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聖女として働いていた私は、美しい春の日に婚約破棄されました。愛してくれない婚約者はいりません。
しおりを挟む子供の頃から、私には色々なものが見えた。人の頭の上には光の柱が見えた。その柱は人によって太さも長さも、光の勢いもまちまちだった。
親に聞いても、
「そんなものは何も無い。嘘をつくな。」
と、怖い顔で目を吊り上げて、大声で怒鳴られるだけだった。
他にも色々なものが見えた。沢山の人の姿だ。でも私に見える人達は皆んなゲラゲラ笑っていて、その事を話すと殴ったり蹴ったりする両親よりも、私は好きだった。
幼稚園へ行き出すと先生やお友達に出会えた。私の事を怒鳴ったり、殴ったりする人は誰もいなくて、私は自分の両親がおかしいのだと悟った。
沢山の人に出会えた事で、私の能力が皆に知られた。私は王立の学校へ入学した。
聖女になる為の努力も修行も、楽しみでしかなかった。いつも私の周りに居てくれる人達がご先祖様達や守護霊様達や天使様達である事も知った。
そして学校でも、たくさんのものが見えている人は多くは無いと知った。
この国の聖女に任命された私は、その時からこの国の王子様の婚約者になった。
だが彼は私の事を明らかに好きではなかった。
親に勝手に決められた私を、むしろ嫌っていたと思う。それは彼の態度で明らかだった。
「 私だって嫌だなぁ。自分を大切にしてくれる人と結婚したいなぁ。」
子供の頃から愛されなかった私は、もう愛の無い暮らしなど考えたくもなかったから。
毎日毎日、知らず知らずのうちに念じていたのだろう。
「 サファイア・ブルー。お前との婚約は破棄させてもらう。」
婚約者のエドワード・メルローは大勢の前で私を指差して宣言した。
長い冬の後、薄いピンクの花が咲きほこる春の訪れを祝うパーティの席だった。
「お前に聖女の資格などない!誰にも見えないものを見えると嘘ばっかりついて許せん。お前がイジメをしていた事もわかってるんだぞー!」
エドワードは顔を真っ赤にして目をギラギラさせて私に掴みかからんばかりの勢いで罵倒した。
その姿はまるで私の両親のようだった。
彼の後ろには、彼の服を握り締めてフルフルと震えてるピンクの巻き髪のリリージュがいた。
彼女が嘘を吹き込んだんだ。彼女の涙に濡れた目の奥の嫌な光が、私にそう教えた。
そしてその嘘を、なんの疑いも無く信じたのが私の婚約者だった。
「 わかりました。私は出て行きます。」
( やっぱり思った通りになった。)
心の中で思った事は、全てその通りになった。
私は口角が上がりそうになるのを必死で堪えて、苦虫を噛み潰したような顔をしてその場を去った。
精霊達に頼んで国中に知らせてもらった。私の後には国民の列が出来た。結界を張り巡らして私は皆を守った。
隣国に到着すると親切に受け入れてくれた。
祖国には魔獣が侵入して悲惨な状況だ。山は噴火し地面は燃えて、海は盛り上がり津波が襲い、水はニガヨモギの味になり飲めない。
この世の地獄のような光景が広がっている。
でも私は復讐などしていない。全ては神様の言う通りだから。
「 貴方は貴方の思う通りに生きれば大丈夫ですよ。」
子供の頃に一度だけ出会った人に言われた言葉を胸に、私は生きていこうと心に誓う。
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