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契約書に咲く黒い薔薇
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SSBR地下1階、イシドール・ラチエ博士の叫び声がする「やめろ!何をするんだ!」SERAPH-07の機体後部にある可動蓋が開き、Small SERAPHがそこから飛び降りた。Small SERAPHの背中にはラチエ博士がロープで固縛されている。そのままSmall SERAPHは『生態実験室』へ入っていく。ドミンゴ博士「そこでストップだ。一旦、止まって」機械の電源を立ち上げ、準備を進めている。「はい、台に上がっていいよ」円柱形の台にSmall SERAPHが博士を背負ったまま上がり、ドミンゴ博士の合図を待った。「よし、スキャンするよ」Small SERAPHが立っている場所を中心にして設備の機械がグルっと一回転した。
ドミンゴ博士がモニターで確認作業を取っている。「いいね、身体のスキャンはできたよ。次は脳のスキャンだね。博士にこの赤いNeon Dustを飲ませてあげて」Small SERAPHと博士を結んでいたロープを外して、博士をベッドに括りつけた。ジタバタする博士を押さえつけ白衣を着た女性の助手のふたりが無理やり博士の口の中へ赤いNeon Dustを放り込む。すぐさまコップの水を飲ませて身体の中へと流し込んだ。
ラチエ博士の瞳孔が開き、ナノテクノロジーのAIが博士の身体の奥深くへ浸み込んでいく。パソコンに入った専用ソフトが動作を始めた。『イシドール・ラチエ』名前と項目が瞬時に表示され、『生年月日』『出身地』『学校名』『得意な思考パターン』『趣味』『女性の好み』などが細分化されて情報がまとめられていく。まるでパズルのピースがハマッていくようにどんどんイシドール・ラチエという人物の情報がソフトの中へ蓄積していくのだった。1時間ほどでラチエ博士の脳の情報はすべてSSBRのパソコンに保存された。
ラチエ博士の脳とナノテクノロジーのAIが融合し、博士は激しい頭痛に見舞われた。「頭が・・・割れるように痛い」博士は混ざりモノが入ったNeon Dustを飲まされたということがどういうことか知っていた。それもSSBRが独自に研究開発した赤いカプセルなのだ。きっとろくでもない機能を備えているに違いないと博士は内心、そう思っていた。
実際、ラチエ博士の勘は当たっていたのだった。ここは軍事産業メーカーの極秘の研究所なのだ。世間一般の研究所とは一味違って非人道的な研究が当たり前とされている。とくに裏切り者やスパイ、ライバル企業の人間、その関係者となるとその人物のすべてを研究対象にしてしまうような場所である。
パストル・ドミンゴ博士が両手に電子機器のグローブを取り付けた。身体には仮想現実で使われるような体感スーツを装着している。「よし、始めようか。ロープを外していいよ」ドミンゴ博士の指示に従って助手のふたりがラチエ博士を固縛していたロープを解いた。ラチエ博士はベッドからゆっくりと起き上がり、床に足をつけ、立ち上がって逃げようとしている。が、しかし、ドミンゴ博士が突然、床にパンチを繰り出すとラチエ博士もドミンゴ博士とまったく同じ姿勢で床にパンチを繰り出した。ゴツンという鈍い音と共にラチエ博士の拳が床に強く当たった。
「イタタタッ!」ラチエ博士が痛がるのを他所に何度も拳を床に打ち付けるモーションを続けるドミンゴ博士、そして、その度にラチエ博士は床を拳で激しく叩いた。「痛い!やめてくれ!わかった。なんでもする。言うことを聞こう」ラチエ博士は堪りかねてドミンゴ博士に許しの言葉を叫んだ。
ドミンゴ博士は手元のスイッチをオフにして「じゃあ契約書にサインしてくれる?」とラチエ博士に契約書を手渡した。これはどこかで見た光景である。そう、ケネス・ブルックがNEXA MILITECHの幹部だったカジョ・レオンとエロディ・シャリエールに渡した契約書と同じものである。そして、この流れからするとカジョ・レオンとエロディ・シャリエールがやったことと同じ道を歩むことになるのだ。3時間後、イシドール・ラチエ博士の胸元に黒い薔薇のタトゥと『SSBR』の文字が刻まれたのはいうまでもない。
