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ようこそアンフェルサーカス団へ
第47話 妹の慟哭
しおりを挟む「ぎゃあああああああああああ」
響き渡る断末魔。
人間のものとは思えないその悲鳴。魔物だからなのか、首だけになってもクロエはしばらく話し続けていた。
「嫌だ……死にたくない……なんで私が……ファリアスさ、……」
そうしてとある家族の運命を狂わせた一人の魔物は、一片の骨も残さずに塵と消えた。
「ファリアス? 」
しかし僕は彼女の最期の言葉に違和感を覚えていた。
魔物とは邪神のしもべ、言わばファリアスとは敵対関係であるはず。
だが今、クロエは確かにファリアス様と言おうとしていたはず。
「一体どういうことだ……? 」
がしゃんと天井が焼け落ちる音がした。まずい、火の手がここまで回っているようだ。一刻も早くここから脱出しなければ。
「ソフィア! リオン! テスカ! 脱出するぞ! 」
うん! 全員の声がハモった。
◇◇◇
何とか外に出た僕たちはすっかり火の手が回っていることに気が付いた。
「どうしようノア……このままじゃ大火災になっちゃうよ」
珍しく気弱な表情をするソフィア。
そんな彼女に僕は大丈夫と声をかける。
増幅された僕の水魔法、もしかしたらこの火災を消し止められるかもしれない。
「頼む!!!! 水神の慈雨!!! 」
途端に僕たちの頭上に真っ黒な雲がかかったかと思うと、瞬く間に大雨が降り注ぐ。
「……凄い」
テスカがあんぐりと口を開けて、雨に打たれていた。
「無茶するわね」
ソフィアはふふっと目を細めて笑った。
「そうだ! ノアさんの魔法でコアを治して……!! 」
「ああ!! まだ間に合うかもしれない」
そうして僕はコアに触れる。
しかしすぐに分かった。いや、分かってしまった。
……驚くほど冷たいコアの体
「お願いします!! 」
「テスカ……」
「何ですか!? 早くお兄ちゃんを……」
「ごめん、コアはもう……」
「謝らないでください!!! 」
叫ぶように声を張るテスカ。
その声は可哀想なぐらい震えていた。
「強化された回復魔法でも、死者を蘇生することは出来ない……ごめんよ、僕には……」
「そんなの!!! 」
分からないじゃないですか……。
と、テスカは大粒の涙をコアの亡骸にボタボタと垂らす。
この世界で死者を蘇生させる魔法は存在しない。
これは子供でも知っている常識だ。
勿論テスカだって分かってはいるのだろう。
しかし、彼女は分かるわけにはいかないのだ。
それに気が付いているであろうリオンとソフィアは顔を伏せて何も言わない。
「私……嫌なことは全部お兄ちゃんに押し付けてきた……。いっぱい無理させちゃった。まだ全然恩返ししてないのに!!! お兄ちゃん!! 起きてよ!! もう私我儘言わないから」
「テスカ……」
無口で恥ずかしがり屋だったテスカが感情を爆発させている。
降り注ぐ雨と彼女の涙が混じり合っていた。
「ノア……」
リオンが声を不意にあげる。
「愛娘への伝言、あれは他の使い方があるの」
「え? 」
「魔力が増幅されるのも確かに効果の一つ。でも、それだけじゃない」
それだけじゃない?
でもなぜリオンがそれを知っている?
言われるがままに鞄から愛娘への伝言を取り出すと、リオンはそれを手に取った。
「多分これを使えるのは一度だけ。今使っても良い? 」
「一度だけ? リオン、一体どういうこと……」
「込められたジョージの全魔力、きっとこれがあればどんな奇跡も起こせる」
返事になっているのかなっていないのか分からないことを言うリオン。
しかしその表情は真剣で、嘘をついているようには見えない。
「どんな奇跡も? 人を生き返らせることも可能なのか? 」
コクリと頷くリオン。
「ノアが望むのなら、どんな奇跡も」
「なら使おう! コアは大事な友人だ。出来ることがあるのにやらないなんておかしい! 」
ノアならそう言ってくれると思った。と笑うリオンはどこか嬉しそうだ。
「でも、どうやって? 」
今まで話を聞いていたソフィアは首をかしげる。
「簡単よ。ノアが強く祈れば良いの」
「い、祈る? それだけ? 」
余りにも簡単すぎて思わず拍子抜ける僕。仮にも死者蘇生をさせるというのにそんな方法で良いのだろうか。
「大丈夫、ノアに、いや皆にきっと奇跡は起こるから」
そうして柔らかな笑みを浮かべるリオンを、僕はどこかで見たことがあるような気がした。
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