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悪役令嬢、疑いをかけられる
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皆が食事を取っているとき私は一人ぼんやりしていた。
そろそろあのイベントが来るだろう。そう、エミリア毒殺未遂事件だ。
「きゃあああああ!!!! 」
よしタイミングぴったり。
つんざくような女の悲鳴が響き渡った。
メイドが慌てて私を呼びに戻ってくる。
「エミリア様が……エミリア様が……!! 」
「エミリアが!? 一体どうしたの!? 」
私は彼女に連れられて大広間に入る。そしてそこではしくしくと泣くエミリアとそれを慰めるお父様。
「お父様、一体何が起きたのですか……? 」
「毒だ……誰かがエミリアの食事に毒を入れて殺そうとしたんだ」
「そんな……一体誰がそんなこと……」
皆の視線はまずコックに向けられる。しかし彼らは必死に弁解を始める。
自分たちではない。しかし誰か怪しい人影を見たと。
「人影だと……? だがあの時間皆がここに集まっていたはず……」
「いや、イリア様だけはいらっしゃりませんでしたわ」
余計なことを言うなメイドA!
「確かに……そうだわ。イリア様はエミリア様が食事を分けてくれると言っていたのにそれを断っていたわよね」
「え!? どうしてそうなるんですか。私はただダイエットの為に断っただけ、しかもこんなドレスを着せられたまま厨房になんか行けませんわ! 」
「そ……です皆さん」
ゴホゴホとエミリアが咳をしながら声をあげた。
「お姉様が……そんなことをするはず……ありません。誰か……外部の人が……」
「エミリア無理に喋るな!! 誰か医者を!! 」
「はい! 」
バタバタとメイドたちが散り、それぞれの仕事をこなし始める。残された私とお父様とエミリア。
ここではヒステリックな女を演じなければ。
「お父様、本当に私ではありません!! 信じてください!! 」
「……調べれば分かることだ。今はもう準備どころではない、そこで座って待っていなさい」
「……分かりました」
私は従順なふりをして、父親の言うことに従った。
◇◇◇
屋敷中の捜索が行われ、たくさんの人が出入りした。
そして日が沈む頃、私はようやく自分の部屋に戻ることが許された。
ふむ、あの毒ビンはなくなっている。誰かが回収していったのだろう。
これで私が犯人だと言われる証拠は十分に揃った。
「……という訳で毒殺事件、起きたわよ」
『ふん、筋書き通りだな。でも良かったのか? 毒の入ったビンを回収してエミリアの部屋にでも置くことだって出来たぞ』
「良いのよ、相手を調子に乗らせてから叩き落とした方が面白いじゃない」
『性格悪い女だな』
「誰かさんに影響されたのよ」
『嫌いじゃない。今が一番辛いだろうが、頑張れよ』
「ええ、ありがと。じゃあね」
トントンと誰かが扉をノックする。
「イリア、話がある。今すぐ大広間に来なさい」
はーいはい。私は通信機をベッドの下に片付けると、すぐに大広間に降りた。
大広間に入って目に飛び込んできたのは不信感を顕にした目で私を見つめる屋敷のものたち。エミリアだけが怯えたような目で震えていた。
私は息を吸い込んだ。大丈夫、これから逆転するんだ。今は我慢するしかない。
「……皆様、どうしたんですか? 犯人は、見つかりましたか……? 」
「イリア、白々しい真似はよせ。これは何だ」
お父様が手にしているのは毒の入ったビン。
ちゃぷんと紫色の液体がビンの中で揺れる。
よく見慣れたものだ。
「何ですかそれ……? 」
「とぼけるな!! お前の部屋からこれが見つかった。専門家によるとこれはドクガエルの体液というじゃないか!! 」
「そんなビン知りません!! 」
「もう少し量が多ければエミリアは死んでいたんだぞ! そんなに妹が憎いのか!! 」
「お父様話を聞いて下さい!! 私ではありません……!! 」
バチンと鋭い音が響き渡った。
お父様の平手が私に炸裂した。
衝撃で倒れ込む私。
「お前はクリミア家の恥だ!! 」
「私では……ありません……」
もうやめて下さい!! とエミリアが私とお父様の間に立ち塞がる。
「お父様、もう良いのです。お姉様はきっとマリッジブルーでこのようなことを……」
「エミリア、そんなやつを庇うのか!? お前の命を狙ったんだぞ! 」
「もう家族同士で争うのはやめましょう……お願いです」
メソメソと泣くエミリア。
そんな彼女を私は白けたような目で見ていた。
手のひらからわずかに覗く彼女の顔には一粒の涙さえ流れていない。
嘘泣きとはやりおるな、と私は内心思った。
「エミリア……」
お父様がエミリアを強く抱き締めた。
エミリアは嘘の嗚咽を漏らし続ける。
「私はお姉様が大好きなんです……このことは水に流して……式をお祝いしましょう」
「分かったよエミリア……。お前は本当に母親に似ている。太陽のように皆を優しく照す聖母のような……」
人を嵌める女のどこが聖母なんだかね。お父様たちの目は節穴なのだろうか。
良いわよ。見てなさい、1/1を。このドン底の状況をひっくり返してやるんだから。
そろそろあのイベントが来るだろう。そう、エミリア毒殺未遂事件だ。
「きゃあああああ!!!! 」
よしタイミングぴったり。
つんざくような女の悲鳴が響き渡った。
メイドが慌てて私を呼びに戻ってくる。
「エミリア様が……エミリア様が……!! 」
「エミリアが!? 一体どうしたの!? 」
私は彼女に連れられて大広間に入る。そしてそこではしくしくと泣くエミリアとそれを慰めるお父様。
「お父様、一体何が起きたのですか……? 」
「毒だ……誰かがエミリアの食事に毒を入れて殺そうとしたんだ」
「そんな……一体誰がそんなこと……」
皆の視線はまずコックに向けられる。しかし彼らは必死に弁解を始める。
自分たちではない。しかし誰か怪しい人影を見たと。
「人影だと……? だがあの時間皆がここに集まっていたはず……」
「いや、イリア様だけはいらっしゃりませんでしたわ」
余計なことを言うなメイドA!
