逃がす気は更々ない

文字の大きさ
23 / 43

if2-2

しおりを挟む


 太陽のように煌めき、リナリアを視界に入れる黄金の瞳は何時だって輝いて綺麗だったのに……今の黄金の瞳は昏く濁り、濃い翳りがある。何故ラシュエルが目の前にいるのかと必死で考えるリナリアだが、少しずつ近付かれているのに気づき後退って行く。ラシュエルが近付く度にリナリアは震える足で下がる。


「な、何故、此処にいるのですか、皇太子殿下っ」
「ラシュエルと呼んでくれないの」
「私はもう、ヘヴンズゲート侯爵令嬢ではありませんから……だ、大体貴方にはイデリーナがっ」
「君が城から追い出された後、もう一度考えたんだ。本当に君が私を捨てて他の男の許に行ったのか、君が持ってきた祈りの花は本当に偽物なのか、と」


 どうして今になってそのような言葉を出せるのか、あの時リナリアが必死で本物だと訴えてもラシュエルさえ信じなかったのに。顔に出ていたらしく、端正な相貌が苦し気に歪められた。


「あの時は君への憎しみで頭がいっぱいだった。どうして返事をくれない、私を捨てて誰の許へ行ったのだと、そればかりが頭を占めていた。私が治ってから戻った君を見たら憎しみは膨れ上がったんだ」
「……」
「だが君が聖域に入ったのを見て分かった。君は嘘を言っていなかった、嘘だらけなのは君を除いたヘヴンズゲート家の連中だと」


「あっ」と発したリナリアは背に当たった木でもう後ろに行けないと気付き、左右どちらに行き聖域に逃げ込むか考えるも。ほんの一瞬考えた間がラシュエルに時間を与えてしまった。


「リナリア」
「きゃっ」


 強く腕を引っ張られラシュエルに抱き締められた。背中と頭を強く抱き締められ身動きが一切取れない。


「私とおいで。君はずっと私の側にいたらいい」
「どういう……」


 頭に回っていた手で顔を上げられ、最後まで言葉は続かなかった。眼前に迫った黄金の瞳に魅入られていると唇に温かさを感じた。
 キスをされていると気付き、慌てて離れようにも強い力で抱き締められているせいで叶わず。息をしたくて口を開けたら、そこへラシュエルの舌が入り込み逃げるリナリアの舌に絡めた。


「ん、んん」
「リナリア……ずっと君に触れたかった……ん」


 目を閉ざしたいのに、熱が孕んだ黄金の瞳に見つめられるとその視界に自分を映してほしくて閉ざせず。胸を押していた手を大きな背に回した。

 ラシュエルの黄金の瞳が微かに瞠目するも、嬉し気に目を細めキスを続けた。

 その時の瞳に陰りは消えていた。

 キスを終えてぐったりとしているリナリアを抱き上げた、ラシュエルは待機させている転移魔法陣へ向かった。
 顔を赤く染めて胸に顔を埋めるリナリアの頭にそっと口付けた。

  

 ——次にリナリアが目を覚ますと見慣れない天井が見えた。ゆっくりと身体を起こし、室内を見渡した。自分がいるのは大きな寝台。肌触りが良いシーツやデューベイ、置かれている調度品、どれも最高級と言っても過言ではない。ぼんやりと此処は何処なのかと考えていると「リナリア」と耳元で囁かれ吃驚して悲鳴を上げた。

 いつの間にか側にラシュエルがいて、シャツにズボンという服装の彼に違和感を持つも、ふと自分の着ている服が気になって下を見てみるとネグリジェに変わっていた。寝ている間に着替えさせられ、軽く混乱しているとラシュエルに肩を押されベッドに倒された。


「これはどういうっ」
「この部屋は今後君が過ごす場所さ。不便がないよう出来る限りは対応しよう。外には私が偶に連れ出してあげるから」
「そういう事を聞いているのではなくて、わ、私の服が……」
「ああ、これ? 寝ている君を侍女に洗わせた。気に入らなかった?」


 着せられたネグリジェは可愛らしいデザインで個人的に好きだと思えても、ベッドに押し倒されている現状何も言えない。


「リナリア、ずっと此処にいて。此処には君を虐げる者は誰一人いない」
「ま、待って、だって貴方にはイデリーナが」
「……あんな嘘にまみれた女も侯爵家も必要ない。と言いたいが聖女の力は利用させてもらう。向こうだって、侯爵の地位も聖女の力も失いたくないだろうから」
「一体何を……」
「話は終わり。……私だけを見るんだリナリア」
「んっ」


 状況がどうなっているか知りたいリナリアはキスをされて何も言い出せず、ネグリジェを脱がすラシュエルの手を止めなかった。



しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

処理中です...