 バラ色の人生を歩めるかどうかは全て神のみぞ知るという訳だ。

 そして僕が神から授けられた職業は旅芸人、これはもう一生変えることの出来ない運命なのだ。

 そしてそんな僕を最初は受け入れてくれていたアスベルたちだったが、他に有能な仲間が増え、パーティが注目を浴びるようになってくると、段々と僕のことを疎ましく思ってきたらしい。

 控えとして馬車に押し込められてきた僕は戦いに参加させて貰えなかったので、周りの皆のレベルが50近いにも関わらず、僕のレベルはまだ15であった。

 しかし、ステータスだけ見ると他の仲間たちと遜色ない。その理由としては僕の装備に秘密があった。

怨嗟えんさよろい
 この世を恨んで死んだ 戦士の遺物
 装備するだけで防御が0になるという 曰く付き

破滅はめつのネックレス』
 死を願った かつての英雄のアクセサリー
 装備した者は ある日突然不可解な死を遂げる という噂がある

愚者ぐしゃの遺書』
 世界で一番の馬鹿者が書き残した遺書
 あらゆる罵詈雑言が書き連ねており 不幸を呼ぶ

『死の指輪』
 狂った女僧侶が持っていたという指輪
 強力な呪いが かけられていて 装備者に死の夢を見させる

 何だかおどろおどろしい名前が多い。
 そう、お察しの通り、これらは全て呪いの装備品であった。
 どうして僕がこんなものばかり身に着けるようになったかというと、始めはアスベルの何気ない思い付きだった。

~回想~

「よお、ノア。仲間が新しく増えたんだ。こいつ、盗賊のロイド」

「よろしく、ロイドさん」

 ロイドは僕を一瞥いちべつしただけで、何も言わなかった。
 旅芸人である僕を良く思っていないのがすぐに分かった。

「そんで頼みがあるんだけど、その装備、脱いでくんね? 」

「え!? 」

 僕は突然の頼みに思わず声をあげてしまった。
 この間新調して貰ったばかりのローブ、割と気にいっていたのだ。

「いやさ、ロイドもノアも重い鎧が装備出来ないだろ? そうするとローブをってことになるんだが、いかんせん数が足りなくて」

「そういうことなら……、で、僕は何を装備すれば良いの? 」

 僕は渋々ローブを脱ぐと、ロイドに渡した。ロイドが小さな声でくっさと呟いたのを僕は聞き逃さなかった。

「お前はこれ、強そうだろ? 」

 アスベルが手渡して来たのは『怨嗟えんさよろい』。真っ黒な甲冑にはゴテゴテと骸骨を模した飾りが付けられている。確かに防御力は高そうだが……紛れもなく呪いの装備です、ありがとうございます。

「え、アスベルこれ呪いの装備じゃ……」

「悪いな! 今これしか空いている装備がなくてさ。大丈夫、防御力だけなら持っている装備の中で一番高いだろう? それにこれなら鎧が着れないノアでも装備できるから 」

 呪いの装備は確かにその能力は高く、装備者を選ばない。しかし、裏を返せば誰にも装備が出来ないという意味でもあるのだ。その理由は簡単だ。装備をすると何らかの悪い効果が装備者を襲う。例えばじわじわ体力を奪うとか魔法が使えなくなる、などなど。その効果は装備品によって様々だ。中には装備すると死ぬ、というものも存在するらしい。

 そんで、そんな曰く付きなものだから手に入れたら直ぐに売っぱらってしまうというのが冒険者たちの間では常識だった。こんな持て余すような代物でも、コレクションしている奇特な金持ちはいるのだ。

「でも……」

「大丈夫だって! やばかったら直ぐに外せば良いんだし! 」

「じゃ、じゃあ……」

 半ば無理やりその鎧を着せられてしまった僕は、どうやら鎧に意識を乗っ取られ、世界への恨みを泣き喚いたらしい。……あまりこの記憶はないのだが、その様子を見たアスベルたちは大笑いし、どうやらツボにハマったらしい。

 それからと言うもの、呪いの装備を拾う度に僕に持たせるというのが日課になってしまった。


 ……回想終わり

 まぁ、ようは呪われた僕を見て面白がりたいだけだというのは薄々分かっている。
 初めの頃は飛び起きてしまうような悪夢を見てしまい眠れない夜を過ごしたり、突然心臓が止まって死にかけたりしたものだが、段々と慣れて来たのか最近は呪いの装備を着ても悪い影響が出なくなってきた……気がする。

 それにこの装備を着るだけでアスベルも皆も笑ってくれるし、それならそれで良いかなと思い始めている僕がいるのも確かだ。そして何より、小さい頃から思いを寄せていたユキナが、困ったように笑うのが嬉しかったのだ。

 呪いの装備も悪くないかも? と最近の僕は思っていた。

 いや、そう言い聞かせなければ僕は壊れてしまいそうだったのかもしれない。

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