思い込み、勘違いも、程々に。

文字の大きさ
74 / 103

無意識に2

しおりを挟む
 

『予知夢』はエーデルシュタイン家のみに現れる貴重な能力。私が『予知夢』の持ち主だとエーデルシュタイン家の関係者で知るのはお祖母様だけ。王家に申告もしてないから王家も知らない。口に出してしまった言葉は戻せない。
 怖いけどリアン様を見ないと……と顔をゆっくり上げれば、声色と同じで呆然とした面持ちのリアン様がいて。
 私と目が合うともう1度問われ、こくりと頷いた。


「エーデルシュタイン家に『予知夢』を視れる者がいるとムルも知らない筈だよ」
「……私がお祖母様に頼んで隠してもらっているんです」


 国に関わる重大な予知を視るのが常なのに、私の場合は身近な人の不幸を主に視る。本来の『予知夢』とはどこか違うから、隠されている。私自身も公にしたくない。

 ただ、リアン様にはある程度は話しておこう。
 2つの理由を話すと今回の件に触れられた。


「ひょっとして、何か視たんじゃ」
「窓から落とされた植木鉢がエルミナに当たって大怪我を負う光景を視ました。万が一起きてしまっても防げるように、エルミナには建物側を歩かないでとお願いしてました」


 幸運なことにエルミナの同級生の機転でエルミナは大怪我を負わずに済んだ。心の底から良かったと思える。


「……君は……。フィオーレ嬢が『予知夢』を視れるのは分かった」
「リアン様、あの、私が『予知夢』を視れるのは内緒にしてほしいのです」
「分かってる。君にも事情があるんだ。みだりに話したりしない」
「ありがとうございます」


 ホッとして胸をなでおろした。口が軽い方じゃないのは分かってるから、然程不安はない。そこから会話が途切れてしまった。
 何を話したらいいの? 婚約の話、かな……。

 ……。

 時間だけが無駄に過ぎていく。何か、何か話題を、と思った直後リアン様からカンデラリア公爵家で開かれる親族会の話をされた。
 親族会……そういえば、今年は同伴者を1人連れて来て良いのだった。アクアリーナ様に何故か同伴者を誰にするか問われ、アウテリート様の名前を出した。まだ確認はしてないので参加してくれるかは不明だ。


「カンデラリア公爵家には、他にも君を快く思わない人はいるんじゃないのか」
「どう、なのでしょう。トロントおじ様と義祖母様にしか今まで言われてこなかったので……」


 堂々と罵って来たのは上の2人だけだが、陰で言われているのならまだ聞いていない。親族会で私が嫌な目に遭わないか心配されている。


「参加しない考えはないのか?」
「お父様達に心配を掛けたくないのです。お義母様は無理に参加しなくてもいいと言いますが……顔だけ見せて帰るという手もありますし」
「……フィオーレ嬢」


 心配しないで下さいと発する前にリアン様に呼ばれた。


「その親族会……俺が君の同伴者になっても?」
「え」
「君が心配だ。どうもフィオーレ嬢は自分自身の評価が低い。何をされても伯爵夫妻にも周囲にも言わないのは、却って心配を掛けるだけだ」
「あ、あの、でも、本当に……」


 大丈夫と言い掛けて俯いた。リアン様の綺麗な青水晶の瞳にまた翳りが浮かんだ。折角の好意を何も言わずに受け取れってことなのかな? 
 ……あ。

「……良いのですか? リアン様に来て頂いて」
「俺から行きたいと言ったんだ。文句なんてないよ」


 私の馬鹿……これで何度目だろう。
 リアン様は私の心配を表向きとして、……エルミナと会いたいからだ。社交界デビューは来月王城で開催されるパーティー。でも、親族会なら着飾ったエルミナを真っ先に見れる貴重な場。

 あんなキスをされて、心配をされて、心の何処かで浮かれてしまっていた。

 リアン様にお礼を述べて、そこで神官様がリアン様を呼びに来た。どうやら、王太子殿下が来てほしいとのこと。私は伯爵家の馬車で両親を待っていることにした。2人もまだ終わっていないとか。

 神官様に連れられるリアン様を見つめ――隣にエルミナがいる光景が見えた。

 とてもお似合いの男女……私じゃ、とても敵わない。


「……リアン様……」


 貴方が好きです……。


しおりを挟む
感想 198

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

処理中です...