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第126話 魔神ニーグリ
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「な、なんだこいつは……!?」
「ちょっと洒落にならないかな……」
そのゴスロリの少女を前に僕は一歩も動けずにいた。ダメだ、格が違う。下手に動けばこちらが全滅するかもしれない。そう思わせる程に隔絶した力を感じる。
「初めまして。僕は魔神ニーグリ。ニーちゃんと気軽に呼んでくれていいよ?」
ニーグリがカーテシーで自己紹介しつつ笑顔を向ける。それでも安心できるものじゃないけどね。こいつはそこまでにしてもらう、と言っていた。つまりこいつの目的はドレク達の回収といったところか。
「で、そのニーグリがなんの用だよ」
ルードは男と打ち合っていたが、ニーグリの出現でお互いが動きを止めていた。ルードにもわかるのだろう。このニーグリという魔神のヤバさが。
「さっきも言ったよ? そこまでにしてもらうってさ」
「見逃せってことだよね。じゃあ僕らはこれで帰っていいよね?」
「そうだね。特別に見逃してあげるよ」
どうやら見逃してくれるらしい。随分とまた優しい魔神なことで。正直助かるけどね。
「おいおい、殺さねぇのかよ!」
「こいつら放っておいていいの!?」
リティスとドレクはニーグリの発言が認められないようだ。拙いな、さすがにあんな魔神を相手にするのは無理だろう。
「いいんだよ。アマラもこいつらが気になるみたいだからね」
「アマラが? なんでだよ」
「同じストリートチルドレン上がりだからじゃない? 見せたいんだってさ。ストリートチルドレンで一番ビッグになったのは俺だってことを」
なんかニーグリの喋り方って男の子みたいな感じがするんだけど。それにしてもアマラが僕たちを意識していたとは知らなかった。確かに同じストリートチルドレン上がりなら先に有名になった僕たちに対抗心があってもおかしくはないのかな?
「そんなクソつまらん理由かよ!」
「そうは言うけどさ、僕はアマラの気持ちわかるなぁ。あいつ元冒険者なんだけど、先に名を馳せた龍炎光牙を意識していたからね。劣等感があったんだと思うな。それを払拭したいなら今僕が殺しちゃダメでしょ」
「ちっせぇ奴……」
「ドレク、それアマラの前で言ってみる?」
ドレクのボヤキにニーグリがジト目で注意する。とりあえず今このニーグリと戦う羽目にならずに済んだのは助かった。
「……悪かった」
ドレクがニーグリに言われ頭を下げる。どうやら力関係は完全にアマラが上なようだ。
「わかってくれたかな? それと、上の階に信者を避難させていたよね。その信者達も回収は終わってるんだ。君たちを回収出来ればもうここに用はないんだよ」
「わかりましたニー様。ほら、行くよ」
リティスは深々と頭を下げ、ドレクを引っ張って行く。残念だけど僕らはそれを見ていることしかできない。
「さて、それじゃあ僕たちは失礼するよ。それと、せっかくだからいい事を教えてあげよう。アマラは今この国にはいない。隣の国がちょっと面白いことになりそうでね。そう遠くない内に楽しいことが起こるから。なんなら君たちも仲間になるかい?」
「悪いけど遠慮するよ」
そうか、アマラはこの国にはいないのか。国外ともなると僕らが追うのは難しいかもしれない。
「そうか、それは残念だ。君たちなら幹部待遇で迎えてあげるのに。上に来てた子達にも振られちゃったし、僕にはスカウトの才能はないのかなぁ」
「……上に来た子達……?」
サルヴァン達のことかもしれない。もしかして戦ったのか?
