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幼馴染たちとパーティーを組んだものの…
第5話 何が起きたか分からない
しおりを挟むどれぐらい時間が経ったのだろうか、何かが爆ぜるような音で僕は目が覚めた。
もしかして、僕は死んだのだろうか? 辺りを見回すと自分は依然として無機質な大理石の神殿の中にいるようだ。二人の姿は見えない。どうやら引き上げたらしい。
「僕、生きてる……? 」
体はもう苦しくない。いやそれどころか絶好調だ。しかしなぜ僕は生きているんだろうか、まさかユキナが回復してくれたとは思えない。
不意に自分の右手を見ると、カランと何か金属が滑り落ちて音をたてた。それを摘みあげてじっくり観察すると、何か指輪のようだ。綺麗に半分に割れてしまい、もう指輪としての機能は期待できない。
「これ、死の指輪だ」
いつも僕の右手の人差し指についていた『死の指輪』。これも勿論呪いの装備で、身に着けると寝ても起きても物凄い自殺衝動に駆られるという恐ろしい品物だ。しかし、この指輪が壊れたことと僕の体力が回復したこと、何か関係があるのだろうか?
「ま、いっか」
とにもかくにも生きているなら万々歳だ。そして僕は不意に台座の方に視線を向けた。すると、依然としてそこには伝説の剣が突き刺さったままだった。その滑らかな銀色の刀身は光を受けて美しく輝いている。
僕は思わずその剣に駆け寄ってしまう。なぜアスベルたちはこれを持ち帰らずにずこずこと引き下がったのだろうか? あのアスベルたちのことだ、そう簡単に諦めるとは思えない。
僕は衝動的にその剣を掴み、勢い良く引き抜いた。まるで綿に刺さっていたかのように簡単に引き抜ける剣。そして僕はアスベルたちがその剣を使えなかった理由が直ぐに分かった。
引き抜いた瞬間、白銀色だった剣が見る見る暗黒へと染まっていく。そしてその傷一つなかった刃は腐食されたようにボロボロと砕けていく。
「これも呪いだ……! 」
なるほど、伝説の武器にも呪いがかけられていたのか。ま、それはそうだよな、強力な武器ほど使えないようにするのは理に適っている。
僕は何だかおかしくなって一人、噴き出してしまった。
幼馴染一人の命を犠牲にしてまで欲した武器は、ただのガラクタだったのだ。ざまぁみろと小さく呟いてみる。
そのとき、ビービーと耳をつんざくような警報が鳴り響いた。僕は思わず耳を塞ぐ。
「何だこの音!? 」
『ボウギョシステム キドウ シンニュウシャ ゲキタイシマス』
無機質な声を発しながら現れたのは軽く僕を捻り潰せるぐらい大きなゴーレムだった。ぷしゅううううと蒸気を口から吐き出しながらゆっくりと起動を始める。まさかこれがこのダンジョンのボス!? 冗談じゃない、こんなのとまともに戦えるわけがない。
僕は剣を掴んだまま出口目指して走り出した。しかし案の定で扉は堅く閉ざされ、びくともしない。まあ分かってはいたけどね……。
「くっそ! せっかく生きていたのに!! 」
必死に扉を蹴破ろうとするが、ただ僕の足がダメージを受けただけだった。
そうか、このゴーレムはこの剣を取り返したくて動いてるんだ。それならばこの剣を返せば動きも止まるんじゃないか? そう思いついた僕は台座に剣を返そうと慌てて引き返す。
『シンニュウシャ ゲキタイシマス』
ゴーレムの口がかぱっと開いたかと思うと、何やら怪しいエネルギーのようなものが集まり、玉のようなものを生成していく。もしかしなくてもこれはまずい。
『ハッシャ』
その声を合図に、赤い光線が僕に向かって放たれた。すんでのところでそれを避けたが、僕がいたところは黒い焦げだけが残され、ぷすぷすと音を立てている。そしてそれに巻き込まれる形で台座は真っ二つに切り裂かれてしまった。
あれ? これ詰んでるんじゃない?
冷や汗が背中を伝った。台座に戻すという選択肢がなくなった今、このゴーレムを倒すしか道はない。
いや……これもう無理では?
そして僕は何かに導かれるように呪われた剣を構え、そのゴーレムと対峙する。こんなボロボロの剣が堅そうなゴーレムに通用するとは思えない。しかし、ゴーレムの胸の真ん中に埋め込まれている赤い宝石。おそらくこれを破壊出来れば動作を止められるはず。
この宝石は斬れることを信じるしかない。
僕は助走をつけて走り出すと、一気に強く地面を蹴り上げた。
そして振り上げた剣を全ての力を載せて、全力で振り下ろす。
ゴーレムの体はまるで泡で出来ているかのように柔らかく、あっさりと剣先を通す。
「はぁああああああ!!!! 」
そしてその宝石ごと、僕はゴーレムを縦に真っ二つに両断した。
……あれ、ここまでするつもりはなかったのだけど?
僕は思わずまじまじと剣を見てしまった。うん、相変わらずガラクタ同然の武器だ。しかしゴーレムを切りつけても傷一つついていない。もしかして、呪われてはいるが本来の性能を失ってはいない……?
『オミゴト コノ チカラ マサシク ユウシャ オカエリナサイ リヒト サ、マ』
「いや、僕はただの旅芸人で」
僕を誰かと勘違いしているらしいゴーレムの目から涙が溢れた。
『エイム ズット シンジテタ リヒトサマ シンデナイ リヒトサマ アキラメテナイ』
「違うって! 僕はリヒトじゃない、ノア! 」
リヒトとは一体誰のことを言っているのだろうか? 僕は首を傾げる。ゴーレムはそんな僕にお構いなく言葉を続ける。
『サヨウナラ アリガトウ 』
「あ、ちょっと! 」
それを合図にゴーレムの目から光が消え失せたかと思うと、完全に動作を止めた。
どうしよう、このゴーレムはリヒトという人のものだったのだろうか? ……悪いことしたかもしれない。
ダンジョンボスを倒したからだろう、出口へと繋がる転送装置が光を取り戻した。
よし、これでここから抜け出せそうだ。
「よく分かんないけど、これは返すよ。それじゃ」
僕はゴーレムの傍に剣をそっと置くと、そのまま転送装置へと飛び込んだのだった。
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