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魔術師の行方

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ザームエル「ルーカス、あんたたちはこれからどこに行くつもりなんだ?たとえカイゼルを見つけたとしても勝てる見込みはねぇぞ」そういうとさっきルーカスから受け取ったチーズを食べはじめた。

「そうだなぁたしかに勝てる見込みはないな。しかし、やられっぱなしというわけにもいかないだろ?ずっとカイゼルの奴は街や村を転々としながら悪さを続けているんだ。どこかで痛い目に遭わせないとな。それに王が兵士を派遣しはじめている。馬に乗った兵士がカイゼルの居場所を突き止め、そのまま城に帰還して報告するはずだ」そう言うとルーカスは赤ワインを一口飲んだ。

ザームエル「あんたも兵士か何かなのか?」「ああ、オレはメアベルクの街のギルド隊長だ。1ヵ月以上ねずみ駆除に追われ旅人を名乗るカイゼルに赤っ恥をかかされた間抜けさ」とルーカスは自分のことを卑下ひげした。

「ねずみは何匹捕まえても次から次に出てくる。流行り病にならなかっただけ良いほうだ。オレの村はこんなんになっちまったがいずれまたここに住む人が現れると信じて家屋を少しずつ直していくつもりだ。魔術師と戦っても勝ち目はねぇ。それにあんなヤツはきっと今頃は遥か彼方かなたに逃げているさ。この村が破壊されたのは1年前だ。メアベルクにヤツが現れたのはつい最近になってからだろ?恐らくオールドメアには居ないんじゃないか?そんなすぐに見つかる場所には留まらないだろうよ」

「まぁそうだな。オールドメアにはカイゼルの奴はいないかもしれない。王が派遣した兵士は既にあの街に到着している頃だろう。オレたちは一旦引き返して策を練らねばなるまい」

朝日が昇りベルンハルトとカスパルが起きるとルーカスがこの村であった出来事を話した。ふたりは衝撃を受け、絶句した。「まさか・・・そんなことが・・・」ベルンハルトが狼狽うろたえる。自分たちが知る世界を遥かに越えた存在のように感じた。人智の及ばない存在に立ち向かうことなど考えたこともなかった。ねずみの大群にやったように人々を沼地に誘導するなど考えただけでも寒気がする。それがメアベルクの街で起きなかったのはよかったが馴染なじみのある村が酷い目に遭って人がいなくなったのはとても悲しくベルンハルトの顔は悲壮感で溢れた。カスパルがベルンハルトの肩を叩き「さぁ帰ろう」とひと言だけしゃべって馬にまたがった。ルーカスが「さぁいくぞ」と勇ましく声をあげた。

3人はザームエルに見送られながらヴィボの村をあとにした。またオルドバに立ち寄り、都市参事会のメンバーと合流してヴィボの村であった出来事を伝え、皆がその得体の知れないカイゼルの術におそおののいた。

「なんとも異様な・・・ねずみも人も操るとは神の冒涜ぼうとくに等しい」神父のアシェルがそういうとギルド隊長のライアンが両手を組んで目を瞑った。この街の識者ジョセフが「催眠だろうか?」と言って席から立ち上がり後ろの本棚のほうへ歩いていった。彼は何かが気になり書物を探し始めたようだ。

「催眠?なんだそれは。それがねずみや人を操る術のことか?」ルーカスは疑心暗鬼になって心のくちを探すように周りを見渡した。そこに医師のネイサンがジョセフのフォローを入れる「彼はこの街の頭脳なんだ。我々が知らないことをたくさん知っている。きっと答えを見つけてくれるよ」ネイサンのジョセフに対する信頼は厚いようだ。

メアベルクにいる識者フェンナーのような存在がこの街のジョセフなんだとルーカスは理解した。それぞれ都市参事会は街の運営方針を王から任されているがお互いに会うことはほとんどない。秩序が保たれた国では王政に対する内乱は起きないのだ。もしお互いに情報交換するようなことが起きればそれはきっとカイゼルのような特異な存在が現れたときだろう。

都市参事会は昼過ぎまで話し合いが続きジョセフが書物を手に取り催眠について語る。領主のセバスチャンは驚き「なんとそのようなことが本当にできるのか?にわかに信じ難いが・・・」と言葉をにごした。ジョセフは続ける「催眠は実在します。我々もまたそれなしでは社会で生きられない存在なのです。他の動物も同じく」と言ったがそこにいた者たちにその意味を理解できる者はいなかった。

ルーカスたちはジョセフから催眠に関する書物を受け取り都市参事会が終わってメアベルクに戻ることにした。ジョセフから受け取った書物をフェンナーに渡しルーカスたちは一旦それぞれの家に帰宅した。ベルンハルトが無事だったので妻のアンネマリーはホッとした表情を浮かべ「夕食を作るからあなたはゆっくり休んで。ほんとに無茶するんだから」と健気けなげな振る舞いを見せた。

それから数日が過ぎて他の国にカイゼルが現れたという話があり、瞬く間にこの国一帯に噂が広がった。街や村でその話で持ち切りになった。

この領土を統治する王・ヨハネは兵を派遣してカイゼルがいるという国へすぐさま兵を向かわせた。
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