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同じ気持ちを味わえ①
しおりを挟む通常、女神の信仰者が祈りを捧げる礼拝堂にて目を瞑りたくなる光景が広がっていた。いた、というのはついさっき終わったからで。半分人間でありながら、普通なら思いつかない方法でアニエスの精神を破壊寸前まで追い込んだイナンナにアレイスターは戦慄した。
アンナローロ公爵夫妻の痛みを思い知れとは、アニエスとルイジが礼拝堂に放り投げられた時。普通、神聖な場で汚らわしい行いをするだろうかと頭を抱えたくなった。
「アニエス、アニエス!」
放心状態のアニエスにはルイジの叫びは届かない。
「アニエスちゃん」
全身汗に塗れ、肌を赤く染め上げた裸体は淫靡で体を丸めているのは微かに残る理性がそうせている。
アニエスの顔の近くに座ったイナンナは熱い頬に触れた。ビクッと反応され薄く笑った。
「どうだった? 愛する人の目の前で、愛してもいない相手に犯された気分は」
「アニエス! アニエス!!」
「アレイスター~ルイジくんに猿轡を噛ませて」
ルイジがクロウに見える幻覚を掛け事を起こした。アニエスの名を叫び続けるルイジをクロウに見せていたからアニエスの絶望は大きい。
喚き続けるルイジの声がうるさくてアレイスターに猿轡を噛ませると、再びアニエスに問い掛けた。
「一応、公爵夫人のアニエスちゃんに配慮して男娼館で大人気の子を相手にしたのだけどお気に召さなかった? それとも人形を相手にしていると思えと付けたせいかしら?」
楽し気に話すイナンナと異なりアニエスは放心状態のまま。
「ねえ~アニエスちゃん。クロウくんの気持ちちょっとは分かった~? 好きでもない相手に犯され、声を上げたくても抵抗したくても何もできない絶望を」
アニエスは何も発さない。汗に濡れたアニエスの髪を撫でたら猿轡を嚙まされたルイジが言葉にならない声を上げるので、アニエスから離れルイジの側に移動した。ルイジを知る者なら誰もが驚く変貌ぶりを笑いつつ、体を拘束されて動けない姿を見てとある案を思い付いた。
「アレイスタ~、ルイジくんをアニエスちゃんの相手をしてくれた子のいる男娼館に運んで~」
「は!? な、何を考えているのですか!?」
「愛する妻が無理矢理犯されたのなら、夫も無理矢理犯されてその痛みを知るべきだと思うの~」
「よくもまあ惨い真似をさせられる……」
「そう? 二人がアンナローロ公爵夫妻にした事を思えば妥当じゃない?」
「モルディオ公爵については?」
「ルイジくんは愛する人の目の前で犯されるって体験は無理じゃない~だってアニエスちゃんルイジくんを愛してないんだもん。なら、愛していない相手に犯される体験だけでもしてもらわないと」
「惨い……」
この言葉しか出てこないアレイスターは哀れみの瞳をいつの間にか呼ばれた神官により運ばれるルイジへやった。何処へ運ばれるかイナンナの台詞から察しても、言葉にならない声でアニエスを叫び続けた。ルイジがいなくなると礼拝堂内に静けさが訪れた。
「議会でモルディオ夫妻の罪状が決まるまで毎日頑張って~。あ、ちゃんと上手な子を手配してるから心配しないで~」
肝心の尋問はどうしたとアレイスターに呆れられるがとっくの前に終わらせたと発した。え? と漏らしたアレイスターへ艶笑を向けた。
「ふふ! 早く楽しみたいから裏技を使ったの~」
心底楽しんでいるイナンナに呆れ果てるしかないアレイスターだった。
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