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しおりを挟む緩く波打ったブロンドに赤色のリボンを着け、可愛らしさを全面的に押し出したドレスにも程好くリボンが使われている。うるうると瞳を潤ませ、ラシュエルに駆け寄り胸に飛び込んだのはイデリーナ。
「イデリーナ? 何故ここに」
「ラシュエル様が一人街に降りたと聞き、心配で後を付けて来たんです。そうしたら……」
ラシュエルの腕の中でリナリアへ顔を向けたイデリーナは、声は心配そうにしつつも顔は愉悦に満ちていた。
「その顔殿下に見せて差し上げなさい」とスカートのポケットから小さな鏡を出し、イデリーナに向けようとしたら慌ててラシュエルを見上げた。その顔に愉悦はなく、傷付いたと言わんばかりにラシュエルに泣き付く。
イデリーナを泣き止ませながらリナリアを見る黄金の瞳は冷え切っており、ラシュエルに弁解も縋るつもりもないリナリアも負けじと睨み返した。するとラシュエルは傷付いた顔を見せた。
ん? と内心小首を傾げつつ、ユナンに促され尋問部屋に入った。イデリーナも一緒だ。
二人掛けのソファーが二つ置かれている以外何もない質素な部屋。
リナリアとユナン、ラシュエルとイデリーナで向き合う。
「室内には人の嘘を見抜く魔法が掛けられている。一つでも嘘を漏らせば魔法に攻撃をされる。全員、嘘偽りなく話すようにね」
「なっ……」
ユナンの説明を聞かされたイデリーナは絶句している。
それはそうだろう。
イデリーナ達がラシュエルに伝えてきたリナリアの話は全て嘘に塗れたものだから。
顔を青褪めるイデリーナを気にしつつ、ラシュエルはリナリアに話を切り出した。
「今まで何処にいたか聞かせてくれ」
「先程、ユナンが言った通り、私はここ数か月聖域にいました。殿下の病を完治することが出来る“祈りの花”を求めたんです」
「“祈りの花”は希少価値が高く滅多に見つけられないと聞く」
「“祈りの花”は花を見つける事よりも、花を開花させる事が非常に難しいのです。花自体を見つけるのに苦労はしませんでした」
「欠かすことなく長期間同じ願いを同じ気持ちで祈り続ける事で花は開花します」とユナンが付け加えた。
“祈りの花”は見事開花し、凡ゆる傷病を癒す黄金を咲かせたと話したら「どうしてだ!」とラシュエルは声を上げた。
「“祈りの花”を咲かせられたのなら、何故すぐに帝都に戻らなかった!」
「帝都の噂は聖域にも届くようになっていましてね」
本当はリナリアが原作の知識をユナンに披露しただけなのだが、ユナンが嘘偽りを申せない尋問部屋で嘘を述べた事にリナリアはギョッとするも。
何も起きない。
あれ? とまた小首を傾げつつ、何も言わないでおく事にした。
「リナリアの妹イデリーナ嬢が聖女の能力に目覚め、殿下の病を治したと届いたのです。更に殿下とイデリーナ嬢の婚約を進める話もね」
「それは陛下やヘヴンズゲート侯爵が勝手に決めた事だ! 私は何一つ了解していない!」
「帝国側としては、聖女の能力を持つイデリーナ嬢の方が他国との関係にも大いに利用出来ると判断されたのでしょう。事実、聖女の力は希少だ。イデリーナ嬢が殿下との婚約を望むのなら、その通りにしてしまえば他国に取られる心配もないからね」
「……」
聖女の力を欲するのは帝国だけじゃない。他国も癒しの力を持つ聖女を欲している。皇太子ラシュエルと結婚し、皇太子妃になってしまえば易々と奪われはしない。
黙ったラシュエルだったが次の質問を切り出した。
「……帝都に戻らなかったのは私とイデリーナの婚約の話を聞いたからか?」
「……それもあります。父達の事ですから、どうせ私がいない間にある事無い事殿下や周りに吹聴していましたでしょう」
「……」
ラシュエルの沈黙は肯定と同じ。
「聖女の能力に目覚めたイデリーナと何の能力も持たない私。どちらが帝国に利を齎すか考えれば、自ずと答えは出るかと」
「私だけでも連絡を寄越してくれれば……!」
「殿下だって信じたのでしょう? だから、最初に会った時私を何処かへ連れ去ろうとしたではありませんか」
「……今まで何処にいたのか、一緒にいる相手が誰なのかを聞きたかっただけだ……私は信じていない」
果たしてそうだろうか。原作のラシュエルは涙ながらに話すリナリアの声を聞かず、周囲と同じでヘヴンズゲート侯爵側の主張を信じた。我が娘ながら恥ずかしいと侯爵が頭を抱えた場面があった。今なら思う。お前が言うな、と。
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