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闘技大会の街 コロセウム
第21話 女の戦いは怖い?
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「おおっとーー!? これは決まったーーーー!!! まさかの決勝進出はリヒト選手だーーーー!!!!!! 」
勝ってしまった……。興奮ぎみな司会者に対して客席の女の子たちは白けた様子だ。ただし男たちは皆小さくガッツポーズをしている。
後が怖いので僕はさっさと控え室に引っ込もうとしたのだが、丁度そのとき同時に行われてた他の試合が終わったようだ。
「決勝進出は麗しき女騎士、エリザベス選手!!! 流石と言わざるをえません!! 」
エリザベス……。えっともしかして次の相手って……?
「はい、明日の決勝の組み合わせが決定しましたね。明日の正午からエリザベス選手対リヒト選手の試合が行われます!!!! ぜひ皆様足をお運び下さいませ! 」
ゾロゾロと客席に座っていた人たちが退場していき、皆明日の試合の期待を口にした。
僕は何だか今までのことが夢見心地のようで思わずその場に座り込んでしまった。
「お疲れ様。凄いね、決勝だって」
音もなく近付いてきたリオンが手を伸ばして僕を引き上げる。
「はは……、まだ信じられないや」
「ね、だからノアは強いって言ったでしょ」
リオンが悪戯っぽく笑った。そしてそんなことより、と付け加えた。
「私お腹空いた」
「そうだな、僕も今日は疲れたよ。選手たちには宿が用意されてるみたいだし今日はさっさと帰るか……」
「うん! 」
リオンに手を引っ張られて僕たちは宿へと向かったのである。
◇◇◇
お腹いっぱい美味しいご飯を食べ、風呂に入ってさっぱりしたリオンは満足げにとろけたような顔をしている。
僕はと言うと明日に備えて薬草の数を数えていた。運良く今日は一つも使わずに済んだが明日はどうなるか分からない。
「ね、明日はどうするのー? 」
ベッドに転がったリオンが無邪気に問いかける。久しぶりにフードを取ったからだろうか彼女の頭に鎮座する厳めしい角が何だか不思議に思える。
「どうするって? 」
僕も久々に仮面を取った。顔がすっきりした気分だ。
「あの騎士さん倒すんでしょ? あの人、かなり強いよ」
「だろうね。でもなぁこのままいけば準優勝は確定だろ? 僕にしては大健闘だと思うけどな」
するとぷくっと頬を膨らませたリオンが呆れたように言う。
「ノアは優勝狙えるよ。今までみたいには簡単にはいかなそうだけどね」
「まー、それなりに頑張ってはみるよ。て、それ僕のベッドじゃん。どいたどいた」
やーだよとリオンは僕のベッドに顔を埋めると、そのまま返事をしなくなった。
……寝ないと言ってたのは嘘だったのだろうか。
やれやれと頭をかいた僕は仕方なくリオンのベッドに倒れ込むと、そのまま深い眠りに吸い込まれていった。
……と思ったのだが。
コンコンと誰かが扉をノックする音で目が覚めた。
横にいるリオンはぴくりとも動かない。
こんな時間になんだろう……僕は欠伸を一つすると、扉を開いた。宿の人だろうか? と思いながら。
しかしそこにいたのは金髪の美人、エリザベスだった。
「夜分遅くに失礼する……ってえ!? 」
やばい、顔を隠していなかった!
ノアとしての顔を晒してしまった僕は大慌てで扉を閉めようとするがエリザベスはとっさに足を挟み込んだ。
「待ってくれ! 別に私は捕まえに来たわけじゃない。取引の話をしに来たんだ」
「は、え!? 取引?」
いきなりの申し出に僕は思わず狼狽える。また昼間会ったときとは別人のようにしゅんとするエリザベスの姿にただならぬ事情を悟った。
「その取引の内容とは……? 」
「……単刀直入に言うと、優勝を私に譲って欲しいんだ」
優勝を譲る?
