俺に加護をくれたのは邪神でした~イキリまくるの気持ち良すぎだろ〜

まにゅまにゅ

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第三章 黒龍

19 消えたルルナ

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「貴様どういうつもりだ!」

 どうやらこの領主、このまま俺を帰すつもりはないらしい。

「どうもこうもない。そもそも黒龍がこの街を狙ったのは人間側に原因があるんだ。黒龍を殺すのはエゴだよな?」

 俺が言うのもなんだがな。我ながら説得力皆無だわ。

「だからといってわざわざ生き返らせる必要などないだろう! もう一度討伐して来るんだ」

 こいつ自分がどれだけ無茶苦茶なことを言っているのかわかってんのか?

「断る。害意のない危険等級特級モンスターに手を出せと? やりたいなら自分でやれ。それで何かあっても俺は一切助けないからな」
「不敬罪だ、不敬罪で貴様を捕縛する。抵抗するなら斬ってしまえ!」

 強権発動か、おもしれえ。後で吠え面かかせてやんよ。

「ほほう、黒龍から街を守った代償がそれか。この国の貴族というのはなんて酷いやつなんだろうな。仕方ない、大人しく縄についてやるよ」

 俺は両手を挙げ無抵抗を示す。護衛騎士が配下に拘束具を持ってこさせ、俺は拘束された。ふむ、後ろ手に縛り上げて鉄製の拘束具で腕ごと上半身を丸ごと拘束するわけか。ご丁寧に魔力弱化の効果のある魔道具のようだな。

「馬鹿な奴だ。大人しく黒龍を渡せばそれで済んだものを」

 護衛騎士が俺に囁く。悪いけどそう思い通りにはならないんだな。

「で、俺はどうなるのかな? 不敬罪って確か死刑だったよな」

 この程度の拘束具ならいつでも破壊できそうだな。ちょっと甘く見過ぎだぞ。俺は余裕の表情で奴らを煽る。不敬罪ってのは結構問題を孕んでいるんだ。当然濫用を防ぐための決まりも存在する。

「その通りだ。今ここでその首跳ねてくれるわ! 剣を貸せ」
「はっ!」

 怒り狂った領主が護衛騎士から剣を受け取ると大きく構えた。

神霊の盾ディバインシールド

 俺はボソリと呟き魔法を発動させる。それと同時に領主が剣を振り下ろした。狙いは当然俺の首だ。

 パキィッ!

 剣は俺の魔法の盾に衝突し、あっさりと折れた。ミスリル製の剣みたいだったがとんだナマクラだな。

「んなっ!?」
「あーあ、やっちまったな。剣を振り下ろした以上もう俺とは敵対関係だ。そして不敬罪執行には決まりがあるそうじゃないか。確か不敬罪で相手を処刑する場合その場での執行が原則だよな?」

 こうなることを予想して俺は予め不敬罪について調べておいたんだよ。こんな未発達の世界、法の抜け穴は必ず存在するはずだからな。

 その場での執行が原則なのは冤罪による処刑を防ぐためだ。それに執行するにしても原則として第三者の証人が必要になっている。自分の護衛騎士は第三者になり得ないんだよな。

 冤罪を防ごうとしたらあんまり実効性のない法律になってる気がするぞ。

「もうこの場に剣はない。つまり執行不可能というわけだ。じゃあ俺は帰らせてもらうとしよう」

 俺は力で強引に拘束具を破壊する。こんなもんで俺を拘束できると本気で思ってたのかね?

「んな!? 待て貴様、まだ話は終わっとらんぞ」
「俺に用事はない。それとも決闘でも申し込むか? 無理だよな。黒龍すら倒す俺に勝てる奴がこの国にいるのかよ」
「くっ……!」

 俺は護衛騎士に視線を向け挑発する。さすがに勝てないのを理解しているのか歯噛みして悔しそうだ。

「貴様、絶対このままでは済まさんからなぁっ!? 後悔することになるぞ?」

 領主は悔しそうに俺を睨む。できもしないことほざいてんじゃねーよタコ。もうお前は俺の敵だからな。てめーの頼み事は絶対聞いてやらん。

「おー怖い怖い。んじゃ俺は街を出ることにするわ。今日にでも出ていってやるよ」

 どのみちこの街の用事はルルナちゃんを迎えに行ったら終了だからな。もう戻る必要もないだろう。

 なんか領主が騒いでいるがどうでもいいな。ルルナちゃんの名前が聞こえたようだが気のせいだよな?

 俺はさっさと領主邸を後にして歓楽街の方へ向かった。ルルナちゃんは向こう一ヶ月貸し切りだから店で働いているわけじゃない。だが彼女の生活部屋は店と同じ建物内にあるのだ。

 そこは店の裏側にあり、寮みたいなものらしい。勿論本来は関係者以外立ち入り禁止だ。だが俺は店主のドルーズから特別な許可をもらっているため、ルルナちゃんの部屋のみ訪問を許されている。

「おーい、ルルナちゃーん」

 俺はルルナちゃんの部屋をノックし、彼女を呼んだ。しかし全く返事がない。もしかして留守か?

 確認のためドアノブを回すと普通に開いてしまった。マジか。せっかくだし中を覗くとしよう。と中を覗いたら誰もいなかった。どゆこと?

 うーん、とりあえずドルーズに聞いてみることにするか。店はまだ開店前だから寮の管理人室だな。

 俺は管理人に行きドアをノックした。するとドルーズが顔を見せる。

「ジェノスの旦那! すまねぇ!」

 ドルーズは俺の顔を見るなり平身低頭土下座した。なんかすごーく嫌な予感がするぞ。

「おい、何があった?」
「実はだな、今朝領主の使いが来て強引にルルナを連れて行った。なんでもお前との交渉に使ううもりらしい。すまん、俺では領主に逆らうことはできんのだ」

 ドルーズは申し訳無さそうに理由を話す。ほほう、あの領主とことん俺を怒らせたいらしいな。だがルルナちゃんの安全が第一だ。場合によっては隠し持っていた素材の一部を譲ることで交渉するしかないな。

「なるほど、そういうことか。俺に任せてくれドルーズ。お前は悪くはない」
「すまねぇ、ホントにすまねぇ!」
「いいって、気にすんな。なんとかなるだろ。あいつの目的は黒龍の素材だからな」

 どうやら向こうの方が一枚上手だったようだな。しかしそんな切り札があったならなんですぐに切らなかったんだ?

 とにかく領主邸に戻るしかないな。俺は足早に領主邸へと戻った。
 念の為創造技工で石化魔法でも修得しておくか。俺の妥協を受け入れないなら徹底的にやってやるまでだ。
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