いまそこにある媚肉

島村春穂

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口でするからソコだけはどうか許して、と言ってしまい……

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 弾んだ吐息が整え切らないうちに、匠から、正面を振り向かされる。息子の顔に、不安そうに貴子が一瞥を送る。


 仏頂面の匠を恐れてか、下を向かざる得ない貴子の姿があった。が、しかし、とても正視などできたものではない。貴子の視線は、臍のあたりまででせいいっぱであった。


 そこは性毛が渦巻いていて、臍の周りにまで繁茂して生えていた。貴子は、年の功からか、薄々匠のことが分かってきた。


 この性毛の生え方といい、うしろから抱き付くあの性癖といい、それに自己愛が強いこの偏愛ぶりなところといい、どこか陰険っぽいところがある。しかも、無類の女好きで、むっつりだ。


 もしかしたら、この少年は、貴子が思う以上に、とんでもないモンスターなのかもしれない。この若さで大人の女など覚えたなら、あとは怖いものなしである。しかも、その一端に、継母という関係でありながら、自分が加担してしまっているのだ。貴子の呵責は、ますます強いものとなっていった。


 仁王立ちしたままの匠の足もとに、片膝立ちで貴子が屈した。なにをさせられるのかはもう分かっている。


 熱い吐息と、おおきく息を吸うのを交互にしながら、哀願めいて匠を見上げた。匠はなにも言ってこない。獣じみたうめき声をつぶさにあげて、やにわに貴子の頭にもろ手を掛けた。


「あっ、ああっ…ッ……」
 貴子は恐れをなして、これから口淫させられる匠のお道具を、初めて正視することになった。


 その勃起器官は異形であった。ストローのような紫紅色の血管を肉悍に浮きただせ、先端部に向かうほど上反りが太い。どこか、カブトムシの幼虫を思い起こさせた。匠が、仮性包茎だったからだ。


 包皮のさきが輪重の皺でたわんでいて、その少し下で肉冠の鰓を浮きぼらせていた。血管の色とよく似た紫紅色の肉頭さきから、女性器を縮小したかのようなおしっこの穴が、少しだけ剥けた包皮から覗き見えた。


 仮性包茎だったにせよ、貴子は可愛らしいとは、とてもじゃないが思えそうもなかった。一郎の暗紫色の肉悍に較べ、匠の紫紅色の肉悍というのは、まるで毒素でも持っていそうに不気味に思えたらしい。


 濃厚な童貞ホルモン臭に目をしばたかせながら、貴子はどうしてよいか分からず、恐る恐る匠を見上げるのであった。


 仁王立ちの匠は、表情ひとつ変えず、貴子に向けて目を伏せていた。仮性包茎を貴子に見られてもまるで気後れがないのだ。そのことのほうが、寧ろ、貴子を不安にさせた。これがもし、一皮剥けて自信などつけたのなら、これからさき一体どうなってしまうのか。



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