僕は胸を撫で下ろした。身構えていた割には大したことのないお願いだった。
「もちろんタダでとは言わない! お金を払っても良いし、私に出来ることなら何でもする。この街にいる間は追っかけ回さない」
「追っかけ回すって……あれは濡れ衣です! 貴女が証言してくれればそんな罪帳消しだったんですよ! 」
「仕方ないじゃないか……聖騎士が旅芸人に助けられたなんて知られたら……私はもう騎士として失格だ……」
助けたのにその言い草はないんじゃないの? と内心イラついてしまう僕。おっといけない寝不足は人間の性格を悪くする。
「分かった! それなら私のことを好きにしても良い! 金だって言い値で払おう! だから……」
「馬鹿みたい」
いつの間にか目を覚ましていたリオンが爛々と光る瞳でこちらを見ていた。
「リオン、ごめん起こした? 」
「おっきい声で喋ってるから起きちゃった」
そんなことより、とリオンは言葉を続ける。
「助けて貰ったのに感謝の言葉もないの? 騎士だの旅芸人だの関係ない。命を助けて貰ったんじゃないの? 」
「それは……」
リオンに指摘されて項垂れるエリザベスだが、口をパクパクとさせるだけで言葉は出てこないようだ。
「……獣人に指摘される謂れはない」
やはりプライドには勝てないようだ。
「呆れた」
はぁとリオンが息を吐くと先ほどまでとはうって代わり、驚くほど冷たい声を吐き出した。
「出ていきなさい、これ以上ノアを侮辱することは私が許さない」
ぞっとするような寒さが全身を駆け巡った。一人の女の子が発しているとは思えない重圧感に押し潰されそうだ。
「……くっ」
そしてエリザベスは逃げるようにこの場から去っていった。
その体は小刻みに震えていて、心の底から恐怖しているようだった。
「ふぁあ、まだ朝ごはんまで時間ありそう」
そしていつものリオンに戻った彼女は、もぞもぞと体を丸めると、すやりと寝息を立て始めた。
僕はしばらく動けないまま彼女の寝顔を眺めていた。
この娘は一体何者なのだろう?
出会った頃の疑問が再びむくむくと涌き出てくるのだった。
勝ってしまった……。興奮ぎみな司会者に対して客席の女の子たちは白けた様子だ。ただし男たちは皆小さくガッツポーズをしている。
後が怖いので僕はさっさと控え室に引っ込もうとしたのだが、丁度そのとき同時に行われてた他の試合が終わったようだ。
「決勝進出は麗しき女騎士、エリザベス選手!!! 流石と言わざるをえません!! 」
エリザベス……。えっともしかして次の相手って……?
「はい、明日の決勝の組み合わせが決定しましたね。明日の正午からエリザベス選手対リヒト選手の試合が行われます!!!! ぜひ皆様足をお運び下さいませ! 」
ゾロゾロと客席に座っていた人たちが退場していき、皆明日の試合の期待を口にした。
僕は何だか今までのことが夢見心地のようで思わずその場に座り込んでしまった。
「お疲れ様。凄いね、決勝だって」
音もなく近付いてきたリオンが手を伸ばして僕を引き上げる。
「はは……、まだ信じられないや」
「ね、だからノアは強いって言ったでしょ」
リオンが悪戯っぽく笑った。そしてそんなことより、と付け加えた。
「私お腹空いた」
「そうだな、僕も今日は疲れたよ。選手たちには宿が用意されてるみたいだし今日はさっさと帰るか……」
「うん! 」
リオンに手を引っ張られて僕たちは宿へと向かったのである。
◇◇◇
お腹いっぱい美味しいご飯を食べ、風呂に入ってさっぱりしたリオンは満足げにとろけたような顔をしている。
僕はと言うと明日に備えて薬草の数を数えていた。運良く今日は一つも使わずに済んだが明日はどうなるか分からない。
「ね、明日はどうするのー? 」
ベッドに転がったリオンが無邪気に問いかける。久しぶりにフードを取ったからだろうか彼女の頭に鎮座する厳めしい角が何だか不思議に思える。
「どうするって? 」
