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学術都市 アルカデラ
第30話 変人? ソフィア
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少女に連れてこられたのは一軒の民家。どこを見ても書物やガラクタ、何かの設計図など僕の理解が追い付かないような代物で溢れ返っている。
「汚いけど適当に座って、えっとここら辺に……」
「はぁ……」
促されるままにとりあえず周りの物をどけて座り込む。
「あ、あった! はいこれ、ご馳走ね」
少女が僕にぶん投げて来たのは直方体のブロックのようなもの。おそらく人工的に作られた固形栄養食のようなものだろう。
「ノア……なぁにこれ? 」
リオンが不思議そうな顔でまじまじとブロックを見つめる。
「あたしの主食だよ主食! 変なもんは入ってないから食べてみ」
リオンは不安そうに僕をちらちら見ていたので僕がまず口に含んで見せた。うん、特別美味しいわけではないか食べられない訳ではない。
「不思議な味ね」
僕の真似をして食べてみたリオンは一人首を捻っていた。
「アルカデラの人間はこればっかり食べてるよ、なんせせっかちだからね」
少女はからかうようにケラケラと笑う。
「なるほど……で、僕たちはなぜここに連れてこられたのでしょう……」
よくぞ聞いてくれた、と少女が立ち上がる。
「あたしはソフィア=ロアクリフ。天才魔法使いよ! 」
「て、天才魔法使い……? 」
するとソフィアは自慢気に腕に装着している不思議な機械を見せつけた。
「ふふん、これがあたしが作った人工魔法生成機。これさえあれば魔法が使えない戦士だって魔法を使えるようになるのよ」
良く分からないけど凄そうだ……!
「で、今まではこれが魔法だという証拠が得られなかったんだけど、あんたの持ってるその盾、それが魔法を跳ね返すという効果があるらしいじゃない? そしてさっきあたしの魔法は跳ね返された! つまりこれが生成してるのは魔法ってことが証明出来たのよ」
ペラペラと早口で捲し立てるソフィア。うん、いまいち何を言ってるか分からないが、要は魔法という証明が欲しかったということか……。
「だからそのお祝いに客人を招きたい気分になったってわけ」
分かるような分からないような……。
「……ちょっと変な人だね」
リオンがこそこそと耳打ちする。
「いや、かなり変な人だよ」
「聞こえてるぞ君たち。そーだ、君たちは一体どういう事情であんなところに? 歴史の知識を探るやつなんてあたしぐらいしかいないと思ってたけど」
「そうだ、僕はこの世界の歴史を調べようとしてたんだ。なぜあの建物だけ焼失してるんだ? 」
「分からん」
きっぱりと切り捨てるソフィア。思わずずっこける僕。
「でもあたしが小さいときからあれはずっと焼け焦げたままだよ。特に復旧させようって動きはないし……そういえば何でなんだろ? 」
「なるほどね……」
「でも書物が完全に失われた訳ではないよ。ほら、これ」
そう言ったソフィアが差し出したのは表紙が少し焦げているものの、中身は無事な一冊の本。
「まー、子ども向けの簡単なやつだけどね。あんたも小さい頃読んだことあるんじゃない? あたしも魔法を使えるようになるヒントを探して色々読んでたんだけど、役には立たなかったかな」
「覚えがあるね」
この世界の子どもたちがまず読み聞かされるお伽噺。
光神ファリアスと邪神ニュクスの戦いの物語
「ノア、何の話? 」
ぴょこんと顔を覗かせたリオンは無邪気に笑う。
「この世界のお伽噺さ。リオンも読んだことあるんじゃないか? 」
リオンはしばらく自分の記憶を辿っていたようだが 、首を横に振る。
「へえ珍しいね、このお伽噺聞いたことない子どもがいるなんて」
ソフィアが目を細めた。
「まあでも、その子、普通の人間じゃないだろ? 」
「え? 」
リオンは深くフードを被っているし、獣人族であることはバレていないはずなのだが……。
「何のこと? 妹は僕と同じ人間ですよ」
「ふーん、ま、いいけど」
それ以上ソフィアは興味をなくしたのか、特に何も言ってはこなかった。
まずいな、何とかこの空気を変えなければ。
「じゃあ折角だし読んであげるよ」
うん! と元気良く返事をしたリオン。
そして僕はその絵本を読み聞かせ始めたーー。
昔々、この世界はファリアス様によって作られ、一日中太陽が昇っていました
しかしある日、邪神ニュクスがどこからかやってきてこの世界を闇に落としました
ファリアス様は何とかしてニュクスとお話をして、この世界から闇を退けるように頼み込みました
しかし、ファリアス様は光の神、ニュクスは闇の神。まるで反対の二人は仲良くすることは出来ませんでした
ニュクスは光り輝くこの世界が羨ましかったのです
ニュクスは五人の大罪人を率いてこの世界の支配を目論みました
それを対抗するためにファリアス様は勇者と呼ばれる勇敢な青年とその仲間たち共にニュクスに立ち向かい、封印することに成功しました
そうして再び世界に光が戻りましたとさ
「……おしまい」
その大罪人というのが
狂気の魔導師 ジョージ=ロアクリフ
血の天使 エレノア=ハーベスト
狂った護り手 オークレイ=カーチィス
貪欲な盗人 ヴァイス
争いに飢えた狂戦士 ルカリ=クレイヅ
……まあこれは中等部で習うようなレベルなのでリオンにはまだ早いので言わないでおこう。
「どうリオ……」
僕は思わず動きを止めた。静かに話を聞いていたリオンがボタボタと大粒の涙を流していたのだ。
「ご、ごめんリオン。大丈夫? どこか痛かった? 」
「ううん、平気。でも何でだろ……涙が止まらないの」
そうやって咽び泣くリオンの頭を撫でることしか僕には出来なかった。
「汚いけど適当に座って、えっとここら辺に……」
「はぁ……」
促されるままにとりあえず周りの物をどけて座り込む。
「あ、あった! はいこれ、ご馳走ね」
少女が僕にぶん投げて来たのは直方体のブロックのようなもの。おそらく人工的に作られた固形栄養食のようなものだろう。
「ノア……なぁにこれ? 」
リオンが不思議そうな顔でまじまじとブロックを見つめる。
「あたしの主食だよ主食! 変なもんは入ってないから食べてみ」
リオンは不安そうに僕をちらちら見ていたので僕がまず口に含んで見せた。うん、特別美味しいわけではないか食べられない訳ではない。
「不思議な味ね」
僕の真似をして食べてみたリオンは一人首を捻っていた。
「アルカデラの人間はこればっかり食べてるよ、なんせせっかちだからね」
少女はからかうようにケラケラと笑う。
「なるほど……で、僕たちはなぜここに連れてこられたのでしょう……」
よくぞ聞いてくれた、と少女が立ち上がる。
「あたしはソフィア=ロアクリフ。天才魔法使いよ! 」
「て、天才魔法使い……? 」
するとソフィアは自慢気に腕に装着している不思議な機械を見せつけた。
「ふふん、これがあたしが作った人工魔法生成機。これさえあれば魔法が使えない戦士だって魔法を使えるようになるのよ」
良く分からないけど凄そうだ……!
