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第一章
理(ことわり)の子、目覚める時
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西日の差し込む放課後の教室は、使い古された木と、乾燥した薬草の匂いが満ちていた。生活魔法の補習に残された数人の生徒たちの間には、諦めにも似た気だるい空気が漂っている。
「リアン、これが最後のチャンスです」
教壇に立つ教師のボルンは、こめかみを揉みながら、この少年に言い渡した。リアンの肩が、びくりと跳ねる。彼の背後では、親友のフィンが「君ならできる」と小さく頷いていた。
お題は「小さな光の玉を作り、手の中で維持する」。生活魔法の初歩の初歩だ。
リアンはズボンの膝で汗ばむ掌を拭うと、震える手を胸の前にかざした。目を閉じ、必死に集中する。教わった通り、魔力を細い糸のように紡ぎ出すことをイメージする。しかし、彼の内に眠るそれは、従順な小川ではなかった。世界そのものを揺り動かす、太陽の如き奔流だ。イメージが、奔流に呑まれる。彼の心に浮かんだのは、蝋燭の小さな灯火ではなく、生まれたての星の核、凝縮された光の源だった。
「おい、リアン!その魔力はなんだ!力を抜きなさい!」
ボルンの切羽詰まった声にはっと目を開いた瞬間、リアンの掌からまばゆい光が放たれた。暴発ではなかった。光は、まるで意思を持つかのように、彼の掌の上で一つの形へと収束していく。
光が消えた時、リアンの手の中にあったのは、指の先ほどの大きさの、内側から淡い光を放つ美しい水晶だった。完璧なカットが施され、まるで最高位の職人が何年もかけて作り上げたかのような芸術品だ。
「…またですか、リアン」
ボルンは天を仰いだ。
「私が言ったのは『光の玉を維持しなさい』です。『水晶の宝石を創造しなさい』とは言っていません。…もう、今日は帰りなさい。これでは、進級は難しいですよ…」
他の生徒のひそひそ話が、リアンの心を刺す。また失敗してしまった、と彼が俯いた時、フィンが目を爛々と輝かせて駆け寄ってきた。
「すごいじゃないですか、リアン!」
フィンは水晶をそっとつまみ上げ、西日にかざす。
「見てください、この安定した魔力構造…!」
「でも、失敗だよ。光の玉は作れなかった…」
「失敗なんかじゃありませんよ!」
フィンは、リアンの肩を力強く叩いた。
「先生や、みんなには、課題ができたかどうかしか見えていないんです。でも、これはそういう問題じゃない!魔力を、エネルギー体じゃなくて、完全に安定した物質に『創造』するなんて…そんなこと、どんな古代文献にも載っていませんでした。これは、魔法の歴史を覆すほどの『奇跡』なんですよ!」
フィンの熱のこもった言葉だけが、リアンの凍てついた心を、少しだけ温めてくれるのだった。
夕暮れの帰り道、リアンとフィンは並んで歩いていた。
「…また、みんなに笑われちゃったな」
「気にする必要はありませんよ。あれは、君のせいじゃない。それに、僕にとっては、どんな歴史の発見よりも、君が創り出す『奇跡』の方が、ずっと興味深いですから」
フィンは、先ほどの水晶を、なおも飽きずに眺めている。
「…いつか、この力の謎を解き明かしたいものです。この土地には、僕らの知らない、古い叡智が眠っていると聞きます。例えば、この村を見守っているという、あの賢者様なら、何かご存知かもしれませんね」
「賢者様…?」
「ええ、村の伝承に出てくるでしょう?正体は誰も知らないけれど、遥か昔から、この地を守っている、偉大な魔法使いがいる、と」
他愛のない話をしているうちに、リアンの家が見えてきた。
「さあ、帰りましょう、リアン。今日はお互い、主役なんですから!」
フィンは悪戯っぽく笑った。
「あとで、ご馳走になりますよ!」
その夜、リアンの家では、ささやかなお祝いの席が設けられていた。今日は、リアンと、そして、彼と家族同然に育ったフィン、二人の誕生日だったからだ。幼い頃に両親を亡くしたフィンにとって、リアンの家族は、唯一の家族だった。
