6 / 81
1人が好きな仲間1
しおりを挟むレーヴの謎の行動を目撃して翌日。元々クラスは違う上、シェリのクラスとレーヴのクラスの場所が離れているので会うのはまずない。
けれど教室にいて、いざあの焦燥感に駆られたレーヴと会ってもシェリはどうしたらいいか分からない。なので、授業開始時刻になるまでは人気の少ない裏庭にいることにした。
何も悪さをしていないのに隠れる真似をする。前の自分だったら癇癪を起こしただろう。そういう短気な性格が嫌われていた。
思い出せば思い出すだけへこみ、惨めになる。
今日ミルティーの机に目を向けた時、小鳥の刺繍が入ったペン入れが置いてあったので登校はしているらしい。授業になれば彼女も戻るだろうから気にするだけ無駄である。
ただじっとしているのも時間が無駄に流れるだけなので、シェリは家から本を持参していた。
タイトルは『素敵な王子様と可愛いお姫様』である。作者はタイトルを考えるのが面倒だったのか、センスがなかっただけなのか。ありがち過ぎるタイトルだ。
けれど、この本はシェリのお気に入りの本だった。幼い頃から何度も読んでいる。今更読まなくても内容は全部覚えている。
敢えて持って来たのは、本に登場する素敵な王子様がレーヴだったらいいなという長きに渡って抱き続けた願望を捨て去る為。
可愛いお姫様をミルティーと思い読んだら、素敵な王子様が自分を見ないのは所詮自分は王子様の幸せを邪魔するしかない悪役だからだ。
スカートのポケットからハンカチを取り出し、下に敷くとそこに座った。はしたないが誰もいないので多目に見てほしい。本のページを開いたシェリに声が掛かった。
大袈裟な程跳ねた肩。勢い良く振り向くと知っている男子生徒が申し訳無さそうな顔で立っていた。
「あ……ごめんね、オーンジュ嬢。びっくりさせて」
「いえ……」
男子生徒はヴェルデ・ラグーン。ラグーン侯爵家の次男でレーヴの友人だ。ヴェルデの名の通りの緑色の瞳は水晶玉のように美しく、風に揺れて靡く黒髪は濡れ鴉のような艶やかさがある。
普段はレーヴと行動を共にしている彼がこんな人気のない裏庭にいるのはどうしてなのか。すると、顔に出ていたのかヴェルデは苦笑を浮かべた。
「人のいない場所を探していたんです、ぼくも」
「そうだったのですか……わたしは別の場所へ行きますわ」
「いえ。先にいたのはオーンジュ嬢ですので気になさらず」
「そうですか。ヴェルデ様が宜しければ、此処にいますか? どうせ、わたしは本を読んでいますので」
「では、お言葉に甘えて」
裏庭はシェリの所有場じゃない。
誰が来ても、いても良い場所だ。ヴェルデが一定の距離を取ってシェリの隣に座った。
レーヴと親しいからと言ってシェリ自身が彼と親しい訳じゃない。レーヴ以外の男性にシェリは全く興味なかった。だがこれからは、新たな婿養子を探すに辺りそうも言ってられない。
昨日帰宅すると丁度父フィエルテと玄関先で会った。そこで婿養子について話を切り出すと今はまだ考えなくていいと言われてしまった。
長年の片想いを父は勿論知っている。故に、レーヴの為に身を引いたシェリを想い失恋の傷を癒す時間をくれたのだ。
亡き母ディアナに似たシェリを深く愛し、大切にしてくれている父をこれ以上悲しませない為にもシェリは自分の出来ることは全力を尽くすと誓った。
125
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる