41 / 48
光の方舟
しおりを挟む
「そう、私はアメリカに住んでいるの。オレゴン州のポートランドよ」レナータがノアに住んでいる場所を打ち明けた。仮想現実で出会って結婚するのが当たり前の時代、本当に仲良くなったチームメイトや好意のある異性に住所を教えるのはごく自然な流れである。むしろ仮想現実で出会わなければ世界人口が16億人では廃墟や過疎地が増えているせいでお見合いすらも難しい状況なのだ。積極的に出会いを求めるのは若いうちに異性と出会って恋愛したほうが経験値が上がるからである。
「僕はカナダに住んでいるんだ。カナダのバンクーバーだよ。僕たち意外と近いところに住んでるね」
アメリカのオレゴン州ポートランドからカナダのバンクーバーまで車だと8時間弱の距離、飛行機で移動すればわずか1時間ほどで行ける距離だった。ノアにはそれが運命のように感じられた。もしかしたら実物のレナータと会えるかもしれない、会って話したい、一緒に困難を乗り越えたい、そう思っていた。
ふたりは盛り上がり、もういつ会うのか、どういう観光がいいのかを話すようになっていた。浮足だったふたりは地元にある有名なお店を自慢し合った。「いや、僕が知っているお店は他の店とは一味違うんだ。絶対に行くべきだよ」ノアが地元にある飲食店の味を自慢すればレナータも同じようにいきつけのお店を自慢した。「そうね、そういうお店もいいわね。でも、私が知っているお店は店内に入った雰囲気が上品でステキなの。あの雰囲気を一度は味わって欲しいわ」本当に楽しいひと時を過ごしている。キラキラと輝く若さが溢れる一瞬を。
世界大戦前、世界人口が80億人に達していた頃、街に人が溢れ、隣近所に人がいるのが当たり前だった時代があった。しかし、それは逆に言えば人と会えるのが当たり前ゆえに人を大切にできない時代でもあった。世界大戦後の世界では仮想現実の中で一日の大半を過ごす人が多くなり、人との出会いがとても貴重なもの、特別なものへと認識が変化していた。世界人口は16億人しか存在せず、自国で人生のパートナーを探す時代から世界中の国からパートナーを探す時代へと時代は移り変わっていったのだ。
ノア「じゃあ一緒にオレゴン州のポートランドで過ごそう。2回目のデートは僕の地元にしよう、約束だよ」「ええ、いいわ。ノアのために私が特別なプランを用意しておくから」レナータも最近で一番楽しそうだった。
ふたりはエルディオスの中央公園で石板のベンチに並んで座って話をしていた。夕方になった頃、そろそろ帰ろうかと立ち上がって噴水の前を通りがかるとまたあの金色のドレスを着た美しい女性が石段の上に腰を掛けて座っていた。その美しい女性が声をかけてきた「ノア君、元気?ひさしぶりね」金色のドレスを着た美しい女性はなぜかノアの名前を知っていた。
「バイヤーのお姉さん、どうして僕の名前を知っているの?」自分の名前を呼ばれて驚いたノアが立ち止まった。その女性の美貌に嫉妬したレナータはノアの腕の皮膚を摘まんでひねる。「イテテッ痛いよ!レナータ」ふたりの仲睦まじい姿を見て、金色のドレスを着た美しい女性は微笑んでいた。
「ふたりはとても仲が良さそうね。私の名前はアンジェリカよ。ノア君とレナータさんね?よく知ってるわ。だってネオグライドで人気があるもの」(バイヤーが自分の名前を名乗ることがないはずだが・・・?)積極的に話しかけてきて自分の名前まで名乗るアンジェリカにノアは不信感を抱いた。
「アンジェリカさん、バイヤーが自分の名前を名乗るのは変じゃないですか?」ノアは率直に自分が思ったことを話した。「たしかにそうね、バイヤーは名乗らないわね。実は私はバイヤーじゃないの」前に公園で出会ったときに(僕はアンジェリカから紫色のNeon Dustを買ったはずだが・・・どうなってるんだ?)ノアが困惑する。