そう思うと血の気が引いた。戦いを仕掛けるようなことはしてないと思うけど、そんなのはニーグリの気分次第だ。
「おや? 顔色が変わったね。安心していいよ、手は出してないから」
……ニーグリに表情を読まれたか。だが無事なら良かった。もういいからさっさと帰って欲しいよ。
「それじゃあ僕たちはこれで。きっと2年後には面白いことになっているからね」
そう言い残してニーグリは仲間を連れて虚空へと消えていった。それに安堵を覚え、僕はその場にへたりこんでしまう。ニーグリと相対しただけでこのザマだ。戦えば確実に殺されていただろう。
「な、なんだったんだあいつは……?」
「あれが魔神……」
ルードもミラも呆然としていた。それほどまでに強烈な存在感だったのだ。実際彼らはニーグリを前にしても殆ど喋ることさえできていない。ルードでさえも一言発しただけで精一杯だったようだ。僕と同じくルードやベオグラードもその場にへたり込む。
僕らは全員しばらくの間床に座り込み時を過ごした。それほど大した戦闘もしていなのだが、ニーグリとの遭遇だけで疲弊してしまったからだ。
そうして休んでいると、サルヴァン達が集会場にやって来た。サルヴァン達も遭遇したのだからわかるのだろう、何があったのか察したようだ。
「どうやらお前たちもあのニーグリって奴に会ったようだな。全員無事か?」
「……おかげさまでね。生きた心地がしなかったよ」
「全くだな。格が違い過ぎて勝負を挑む気にもなれなかったぞ。あれに比べればドレカヴァクが可愛く見えるな」
うん、アレサが挑まなくて本当に良かったと思うよ。相手の力量を測るのが一番上手いから大丈夫だとは思ってたけど。
「まぁ、何にせよ無事で良かったよね。結局クリフォトの種の関係者は誰一人拘束できなかったけど」
「それでも結果的には関係者全員この街から消えたわけだし、街にとっては結果オーライなんじゃない?」
確かにリーネの言う通り誰一人関係者を捕まえられなかったから、情報を引き出すのはもう無理だね。それでもドレクやニーグリの話した情報は大きい。収穫無しという訳では無いので報酬は貰えると思いたいね。
しかし2年後か。その頃にはきっと大きな何かが起こるのだろう。わかっていても国外のことだから僕らは手出し出来ないし、そもそも僕らでは力不足だ。僕らにできるのは2年後に向けて力を付けること、そして今回の件を王子殿下に報告することくらいか。
「ちょっと洒落にならないかな……」
そのゴスロリの少女を前に僕は一歩も動けずにいた。ダメだ、格が違う。下手に動けばこちらが全滅するかもしれない。そう思わせる程に隔絶した力を感じる。
「初めまして。僕は魔神ニーグリ。ニーちゃんと気軽に呼んでくれていいよ?」
ニーグリがカーテシーで自己紹介しつつ笑顔を向ける。それでも安心できるものじゃないけどね。こいつはそこまでにしてもらう、と言っていた。つまりこいつの目的はドレク達の回収といったところか。
「で、そのニーグリがなんの用だよ」
ルードは男と打ち合っていたが、ニーグリの出現でお互いが動きを止めていた。ルードにもわかるのだろう。このニーグリという魔神のヤバさが。
「さっきも言ったよ? そこまでにしてもらうってさ」
「見逃せってことだよね。じゃあ僕らはこれで帰っていいよね?」
「そうだね。特別に見逃してあげるよ」
どうやら見逃してくれるらしい。随分とまた優しい魔神なことで。正直助かるけどね。
「おいおい、殺さねぇのかよ!」
「こいつら放っておいていいの!?」
リティスとドレクはニーグリの発言が認められないようだ。拙いな、さすがにあんな魔神を相手にするのは無理だろう。
「いいんだよ。アマラもこいつらが気になるみたいだからね」
「アマラが? なんでだよ」
「同じストリートチルドレン上がりだからじゃない? 見せたいんだってさ。ストリートチルドレンで一番ビッグになったのは俺だってことを」
なんかニーグリの喋り方って男の子みたいな感じがするんだけど。それにしてもアマラが僕たちを意識していたとは知らなかった。確かに同じストリートチルドレン上がりなら先に有名になった僕たちに対抗心があってもおかしくはないのかな?
