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第伍集

追憶

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   ある日の午後。清秋は疲れのあまり微睡み、夢を見ていた。

    思い返していたのは、3年ほど前。紫苑を異性として見るようになった頃のこと。

*。*。*。*。。*。**。。***


   清秋は中学生の頃から、学校に通いながら次期当主としての仕事をしていた。そして、高校生になった頃からその仕事が更に忙しくなり、紫苑にあまり会えなくなっていた。
が、久々に暇が出来、丁度紫苑の家に用事のあった清秋は、久しぶりに紫苑と話をしようと思い、紫苑を探していた。




清秋(鍛錬場にも部屋にも居ないな。)


しかも、紫苑はいつも仮眠をとる時に居る自分の部屋の前の縁側にも居なかった。



  清秋(もうすぐ大祭だな。紫苑は奉納舞の最後の練習中か?)


     大祭というのは、安倍・土御門一族の間で毎年行われる例祭だ。大祭では、主に安倍晴明の誕生日である1月と命日の9月に一族内の若い女性か子どもが晴明に奉納舞を披露するのだ。
直系家系ないし本家に若い女性や女児がいる場合、必ず直系の人間が安倍晴明に舞を奉納するしきたりがある為、紫苑は幼い頃からこの大祭で舞を踊ってきた。


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