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パープルエッグ

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光の方舟

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「そう、私はアメリカに住んでいるの。オレゴン州のポートランドよ」レナータがノアに住んでいる場所を打ち明けた。仮想現実バーチャルリアリティで出会って結婚するのが当たり前の時代、本当に仲良くなったチームメイトや好意のある異性に住所を教えるのはごく自然な流れである。むしろ仮想現実バーチャルリアリティで出会わなければ世界人口が16億人では廃墟や過疎地が増えているせいでお見合いすらも難しい状況なのだ。積極的に出会いを求めるのは若いうちに異性と出会って恋愛したほうが経験値が上がるからである。

「僕はカナダに住んでいるんだ。カナダのバンクーバーだよ。僕たち意外と近いところに住んでるね」

アメリカのオレゴン州ポートランドからカナダのバンクーバーまで車だと8時間弱の距離、飛行機で移動すればわずか1時間ほどで行ける距離だった。ノアにはそれが運命のように感じられた。もしかしたら実物のレナータと会えるかもしれない、会って話したい、一緒に困難を乗り越えたい、そう思っていた。

ふたりは盛り上がり、もういつ会うのか、どういう観光がいいのかを話すようになっていた。浮足だったふたりは地元にある有名なお店を自慢し合った。「いや、僕が知っているお店は他の店とは一味違うんだ。絶対に行くべきだよ」ノアが地元にある飲食店の味を自慢すればレナータも同じようにいきつけのお店を自慢した。「そうね、そういうお店もいいわね。でも、私が知っているお店は店内に入った雰囲気が上品でステキなの。あの雰囲気を一度は味わって欲しいわ」本当に楽しいひと時を過ごしている。キラキラと輝く若さが溢れる一瞬を。

世界大戦前、世界人口が80億人に達していた頃、街に人が溢れ、隣近所に人がいるのが当たり前だった時代があった。しかし、それは逆に言えば人と会えるのが当たり前ゆえに人を大切にできない時代でもあった。世界大戦後の世界では仮想現実バーチャルリアリティの中で一日の大半を過ごす人が多くなり、人との出会いがとても貴重なもの、特別なものへと認識が変化していた。世界人口は16億人しか存在せず、自国で人生のパートナーを探す時代から世界中の国からパートナーを探す時代へと時代は移り変わっていったのだ。

ノア「じゃあ一緒にオレゴン州のポートランドで過ごそう。2回目のデートは僕の地元にしよう、約束だよ」「ええ、いいわ。ノアのために私が特別なプランを用意しておくから」レナータも最近で一番楽しそうだった。

ふたりはエルディオスの中央公園セントラルスクエアで石板のベンチに並んで座って話をしていた。夕方になった頃、そろそろ帰ろうかと立ち上がって噴水の前を通りがかるとまたあの金色のドレスを着た美しい女性が石段の上に腰を掛けて座っていた。その美しい女性が声をかけてきた「ノア君、元気?ひさしぶりね」金色のドレスを着た美しい女性はなぜかノアの名前を知っていた。



「バイヤーのお姉さん、どうして僕の名前を知っているの?」自分の名前を呼ばれて驚いたノアが立ち止まった。その女性の美貌に嫉妬したレナータはノアの腕の皮膚を摘まんでひねる。「イテテッ痛いよ!レナータ」ふたりの仲睦まじい姿を見て、金色のドレスを着た美しい女性は微笑んでいた。

「ふたりはとても仲が良さそうね。私の名前はアンジェリカよ。ノア君とレナータさんね?よく知ってるわ。だってネオグライドで人気があるもの」(バイヤーが自分の名前を名乗ることがないはずだが・・・?)積極的に話しかけてきて自分の名前まで名乗るアンジェリカにノアは不信感を抱いた。

「アンジェリカさん、バイヤーが自分の名前を名乗るのは変じゃないですか?」ノアは率直に自分が思ったことを話した。「たしかにそうね、バイヤーは名乗らないわね。実は私はバイヤーじゃないの」前に公園で出会ったときに(僕はアンジェリカから紫色のNeon Dustドラッグを買ったはずだが・・・どうなってるんだ?)ノアが困惑する。

「悪い人には見えないけど、どういう意図で近づいて来てるの?」ノアが警戒心を強くした。「驚かせちゃってごめんね、私はに属しているの。時間がないからふたりには一緒に来てもらいたいんだ」その言葉を発しているアンジェリカは真剣な表情になっていた。さっきまでとは別人のようだ。

レナータはノアと腕を組んで怯えていた。ノアが怒りをあらわにする「ちょっと待って!勝手に予定を決めないでください。僕らにも選ぶ権利がある」まさか中央公園セントラルスクエアNeon Dustドラッグを売っているバイヤーだと思っていた人が大きな組織の一員だったなんて冗談にもならない。しかし、アンジェリカの表情を見る限り冗談とは到底思えなかった。

「もし来ないというなら力づくでも・・・なんてね(笑)」アンジェリカは笑顔で手を振って(違う、違う)とジェスチャーしている。それでもノアとレナータの緊張感は極限まで高まっている。ノアはレナータから話を聞いていて大きな組織といえばSSBRが頭にちらついて、(まさかこんなところにやって来るのか?)という予想を裏切る展開もあるのかと思って身構えた。

「私はLumen Arkルーメンアークという組織の一員なの。あなたたちの協力が必要になったときに会いに行くように本部から命令があったの。私がノア君に渡したNeon DustドラッグにはナノテクノロジーのAIが入っていたわ。あなたが持つ情報は我々も共有しているの。騙してごめんね。ただあの状況では言えなかったし、言うべきではなかった。レナータさん、あなたが使ったドラッグにもそのAIは含まれていたの。私たちが『あなたたちを守っていた』と言ったら信じるかしら?それとも敵認定しちゃう?もし興味があるなら一緒に来てほしいんだけどな♪」最後に語尾を上げて明るく振る舞うアンジェリカだがそれすらも怪しく感じた。



にわかに信じ難い話だがアンジェリカの言っていることには心当たりがあるし、(もし仮にそれが本当だったとしたら一体何が目的なのだろうか?)というところが焦点となる。ノアとレナータは顔を見合わせて小声で話し合った。ヒソヒソと話をしていたが仮想現実バーチャルリアリティの世界の中で、もし敵がいたとしてもそんなに大きな代償にはならないと考え、ふたりは興味本位でアンジェリカについて行くことにした。

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