思い込み、勘違いも、程々に。

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恨み

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 ドロシー様を捕まえた経緯を訊ねれば、私との会話を終えたアクアリーナ様は教室へは向かわず2階フロアで降り教員室に用があり足を向けたらしい。その途中、上から何かが降ってくる光景を視界の端に捉え、直後大きな割れる音を聞いたアクアリーナ様が窓から下を覗き込むと手を前へ突き出すように倒れているエルミナがいた。近くには割れて土を散乱させた植木鉢が……。当たったのだと大慌てで窓から離れ外へ行こうとした刹那、青白い顔をしたドロシー様が階段を降りていくのを目撃し、怪しいと睨んで外へは行かずドロシー様を追った。

 人気のない場所に着くと独り言のように「私は悪くないっ、悪いのはあいつの姉よっ」と呟くのを耳にしドロシー様が植木鉢を上からエルミナを狙って落としたのだ。


「ドロシー様がどうして……」


 ドロシー様の独り言の姉が私なのはエルミナを狙った時点で解った。問題は何故彼女に恨まれたか。


「多分だが……新入生の歓迎会を覚えているか?」
「はい。ドロシー様がアウテリート様を隣国の公爵令嬢だと知らなかったあれですよね……」
「ああ。恥をかかされたとアクアリーナはドロシー嬢をその日中に切ったんだ。元々、ノーラント侯爵令嬢の取り巻きの中でも親しくしていたのを図に乗っていた節があったんだ。アクアリーナに切られたドロシー嬢には友達がいなくて以来1人ぼっちになったんだ。そこに目を付けたそいつらがドロシー嬢に話を持ち掛けたみたいだ」


 私を陥れ、学院だけではなくエーデルシュタイン伯爵家にいられなくようにする為に……。
 ドロシー様が私を恨んで持ち掛けられた話に乗ったのは理解しても、ガルロ殿達が凶行に及んだ理由はまだ知れてない。
 それは王太子殿下が決める話し合いの場で明らかにすると宣言された。手首を折られたらしいガルロ殿も無事な他3名の男子生徒も後から駆け付けた教師達に引き渡され、自宅謹慎となった。早急に各家に事情を報せる手紙を書いた王太子殿下が従者に届けるよう託した。

 私といえば、リアン様に抱えられ保健室に連れて来られた。
 設置された椅子に座らされ怪我の有無を訊ねられた。


「痛い場所や怪我はないか?」
「大丈夫ですよ、髪や腕を引っ張られただけです」
「っ……」


 非常に痛かったが殴られるまではなかった。いや、オーリー様やリアン様達が助けてくれなかったら、頭に血が上ったガルロ殿に殴られていた可能性は大いにあっただろう。痛ましげに顔を歪めたリアン様は私の腕にそっと触れた。


「今回の件にリグレットが絡んでいる可能性は低いだろうが断言はしない」
「今は王宮で謹慎中だとエルミナに聞きました」
「ああ。王女としての振る舞いをしているとアウムルが判断するまでは、外に出て来るなと告げたらしい。王妃殿下の計らいで大変厳しいと有名な家庭教師もついた。まあ、1日で解雇になったがな」
「そ、それはまた」
「国王陛下が解雇にしたんだ。それでまた、王妃殿下と陛下の溝が深まった」
「……」


 王族の問題に一伯爵令嬢が首を突っ込むものではない。
 ここは何も言わずにおこう。
 袖を捲っていいかと問われ、戸惑いがちに頷いた。リアン様に捲られ、顕になった腕は予想以上に酷かった。




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