陰陽ノ花〜現代陰陽師奇譚〜

第九集

シオン色の姫

「やぁ、紫苑さん。久しぶり。」


  嫌味な令嬢を上手くかわした紫苑だったが、また紫苑の苦手なタイプの人物....今度は男性に声を掛けられた。 



「....お久しぶりですね、西園 優理さん。」


   紫苑は引き攣った笑みを浮かべたまま、その男性の方を向いた。今紫苑に話しかけたのは、先ほど紫苑に嫌味ったらしく話しかけて来た西園 可憐の血縁者だ。可憐の血縁者らしく、可憐同様、優理もなかなか整った顔をしている。まぁ、清秋ほどではないが。



「 僕は毎日毎日、貴女の事を考えてましたよ。何せ、このパーティでしか貴女に会えないから。」



  そう言うと、優理は紫苑の引きつった笑みに気づいているのかいないのか、紫苑の手を自身の手で包み込むようにして握り、さらに言葉を続けた。


令嬢達の中では、可憐が一番鋭く紫苑を睨みつけていた。
どうやら、可憐は許婚である優理のことが本当に好きなようだ。






「紫苑さんが僕と結婚してくれれば、毎日会えるのに。」



  その言葉に、紫苑は思わず後ろに仰け反った。しかし、その反応を見ても、優理は紫苑から離れようとしない。どうやら、紫苑が照れていると思っているようだ。
   その証拠に、優理の行動を見ていた他の令嬢からは、羨望と嫉妬の目が紫苑に向けらた。
しかも、紫苑が離れられないのをいいことに、優理は握った手の上から紫苑の手に口づけをした。
その行動に、気持ち悪さのあまり紫苑の背筋がゾクリとした。しかも、令嬢達の羨望と嫉妬の視線がさらに強くなり、紫苑はこの上なく居心地が悪くなっていた。



先ほどと同じく、令嬢達の中では可憐が一番鋭い視線で紫苑を睨みつけていた。




紫苑「っ、残念ですけれど。私にも婚約者がいますので、そのお話はお受け出来ませんわ。」 



「それは残念。」


それを聞いた優理は、本当に残念そうに紫苑の手を離した。



紫苑「貴方にだって、許嫁がいるのでしょう。ほら、あちらで許嫁の方がお待ちですよ。」