「で、今まではこれが魔法だという証拠が得られなかったんだけど、あんたの持ってるその盾、それが魔法を跳ね返すという効果があるらしいじゃない? そしてさっきあたしの魔法は跳ね返された! つまりこれが生成してるのは魔法ってことが証明出来たのよ」
ペラペラと早口で捲し立てるソフィア。うん、いまいち何を言ってるか分からないが、要は魔法という証明が欲しかったということか……。
「だからそのお祝いに客人を招きたい気分になったってわけ」
分かるような分からないような……。
「……ちょっと変な人だね」
リオンがこそこそと耳打ちする。
「いや、かなり変な人だよ」
「聞こえてるぞ君たち。そーだ、君たちは一体どういう事情であんなところに? 歴史の知識を探るやつなんてあたしぐらいしかいないと思ってたけど」
「そうだ、僕はこの世界の歴史を調べようとしてたんだ。なぜあの建物だけ焼失してるんだ? 」
「分からん」
きっぱりと切り捨てるソフィア。思わずずっこける僕。
「でもあたしが小さいときからあれはずっと焼け焦げたままだよ。特に復旧させようって動きはないし……そういえば何でなんだろ? 」
「なるほどね……」
「でも書物が完全に失われた訳ではないよ。ほら、これ」
そう言ったソフィアが差し出したのは表紙が少し焦げているものの、中身は無事な一冊の本。
「まー、子ども向けの簡単なやつだけどね。あんたも小さい頃読んだことあるんじゃない? あたしも魔法を使えるようになるヒントを探して色々読んでたんだけど、役には立たなかったかな」
「覚えがあるね」
この世界の子どもたちがまず読み聞かされるお伽噺。
光神ファリアスと邪神ニュクスの戦いの物語
「ノア、何の話? 」
ぴょこんと顔を覗かせたリオンは無邪気に笑う。
「この世界のお伽噺さ。リオンも読んだことあるんじゃないか? 」
リオンはしばらく自分の記憶を辿っていたようだが 、首を横に振る。
「へえ珍しいね、このお伽噺聞いたことない子どもがいるなんて」
ソフィアが目を細めた。
「まあでも、その子、普通の人間じゃないだろ? 」
「え? 」
リオンは深くフードを被っているし、獣人族であることはバレていないはずなのだが……。
「何のこと? 妹は僕と同じ人間ですよ」
「ふーん、ま、いいけど」
それ以上ソフィアは興味をなくしたのか、特に何も言ってはこなかった。
まずいな、何とかこの空気を変えなければ。
「じゃあ折角だし読んであげるよ」
うん! と元気良く返事をしたリオン。
そして僕はその絵本を読み聞かせ始めたーー。
昔々、この世界はファリアス様によって作られ、一日中太陽が昇っていました
しかしある日、邪神ニュクスがどこからかやってきてこの世界を闇に落としました
ファリアス様は何とかしてニュクスとお話をして、この世界から闇を退けるように頼み込みました
しかし、ファリアス様は光の神、ニュクスは闇の神。まるで反対の二人は仲良くすることは出来ませんでした
ニュクスは光り輝くこの世界が羨ましかったのです
ニュクスは五人の大罪人を率いてこの世界の支配を目論みました
それを対抗するためにファリアス様は勇者と呼ばれる勇敢な青年とその仲間たち共にニュクスに立ち向かい、封印することに成功しました
そうして再び世界に光が戻りましたとさ
「……おしまい」
その大罪人というのが
狂気の魔導師 ジョージ=ロアクリフ
血の天使 エレノア=ハーベスト
狂った護り手 オークレイ=カーチィス
貪欲な盗人 ヴァイス
争いに飢えた狂戦士 ルカリ=クレイヅ
……まあこれは中等部で習うようなレベルなのでリオンにはまだ早いので言わないでおこう。
「どうリオ……」
僕は思わず動きを止めた。静かに話を聞いていたリオンがボタボタと大粒の涙を流していたのだ。
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