思い込み、勘違いも、程々に。

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簡単じゃない

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 それよりも王太子殿下の台詞に思わず声を上げてしまった。


「俺は構わないが……」


 リアン様が伺うように私を見る。


「殿下、そこまでしなくても」
「保険は多いことに越したことはない。リグレットは何をしでかすか分からないからな。後、何度もやらかして余計リアンに嫌われてくれたらいい」
「ええ……」


 誰かを好きになる気持ちは皆同じ。相手が誰を好いていようと自由なのに、それを受け入れられず、好かれる相手に嫌がらせをしてしまう気持ちを――私は知っている。どことなく私と王女殿下は似ている。愛する人には既に愛する人がいる。どれだけ気持ちを注いでも受け入れられず、振り向いてくれない。
 私だけに嫌がらせがされるのならいい。エルミナに危険が及ばなければ。また、リアン様に迷惑を掛けたくない。有難い申し出ではあるが辞退しよう。


「王太子殿下。私なら大丈夫です。エルミナに何もされなければ」
「フィオーレ嬢。リグレット……この国の王女が君に危害を加えたとするとエーデルシュタイン伯爵家だけじゃない、アルカンタル伯爵家の不興を王家は買うことになる。アルカンタル伯爵家は、王国一の財力を誇る。もしも王女の粗相が原因で王国から出て行かれるようなことがあれば、我が国の経済に多大な影響を与える」
「そうなった場合は私からお祖父様達を説得しますが私個人の事で国を見捨てるなどは……」
「……君はどうも自己評価が低い気がする」


 残念そうに眉尻を下げられるも、仮に私が王女殿下によって危害を加えられても母方の祖父母が王家を見捨てるなど有り得ない。個人と国を天秤に掛ければ、どちらに傾くかなど子供にだって分かる。


「リアン。フィオーレ嬢はこう言うがついてやってくれ」
「王太子殿下……やはり私は……」


 リアン様が側にいてくれるのが嫌なんじゃない。嬉しくても恥ずかしさが勝って上手に話せないし、顔だって真っ赤に染まって情けなくなる。危惧するのは私といるせいであらぬ噂を立てられ、恋心を抱くエルミナとの距離が遠のくこと。エルミナが生徒会に入ってしまえば私という仲介役は要らなくなるけれど、余計は種は1つでも減らしていたい。
 尤もらしい事を話そう。


「フィオーレ嬢。リグレットは頭に血が上ったら、何をしですかムルですら予想がつかないんだ」
「私と一緒にいてリアン様に迷惑をお掛けするのは」
「迷惑とは思わない」


 どうしたらリアン様に納得してもらえるの?
 私はリアン様に迷惑を掛けたくない。
 リアン様とエルミナには好きな人といてほしい。
 ……そうだわ。


「……分かりました。王太子殿下とリアン様のご好意に感謝します」


 私が漸く受け入れた為、2人はそっと安堵の息を吐いた。
 どうして簡単なのに思い付かなかったのか。
 エルミナとリアン様の距離を近付ける方法……あるじゃない。

 友達が出来たと言うのに私といたがるエルミナと今回の出来事で一緒にいることとなったリアン様を毎回2人っきりにさせればいい。その都度、私は用事があると離れたらいい。後で言い訳が出来るよう、しっかり用事を作っておかないと。事情を知っているアウテリート様に協力してもらおう。

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