強い祝福が原因だった

文字の大きさ
33 / 50

そっくりだった①



「……いいえ! 大魔法使い様の魔法なんかなくてもラウル様が愛しているのはわたくしです!」
「そうですわ! 愛らしいガブリエルが愛されないなんてことが……!」


 諦めの悪いガブリエルとリリーナ。2人を諫めないロナウドの視線は専らダグラスに向かっている。今にも飛び付かんばかりの眼光は、視線だけで人を殺せそうな殺気を纏っていた。別の意味で呆れた溜め息を吐いたルーベンが口を開く前にガブリエルが言い放った。


「だって! ラウル様は、初めて会ったわたくしに一目惚れしてくださいました! キラキラと目を輝かせてわたくしを見て下さった! あれも魔法のせいと言うのですか!?」


 そう……エイレーネーが最後まで残し続けている疑問。初めてガブリエルと会わせた際、嘗て自分にも向けた瞳をラウルはガブリエルに向けたんだ。人が恋に落ちる瞬間というのは、こういう事なんだなと鮮明に覚えていた。ラウルを好きなガブリエルもまた覚えていた。きっと彼女は、その時ラウルに恋をしたんだ。
 一同の視線がラウルに集中した。「そんな話聞いてないが?」と厳しい視線でルーベンに問われたラウルは呆然となっていた。目を泳がせ、エイレーネーと目が合うとハッとなって大きく否定した。


「違う、ガブリエルに一目惚れなんて絶対していない!!」
「ガブリエルの言っていたことは本当よ。その時のラウルを見てガブリエルをって……」
「そんな……」


 不仲の原因は主にガブリエルを筆頭としたホロロギウム家の面々とはいえ、元を辿ればラウルがガブリエルに一目惚れしたせい。否定してもエイレーネーに信じてもらえず、傷付いたラウルだったがアリアーヌが待ったを掛けた。


「ラウル様は嘘を申しておりません。ガブリエル様に一目惚れはしていないと言うラウル様の主張は本当です。ただ……ガブリエル様やエイレーネー様からも嘘は感じられません……」


 ラウル自身は一目惚れしていないと真実主張していても、エイレーネーとガブリエルの2人が一目惚れしたと主張するのも真実。
 嘘を見抜くアリアーヌの言葉がより混乱を招いた。

 信じてほしいと縋るラウルの言葉が嘘じゃないのなら、あの時ラウルがガブリエルを見て浮かばせた感情は何か。無意識に一目惚れをする可能性だってある。恋心と気付いていないだけで。
 エイレーネーの不安を読み取ったのか、隣にいるダグラスの手が頭に乗った。「お父さん……?」と見上げるとダグラスの黄金の瞳はガブリエルを注視していた。
 大魔法使いからの視線に居心地悪そうにするガブリエルを守るようにロナウドが抱き締めて隠す。それでもダグラスの視線はガブリエルに注がれた。


「……ああ、思い出した」


 ガブリエルからルーベンへと視線を移し、紡いだ言葉通りの声色でアレに似ているなと話し出した。


「あれ?」
「お前が王子だった頃に主従契約を結んだ魔獣だ」
「ああ、ガブの事か? ソレイユの領地にいるよ。年に何度か領地に戻っては遊んでいるんだ。ラウルにもかなり懐いていてな。ラウルもガブに……」


 続きの言葉を言い終える前にシーン……となった空気に気付いたダグラスとルーベン。ラウルに至っては「ひょっとして……」と冷や汗を流していた。改めてガブリエルを見たルーベンはまさかと抱く。


「…………ガブリエル嬢がガブにそっくりで感激した、なんて言わないよな……?」
「…………思い出しました」


 がっくりと項垂れたラウルは初めて会ったガブリエルが、その当時別れたばかりのガブにそっくりでまたガブに会えた感覚が湧き上がってつい感動してしまったと話した。人間、しかも令嬢相手に仲良しな魔獣とそっくりと言える筈もなく、言葉を出さないでおこうと気を張っていた。接してみるとガブと同じで人懐っこく、感情表現豊かで元気な姿が益々似ていたから親近感が芽生えた。

 ガブリエルを心奪われた姿に見えたのは、仲良しな魔獣とそっくりの女の子に出会って感動したから。

 ソレイユ領にルーベンが主従契約を交わした魔獣がいるとは聞いていたエイレーネーでもガブリエルにそっくりとは聞いておらず、魔獣は怖い生き物だと教えられる為聞こうともしなかった。ラウルも自分からあまり魔獣の話はしなかったのもあった。



感想 110

あなたにおすすめの小説

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?

ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。 イケメン達を翻弄するも無自覚。 ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。 そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ… 剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。 御脱字、申し訳ございません。 1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。