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学術都市 アルカデラ
第27話 悩みごと
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エリーと再会の約束をして、コロセウムを発った僕たちは、運良くアルカデラに向かう馬車に乗っけて貰えることになった。
「コロセウムからアルカデラまで歩けば三日はかかるぞ。女の子には少々酷だろうよ」
「ありがとうございます」
「なぁに、あんた闘技大会で準優勝だったリヒトさんだろ? 良いもん見せて貰った礼だよ」
そういって馬の手綱を操るのは気の良さそうな青年だ。
僕の膝の上にはリオンがちょこんと座り、移り変わっていく景色を興味深そうに眺めていた。
「でもな、アルカデラなんて本ばかりでそんなに面白いもんはないぜ。住んでる奴等も陰湿でジメジメッとした人間が多いな」
「はは、ちょっと調べものがありましてね」
「ふぅん、案外勉強熱心なんだね。強い人は研究も欠かさないのかねぇ」
青年はあ、そうそうと何かを思い出したように声をあげた。
「アルカデラの魔女には気を付けた方が良いぞ」
「アルカデラの魔女? 」
何だか物騒だなと僕は思わず目を丸くする。
「ああ、魔女って言っても職業は戦士なんだが、自分は魔法使いだって言い張って聞かない狂った女だ」
「へえ……」
何だか自分と重なるようで胸が痛む。
僕も自分が旅芸人という職業を授かってからしばらくはどうしても諦められなくて、剣や魔法の鍛錬をしたものだ。
まぁ結局身につかず、諦めてしまったのだが……。
「出会ったが最後、そいつが使う魔法の実験台にされちまうらしいぜ。なんせ今まで数人が餌食になって大怪我を負ったとか負ってないとか」
「戦士なのに魔法が使えるのか? 」
戦士というのは魔法を諦めた代わりに高いHPと力を身に着けた職業。
魔法を扱えるものがいるなんて話は聞いたことがない。
さぁそこまでは……と青年が首を捻る。ただ気を付けた方が良いぜ、と最後に付け加えていた。
「不思議な女だな。でも少し憧れるな」
「そうか? その魔女は愚かだね」
「なぜ? 」
青年は何かを諦めたような目をして空を見上げた。
「俺の職業は御者なんだが、確かに最初はなんで馬の扱いで一生を終えなきゃいけなんだと絶望したこともあったよ。でも今思えば将来を神様が決めてくれるなんてあり難い話だよな」
「有難い、か」
「だってよ、神様が一人一人にぴったりな職業を授けてくれるんだぜ? こんな楽なことはないよ」
「楽……か」
僕は彼の話に否定も肯定も出来なかった。
昔の僕だったら多分心の底から頷いていたと思う。しかし今の僕は、神様というものに疑問を抱いていたのも確かだった。
「お嬢ちゃんの職業は何だい? 」
青年が不意にリオンに話を振った。
いきなり話を振られたリオンはびっくりしたのか、目を丸くする。
「ああ、もしかしてまだ10歳を迎えてないのかな? それなら羨ましいね。まだまだ希望があるんだから
「私はただのリオンだよ、職業なんてない」
そう言いきるリオンはどこか察したような大人みたいな顔つきをしていた。
「う~ん? お嬢ちゃんは難しい話をするな」
「難しくないよ。大丈夫、お兄さんもなりたいものになれる日が来るから」
ふふっと笑う彼女は本気でそう信じているように見えた。
職業に縛られず、なりたいものになれる。そんな夢みたいな世界。
「そうなったら素敵だな」
たまらず僕が口を挟むと、リオンがでしょと笑いかける。
「ま、そんな世界もありっちゃありかもな」
そう口を挟む青年も、まんざらではなさそうだった。
「コロセウムからアルカデラまで歩けば三日はかかるぞ。女の子には少々酷だろうよ」
「ありがとうございます」
「なぁに、あんた闘技大会で準優勝だったリヒトさんだろ? 良いもん見せて貰った礼だよ」
そういって馬の手綱を操るのは気の良さそうな青年だ。
僕の膝の上にはリオンがちょこんと座り、移り変わっていく景色を興味深そうに眺めていた。
「でもな、アルカデラなんて本ばかりでそんなに面白いもんはないぜ。住んでる奴等も陰湿でジメジメッとした人間が多いな」
「はは、ちょっと調べものがありましてね」
「ふぅん、案外勉強熱心なんだね。強い人は研究も欠かさないのかねぇ」
青年はあ、そうそうと何かを思い出したように声をあげた。
「アルカデラの魔女には気を付けた方が良いぞ」
「アルカデラの魔女? 」
何だか物騒だなと僕は思わず目を丸くする。
「ああ、魔女って言っても職業は戦士なんだが、自分は魔法使いだって言い張って聞かない狂った女だ」
「へえ……」
何だか自分と重なるようで胸が痛む。
僕も自分が旅芸人という職業を授かってからしばらくはどうしても諦められなくて、剣や魔法の鍛錬をしたものだ。
まぁ結局身につかず、諦めてしまったのだが……。
「出会ったが最後、そいつが使う魔法の実験台にされちまうらしいぜ。なんせ今まで数人が餌食になって大怪我を負ったとか負ってないとか」
「戦士なのに魔法が使えるのか? 」
戦士というのは魔法を諦めた代わりに高いHPと力を身に着けた職業。
魔法を扱えるものがいるなんて話は聞いたことがない。
さぁそこまでは……と青年が首を捻る。ただ気を付けた方が良いぜ、と最後に付け加えていた。
「不思議な女だな。でも少し憧れるな」
「そうか? その魔女は愚かだね」
「なぜ? 」
青年は何かを諦めたような目をして空を見上げた。
「俺の職業は御者なんだが、確かに最初はなんで馬の扱いで一生を終えなきゃいけなんだと絶望したこともあったよ。でも今思えば将来を神様が決めてくれるなんてあり難い話だよな」
「有難い、か」
「だってよ、神様が一人一人にぴったりな職業を授けてくれるんだぜ? こんな楽なことはないよ」
「楽……か」
僕は彼の話に否定も肯定も出来なかった。
昔の僕だったら多分心の底から頷いていたと思う。しかし今の僕は、神様というものに疑問を抱いていたのも確かだった。
「お嬢ちゃんの職業は何だい? 」
青年が不意にリオンに話を振った。
いきなり話を振られたリオンはびっくりしたのか、目を丸くする。
「ああ、もしかしてまだ10歳を迎えてないのかな? それなら羨ましいね。まだまだ希望があるんだから
「私はただのリオンだよ、職業なんてない」
そう言いきるリオンはどこか察したような大人みたいな顔つきをしていた。
「う~ん? お嬢ちゃんは難しい話をするな」
「難しくないよ。大丈夫、お兄さんもなりたいものになれる日が来るから」
ふふっと笑う彼女は本気でそう信じているように見えた。
職業に縛られず、なりたいものになれる。そんな夢みたいな世界。
「そうなったら素敵だな」
たまらず僕が口を挟むと、リオンがでしょと笑いかける。
「ま、そんな世界もありっちゃありかもな」
そう口を挟む青年も、まんざらではなさそうだった。
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