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悪役令嬢、絶望する

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 あの後一晩悩み続け、次に私が目を覚ましたときにはとっくに次の日の朝だった。いつの間にか私は、眠りに落ちていたらしい。

 なんと間の悪いことに、今日からお父様は遠くでお仕事らしく早朝から出て行ってしまった。

 どうしよう……このままじゃ私のあの作戦の話が出来ないではないか。

 うーん、しかもこの作戦本当に上手くいくのだろうか? 正直、前世はごく普通の日本人だった私に、貴族のしきたりなどは分からない。逆に変なことを言って墓穴掘りたくない……。

 誰か詳しい人に相談したいところだけどなんとびっくり、このイリアというキャラクター、友達というものがまったくいないのである。

 それもそうだろう、王子の妻としての花嫁修業に勤しみ、社交性もほとんどない箱入り娘だったのだ。 
 
 で、昨日のドレス事件で召し使いたちからの信頼は急降下中……。 
 
 エミリアに相談するわけにもいかないし……。
  
 誰か相談にのってくれる人がいればなぁとぶつぶつ呟きながら廊下を歩いていると、屋敷から少し離れた森、その近くで男女のキャッキャッとした会話が不意に聞こえてきた。

 本能的に草陰に身を潜める私。隠れろ、と私の中の何かがそう言っている。

 そして草陰から覗くと、そこにはエドワードとエミリアの姿があった。

「分かってくれ、エミリア。僕が愛しているのは君だけだ」

「……え、エドワード? 」

 ぎゅっとエミリアを抱き締めるエドワード。
 あ、このイベントには見覚えがある。感極まったエドワードがエミリアに抱き付き、告白してしまうのだ。  

「この身分を捨てて君と逃げても良い。君と結ばれるのなら僕は悪魔にだってなってやる」

「そんないけません、あなたは王子様。人の上に立つのですよ」

「構わない。もう二度と君を離さない」

 エドワードは更に強くエミリアを抱き締める。
 一度見たイベントとは言え、端から眺めてるこっちが恥ずかしくなるようなイベントだ。
 プレイヤーだったときはエドワードカッコいい! と思っていたものだが、冷静になってみると中々キツいものがある。
 よくもまあそんな甘ったるい台詞がポンポンと出てくるな。
 語彙力の高さに感心する。

「……私、罪を犯したのです。エドワード様に愛される権利なんて私には、ない」 

「罪? 君を裁く奴なんていないさ」

 ふるふると力なく首を振るエミリア。

「私のドレスをお姉様が破ったって……嘘をついてしまったんです」

 ガーンと頭をぶん殴られたような気がした。 

 今エミリア何て言った?
 私の聞き間違え?

 そんな私を余所に、エミリアは更に畳み掛ける。

「本当は自分で破ったんです。でも……私、エドワードのお嫁さんになれるお姉様につい嫉妬して……とんでもないことを」

 こんな私、貴方の隣にいる資格はない!

 と、エドワードの胸の中で泣き叫ぶエミリア。

 いや、泣きたいのはこっちだよエミリアちゃん……。
 つまりあれは彼女の自作自演だったという訳か。私は間抜けにも彼女の仕掛けた罠に引っ掛かってしまったってことね。

「僕は君を許す……どんな罰も君となら一緒に受けよう、どんなに周りから非難されようと、僕は君へ愛を捧ごう」

 いや、私は許してねーよ!!
というかこれもう浮気じゃん……。  

「エドワードありがとう……」

 きゅっと彼に抱き付くエミリア。
 そして手を繋いだ二人はいつのまにかどこかに姿を消した。

 彼らが去ったのを確認した私はモソモソと草影から這い出す。

「何してんのかな私……」

 出来たばかりの妹には嵌められて婚約者には浮気されて……。
 いくら悪役令嬢とはいえここまでされる理由はあるのだろうか。

 頭を抱えて体育座りをする私。ドレスが汚れることなんて気にしてる場合ではない。

 どうやら神様というのはいじわるで、どうしても私には妹をいじめ、婚約者に裏切られる悪役令嬢であって欲しいらしい。

「冗談じゃないわよ……」

 そんな運命って分かっていたなら、前世の記憶なんて思い出さない方が良かったのかもしれない。

 あ、何か泣けてきた。
 それならもう今死んでしまおうか、そしたらまた転生して、今度こそ幸せになれるかもしれないし……。

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