食事が終わり、リアンの両親は、二人の前に、一つの古びた木箱を置いた。
「リアン、そしてフィン。二人とも、今日で成人だ。これは、リアンの家系に、お守りとして伝わってきたものだ。これからは、お前が持っていなさい」
父がそう言って、箱から取り出したのは、くすんだ銀の台座に、乳白色の石がはめ込まれた古びたペンダントだった。父がリアンの首にかける。ペンダントが肌に触れた瞬間、ひんやりとした感触と共に、リアンにしか聞こえない、澄んだ鈴のような音(ね)が、魂の奥で静かに響いた。それは、何千年も眠っていた古代の竪琴が、初めて弦を弾かれたような、懐かしくも、力強い共鳴だった。彼の脳裏に一瞬だけ、見たこともない、二つの月が浮かぶ夜空の幻影がよぎった。
その小さな共鳴は、運命に選ばれた三者の魂を、同時に震わせた。
一つは、遥か北のヴァルトゥス皇国。冷たい大理石の玉座の間で、若き指揮官ヴァレリウスは、観測室からの報告に、薄い笑みを浮かべていた。
「…『原初級』のエネルギーだと?ようやく、この退屈な世界も、動き出すか」。
彼は、傍らに控える側近に、冷ややかに命じる。
「アニヤを呼べ。彼女の最初の『獲物』が見つかった、と伝えろ。我が覇道の礎となる、生贄の羊がな」
その頃、皇国の練兵場で、騎士アニヤは、一人、黙々と剣を振っていた。鋼鉄のゴーレムを、一撃で両断するほどの、凄まじい剣技。しかし、その完璧な動きが、一瞬だけ、乱れた。遠い世界のどこかで起きた、未知の共鳴。それは、彼女の魂の奥底に眠る、忘れたはずの故郷の記憶を、不快に、そして、どこか懐かししく揺さぶった。
「…なんだ、この感覚は…」。
彼女が眉をひそめたその時、主君からの召集命令が届いた。
そして、もう一つ。世界のどこかにある隠れ里の最深部。永い瞑想の中にいた、一人の女性が、静かにその瞳を開いた。
「…目覚めましたか、理(ことわり)の子。永かった…。しかし、これで賽は投げられた」。
彼女はゆっくりと立ち上がり、数百年ぶりに、外界へと向かう準備を始めた。
翌朝、リアンは、フィンと共に学校へ向かう。
「そのペンダント、朝の光で見ると、また違って見えますね。本当に不思議な石です」
「うん。なんだか、少しだけ、温かい気がするんだ」
「僕も見たことがない鉱石です。今度、詳しく調べさせてくださいね」
その日の午前中の授業でも、リアンは、薬草を浮かせるだけの簡単な魔法に失敗し、薬草から芽を生えさせてしまい、ボルン先生に大きなため息をつかれていた。
そして、昼下がり。広場の平和が、唐突に破られた。
空に、不気味な影が差した。村人たちが空を見上げると、そこには、カマキリのような、鋭角的なフォルムを持つ、漆黒の小型飛空艇が、低い駆動音を響かせて浮かんでいた。ヴァルトゥス皇国の紋章。
その船体から降り立った魔導兵の一団は、奇妙な羅針盤のような装置を手に、広場へと進む。隊長が装置をかざすと、針がかすかに震え、ちょうど学校から帰ってきたリアンとフィンの姿を捉えた瞬間、装置の針は狂ったように回転し、甲高い警告音を発した。
「目標、発見!確保せよ!」
兵士たちが、リアンたちに迫る。フィンが、咄嗟にリアンを庇うように前に出た。
「あなたたちは、何者ですか!彼が、何かしたというのですか!」
「どけ、小僧」
隊長は、フィンを突き飛ばすのではなく、その首根っこを掴み上げ、喉元に、禍々しい紫色の光を放つ魔導ナイフを突きつけた。
「動くなよ、『発生源』。こいつの命が惜しければな」
フィンの顔が、恐怖と苦痛に歪む。その瞬間、リアンの世界から、音が消えた。
「やめろぉっ!!」
魂の絶叫と共に、リアンの体から、制御不能の魔力が光の奔流となって溢れ出した。それは暴力的な破壊の力ではなかった。衝撃波が隊長とフィンを引き離し、広場の硬い石畳の隙間という隙間から、色とりどりの花々が、まるで世界の再生を祝福するかのように、一斉に咲き乱れた。
兵士たちは、そのありえない光景に、恐怖と戸惑いの表情を浮かべ、立ち尽くす。
「…なんだ、今の魔法は…!?」。