「確かに……そうだわ。イリア様はエミリア様が食事を分けてくれると言っていたのにそれを断っていたわよね」
「え!? どうしてそうなるんですか。私はただダイエットの為に断っただけ、しかもこんなドレスを着せられたまま厨房になんか行けませんわ! 」
「そ……です皆さん」
ゴホゴホとエミリアが咳をしながら声をあげた。
「お姉様が……そんなことをするはず……ありません。誰か……外部の人が……」
「エミリア無理に喋るな!! 誰か医者を!! 」
「はい! 」
バタバタとメイドたちが散り、それぞれの仕事をこなし始める。残された私とお父様とエミリア。
ここではヒステリックな女を演じなければ。
「お父様、本当に私ではありません!! 信じてください!! 」
「……調べれば分かることだ。今はもう準備どころではない、そこで座って待っていなさい」
「……分かりました」
私は従順なふりをして、父親の言うことに従った。
◇◇◇
屋敷中の捜索が行われ、たくさんの人が出入りした。
そして日が沈む頃、私はようやく自分の部屋に戻ることが許された。
ふむ、あの毒ビンはなくなっている。誰かが回収していったのだろう。
これで私が犯人だと言われる証拠は十分に揃った。
「……という訳で毒殺事件、起きたわよ」
『ふん、筋書き通りだな。でも良かったのか? 毒の入ったビンを回収してエミリアの部屋にでも置くことだって出来たぞ』
「良いのよ、相手を調子に乗らせてから叩き落とした方が面白いじゃない」
『性格悪い女だな』
「誰かさんに影響されたのよ」
『嫌いじゃない。今が一番辛いだろうが、頑張れよ』
「ええ、ありがと。じゃあね」
トントンと誰かが扉をノックする。
「イリア、話がある。今すぐ大広間に来なさい」
はーいはい。私は通信機をベッドの下に片付けると、すぐに大広間に降りた。
大広間に入って目に飛び込んできたのは不信感を顕にした目で私を見つめる屋敷のものたち。エミリアだけが怯えたような目で震えていた。
私は息を吸い込んだ。大丈夫、これから逆転するんだ。今は我慢するしかない。
「……皆様、どうしたんですか? 犯人は、見つかりましたか……? 」
「イリア、白々しい真似はよせ。これは何だ」
お父様が手にしているのは毒の入ったビン。
ちゃぷんと紫色の液体がビンの中で揺れる。
よく見慣れたものだ。
「何ですかそれ……? 」
「とぼけるな!! お前の部屋からこれが見つかった。専門家によるとこれはドクガエルの体液というじゃないか!! 」
「そんなビン知りません!! 」
「もう少し量が多ければエミリアは死んでいたんだぞ! そんなに妹が憎いのか!! 」
「お父様話を聞いて下さい!! 私ではありません……!! 」
バチンと鋭い音が響き渡った。
お父様の平手が私に炸裂した。
衝撃で倒れ込む私。
「お前はクリミア家の恥だ!! 」
「私では……ありません……」
もうやめて下さい!! とエミリアが私とお父様の間に立ち塞がる。
「お父様、もう良いのです。お姉様はきっとマリッジブルーでこのようなことを……」
「エミリア、そんなやつを庇うのか!? お前の命を狙ったんだぞ! 」
「もう家族同士で争うのはやめましょう……お願いです」
メソメソと泣くエミリア。
そんな彼女を私は白けたような目で見ていた。
手のひらからわずかに覗く彼女の顔には一粒の涙さえ流れていない。
嘘泣きとはやりおるな、と私は内心思った。
「エミリア……」
お父様がエミリアを強く抱き締めた。
エミリアは嘘の嗚咽を漏らし続ける。
「私はお姉様が大好きなんです……このことは水に流して……式をお祝いしましょう」
「分かったよエミリア……。お前は本当に母親に似ている。太陽のように皆を優しく照す聖母のような……」
人を嵌める女のどこが聖母なんだかね。お父様たちの目は節穴なのだろうか。
良いわよ。見てなさい、1/1を。このドン底の状況をひっくり返してやるんだから。
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