チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第30話 男同士の入浴(誰得?)

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「ヨリさんありがとうございます」
 
「別に気にすんな」

 待望の入浴シーンですよ皆さん。……と言っても男同士だが。それにしてもすかっとしたな。あのアホ兄弟のポカーンとした顔。何度思い出してもにやけてしまう。

「……僕、実は魔力欠乏症っていう病気なんです」  

「魔力欠乏症? 」

 聞いたことない病名だ。
 日本ではあり得ない症状なのだし、この世界特有のものなのだろう。

「はい、何もしてなくても徐々に魔力が漏れてしまい、それを補うために体力も持っていかれてしまうんです。そのせいでずっと発熱や発作が起きるんです」

「それは大変だな……治療法は無いのか? 」

 リュイは悲しそうに睫毛を伏せる。

「無くはないと思います。賢者と評される人たちの治癒魔法。これで治るとされています。だけれど、そういう人たちの治療を受けるにはお金が必要です」

「そんなにかかるのか? 」

「はい。だからお姉ちゃんは必死に稼いでくれてるんです。かなり無理して、休日も返上して」

「……」

 俺は何も言えなくなってしまった。弟の治療費を稼ぐためにあれほどしゃかりきに働いていたのか。それならユージーンの誘いを断ったのも納得出来る。恋愛なんてしている暇はないのだろう。

「僕にはあまり時間がないんです。今はなんとか魔力を回復する薬を飲み続けることで耐えてるんですけど、最近は減るスピードが早いんです」

 悲しそうに笑うリュイは子どもの表情ではなかった。

「お姉ちゃんを一人にしちゃうのは悲しいけど。負担が減らせるなら僕はそれで……」

「そんなこと言うなよ。お姉ちゃんは君のために頑張ってるんだろ? 最後まで足掻こうぜ」

 俺の見た予知が正しければ確かにリュイは死ぬだろう。何とかして彼を救うことは出来ないのだろうか?

「ありがとうヨリさん。ヨリさんは変わった人ですね」

 バシャッとお湯を俺にかけてリュイは笑う。

「あっつ! 」

「へへ! 僕、ヨリさんみたいなお兄ちゃんが欲しかったんです」

「そりゃどうも! 」

 お湯をかけ返す俺。
 そうして俺たちはしばらく、こうしてお湯を掛け合って笑っていた。
 何だか子どもの頃に戻ったような気がして、俺はしばらく熱中してしまった。

◇◇◇

 風呂上がりと言えばやはりコーヒー牛乳だろう。この文化はこの世界でも同じらしい。
 さっぱりした体に、コーヒー牛乳の甘さが染み渡る。

「美味しいです! とても」

「おう」

 リュイにも奢ってやると、彼も嬉しそうに飲み始めた。

「リュイ! 」

 するとこちらが上がるのを待っていたのだろう、ミシェルと、彼女と手を繋いだシエルがパタパタと近付いてきた。

「ヨリ! 」

「おっと! 」

 全力で抱き付いてくるシエルを何とか受け止める。
 危うくコーヒー牛乳を溢しそうになり、ひやりとした。

「すっごく楽しかったよ! 」

「そりゃ良かった」

 上気した頬を赤らめ、興奮ぎみに話すシエル。
 どうやらミシェルは面倒を見てくれていたようだ。

「ありがとう、ミシェルさん」

「いや、こちらこそ」

 ミシェルは深々とお辞儀をした。
 しかし直ぐに顔を曇らせると、声のボリュームを下げてこう続けた。

「ユージーンという男が来たと小耳に挟んだのだが……大丈夫でしたか? 」

「ああ、来ましたよ」

「お姉ちゃん聞いてよ! あの意地悪セルネも来てたんだけど、ヨリさんがかっこよく撃退してくれたんだよ!」

 鼻息荒く報告するリュイ。まあ撃退と言っても、ただ金の力で押しきっただけだのだが……。

「撃退……!? そ、そんなことが出来るとは。しかし申し訳ないことをした。あの男はしつこくてな、私も手を焼いていたんです」

「随分女々しい男でしたね」

 そう答えるとミシェルはくすりと少しだけ笑った。

「そうね、女々しい男です」

 では、と彼女はリュイの手を取ると、もう一度深々と頭を下げた。

「今日はありがとう、感謝します。しかし仕事に関しては手を緩めるつもりはないので」

 ……なるほど。俺に対する調査を辞めるつもりはないらしい。

「こちらこそ」

 だが少しだけ打ち解けられたのか、先ほどまでの敵意に満ちた視線はもうなかった。それどころか、少し迷っているような、そんな色が瞳に滲んでいた。

「なあミシェルさん。話があるんだが」

「はい? 」

「いや、あのシエル、先行っててくれ」

「分かったー」

 するとミシェルも何かを察したのか、リュイにシエルを見ておくように言いくるめていた。
 リュイもうん! と頷くと、二人揃って出口の方へと走っていった。

 そして残されたのは俺たち二人。
 話を切り出したのはミシェルの方だった。

「リュイがいると話しにくいんですよね? 何ですか? 」

 流石に機転が聞く。

「その……なんだ。取引をしないか? 」

「取引? 」

 ミシェルの眉がぴくりと動いた。

「リュイから全て聞いたよ。病のこと、君がなぜ働いているかということも」

「……そう」

 何と言えば良いのだろう、上手い言い回しが思い付かない。

「だからその……リュイの治療費を全て出してやる。だから俺たちのことを詮索するのはやめてくれ」

 ミシェルは驚いたように目を丸くすると、直ぐに顔を真っ赤にした。

「言いたいことはそれだけ? 」

「え? 」

「……最低です。リュイのことを盾にして保身を図ろうなんて」

「そんなつもりじゃない。ただお互いにとって悪い話じゃないだろう」

 ミシェルはぎっと俺を睨み付けると、最後にこう言い残した。

「貴方と話すことなんてもうありません。馬鹿にしないで!!! 」

 そしてリュイの手を引くと、足早にその場を去ってしまった。
 シエルの「ヨリ、どうしたの? 」という声が酷く遠くで聞こえた。

「いやなんでもない」

 そう答えた俺だったが、多分少し震えていたと思う。
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