彼らの経験上、魔法とは、もっと直接的で、暴力的なものであるはずだった。硬い石畳から、何の兆候もなく、生命が爆発するように咲き誇るなど、理解の範疇を超えていた。
彼らが、それでもなお、リアンに魔導銃を向けようとした、その時だった。
彼らの頭上、飛空艇のハッチが開き、一人の騎士が蒼い炎のオーラをまとって舞い降りてきた。騎士アニヤだ。その視線は、無様に転がる部下たちには目もくれず、ただ一点、リアンだけに注がれていた。花畑の中心で、一人佇む少年。その存在から放たれる、規格外の力の気配。
「…お前が、反応の源か。なるほど、私の部下たちが手も足も出ないわけだ」
アニヤが腰の剣に手をかけた瞬間、彼女とリアンの間に、まるで陽炎のように、一人の女性が音もなく現れた。
「そこまでです、皇国の騎士」
「何者だ、貴様」
「その子を連れて行くことは、私が許さない」
「ならば、先に邪魔なお前を排除して奪い去るまで!」
アニヤの姿が霞み、青い炎をまとった斬撃が、嵐のようにその女性に襲いかかる。しかし、女性は杖を構えもしない。彼女の周囲の空間そのものが、まるで重い水の中のようになり、アニヤの超高速の剣が、スローモーションのようにその勢いを失っていく。アニヤが放った蒼い炎は、女性に届く前に、美しい光の蝶へと姿を変え、空へと舞い上がった。
「…小賢しい!」
アニヤが距離を取った瞬間、上空の飛空艇から、副隊長と思わしき男の焦った声が響く。
「アニヤ様が押されている!構うな、邪魔者ごと、目標を焼き払え!主砲、発射!」
飛空艇の船首から、村一つを消し飛ばすほどの、禍々しい紫色の魔導砲が放たれた。
村人たちが悲鳴を上げ、リアンが絶望に目を見開いた、その時。
謎の女性は、天に向かって、静かにその白木の杖を掲げた。
凄まじい破壊の光が、彼女の杖の先端、その一点に吸い込まれていく。いや、吸収ではない。破壊のエネルギーが、彼女の杖を通して、全く別のものに「変換」されていくのだ。
次の瞬間、彼女の頭上から、巨大な一本の「光の樹」が、天を衝くほどの勢いで生え伸びた。その枝は、魔導砲のエネルギーを美しい花として咲かせ、そして、桜吹雪のように、無害な光の粒子となって広場に降り注いだ。
破壊を、創造に。死を、生命の祝福に。
あまりに幻想的で、あまりに絶対的な実力差。女性は、その慈母のような瞳で、初めて、アニヤを真っ直ぐに見つめた。その視線は、刃よりも鋭く、アニヤの魂を射抜いた。
「…撤退する!」
アニヤは、屈辱に唇を噛み締め、そう言い残すと、兵士たちと共に飛空艇へと飛び去っていった。
広場が村人たちの混乱に包まれる中、謎の女性は、呆然とするリアンとフィン、そして駆けつけたリアンの両親を伴い、リアンの家へと向かった。
道すがら、女性は静かに名乗った。
「申し遅れました。私はセラフィナ。あなた方を、導くために参りました」
家のテーブルを囲む、重苦しい沈黙。父親が、震える声でセラフィナに問い詰める。
「…いったい、何が起きているんですか。あなたは、何者で、息子が、何をしたと…」
セラフィナは、まず怯えるリアンに、優しい眼差しを向けた。
「リアン殿。まず、あなたに尋ねたいことがあります。あなたは長い間、普通の生活魔法がうまく使えず、意図しない、不思議な現象が起きることがありませんでしたか?例えば、『光の玉を維持する』といった単純な魔法を使おうとしても、意図せず、全く別の、形あるもの…例えば、『水晶』を”創造”してしまったことはありませんか?」
その的確な言葉に、リアンは息をのむ。
「なぜ、それを…」
「やはり。あなたの力は、『欠陥』ではありません。ただ、その『性質』が、他の人とは根本的に違うだけなのです。あなたに足りないのは、能力ではない。その、あまりに強大な力を正しく導くための、『制御方法』です」
彼女は、ここで改めて、自らの正体を明かした。
「私は、この世界の理を歪める『邪悪な王』の封印を守る、最後の”守護者”、セラフィナと申します」
彼女は、この世界が、異次元からの侵略者「邪悪な王」によって、常に消滅の危機に晒されていることを語った。
