いまそこにある媚肉

島村春穂

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口でするからソコだけはどうか許して、と言ってしまい……

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 肉冠の頭さきをベロで舐めてみた。お鈴口から、我慢汁が滲みでている。包皮の粘膜を捲り返そうと、チロチロとベロさきを這わせてみた。


「ああっ…っ……」
 やはり固い。過保護なほどにすぼまりきっている。一旦、肉冠を口から離した。と、蚕の絹糸を思わせる細い糸が引きずった。


 包皮から僅かに覗いた冠頭を改めて見て、貴子は額まで真っ赤にさして羞じらった。こんなもの。荒っぽい施術で立ち向かわなければ剥けやしない、とそう思ったからであろう。匠が今夜このときを、どのくらい計っていたのか知る由もないが、すべてを悟りきったかのようにまったく動じなかった。そして、貴子が哀訴めいて見上げたとしても、なに一つ言ってこなかった。


 ただ、仏頂面のまま伏せた冷たい視線だけは、一点に貴子に向けられている。


 無言に耐え切れなくなったのは貴子のほうであった。無理もなかった。義理の息子の足もとで、裸で片膝立ちをさせられているのである。


 窺い立てるようにして、肉冠と、匠の顔とのあいだで瞬きをおおくしながら、貴子から、言葉にならないどもり声があがる。匠のほうは眉毛ひとつ動かさなかった。


 一方、貴子はようやく覚悟を決めたように、瞼をぎゅうっと閉じて、包皮ごしの肉頭をジュルっと咥えこみ、肉悍深くまで一気に呑み込んでいった。ムッと引き寄せられるような濃厚なホルモン臭が鼻をつく。躰を前へのめらせ、匠の膝に肉房を押し付け、お尻に腕をまわして絡み付いた。


 さきほどよりも慾棒は固く充血し、肉冠の嵩を増していた。さきでたわめていた包皮の輪重が伸びあがっていて、舌触りがやや薄く感ぜられた。


 肉悍に手淫を加えながら、時々、親指と人差し指に力を込め、皮をずり下げてみる。


 仏頂面のまま表情こそ崩さなかった匠だが、おそらく、痛いのであろう。膝がぷるぷる振るえていた。振るえるそのたびに、口のなかで肉悍がビクン、ビクンと力よく跳ね上がった。嫌というほど、その肉悍から隆々と脈動が伝わってくる。いまシゴいている手の平もそうだし、口のなかで雄渾な波動が口腔粘膜を滾らせてくるのだ。


「うぅ…っ…うぅ…っ……」
 肉頭に舌を絡ませながら、貴子が悶えた。匠が、痛みを覚えながら、明らかに剥かせることを楽しんでいることが伝わってくるからだ。


 それでも貴子は、糸のような声をあげて、深々と肉悍を呑み込んでいった。ちぢれ毛が、鼻さきに数えきれないほど刺さってくる。しかし、貴子はもっと、もっとと咥え込んでいった。股間に繁茂したちぢれ毛に、この鼻が埋もれるまで。


 咽かえるような青臭いホルモン臭に、目をぎゅうっと瞑った。首筋をひき攣らせながら、被虐的な興奮を覚えるようにして、腰から上体にかけて躰がビクビク跳ねた。


 童貞の癖をして、匠は、生意気に腰を突き出してきて、貴子をさらに苦しめた。よこしまな肉柱は、口のなかで益々迎え角をきつくした。この跳ね上がる肉悍を抑え込むために、鼻の下を伸ばすほど唇をすぼめなければならなかったし、頬までがボコッとへこむ。呼吸が荒くなればそれだけ、肉悍を吸引する力もこもっていった。


 さらに追い打ちをかけるようにして、匠のもろ手が、貴子の頭にかけられた。そのとたん、弱みを握られたように、甘く鼻を鳴らす貴子の姿があった。


「あぁん……うぅ…っ…あんっ…うぅ…っ…うぅ…っ……」
 ぬめりのある光を、黒目がちな瞳に燈して、どこか蠱惑的な口奉になってきた。口のなかでは、ベロを筆のようにして使い、包皮の粘膜を突きあげ、捲り返そうと蠢動していた。


 包皮は、肉冠のもっとも張り出したところ、肉鰓が隆起しているところまで剥けかかってきていた。もう少しだ! ここまでくれば! どのような威容が踊りでるのか! 紅潮した美しい頬には、はにかみの微笑さえも浮かんでいた。


 ベロがひき攣りそうなほど突き立てた。そして、バチン! とでもいう音が聞こえそうなくらい、勢いよく包皮が翻転して、肉鰓の溝に輪重の皮がきつそうに引っ掛かった。



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