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しおりを挟む十日後――。
ユナンに誘われ、聖域を出て、帝都に戻ったリナリア。
街が何だかお祝い一色に染まっている。
心当たりが有りすぎるリナリアは広場の掲示板を見つけ読みに行った。そこにはヘヴンズゲート侯爵イデリーナと皇太子ラシュエルの婚約が決まったと大々的に記されていた。
イデリーナは異母妹の名前。更にイデリーナが聖女の能力に目覚めたとも書かれており、聖女の力を持って不治の病に苦しむ皇太子を治したという恋愛物語が延々と書かれていた。記者は恋愛小説に目がない人なのかも。
「リアについては一切触れられてないな」
「私が候補だと知るのは貴族、皇族のみですもの。平民達に必要なのは物語になる恋愛ですわ」
「はは。まあね。……リア」
急に声色を変えたユナンに「あれ」と教えられた方を向くと。マントに身を包み、顔をフードで隠しながらも皇族特有の黄金の瞳は限界まで見開かれていた。
“祈りの花”が黄金を出したのはラシュエルの瞳と同じだったからか。
ユナンの姿を認識したラシュエルの目付きが途端鋭く変わる。ラシュエルには何一つ正しい情報は送られていないのだ。
幼い頃から一緒にいたリナリアが自分を見捨て、他の男に走ったと思われても仕方ない。前世の知識を持つリナリアならラシュエルとのハッピーエンドは有り得たかもしれない。が、原作の末路を知っているので乗り気になれなかった。自分のラシュエルへの気持ちはその程度だったのだ。
大股で距離を縮めたラシュエルがリナリアの腕を強引に掴んだ。強い力に顔を歪ませればユナンがラシュエルの手を掴んだ。
「人通りの多い場所で女性に乱暴を働くとは見過ごせませんよ、皇太子殿下」
「……貴殿は?」
「聖域を管理するユナンと申します。教皇様に確認をして頂ければすぐに本当だと分かりますよ」
「聖域? 何故聖域の管理者がリナリアといる」
「そりゃあ、彼女はずっと聖域にいましたから」
「嘘だ。ヘヴンズゲート侯爵もイデリーナもリナリアは私を捨てて姿を晦ませたと!」
成る程、心身共に弱っているラシュエルに嘘の情報を言い続ける事で彼のリナリアへの信頼を崩壊させ、代わりに聖女の能力を開花させラシュエルを救ったイデリーナを婚約者にする為、侯爵家は嘘を演じたか。
原作小説では皇帝も侯爵家が嘘を申していると密偵から聞かされるも、何の能力もないリナリアより聖女の能力を目覚めさせたイデリーナが皇太子妃、未来の皇后になることが最も優れた判断とし触れなかった。
原作のリナリアが咲かせた“祈りの花”が本物だと知っていた皇帝は密かに花を回収し、万が一があるからと保管した。
「大教会へ行きましょう。あそこには人の嘘を見抜き罰を下す尋問部屋があります。そこでなら、リナリアは嘘を言いませんし、他に人もいませんから聞かれる心配もない」
「…………分かった」
長く間を開け、渋々了解したラシュエルと共に大教会へ向かった。道中ラシュエルからの無言の圧を向けられ、冷や汗を流しつつ、リナリアも無言のまま大教会へ歩く。ユナンも無言。
大教会に着くと裏手に回って建物内に入った。今は人が少ない時間とユナンが言う通り、彼等以外の人がいない。
迷いない足取りで尋問部屋の扉を開けたユナンが入り、続いてリナリア、ラシュエルも入った。
その時だ。
「ラシュエル様!」
後方から飛んだ声に三人が一斉に振り向いた。
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