「そしてリアン殿。あなたは、その王を封印した古代の魔法使いたちの、正統な血を引く末裔なのです。あなたの血には、世界を創造した力、『原初の魔法』を扱うための『鍵』が眠っています」
セラフィナは、リアンの首にかかるペンダントを指差す。
「そのペンダントは、あなたの先祖が遺した、『原初の魔法』の力を増幅させ、調律するための魔導具。ヴァルトゥス皇国は、そのペンダントと、使い手であるあなたを利用し、世界の封印を解こうとしているのです」
話を聞き終えたリアンは、恐怖に顔を青ざめさせ、俯いた。
「僕のせいで…僕の力が暴走したせいで、みんなが危険な目に…僕みたいな、力も制御できない人間が、旅に出ても…きっと、足手まといになるだけだ…」
その不安な言葉に、セラフィナは静かに、しかし力強く答える。
「その恐怖は、あなただけのものではありません。かつて、あなたの先祖たちも、そのあまりに大きな力に悩み、苦しみました。ですがリアン殿、あなたの力は『暴走』したのではありません。『目覚めた』のです。あなたの、大切な人を守りたいという心に応えて。力そのものに善悪はありません。それを導くのは、あなたの心です。私は、その導き方をお教えするために来たのです」
セラフィナは、リアンの前に膝をつき、その手を優しく握った。
「あなたが、その力を正しく導けるようになる、その日まで。このセラフィナが、命を懸けてあなたを守り抜きましょう。ですから、何も心配はいりません」
その言葉に、リアンは顔を上げる。彼の瞳には、もう怯えはなかった。
「…行きます。僕が、みんなを守れるようになるために」
その覚悟に、父親は唇を噛み締め、母親は静かに涙を流した。
その時だった。ずっと黙って話を聞いていたフィンが、固く拳を握りしめて立ち上がった。
「セラフィナさん。あなたの話は、まだ信じられないことだらけです。でも、もしそれが本当なら…これは僕が今まで本で読んできた、どんな歴史や伝説よりもすごい、世紀の謎だ。僕は、この村で一番の物知りだなんて言われてるけど、結局は本の中の知識だけだ。でも、その知識が、これからリアンが直面する謎を解くのに、きっと役に立つはずです!」
そして、彼は親友であるリアンに向き直り、いつものように、しかし今までにないほど力強い笑顔で言った。
「それに、リアン。君が『原初の魔法』の使い手なら、僕はその『最初の研究者』になる。君の力を正しく理解し、記録し、支えるのが僕の役目だ。君が道に迷ったら、僕の知識が地図になる。君が力に悩んだら、僕がその答えを探し出す。二人なら、どんな謎だって解き明かせるさ。…何より…親友が、そんな過酷な運命に一人で立ち向かうのを、黙って見ているなんて、僕にはできません!」
その言葉には、ただの友情だけでなく、真理を探求する者としての強い意志と、リアンへの絶対的な信頼が込められていた。
フィンの揺るぎない瞳に、リアンの両親も、そしてセラフィナも、何も言えなかった。
こうして、二人の少年の、そして世界の運命を賭けた壮大な旅が、今、始まろうとしていた。
「リアン、これが最後のチャンスです」
教壇に立つ教師のボルンは、こめかみを揉みながら、この少年に言い渡した。リアンの肩が、びくりと跳ねる。彼の背後では、親友のフィンが「君ならできる」と小さく頷いていた。
お題は「小さな光の玉を作り、手の中で維持する」。生活魔法の初歩の初歩だ。
リアンはズボンの膝で汗ばむ掌を拭うと、震える手を胸の前にかざした。目を閉じ、必死に集中する。教わった通り、魔力を細い糸のように紡ぎ出すことをイメージする。しかし、彼の内に眠るそれは、従順な小川ではなかった。世界そのものを揺り動かす、太陽の如き奔流だ。イメージが、奔流に呑まれる。彼の心に浮かんだのは、蝋燭の小さな灯火ではなく、生まれたての星の核、凝縮された光の源だった。
「おい、リアン!その魔力はなんだ!力を抜きなさい!」
ボルンの切羽詰まった声にはっと目を開いた瞬間、リアンの掌からまばゆい光が放たれた。暴発ではなかった。光は、まるで意思を持つかのように、彼の掌の上で一つの形へと収束していく。