Small SERAPHに刺された傷を治すためにドミンゴ博士の助手のふたりに飲まされた液体は得体が知れなかったが、その液体の効力で流血は驚くほどピタリと止まった。刺された傷口もみるみると閉じていく。
人体操作、傷口の回復、脳のスキャン、これが本当に現実世界かと思うほど軍事産業メーカーが持つテクノロジーは進化していた。どれも新しい産業として成り立つほどの技術を持っていたが政府には邪道だと認定されていた。恐らく政府の判断は未来で起きることから逆算して考えるので、それを一般的な産業にするとあまり良くない未来が待っているのだろう。
イスラエルの戦争で活躍したミリタリードローンは1980年代に存在していたとされる。しかし、一般公開されたのはそれから20年後の2000年代に入ってからである。市販が一般的となったのはさらに10年後の2010年からとなっている。軍事開発、研究されたものを迂闊に一般公開するとその情報と技術を持っていない国々が危険に晒されるので極秘扱いされることが多い。期間は非常に長かった。SSBRが持つ技術も例え新しい産業が切り拓けるからという理由で政府と協議しても「今はまだ早い」と言われるのがオチである。
政府がその極秘情報を所持していると後々、マスコミに騒がれる危険性があるから軍事産業メーカーの申し出を門前払いすることも少なくない。これがネックになって軍事産業メーカーは世界大戦が終わっても事業の方向転換をすることが極めて困難だった。倒産して新しい会社を立ち上げ、まったく違う形で成功した元・軍事産業メーカーも存在している。
生き残った軍事産業メーカーはブローカーを通じて資産家に情報だけを売っていることがあるほどだ。あの手、この手を使わないと生き残れなかった。それも世界大戦の終結後に起きた時代の転換点の悲劇である。
SSBRに寝返ったイシドール・ラチエ博士に寝室があてがわれ、ラチエ博士はシャワーを浴びながら胸元に刻まれた黒い薔薇のタトゥをまじまじと見つめていた。これからどういう扱いを受けるかわからない恐怖と赤いNeon Dustを摂取したことで脳のデータがパソコンに取り込まれ、すべての行動が監視されているような絶望感に苛まれていた。
ドミンゴ博士がモニターで確認作業を取っている。「いいね、身体のスキャンはできたよ。次は脳のスキャンだね。博士にこの赤いNeon Dustを飲ませてあげて」Small SERAPHと博士を結んでいたロープを外して、博士をベッドに括りつけた。ジタバタする博士を押さえつけ白衣を着た女性の助手のふたりが無理やり博士の口の中へ赤いNeon Dustを放り込む。すぐさまコップの水を飲ませて身体の中へと流し込んだ。
ラチエ博士の瞳孔が開き、ナノテクノロジーのAIが博士の身体の奥深くへ浸み込んでいく。パソコンに入った専用ソフトが動作を始めた。『イシドール・ラチエ』名前と項目が瞬時に表示され、『生年月日』『出身地』『学校名』『得意な思考パターン』『趣味』『女性の好み』などが細分化されて情報がまとめられていく。まるでパズルのピースがハマッていくようにどんどんイシドール・ラチエという人物の情報がソフトの中へ蓄積していくのだった。1時間ほどでラチエ博士の脳の情報はすべてSSBRのパソコンに保存された。
ラチエ博士の脳とナノテクノロジーのAIが融合し、博士は激しい頭痛に見舞われた。「頭が・・・割れるように痛い」博士は混ざりモノが入ったNeon Dustを飲まされたということがどういうことか知っていた。それもSSBRが独自に研究開発した赤いカプセルなのだ。きっとろくでもない機能を備えているに違いないと博士は内心、そう思っていた。