「そんなクソつまらん理由かよ!」
「そうは言うけどさ、僕はアマラの気持ちわかるなぁ。あいつ元冒険者なんだけど、先に名を馳せた龍炎光牙を意識していたからね。劣等感があったんだと思うな。それを払拭したいなら今僕が殺しちゃダメでしょ」
「ちっせぇ奴……」
「ドレク、それアマラの前で言ってみる?」
ドレクのボヤキにニーグリがジト目で注意する。とりあえず今このニーグリと戦う羽目にならずに済んだのは助かった。
「……悪かった」
ドレクがニーグリに言われ頭を下げる。どうやら力関係は完全にアマラが上なようだ。
「わかってくれたかな? それと、上の階に信者を避難させていたよね。その信者達も回収は終わってるんだ。君たちを回収出来ればもうここに用はないんだよ」
「わかりましたニー様。ほら、行くよ」
リティスは深々と頭を下げ、ドレクを引っ張って行く。残念だけど僕らはそれを見ていることしかできない。
「さて、それじゃあ僕たちは失礼するよ。それと、せっかくだからいい事を教えてあげよう。アマラは今この国にはいない。隣の国がちょっと面白いことになりそうでね。そう遠くない内に楽しいことが起こるから。なんなら君たちも仲間になるかい?」
「悪いけど遠慮するよ」
そうか、アマラはこの国にはいないのか。国外ともなると僕らが追うのは難しいかもしれない。
「そうか、それは残念だ。君たちなら幹部待遇で迎えてあげるのに。上に来てた子達にも振られちゃったし、僕にはスカウトの才能はないのかなぁ」
「……上に来た子達……?」
サルヴァン達のことかもしれない。もしかして戦ったのか?
そう思うと血の気が引いた。戦いを仕掛けるようなことはしてないと思うけど、そんなのはニーグリの気分次第だ。
「おや? 顔色が変わったね。安心していいよ、手は出してないから」
……ニーグリに表情を読まれたか。だが無事なら良かった。もういいからさっさと帰って欲しいよ。
「それじゃあ僕たちはこれで。きっと2年後には面白いことになっているからね」
そう言い残してニーグリは仲間を連れて虚空へと消えていった。それに安堵を覚え、僕はその場にへたりこんでしまう。ニーグリと相対しただけでこのザマだ。戦えば確実に殺されていただろう。
「な、なんだったんだあいつは……?」
「あれが魔神……」
ルードもミラも呆然としていた。それほどまでに強烈な存在感だったのだ。実際彼らはニーグリを前にしても殆ど喋ることさえできていない。ルードでさえも一言発しただけで精一杯だったようだ。僕と同じくルードやベオグラードもその場にへたり込む。
僕らは全員しばらくの間床に座り込み時を過ごした。それほど大した戦闘もしていなのだが、ニーグリとの遭遇だけで疲弊してしまったからだ。
そうして休んでいると、サルヴァン達が集会場にやって来た。サルヴァン達も遭遇したのだからわかるのだろう、何があったのか察したようだ。
「どうやらお前たちもあのニーグリって奴に会ったようだな。全員無事か?」
「……おかげさまでね。生きた心地がしなかったよ」
「全くだな。格が違い過ぎて勝負を挑む気にもなれなかったぞ。あれに比べればドレカヴァクが可愛く見えるな」
うん、アレサが挑まなくて本当に良かったと思うよ。相手の力量を測るのが一番上手いから大丈夫だとは思ってたけど。
「まぁ、何にせよ無事で良かったよね。結局クリフォトの種の関係者は誰一人拘束できなかったけど」
「それでも結果的には関係者全員この街から消えたわけだし、街にとっては結果オーライなんじゃない?」
確かにリーネの言う通り誰一人関係者を捕まえられなかったから、情報を引き出すのはもう無理だね。それでもドレクやニーグリの話した情報は大きい。収穫無しという訳では無いので報酬は貰えると思いたいね。
しかし2年後か。その頃にはきっと大きな何かが起こるのだろう。わかっていても国外のことだから僕らは手出し出来ないし、そもそも僕らでは力不足だ。僕らにできるのは2年後に向けて力を付けること、そして今回の件を王子殿下に報告することくらいか。
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