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そっくりだった①
「……いいえ! 大魔法使い様の魔法なんかなくてもラウル様が愛しているのはわたくしです!」
「そうですわ! 愛らしいガブリエルが愛されないなんてことが……!」
諦めの悪いガブリエルとリリーナ。2人を諫めないロナウドの視線は専らダグラスに向かっている。今にも飛び付かんばかりの眼光は、視線だけで人を殺せそうな殺気を纏っていた。別の意味で呆れた溜め息を吐いたルーベンが口を開く前にガブリエルが言い放った。
「だって! ラウル様は、初めて会ったわたくしに一目惚れしてくださいました! キラキラと目を輝かせてわたくしを見て下さった! あれも魔法のせいと言うのですか!?」
そう……エイレーネーが最後まで残し続けている疑問。初めてガブリエルと会わせた際、嘗て自分にも向けた瞳をラウルはガブリエルに向けたんだ。人が恋に落ちる瞬間というのは、こういう事なんだなと鮮明に覚えていた。ラウルを好きなガブリエルもまた覚えていた。きっと彼女は、その時ラウルに恋をしたんだ。
一同の視線がラウルに集中した。「そんな話聞いてないが?」と厳しい視線でルーベンに問われたラウルは呆然となっていた。目を泳がせ、エイレーネーと目が合うとハッとなって大きく否定した。
「違う、ガブリエルに一目惚れなんて絶対していない!!」
「ガブリエルの言っていたことは本当よ。その時のラウルを見てガブリエルをって……」
「そんな……」
不仲の原因は主にガブリエルを筆頭としたホロロギウム家の面々とはいえ、元を辿ればラウルがガブリエルに一目惚れしたせい。否定してもエイレーネーに信じてもらえず、傷付いたラウルだったがアリアーヌが待ったを掛けた。
「ラウル様は嘘を申しておりません。ガブリエル様に一目惚れはしていないと言うラウル様の主張は本当です。ただ……ガブリエル様やエイレーネー様からも嘘は感じられません……」
ラウル自身は一目惚れしていないと真実主張していても、エイレーネーとガブリエルの2人が一目惚れしたと主張するのも真実。
嘘を見抜くアリアーヌの言葉がより混乱を招いた。
信じてほしいと縋るラウルの言葉が嘘じゃないのなら、あの時ラウルがガブリエルを見て浮かばせた感情は何か。無意識に一目惚れをする可能性だってある。恋心と気付いていないだけで。
エイレーネーの不安を読み取ったのか、隣にいるダグラスの手が頭に乗った。「お父さん……?」と見上げるとダグラスの黄金の瞳はガブリエルを注視していた。
大魔法使いからの視線に居心地悪そうにするガブリエルを守るようにロナウドが抱き締めて隠す。それでもダグラスの視線はガブリエルに注がれた。
「……ああ、思い出した」
ガブリエルからルーベンへと視線を移し、紡いだ言葉通りの声色でアレに似ているなと話し出した。
「あれ?」
「お前が王子だった頃に主従契約を結んだ魔獣だ」
「ああ、ガブの事か? ソレイユの領地にいるよ。年に何度か領地に戻っては遊んでいるんだ。ラウルにもかなり懐いていてな。ラウルもガブに……」
続きの言葉を言い終える前にシーン……となった空気に気付いたダグラスとルーベン。ラウルに至っては「ひょっとして……」と冷や汗を流していた。改めてガブリエルを見たルーベンはまさかと抱く。
「…………ガブリエル嬢がガブにそっくりで感激した、なんて言わないよな……?」
「…………思い出しました」
がっくりと項垂れたラウルは初めて会ったガブリエルが、その当時別れたばかりのガブにそっくりでまたガブに会えた感覚が湧き上がってつい感動してしまったと話した。人間、しかも令嬢相手に仲良しな魔獣とそっくりと言える筈もなく、言葉を出さないでおこうと気を張っていた。接してみるとガブと同じで人懐っこく、感情表現豊かで元気な姿が益々似ていたから親近感が芽生えた。
ガブリエルを心奪われた姿に見えたのは、仲良しな魔獣とそっくりの女の子に出会って感動したから。
ソレイユ領にルーベンが主従契約を交わした魔獣がいるとは聞いていたエイレーネーでもガブリエルにそっくりとは聞いておらず、魔獣は怖い生き物だと教えられる為聞こうともしなかった。ラウルも自分からあまり魔獣の話はしなかったのもあった。
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