僕も久々に仮面を取った。顔がすっきりした気分だ。
「あの騎士さん倒すんでしょ? あの人、かなり強いよ」
「だろうね。でもなぁこのままいけば準優勝は確定だろ? 僕にしては大健闘だと思うけどな」
するとぷくっと頬を膨らませたリオンが呆れたように言う。
「ノアは優勝狙えるよ。今までみたいには簡単にはいかなそうだけどね」
「まー、それなりに頑張ってはみるよ。て、それ僕のベッドじゃん。どいたどいた」
やーだよとリオンは僕のベッドに顔を埋めると、そのまま返事をしなくなった。
……寝ないと言ってたのは嘘だったのだろうか。
やれやれと頭をかいた僕は仕方なくリオンのベッドに倒れ込むと、そのまま深い眠りに吸い込まれていった。
……と思ったのだが。
コンコンと誰かが扉をノックする音で目が覚めた。
横にいるリオンはぴくりとも動かない。
こんな時間になんだろう……僕は欠伸を一つすると、扉を開いた。宿の人だろうか? と思いながら。
しかしそこにいたのは金髪の美人、エリザベスだった。
「夜分遅くに失礼する……ってえ!? 」
やばい、顔を隠していなかった!
ノアとしての顔を晒してしまった僕は大慌てで扉を閉めようとするがエリザベスはとっさに足を挟み込んだ。
「待ってくれ! 別に私は捕まえに来たわけじゃない。取引の話をしに来たんだ」
「は、え!? 取引?」
いきなりの申し出に僕は思わず狼狽える。また昼間会ったときとは別人のようにしゅんとするエリザベスの姿にただならぬ事情を悟った。
「その取引の内容とは……? 」
「……単刀直入に言うと、優勝を私に譲って欲しいんだ」
優勝を譲る?
僕は胸を撫で下ろした。身構えていた割には大したことのないお願いだった。
「もちろんタダでとは言わない! お金を払っても良いし、私に出来ることなら何でもする。この街にいる間は追っかけ回さない」
「追っかけ回すって……あれは濡れ衣です! 貴女が証言してくれればそんな罪帳消しだったんですよ! 」
「仕方ないじゃないか……聖騎士が旅芸人に助けられたなんて知られたら……私はもう騎士として失格だ……」
助けたのにその言い草はないんじゃないの? と内心イラついてしまう僕。おっといけない寝不足は人間の性格を悪くする。
「分かった! それなら私のことを好きにしても良い! 金だって言い値で払おう! だから……」
「馬鹿みたい」
いつの間にか目を覚ましていたリオンが爛々と光る瞳でこちらを見ていた。
「リオン、ごめん起こした? 」
「おっきい声で喋ってるから起きちゃった」
そんなことより、とリオンは言葉を続ける。
「助けて貰ったのに感謝の言葉もないの? 騎士だの旅芸人だの関係ない。命を助けて貰ったんじゃないの? 」
「それは……」
リオンに指摘されて項垂れるエリザベスだが、口をパクパクとさせるだけで言葉は出てこないようだ。
「……獣人に指摘される謂れはない」
やはりプライドには勝てないようだ。
「呆れた」
はぁとリオンが息を吐くと先ほどまでとはうって代わり、驚くほど冷たい声を吐き出した。
「出ていきなさい、これ以上ノアを侮辱することは私が許さない」
ぞっとするような寒さが全身を駆け巡った。一人の女の子が発しているとは思えない重圧感に押し潰されそうだ。
「……くっ」
そしてエリザベスは逃げるようにこの場から去っていった。
その体は小刻みに震えていて、心の底から恐怖しているようだった。
「ふぁあ、まだ朝ごはんまで時間ありそう」
そしていつものリオンに戻った彼女は、もぞもぞと体を丸めると、すやりと寝息を立て始めた。
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出会った頃の疑問が再びむくむくと涌き出てくるのだった。
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