外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

寿司

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闘技大会の街 コロセウム

第26話 全てが終わって

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 リーダー格である巨鳥を倒したらこっちのもので、あっという間にこの騒動は沈静化された。
 幸いにも死者は出なかったので一先ず安心ということだ。

「うえっ……くさい」

 しかし倒した魔物たちの死体はそこかしらに転がっているので僕たちはその後始末に追われているのだった。
  
「まあまあ、死人が出なくて良かったじゃないですか」

 マリウスが爽やかな笑顔を浮かべている。なるほどイケメンというのは心までイケメンなのだろうか。

「そうだね……」

「それにしてもリヒトさんの持ってるその盾、何か変わってません? そんなんでしたっけ? 」

 あ、すっかりエリザベスに返すのを忘れていた。

 死神貴族の大盾……だったものは金ぴかに輝いている。
 あの黒くて錆び付いていた頃の姿は欠片もない。

「この盾、何で見た目が変わったんだ? そうだ、ステータスを確認しよう……」

 じっと盾を見つめるとぼんやりとステータスが浮かび上がる。

【龍神の聖大盾】
 魔法を跳ね返し 装備者を あらゆる災いから守る 聖なる盾

「龍神の聖大盾……? 」

 装備品の名前すら変わっている。
 ちなみにこの武具の説明文も人によって分かる情報量は違う。鑑定士という職業の人が見れば、もっと多くのことが分かるらしい。
 旅芸人の僕にはこの程度が限界だ。

「えっ、呪いの効果がなくなってる!? 」

 驚いたことに、呪いが綺麗さっぱりなくなっているではないか……!

 一般的に、どんな高名な聖人でも装備品にかかった呪いを完全に解くことは出来ない。出来るとしたら装備者に感染した呪いを取り除くぐらいのものだ。

「どうしたこんなことが……」

「やあリヒト、ここにいたのか」

 物思いに耽る僕に声をかけてきたのはエリザベスだった。良かった、特に目立った怪我はなさそうだ。

「ああエリザベス、悪いな、この盾返し忘れてたよ」

 僕は大慌てで大盾を彼女に押し付ける。

「そのことなんだが……ってうっ!? 」

 大盾を手にした彼女は勢いよくそれを地面に落とした。あれ? 申し訳ない、手が滑ってしまっただろうか。

「ご、ごめん!! 」

「何だこの重さは……君はこんなものを扱ってたのか……? 」

「重い? 」

 僕は思わず瞬きを繰り返す。エリザベスは僕をからかっているのかとすら思った。
 だってこの大盾、大きさの割に、まるで羽根のように軽かったからだ。
 職業:旅芸人と職業:騎士、どちらが力があるかなんてわざわざ比べなくたって分かる。

「とてもじゃないが私には持って帰れそうにないよ」

 そう言ってはにかむエリザベスは嘘を言っているようには見えないが……。

「そうかなぁ」

 しかし未だに彼女を疑う僕はひょいと盾を拾い上げる。うん、片手でも扱えそうなぐらいの軽さだ。
 そんな僕をギョっとしたように見るエリザベスだったがすぐにくすくすと笑い出した。

「ふふ、その大盾は君を選んだのかもしれない」

「そんなことは……」

「良いんだ。いつか必ず私が立派な騎士になって、その大盾を装備出来るようになるまで預かってくれないか? 」

 えっ、と僕は思わず声をあげた。

「いや、もうエリザベスさんは立派な騎士じゃないですか」

「そんなことない、今回のことで私は自分の未熟さを痛感したよ。もっと強くなって、気高く、頼りになる騎士を目指そうと思ったんだ」

 凄いなぁと僕は素直に思う。目標があってそれに向かって努力する。誰にでも出来るようなことじゃない。

「いつか必ず再会しよう、リヒト……じゃない、ノア」

「な、何のことでしょう? 」

「隠さなくても良い。君はノアだろう? ああ別に君を取って捕まえようなんてもう思っていないさ」

 ここまでバレていたとは……まあバレるよね、と僕は小さくため息をつく。

「ノアには感謝してる。私は死ぬまでにオークレイ様の宝物を目にすることが出来たのだから」

「オークレイ? 」

 んん? どこかで聞いた名前だな。

「私のご先祖様だ。お伽噺では神と敵対し、裁きを受けた大罪人として扱われているが……私はそうは思わない」
  
 そうだ思い出した。

 ーーオークレイ=カーチィス

 お伽噺に出てくる守護騎士パラディン、弱き者を助け、全ての者に愛を注いだとされる人物
 しかし神に牙を剥いたとして裁きを受け、今は大罪人として語り継がれている。

「まさか……あれは……」

 大盾に触れたとき流れ込んできた誰かの記憶。そこで誰かにオークレイと呼ばれた。

 まさか本当にあれはオークレイの記憶……?
 ただのお伽噺として扱われ、その実在は疑われていた人物の記憶。
 もしかして僕は、知ってはいけない何かを知ろうとしているのではないだろうか?
 そう思うと勝手に体が震えてきた。嫌な汗が背筋を伝う。

「どうしたんだ? 顔色が……」

 エリザベスが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。僕はいや、何でもないよと無理やり笑顔を作る。

「ノアは次はどこに行くつもりなんだ? 」

「そうだな……ちょっと調べたいことがあって」

「調べたいこと? 」

 エリザベスがふむと考え込んだ。

「それならここから東にずっと行った学術都市アルカデラに行くと良い。様々な文献が閲覧出来るぞ」

「それは有り難い」

 そうだ、とエリザベスが自分の懐から紙切れを取り出すと僕に手渡した。

「これは私のサインつきの入国許可証だ。アルカデラは警備が厳重でな……私の許可があれば大丈夫だろう」

「ありがとう、エリザベス」

 するとエリザベスは少し顔を赤らめてこう言った。

「……エリーで良い」

「え? 」

「エリザベスは長くて呼びにくいだろう? だからエリーで構わないぞ」

「そんなことは……」

 ないけど、と続けようと思ったがエリザベスに手で口を塞がれた。

「……私が呼んで欲しいんだ」

「そ、そうなの? 分かったよエリー」

 それで良い、とでも言いたげににっこり笑うエリーを見て僕はこう思った。
……女心というものはよく分からないものである、と。
 
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