実際、ラチエ博士の勘は当たっていたのだった。ここは軍事産業メーカーの極秘の研究所なのだ。世間一般の研究所とは一味違って非人道的な研究が当たり前とされている。とくに裏切り者やスパイ、ライバル企業の人間、その関係者となるとその人物のすべてを研究対象にしてしまうような場所である。
パストル・ドミンゴ博士が両手に電子機器のグローブを取り付けた。身体には仮想現実で使われるような体感スーツを装着している。「よし、始めようか。ロープを外していいよ」ドミンゴ博士の指示に従って助手のふたりがラチエ博士を固縛していたロープを解いた。ラチエ博士はベッドからゆっくりと起き上がり、床に足をつけ、立ち上がって逃げようとしている。が、しかし、ドミンゴ博士が突然、床にパンチを繰り出すとラチエ博士もドミンゴ博士とまったく同じ姿勢で床にパンチを繰り出した。ゴツンという鈍い音と共にラチエ博士の拳が床に強く当たった。
「イタタタッ!」ラチエ博士が痛がるのを他所に何度も拳を床に打ち付けるモーションを続けるドミンゴ博士、そして、その度にラチエ博士は床を拳で激しく叩いた。「痛い!やめてくれ!わかった。なんでもする。言うことを聞こう」ラチエ博士は堪りかねてドミンゴ博士に許しの言葉を叫んだ。
ドミンゴ博士は手元のスイッチをオフにして「じゃあ契約書にサインしてくれる?」とラチエ博士に契約書を手渡した。これはどこかで見た光景である。そう、ケネス・ブルックがNEXA MILITECHの幹部だったカジョ・レオンとエロディ・シャリエールに渡した契約書と同じものである。そして、この流れからするとカジョ・レオンとエロディ・シャリエールがやったことと同じ道を歩むことになるのだ。3時間後、イシドール・ラチエ博士の胸元に黒い薔薇のタトゥと『SSBR』の文字が刻まれたのはいうまでもない。
Small SERAPHに刺された傷を治すためにドミンゴ博士の助手のふたりに飲まされた液体は得体が知れなかったが、その液体の効力で流血は驚くほどピタリと止まった。刺された傷口もみるみると閉じていく。
人体操作、傷口の回復、脳のスキャン、これが本当に現実世界かと思うほど軍事産業メーカーが持つテクノロジーは進化していた。どれも新しい産業として成り立つほどの技術を持っていたが政府には邪道だと認定されていた。恐らく政府の判断は未来で起きることから逆算して考えるので、それを一般的な産業にするとあまり良くない未来が待っているのだろう。
イスラエルの戦争で活躍したミリタリードローンは1980年代に存在していたとされる。しかし、一般公開されたのはそれから20年後の2000年代に入ってからである。市販が一般的となったのはさらに10年後の2010年からとなっている。軍事開発、研究されたものを迂闊に一般公開するとその情報と技術を持っていない国々が危険に晒されるので極秘扱いされることが多い。期間は非常に長かった。SSBRが持つ技術も例え新しい産業が切り拓けるからという理由で政府と協議しても「今はまだ早い」と言われるのがオチである。
政府がその極秘情報を所持していると後々、マスコミに騒がれる危険性があるから軍事産業メーカーの申し出を門前払いすることも少なくない。これがネックになって軍事産業メーカーは世界大戦が終わっても事業の方向転換をすることが極めて困難だった。倒産して新しい会社を立ち上げ、まったく違う形で成功した元・軍事産業メーカーも存在している。
生き残った軍事産業メーカーはブローカーを通じて資産家に情報だけを売っていることがあるほどだ。あの手、この手を使わないと生き残れなかった。それも世界大戦の終結後に起きた時代の転換点の悲劇である。
SSBRに寝返ったイシドール・ラチエ博士に寝室があてがわれ、ラチエ博士はシャワーを浴びながら胸元に刻まれた黒い薔薇のタトゥをまじまじと見つめていた。これからどういう扱いを受けるかわからない恐怖と赤いNeon Dustを摂取したことで脳のデータがパソコンに取り込まれ、すべての行動が監視されているような絶望感に苛まれていた。
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