光が消えた時、リアンの手の中にあったのは、指の先ほどの大きさの、内側から淡い光を放つ美しい水晶だった。完璧なカットが施され、まるで最高位の職人が何年もかけて作り上げたかのような芸術品だ。
「…またですか、リアン」
ボルンは天を仰いだ。
「私が言ったのは『光の玉を維持しなさい』です。『水晶の宝石を創造しなさい』とは言っていません。…もう、今日は帰りなさい。これでは、進級は難しいですよ…」
他の生徒のひそひそ話が、リアンの心を刺す。また失敗してしまった、と彼が俯いた時、フィンが目を爛々と輝かせて駆け寄ってきた。
「すごいじゃないですか、リアン!」
フィンは水晶をそっとつまみ上げ、西日にかざす。
「見てください、この安定した魔力構造…!」
「でも、失敗だよ。光の玉は作れなかった…」
「失敗なんかじゃありませんよ!」
フィンは、リアンの肩を力強く叩いた。
「先生や、みんなには、課題ができたかどうかしか見えていないんです。でも、これはそういう問題じゃない!魔力を、エネルギー体じゃなくて、完全に安定した物質に『創造』するなんて…そんなこと、どんな古代文献にも載っていませんでした。これは、魔法の歴史を覆すほどの『奇跡』なんですよ!」
フィンの熱のこもった言葉だけが、リアンの凍てついた心を、少しだけ温めてくれるのだった。
夕暮れの帰り道、リアンとフィンは並んで歩いていた。
「…また、みんなに笑われちゃったな」
「気にする必要はありませんよ。あれは、君のせいじゃない。それに、僕にとっては、どんな歴史の発見よりも、君が創り出す『奇跡』の方が、ずっと興味深いですから」
フィンは、先ほどの水晶を、なおも飽きずに眺めている。
「…いつか、この力の謎を解き明かしたいものです。この土地には、僕らの知らない、古い叡智が眠っていると聞きます。例えば、この村を見守っているという、あの賢者様なら、何かご存知かもしれませんね」
「賢者様…?」
「ええ、村の伝承に出てくるでしょう?正体は誰も知らないけれど、遥か昔から、この地を守っている、偉大な魔法使いがいる、と」
他愛のない話をしているうちに、リアンの家が見えてきた。
「さあ、帰りましょう、リアン。今日はお互い、主役なんですから!」
フィンは悪戯っぽく笑った。
「あとで、ご馳走になりますよ!」
その夜、リアンの家では、ささやかなお祝いの席が設けられていた。今日は、リアンと、そして、彼と家族同然に育ったフィン、二人の誕生日だったからだ。幼い頃に両親を亡くしたフィンにとって、リアンの家族は、唯一の家族だった。
食事が終わり、リアンの両親は、二人の前に、一つの古びた木箱を置いた。
「リアン、そしてフィン。二人とも、今日で成人だ。これは、リアンの家系に、お守りとして伝わってきたものだ。これからは、お前が持っていなさい」
父がそう言って、箱から取り出したのは、くすんだ銀の台座に、乳白色の石がはめ込まれた古びたペンダントだった。父がリアンの首にかける。ペンダントが肌に触れた瞬間、ひんやりとした感触と共に、リアンにしか聞こえない、澄んだ鈴のような音(ね)が、魂の奥で静かに響いた。それは、何千年も眠っていた古代の竪琴が、初めて弦を弾かれたような、懐かしくも、力強い共鳴だった。彼の脳裏に一瞬だけ、見たこともない、二つの月が浮かぶ夜空の幻影がよぎった。
その小さな共鳴は、運命に選ばれた三者の魂を、同時に震わせた。
一つは、遥か北のヴァルトゥス皇国。冷たい大理石の玉座の間で、若き指揮官ヴァレリウスは、観測室からの報告に、薄い笑みを浮かべていた。
「…『原初級』のエネルギーだと?ようやく、この退屈な世界も、動き出すか」。
彼は、傍らに控える側近に、冷ややかに命じる。
「アニヤを呼べ。彼女の最初の『獲物』が見つかった、と伝えろ。我が覇道の礎となる、生贄の羊がな」
その頃、皇国の練兵場で、騎士アニヤは、一人、黙々と剣を振っていた。鋼鉄のゴーレムを、一撃で両断するほどの、凄まじい剣技。しかし、その完璧な動きが、一瞬だけ、乱れた。遠い世界のどこかで起きた、未知の共鳴。それは、彼女の魂の奥底に眠る、忘れたはずの故郷の記憶を、不快に、そして、どこか懐かししく揺さぶった。
