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元には戻らない2
しおりを挟む“転換の魔法”とは、高等技術を必要とする魔法で使用するには繊細な魔力操作能力がなければ発動不可能。アデリッサはレーヴのシェリを愛する好意を自分へ、レーヴのアデリッサを嫌う嫌悪をシェリへ転換した。
魅了と異なるのは、元々存在する感情の行き先を転換しただけなので魔法を掛けられたレーヴが違和感を覚えることがないことと個人にしか対象と出来ないこと。
レーヴの目には、シェリはアデリッサ、アデリッサはシェリに見えている。
元に戻す方法が実はないのだ。
術者であるアデリッサを殺すか、魔力を封じれば万事解決にならない。そうしても、愛する者を失ったレーヴは嘆き悲しむだけ。
(元々あったシェリへの好意をアデリッサに変換されただけだからね……)
隣に歩くシェリに事実を話すべきかと思案する。
王家の番犬と謳われるヴァンシュタイン家の3男。ナイジェル公爵は娘に甘々な意外、王家に忠実な男。彼の行った政策で数年前襲った飢饉を逃れられた。黒い噂も聞かない。オーンジュ公爵との仲の悪さは性格の合わさなから来ているだけ。アデリッサが行ったことは重罰に匹敵するが第2王子としてのレーヴには問題が起きていない。婚約者がいながら浮気同然の行動をしているのであれだが……うん、とミエーレは判断した。
(王家にとって今回のこれは実害がないので、問題なし)
寧ろ、哀れな女だと抱く。
ヴェルデと同じく、ミエーレも幼少期からレーヴと交流があった。家同士の繋がりから1番シェリと多く会っていたミエーレは頼れられていた、レーヴに。
初めての顔合わせで失敗して以来、何度正直に気持ちを言おうとしても緊張と恥ずかしさが勝って進展どころか後退する一方。何度か助言をしたり、シェリの好みそうな場所や物を教えてやるが……結果はお察し。
ただ、シェリを好きな気持ちだけは本物だったんだ。
“転換の魔法”を掛けられた対象者を元に戻す方法はない。元からある好意を他人へ矢印を変えられただけだから。
シェリに向けられていた熱い愛を方向を変えることで自分に向けさせたアデリッサ。そうまでしないとレーヴの心を手に入れられないと覚悟した、彼女なりの最後の行動なのだろうが……哀れ以外の何者でもない。
レーヴのシェリに対する変貌した接し方。あれが元々自分に向けられていたものと知り、悔しくは悲しくはならなかったのか。
席を立ったレーヴに隠れて見せたあの歪んだ笑み……手に入れれば他のものはどうでもいいことか。
「はあ……」
「あら、大きな溜め息ね」
「まあね。シェリはもう帰る?」
「ええ。今日は迎えを断ったから、歩いて帰るけれど」
「なんだったら、おれの家の馬車で帰る? ちょっと城に行かなきゃいけないから遅くなるけど」
「何か用事でも?」
「父上に放課後来るように言われているんだ」
「そう。でもありがとう。わたし、今日は歩いて帰りたい気分なの」
「あっそ」
シェリと別れたミエーレは寄り道せずまっすぐ校門へと向かった。
待たせていた馬車に乗り込んだ。
「出発して」
行き先は王城。
レーヴ、アデリッサの関係の正体を父ヴァンシュタイン公爵と国王に報告する為に行く。
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