思い込み、勘違いも、程々に。

文字の大きさ
57 / 104

恨み

しおりを挟む
 



 ドロシー様を捕まえた経緯を訊ねれば、私との会話を終えたアクアリーナ様は教室へは向かわず2階フロアで降り教員室に用があり足を向けたらしい。その途中、上から何かが降ってくる光景を視界の端に捉え、直後大きな割れる音を聞いたアクアリーナ様が窓から下を覗き込むと手を前へ突き出すように倒れているエルミナがいた。近くには割れて土を散乱させた植木鉢が……。当たったのだと大慌てで窓から離れ外へ行こうとした刹那、青白い顔をしたドロシー様が階段を降りていくのを目撃し、怪しいと睨んで外へは行かずドロシー様を追った。

 人気のない場所に着くと独り言のように「私は悪くないっ、悪いのはあいつの姉よっ」と呟くのを耳にしドロシー様が植木鉢を上からエルミナを狙って落としたのだ。


「ドロシー様がどうして……」


 ドロシー様の独り言の姉が私なのはエルミナを狙った時点で解った。問題は何故彼女に恨まれたか。


「多分だが……新入生の歓迎会を覚えているか?」
「はい。ドロシー様がアウテリート様を隣国の公爵令嬢だと知らなかったあれですよね……」
「ああ。恥をかかされたとアクアリーナはドロシー嬢をその日中に切ったんだ。元々、ノーラント侯爵令嬢の取り巻きの中でも親しくしていたのを図に乗っていた節があったんだ。アクアリーナに切られたドロシー嬢には友達がいなくて以来1人ぼっちになったんだ。そこに目を付けたそいつらがドロシー嬢に話を持ち掛けたみたいだ」


 私を陥れ、学院だけではなくエーデルシュタイン伯爵家にいられなくようにする為に……。
 ドロシー様が私を恨んで持ち掛けられた話に乗ったのは理解しても、ガルロ殿達が凶行に及んだ理由はまだ知れてない。
 それは王太子殿下が決める話し合いの場で明らかにすると宣言された。手首を折られたらしいガルロ殿も無事な他3名の男子生徒も後から駆け付けた教師達に引き渡され、自宅謹慎となった。早急に各家に事情を報せる手紙を書いた王太子殿下が従者に届けるよう託した。

 私といえば、リアン様に抱えられ保健室に連れて来られた。
 設置された椅子に座らされ怪我の有無を訊ねられた。


「痛い場所や怪我はないか?」
「大丈夫ですよ、髪や腕を引っ張られただけです」
「っ……」


 非常に痛かったが殴られるまではなかった。いや、オーリー様やリアン様達が助けてくれなかったら、頭に血が上ったガルロ殿に殴られていた可能性は大いにあっただろう。痛ましげに顔を歪めたリアン様は私の腕にそっと触れた。


「今回の件にリグレットが絡んでいる可能性は低いだろうが断言はしない」
「今は王宮で謹慎中だとエルミナに聞きました」
「ああ。王女としての振る舞いをしているとアウムルが判断するまでは、外に出て来るなと告げたらしい。王妃殿下の計らいで大変厳しいと有名な家庭教師もついた。まあ、1日で解雇になったがな」
「そ、それはまた」
「国王陛下が解雇にしたんだ。それでまた、王妃殿下と陛下の溝が深まった」
「……」


 王族の問題に一伯爵令嬢が首を突っ込むものではない。
 ここは何も言わずにおこう。
 袖を捲っていいかと問われ、戸惑いがちに頷いた。リアン様に捲られ、顕になった腕は予想以上に酷かった。




しおりを挟む
感想 198

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

処理中です...