「…なんだ、この感覚は…」。
彼女が眉をひそめたその時、主君からの召集命令が届いた。
そして、もう一つ。世界のどこかにある隠れ里の最深部。永い瞑想の中にいた、一人の女性が、静かにその瞳を開いた。
「…目覚めましたか、理(ことわり)の子。永かった…。しかし、これで賽は投げられた」。
彼女はゆっくりと立ち上がり、数百年ぶりに、外界へと向かう準備を始めた。
翌朝、リアンは、フィンと共に学校へ向かう。
「そのペンダント、朝の光で見ると、また違って見えますね。本当に不思議な石です」
「うん。なんだか、少しだけ、温かい気がするんだ」
「僕も見たことがない鉱石です。今度、詳しく調べさせてくださいね」
その日の午前中の授業でも、リアンは、薬草を浮かせるだけの簡単な魔法に失敗し、薬草から芽を生えさせてしまい、ボルン先生に大きなため息をつかれていた。
そして、昼下がり。広場の平和が、唐突に破られた。
空に、不気味な影が差した。村人たちが空を見上げると、そこには、カマキリのような、鋭角的なフォルムを持つ、漆黒の小型飛空艇が、低い駆動音を響かせて浮かんでいた。ヴァルトゥス皇国の紋章。
その船体から降り立った魔導兵の一団は、奇妙な羅針盤のような装置を手に、広場へと進む。隊長が装置をかざすと、針がかすかに震え、ちょうど学校から帰ってきたリアンとフィンの姿を捉えた瞬間、装置の針は狂ったように回転し、甲高い警告音を発した。
「目標、発見!確保せよ!」
兵士たちが、リアンたちに迫る。フィンが、咄嗟にリアンを庇うように前に出た。
「あなたたちは、何者ですか!彼が、何かしたというのですか!」
「どけ、小僧」
隊長は、フィンを突き飛ばすのではなく、その首根っこを掴み上げ、喉元に、禍々しい紫色の光を放つ魔導ナイフを突きつけた。
「動くなよ、『発生源』。こいつの命が惜しければな」
フィンの顔が、恐怖と苦痛に歪む。その瞬間、リアンの世界から、音が消えた。
「やめろぉっ!!」
魂の絶叫と共に、リアンの体から、制御不能の魔力が光の奔流となって溢れ出した。それは暴力的な破壊の力ではなかった。衝撃波が隊長とフィンを引き離し、広場の硬い石畳の隙間という隙間から、色とりどりの花々が、まるで世界の再生を祝福するかのように、一斉に咲き乱れた。
兵士たちは、そのありえない光景に、恐怖と戸惑いの表情を浮かべ、立ち尽くす。
「…なんだ、今の魔法は…!?」。
彼らの経験上、魔法とは、もっと直接的で、暴力的なものであるはずだった。硬い石畳から、何の兆候もなく、生命が爆発するように咲き誇るなど、理解の範疇を超えていた。
彼らが、それでもなお、リアンに魔導銃を向けようとした、その時だった。
彼らの頭上、飛空艇のハッチが開き、一人の騎士が蒼い炎のオーラをまとって舞い降りてきた。騎士アニヤだ。その視線は、無様に転がる部下たちには目もくれず、ただ一点、リアンだけに注がれていた。花畑の中心で、一人佇む少年。その存在から放たれる、規格外の力の気配。
「…お前が、反応の源か。なるほど、私の部下たちが手も足も出ないわけだ」
アニヤが腰の剣に手をかけた瞬間、彼女とリアンの間に、まるで陽炎のように、一人の女性が音もなく現れた。
「そこまでです、皇国の騎士」
「何者だ、貴様」
「その子を連れて行くことは、私が許さない」
「ならば、先に邪魔なお前を排除して奪い去るまで!」
アニヤの姿が霞み、青い炎をまとった斬撃が、嵐のようにその女性に襲いかかる。しかし、女性は杖を構えもしない。彼女の周囲の空間そのものが、まるで重い水の中のようになり、アニヤの超高速の剣が、スローモーションのようにその勢いを失っていく。アニヤが放った蒼い炎は、女性に届く前に、美しい光の蝶へと姿を変え、空へと舞い上がった。
「…小賢しい!」
アニヤが距離を取った瞬間、上空の飛空艇から、副隊長と思わしき男の焦った声が響く。
「アニヤ様が押されている!構うな、邪魔者ごと、目標を焼き払え!主砲、発射!」
飛空艇の船首から、村一つを消し飛ばすほどの、禍々しい紫色の魔導砲が放たれた。