「悪い人には見えないけど、どういう意図で近づいて来てるの?」ノアが警戒心を強くした。「驚かせちゃってごめんね、私はある組織に属しているの。時間がないからふたりには一緒に来てもらいたいんだ」その言葉を発しているアンジェリカは真剣な表情になっていた。さっきまでとは別人のようだ。
レナータはノアと腕を組んで怯えていた。ノアが怒りを露わにする「ちょっと待って!勝手に予定を決めないでください。僕らにも選ぶ権利がある」まさか中央公園でNeon Dustを売っているバイヤーだと思っていた人が大きな組織の一員だったなんて冗談にもならない。しかし、アンジェリカの表情を見る限り冗談とは到底思えなかった。
「もし来ないというなら力づくでも・・・なんてね(笑)」アンジェリカは笑顔で手を振って(違う、違う)とジェスチャーしている。それでもノアとレナータの緊張感は極限まで高まっている。ノアはレナータから話を聞いていて大きな組織といえばSSBRが頭にちらついて、(まさかこんなところにやって来るのか?)という予想を裏切る展開もあるのかと思って身構えた。
「私はLumen Arkという組織の一員なの。あなたたちの協力が必要になったときに会いに行くように本部から命令があったの。私がノア君に渡したNeon DustにはナノテクノロジーのAIが入っていたわ。あなたが持つ情報は我々も共有しているの。騙してごめんね。ただあの状況では言えなかったし、言うべきではなかった。レナータさん、あなたが使ったドラッグにもそのAIは含まれていたの。私たちが『あなたたちを守っていた』と言ったら信じるかしら?それとも敵認定しちゃう?もし興味があるなら一緒に来てほしいんだけどな♪」最後に語尾を上げて明るく振る舞うアンジェリカだがそれすらも怪しく感じた。
にわかに信じ難い話だがアンジェリカの言っていることには心当たりがあるし、(もし仮にそれが本当だったとしたら一体何が目的なのだろうか?)というところが焦点となる。ノアとレナータは顔を見合わせて小声で話し合った。ヒソヒソと話をしていたが仮想現実の世界の中で、もし敵がいたとしてもそんなに大きな代償にはならないと考え、ふたりは興味本位でアンジェリカについて行くことにした。
「僕はカナダに住んでいるんだ。カナダのバンクーバーだよ。僕たち意外と近いところに住んでるね」
アメリカのオレゴン州ポートランドからカナダのバンクーバーまで車だと8時間弱の距離、飛行機で移動すればわずか1時間ほどで行ける距離だった。ノアにはそれが運命のように感じられた。もしかしたら実物のレナータと会えるかもしれない、会って話したい、一緒に困難を乗り越えたい、そう思っていた。
ふたりは盛り上がり、もういつ会うのか、どういう観光がいいのかを話すようになっていた。浮足だったふたりは地元にある有名なお店を自慢し合った。「いや、僕が知っているお店は他の店とは一味違うんだ。絶対に行くべきだよ」ノアが地元にある飲食店の味を自慢すればレナータも同じようにいきつけのお店を自慢した。「そうね、そういうお店もいいわね。でも、私が知っているお店は店内に入った雰囲気が上品でステキなの。あの雰囲気を一度は味わって欲しいわ」本当に楽しいひと時を過ごしている。キラキラと輝く若さが溢れる一瞬を。
世界大戦前、世界人口が80億人に達していた頃、街に人が溢れ、隣近所に人がいるのが当たり前だった時代があった。しかし、それは逆に言えば人と会えるのが当たり前ゆえに人を大切にできない時代でもあった。世界大戦後の世界では仮想現実の中で一日の大半を過ごす人が多くなり、人との出会いがとても貴重なもの、特別なものへと認識が変化していた。世界人口は16億人しか存在せず、自国で人生のパートナーを探す時代から世界中の国からパートナーを探す時代へと時代は移り変わっていったのだ。
ノア「じゃあ一緒にオレゴン州のポートランドで過ごそう。2回目のデートは僕の地元にしよう、約束だよ」「ええ、いいわ。ノアのために私が特別なプランを用意しておくから」レナータも最近で一番楽しそうだった。
