外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

寿司

文字の大きさ
25 / 50
闘技大会の街 コロセウム

第25話 守る力

しおりを挟む
 用を足し、慌ててリオンを追った僕が見たのはとんでもない光景だった。
 逃げ惑う観客、必死に応戦する参加者たち。
 そして襲いかかっているのは無数の鳥型の魔物、人食い鳥だ。

 しかし、確かに危険な魔物であるもののそれほど強い生物ではない。
 闘技大会に出るような腕に自信のある人にとってはさほど苦労しないと思うのだが……。

「なんだこれ……」

 ただ今回はその数が尋常ではなかった。
 赤い目をギラギラさせて、次々に襲いかかるそれは、空を覆い尽くさんばかりに羽ばたいている。

「リヒトさん! どこ行ってたんですか! 」

 声をかけてきたのはあのイケメン魔法使いのマリウスだった。しかしその表情に余裕はなく、玉のような汗がびっしりと張り付いている。

「ど、どうなってるんだ!? これは」

「分かんないですよ……突然この魔物の群れが襲い掛かってきて辺りは滅茶苦茶です」

 なるほど、確かに辺りには血が飛び散り、焼け焦げたような臭いが鼻をつく。
 そして会話をしている間にも人食い鳥は僕たちめがけて弾丸のように飛んでくる。

「話をしている暇はありません、リヒトさんも加勢して下さい」

「分かった。そ、そうだ。小さい女の子を見なかったか? フードを被った子なんだが……」

「女の子? ……あ、そういえば奥の方に走っていったような」

「そうかありがとう! 」

「ちょ、ちょっとリヒトさーん!!! 置いてかないで下さいよー!! 」

 頑張れマリウス。君ならここは一人で大丈夫だ。
 リオンが気になって仕方がない僕は大慌てで彼女を探し始めたのだった。

◇◇◇

 度々襲い掛かってくる人食い鳥どもを蹴散らすと、一際大きい個体がいるのが見えた。他のと比べても羽毛は血のように赤く染まり、額の辺りにはもう一つ爛々と光る目が獲物を見据えていた。

 そしてその獲物は……。

「リオン……!!! 」

 巨鳥の目の前にへたり込んでいるリオンと、それを庇うように大きな盾を掲げている誰か。

「ノア……!! 」

 僕に気がついたリオンが珍しく慌てたように声を荒げた。

「エリザベスさんが……! 私を庇って……」

 その盾を掲げている人物とはエリザベスだった。 
 死神貴族の大盾、確かにその守備力が並みの盾よりも優れているだろう。
 しかし、呪いを受けてひどく意識が朦朧としている。

「エリザベス!! 」

 僕は慌てて彼女の体を支える。
 それに気付いてか、エリザベスはうわ言のようにこう呟いた。

「私は……カーチィス家の誇り高き騎士……少女一人守れなくて……何が騎士だ……」

「もう大丈夫だ! リオンは無事だし、助けに来たんだ。だから盾を放すんだ! 」

 しかし彼女はその大盾を離そうとしない。よく見ると持ち手の部分から黒々とした闇が広がり彼女の腕を浸食しつつあった。

 これが何なのかは僕には分からないが、少なくとも良いことは起こらなそうである。

「エリザベス!! 盾を放せ!! 」

「お父様……お母様……私は……立派な騎士になって……… 」

 もう僕の声は届いていないようだ。まるで大盾に取り付かれたようにがっちりと掴んで放さない。
 おそらくこれがこの盾の呪いの効果なのかもしれない、一度触れた者を死ぬまで離さない呪い。

 こうしている間にも巨鳥は獲物を仕留めようと間合いを詰めていた。しかし呪いを恐れてか飛びかかっては来ない。

 やむを得ないと思った僕は意を決してエリザベスの手を包むように大盾の持ち手に手をかけた。
 その途端、確かに僕のものではない不思議な記憶がまるでフラッシュのようにぱっと浮かび上がった。

「オークレイ……!! 死なないで……」

 泣き叫ぶ一人の少女。

「……様。貴女だけでも生き延びて下さいませ」

「嫌だ嫌だ……皆いなくなっちゃったら私どうやって生きていけば良いの……」

 優しく少女を撫でる誰かがオークレイという名の人物だろうか。

「大丈夫、必ず我らは生まれ変わり、再び貴女と立ち向かうことを誓います」

……

「ノア!! 危ない」

 リオンの声で現実に引き戻された。夢から醒めたようなふわふわとした感覚。

 あれは一体誰の記憶………?

 目の前を見ると巨鳥が痺れを切らしたのか炎の魔法を撃とうと力を溜めている最中だった。
 この盾はあれだけの魔法に耐えきれるだろうか……? そんな不安が胸を掠めたそのとき、ぱあっと大盾が光り輝き始めた。

「何だ……!? 」

 死神貴族の大盾、おどろおどろしい死神が描かれた盾の絵柄がみるみる内に一匹の龍に変わっていく。
 くすんだ灰色だったそれは輝く金色の見事な盾へと姿を変えた。

「何だこれ……」

 僕は思わず呟いた。
 呪いの装備品が別の装備品に変わるなんて聞いたこともない。
 風を切る音がして火の玉が盾に直撃した。しかし、それは盾に傷一つつけること出来ない。
 それどころか盾に跳ね返された魔法は詠唱者目掛けて飛んでいった。

「凄い……!」

 魔法すら跳ね返す規格外の盾。
 燃え盛る火炎と灰に包まれる巨鳥がけたたましく鳴いた。
 今しかない、そう確信した僕は勢いよく巨鳥に斬撃を浴びせる。

 ーーそうして巨鳥はそのまま動かなくなった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...