天狐と或る巫女の物語

9話

　黒狐襲来。 　

くすくす。 

黄玉の屋敷の屋根で誰かが笑っている。 

「さあ。天狐の大切な巫女を殺してあげよう。」


くすくす。 


謎の人物は再度笑うと、空狐に化け屋敷の門へと向かった。

･･･････････････････
「空狐様、お入りください。」


謎の人物は門を通り抜け屋敷内へと入った。


「兄さん！」


謎の人物は黄玉の部屋の前で黄玉を呼んだ。 


黄玉「琥珀。どうした？」


「別にどうもしないよ。兄さんに会いにきただけさ。」


黄玉「おかしい。」


「何がおかしいの？」


黄玉「琥珀は今日は仕事で出かけている筈。」


「仕事が早く終わったから寄ったんだ。」


黄玉「いや。お前は琥珀ではない。」


「…どうしてわかった？」


その者は声を低くして言う。


黄玉「我は琥珀の兄だ。わからない筈がないだろう。」


「兄弟仲がよろしいこと。でも虫酸が走る。何も知らないで平和に暮らしてるあんた達を見ると。」


黄玉「……黒狐か。何の事だかわからんな。何の用があってここへ来た。」


黒狐「お前達の大切にしている巫女を殺しに来た。わくわくするよ。お前を苦しめられるから。」


黄玉「させん。」


黄玉は剣を構え黒狐に斬りつけた。しかし、黒狐はこれを軽々避け黄玉を嘲笑う。 


黒狐「そんなのあたんないよ。」


黄玉「火球（かきゅう）！」


この攻撃は黒狐の手に掠り、黒狐は軽い火傷を負った。


黒狐「火球！」


黄玉は難無く除けた為この攻撃は当たらなかった。


黄玉「ふん。火球で火球を反すとは…安易だな。」


それどころか、相手の攻撃を鼻で笑う余裕すらある。


黄玉「木討（きとう）！」


黄玉は、木の枝を鞭状にして黒狐を攻撃する。


黒狐「！っ…！」


見事黒狐に当たり、黒狐の表情は、余裕の表情から痛みを表す表情に変わった。


黒狐「ちっ！今日のところは引き上げる。」