村人たちが悲鳴を上げ、リアンが絶望に目を見開いた、その時。
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凄まじい破壊の光が、彼女の杖の先端、その一点に吸い込まれていく。いや、吸収ではない。破壊のエネルギーが、彼女の杖を通して、全く別のものに「変換」されていくのだ。
次の瞬間、彼女の頭上から、巨大な一本の「光の樹」が、天を衝くほどの勢いで生え伸びた。その枝は、魔導砲のエネルギーを美しい花として咲かせ、そして、桜吹雪のように、無害な光の粒子となって広場に降り注いだ。
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「…撤退する!」
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セラフィナは、リアンの首にかかるペンダントを指差す。
「そのペンダントは、あなたの先祖が遺した、『原初の魔法』の力を増幅させ、調律するための魔導具。ヴァルトゥス皇国は、そのペンダントと、使い手であるあなたを利用し、世界の封印を解こうとしているのです」
話を聞き終えたリアンは、恐怖に顔を青ざめさせ、俯いた。
「僕のせいで…僕の力が暴走したせいで、みんなが危険な目に…僕みたいな、力も制御できない人間が、旅に出ても…きっと、足手まといになるだけだ…」
その不安な言葉に、セラフィナは静かに、しかし力強く答える。
「その恐怖は、あなただけのものではありません。かつて、あなたの先祖たちも、そのあまりに大きな力に悩み、苦しみました。ですがリアン殿、あなたの力は『暴走』したのではありません。『目覚めた』のです。あなたの、大切な人を守りたいという心に応えて。力そのものに善悪はありません。それを導くのは、あなたの心です。私は、その導き方をお教えするために来たのです」
セラフィナは、リアンの前に膝をつき、その手を優しく握った。
「あなたが、その力を正しく導けるようになる、その日まで。このセラフィナが、命を懸けてあなたを守り抜きましょう。ですから、何も心配はいりません」
その言葉に、リアンは顔を上げる。彼の瞳には、もう怯えはなかった。
「…行きます。僕が、みんなを守れるようになるために」
その覚悟に、父親は唇を噛み締め、母親は静かに涙を流した。
その時だった。ずっと黙って話を聞いていたフィンが、固く拳を握りしめて立ち上がった。
「セラフィナさん。あなたの話は、まだ信じられないことだらけです。でも、もしそれが本当なら…これは僕が今まで本で読んできた、どんな歴史や伝説よりもすごい、世紀の謎だ。僕は、この村で一番の物知りだなんて言われてるけど、結局は本の中の知識だけだ。でも、その知識が、これからリアンが直面する謎を解くのに、きっと役に立つはずです!」
そして、彼は親友であるリアンに向き直り、いつものように、しかし今までにないほど力強い笑顔で言った。
「それに、リアン。君が『原初の魔法』の使い手なら、僕はその『最初の研究者』になる。君の力を正しく理解し、記録し、支えるのが僕の役目だ。君が道に迷ったら、僕の知識が地図になる。君が力に悩んだら、僕がその答えを探し出す。二人なら、どんな謎だって解き明かせるさ。…何より…親友が、そんな過酷な運命に一人で立ち向かうのを、黙って見ているなんて、僕にはできません!」
その言葉には、ただの友情だけでなく、真理を探求する者としての強い意志と、リアンへの絶対的な信頼が込められていた。
フィンの揺るぎない瞳に、リアンの両親も、そしてセラフィナも、何も言えなかった。
こうして、二人の少年の、そして世界の運命を賭けた壮大な旅が、今、始まろうとしていた。
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しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
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