ふたりはエルディオスの中央公園で石板のベンチに並んで座って話をしていた。夕方になった頃、そろそろ帰ろうかと立ち上がって噴水の前を通りがかるとまたあの金色のドレスを着た美しい女性が石段の上に腰を掛けて座っていた。その美しい女性が声をかけてきた「ノア君、元気?ひさしぶりね」金色のドレスを着た美しい女性はなぜかノアの名前を知っていた。
「バイヤーのお姉さん、どうして僕の名前を知っているの?」自分の名前を呼ばれて驚いたノアが立ち止まった。その女性の美貌に嫉妬したレナータはノアの腕の皮膚を摘まんでひねる。「イテテッ痛いよ!レナータ」ふたりの仲睦まじい姿を見て、金色のドレスを着た美しい女性は微笑んでいた。
「ふたりはとても仲が良さそうね。私の名前はアンジェリカよ。ノア君とレナータさんね?よく知ってるわ。だってネオグライドで人気があるもの」(バイヤーが自分の名前を名乗ることがないはずだが・・・?)積極的に話しかけてきて自分の名前まで名乗るアンジェリカにノアは不信感を抱いた。
「アンジェリカさん、バイヤーが自分の名前を名乗るのは変じゃないですか?」ノアは率直に自分が思ったことを話した。「たしかにそうね、バイヤーは名乗らないわね。実は私はバイヤーじゃないの」前に公園で出会ったときに(僕はアンジェリカから紫色のNeon Dustを買ったはずだが・・・どうなってるんだ?)ノアが困惑する。
「悪い人には見えないけど、どういう意図で近づいて来てるの?」ノアが警戒心を強くした。「驚かせちゃってごめんね、私はある組織に属しているの。時間がないからふたりには一緒に来てもらいたいんだ」その言葉を発しているアンジェリカは真剣な表情になっていた。さっきまでとは別人のようだ。
レナータはノアと腕を組んで怯えていた。ノアが怒りを露わにする「ちょっと待って!勝手に予定を決めないでください。僕らにも選ぶ権利がある」まさか中央公園でNeon Dustを売っているバイヤーだと思っていた人が大きな組織の一員だったなんて冗談にもならない。しかし、アンジェリカの表情を見る限り冗談とは到底思えなかった。
「もし来ないというなら力づくでも・・・なんてね(笑)」アンジェリカは笑顔で手を振って(違う、違う)とジェスチャーしている。それでもノアとレナータの緊張感は極限まで高まっている。ノアはレナータから話を聞いていて大きな組織といえばSSBRが頭にちらついて、(まさかこんなところにやって来るのか?)という予想を裏切る展開もあるのかと思って身構えた。
「私はLumen Arkという組織の一員なの。あなたたちの協力が必要になったときに会いに行くように本部から命令があったの。私がノア君に渡したNeon DustにはナノテクノロジーのAIが入っていたわ。あなたが持つ情報は我々も共有しているの。騙してごめんね。ただあの状況では言えなかったし、言うべきではなかった。レナータさん、あなたが使ったドラッグにもそのAIは含まれていたの。私たちが『あなたたちを守っていた』と言ったら信じるかしら?それとも敵認定しちゃう?もし興味があるなら一緒に来てほしいんだけどな♪」最後に語尾を上げて明るく振る舞うアンジェリカだがそれすらも怪しく感じた。
にわかに信じ難い話だがアンジェリカの言っていることには心当たりがあるし、(もし仮にそれが本当だったとしたら一体何が目的なのだろうか?)というところが焦点となる。ノアとレナータは顔を見合わせて小声で話し合った。ヒソヒソと話をしていたが仮想現実の世界の中で、もし敵がいたとしてもそんなに大きな代償にはならないと考え、ふたりは興味本位でアンジェリカについて行くことにした。
0
あなたにおすすめの小説
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

