強い祝福が原因だった

文字の大きさ
20 / 50

快適





 実父ダグラスの許へ身を寄せてから10日が経った。いきなりの同居に戸惑うかもしれないと緊張していたものの、ダグラスがエイレーネーに気を遣って何事も最優先にしてくれたお陰で緊張はすぐに無くなった。ダグラスの私室の隣をエイレーネー好みの部屋に変えた魔法の腕前は流石としか言い様がなかった。家具も創ってくれようとしたがエイレーネーも創造魔法を習いたくて使用方法を強請った。特別な魔力操作は必要なく、重要なのは創造力だと説明された。試しに自分の思い描くテーブルを脳内で描き、魔法で創造するも――出来上がったのは描いた物とは程遠いデザインのテーブルだった。


『初めてにしては中々の出来だ。後はエイレーネー自身がどれだけ強く頭に描くかが重要だ』
『色んな家具を見ておくべきでした』
『それも良いが美術品を見るのも良いだろう。魔法使いの発想力を刺激してくれる』


 創造魔法なら使用者の思い描く物を強く念じないと完璧な形にはならない。エイレーネーがそうである。それから何度か試してみるが成功せず、ダグラスが創ってくれた。


「ダグラスとの生活は慣れた?」
「ええ。ホロロギウム家にいた時より快適」
「良かった」


 朝食を食べ終わるとダグラスは部屋に籠って魔法の研究をしている。毎日の事なので気にするなと言われており、用事があるなら好きな時に来いと許可を貰っている。此処にいる間エイレーネーは創造魔法の特訓、イヴとのお話、ダグラスが休憩を挟んだ時に話をし、屋敷の掃除もしている。生活魔法は殆ど使用してこなかったのでイヴにコツを伝授されている最中だ。
 今は朝食後ののんびりタイムといったところ、イヴと向かい合って座り紅茶を飲んでいた。


「此処に来て2日後にラウルが来て吃驚したわ」
「ああ、婚約者君ね。ソレイユ公爵から場所を聞いたんだろうね」


 従者もつけず、1人でエイレーネーを訊ねたラウルには度肝を抜かれた。馬車で来たと聞かされても心配はした。ダグラスの人払いの結界に弾かれなくて良かったとエイレーネーと会えたラウルはホッとしていた。エイレーネーも少しばかり不安だったが結界はラウルを無害と判断してくれた。
 庭で席を設け、ラウルに座るよう促した。お互い席に着くと此処での生活を問われ、快適だと答えた。


『公爵様やガブリエル達がいないのが1番大きい。あの人達を気にしないでいられる時間が出来て嬉しいの』
『エイレーネー……すまなかった。私は全く気付けなかった。エイレーネーの方が距離を取っていると思っていた。ガブリエルが会う度に言っていたから』


 あ、と口にしてからラウルは抑えるもエイレーネーは気にしていない。ラウルとガブリエルの方が一緒にいた時間が長いのだ、仕方ない。


『ごめん』
『謝ってばかりよラウル』
『エイレーネーとやっと話せるのにこんな話しか出来ない自分が嫌になる。私からエイレーネーの側へ行くべきだったんだ』


 声色からラウルの後悔が読み取れるもエイレーネーは何と返したら良いかと返答に窮した。ラウルは無理に返事は求めておらず、自嘲気味に笑んだ。


『あ……一昨日の殿下と聖女様の小パーティーなんだが。ガブリエルがやってくれたよ』
『!』


 話題を急に変えたのはこれ以上同じ話題だとお互い言葉が続かなくなるからだ。他人の嘘を見抜く聖女の前でガブリエルは予定通りの発言をした。先に国王から詳細を聞かされている上、王族と聖女相手に堂々と嘘を発したガブリエルはアリアーヌに即嘘だと指摘され身柄を拘束された。話はロナウドにすぐに届き、王族と聖女を前に嘘を申すとはどういう事かと国王に厳しく追及されたようだ。


『エイレーネーの言った通り、公爵様やガブリエルは聖女様が嘘を見抜く能力を持っていると知らなかったみたいなんだ』
『そう』
『先にダグラス様が陛下に話を回していたから、今回は厳重注意に止めたと聞いた。もうすぐある話し合いの席で言及するだろうって父上が』
『ラウルはソレイユ公爵様に此処を教えられたのよね?』
『ああ。ダグラス様の結界を通れるかはお前次第だって言われたよ』


 結果は目の前にラウルがいる。それが答え。
 それからも他愛のない話をしてラウルは帰った。次に来る日も告げて。


「レーネにとっては良い結果に回っているね」
「回りすぎて怖いくらい」
「彼等が何かをしてくると?」


 ホロロギウム家の人達。ガブリエルや後妻はあまり魔法が得意ではないので物理的に何かを仕掛けてくることはない筈。問題はロナウド。地位も権力もあるロナウドが何かをしないか心配だ。母方の実家にはダグラスが何かやり取りをしている節がある。一昨日、母方実家の家紋が押された手紙をダグラスの愛鳥ポッポ君が運んだ。
 可愛い名前だと意外に思ったら名付けはイヴがしていた。


「婚約者君とはどうするの?」
「ホロロギウム家にいないだけであんなに長く話せたのなんてね。外で会えば良かった」
「どうだろう。君の妹君は婚約者君にご執心だし、君の後をつけて無理矢理混ざるのは造作もなかったろうね」
「やめてイヴ」


 有り得そうな話だから背筋が寒い。


「次に会うのは明後日だったね。湖周辺を回るといいよ」
「そうね。お天気がよかったらそうするわ」
「悪ければ私かダグラスが変えてあげるよ」
「……天気を変えられるの?」
「私達くらいになれば可能さ」


 父が凄いのは目の前にいるイヴや亡き母、周囲から散々聞かされてきたから知っている。動物の完全変身を難なく使えるイヴもだが彼の場合人間ではないらしいのでそれが理由かと問う。
 イヴは困ったように笑うだけでエイレーネーの欲しい返事は与えなかった。


感想 110

あなたにおすすめの小説

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結済】25年目の厄災

恋愛
生まれてこの方、ずっと陽もささない地下牢に繋がれて、魔力を吸い出されている。どうやら生まれながらの罪人らしいが、自分に罪の記憶はない。 だが、明日……25歳の誕生日の朝には斬首されるのだそうだ。もう何もかもに疲れ果てた彼女に届いたのは…… 25周年記念に、サクッと思い付きで書いた短編なので、これまで以上に拙いものですが、お暇潰しにでも読んで頂けたら嬉しいです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。