強い祝福が原因だった

文字の大きさ
17 / 50

ガブリエルの乱入

しおりを挟む


 ならばイヴとダグラスは子供の頃に出会ったんだと納得したエイレーネーは否定された。会った時からイヴは大人だと。


「イヴは何歳なの?」
「私は人間じゃない。だから、君達の年齢感とはかなり異なる感覚を持つ」
「人間じゃない?」


 逸脱した美貌を除いてイヴを見ても人間にしか見えず。人間以外で想像するのは悪魔。


「……悪魔とか?」
「ははは!  レーネは面白いな。残念、違う」


 悪魔でないのなら、そしてイヴの見目から想像するのは。

 エイレーネーはまさかと思いながら天使様と出した。これにもイヴは笑うから違ったと抱くと――


「まあ、近い生き物かな」
「え」
「天使ではないけど天使に近い生き物さ」
「そ、それって天使様ってこと!?」
「いいや。あくまで近いだけ。はい、私の正体が何かは終わり」


 最も気になる部分で話を強制終了させられ、不満を露にしてとイヴは終わりだと言えば終わりとこれ以上は言わず。

 口許に笑みを浮かべるだけで閉ざしてしまった。話を効いていたラウルが唖然としてイヴを凝視しても同じ。イヴが声を発しないのなら諦める。エイレーネーは「もう……」と呟き、この後第1王子と聖女の小パーティーに行くラウルへ向いた。


「ガブリエルはラウルと一緒に行く気でいるけれど、ラウルはどうするの?」
「一緒になんて行かない。殿下と聖女様にご挨拶をしたらすぐに屋敷に戻って父上と話をする」


 今回ダグラスが来なかったらラウルはガブリエルと一緒に行って小パーティーに参加していた。エイレーネーは行きたくないと我儘を言っているとガブリエルや周りはラウルから遠ざけていた。


「なんだ婚約者君。君、レーネの妹にご執心じゃなかったんだ」
「……勘違いをさせた私も悪かった。ガブリエルや周りの声を鵜呑みにせず、エイレーネーに話をしていたらこんな事には」
「君がどう言ったところで妹やその周りはさせなかったさ」
「……」


 否定したい言葉を否定する言葉がラウルにはなかった。強引な行動を取ろうとしてもガブリエルを悲劇の令嬢に仕立て上げればラウルは放っておけなくなる。無理矢理にでも関わりを持たせようとした。


「君が屋敷に来ている時や迎えに来た時、妹やその周りは大抵レーネが体調不良とか不在とか言っていたろう? あれは全て嘘。レーネは君が来たこと、迎えを報せる手紙があったことすら知らないのが殆どだった」
「そんな……だ、だが、何度もガブリエルの侍女に様子を見に行かせたんだ」
「君は頭がお目出度いね。レーネの妹は君を欲しがっているんだ。欲しい相手が他人を気にする、なんて許せない。レーネがいたら君はレーネに夢中になるから」


 何度目かの顔を青く染めたラウルが項垂れた。昨日が正にそれだった。ガブリエルの侍女が様子を見に行ったと聞かされてもエイレーネーは留守にしていたし、どうせ来ていない。来てもいないのに体調不良と判断される筋合いはないが会う気がなかったのは事実。
 罰が悪そうに「私も悪いわ。ラウルが来ていると聞かされる時があってもどうせガブリエルに会いに来ていると思っていたから」と謝ったら、更にラウルは項垂れた。首がかなり下がっているが大丈夫なのだろうか。
 愉快で堪らないとイヴが大きく笑ったら、別室に移ったダグラスが戻った。


「そろそろ行くぞ。話は終わったか」
「さあ。私は元からないよ」
「お前にある訳ないだろう。エイレーネーにしか姿を見えないようにしていたのに」
「彼等に姿は見えなくても私には見えていた。ちょっとしたお節介はさせてもらったが」
「天使のお節介か……有難迷惑な代物だな」
「ははは、誉め言葉として受け取っておこう」


 この場で最もイヴと付き合いの長いダグラスが天使と口にした。近しい存在だと言っていたくせに実際は天使なのかと言いたげな目をイヴにやるエイレーネーは、愉しそうに笑うイヴに首を振られた。


「ダグラスは私の正体を知っても天使と言うのさ」
「はあ……お前の正体を知れば腰を抜かすぞ」
「私自身は大した存在じゃないさ。まだ、兄者や甥っ子の方が尊い」
「はあ……お前の探し人は見つからないのか」
「ああ。だって、私に探す気が起きないからね」
「はああ……」


 途轍もない秘密を抱えていそうであるイヴを呆れ果てた眼で見やったダグラスは大きな溜め息を吐き、交互に見るエイレーネーにも呆れている。


「気にし過ぎると頭が痛くなるぞエイレーネー」
「けど、とても気になって」
「イヴの正体はその内解る。急がなくてもな」
「……」


 ダグラスがそう言うのならそうなのだろう。エイレーネーは再度促されソファーから立った。

 時だ。外が騒がしい。皆が扉を見たら勢いよく開かれた。


「ラウル様!!」
「ガブリエル?」


 乱入者はガブリエルだった。
 ラウル一直線にやって来たガブリエルは慌ててもうすぐパーティーに遅れると放った。
 1人でパーティーに行くつもりしかないラウルはガブリエルの意図を察しつつも「そうだな」と腰を上げた。


「私も行くよ。殿下は時間にうるさい方だから」
「お気をつけて」
「……うん。エイレーネー、私は――」
「ラウル様!  お姉様なんて放って早く行きましょう!」
「……」


 眉と眉の間に薄い皺を寄せつつも一言も発しないまま、ガブリエルを置いてラウルは部屋を出て行った。「ラウル様!?」とガブリエルは追い掛けて行き、肩を震わせるイヴに呆れた眼をやり、ダグラスはエイレーネーの手を取って部屋を出た。そのまま外へ出て上を見たエイレーネーは、未だ空に放置されている公爵と目が合うも「エイレーネー」とダグラスに呼ばれ視線を下げた。


「あいつの目は何か言っていたか?」
「早く下ろせと」
「私達が門を潜れば魔法は解ける」


 ダグラスの言った通り、エイレーネー達が門を超えた直後ロナウド等は地面に下ろされていた。後方からロナウドの怒声が飛ぶ。転移魔法であっという間に王宮に飛んだ


しおりを挟む
感想 110

あなたにおすすめの小説

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?

ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。 イケメン達を翻弄するも無自覚。 ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。 そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ… 剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。 御脱字、申し訳ございません。 1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!

山田 バルス
恋愛
婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!

死に役はごめんなので好きにさせてもらいます

橋本彩里(Ayari)
恋愛
【書籍化決定】 フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。 前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。 愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。 フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。 どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが…… たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます! ※書籍化決定しております! 皆様に温かく見守っていただいたおかげです。ありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ 詳細は追々ご報告いたします。 アルファさんでは書籍情報解禁のち発売となった際にはサイトの規定でいずれ作品取り下げとなりますが、 今作の初投稿はアルファさんでその時にたくさん応援いただいたため、もう少し時間ありますので皆様に読んでいただけたらと第二部更新いたします。 第二部に合わせて、『これからの私たち』以降修正しております。 転生関係の謎にも触れてますので、ぜひぜひ更新の際はお付き合いいただけたら幸いです。 2025.9.9追記

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...