ラスボス廃棄少女は幸せになりたい

まにゅまにゅ

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第3章 運命に抗え!

第25話 キルーイを倒せ!

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「ちっ、これは少々骨が折れそうだな」

 やはりキルーイは強いのだろう。カインさんの口振りには少々焦りが感じられる。私にはわかんないけど、強い人だからこそわかるんだろうな、そういうことは。

「骨が折れそうかね。では予告しよう、君は私に首の骨を折られて死ぬ。なかなかオシャレだと思わないか?」
「はっ、思えねーな」

 2人で火花散らしてるとこ悪いけど私もいるんだよね。恐らく実力的にはキルーイが上なのだろう。でも私がサポートなりすれば勝機はあるはず。悪魔の手を透過モードに。これならフレンドリーファイアなしにカインさんを援護できる。

 私は六本の黒い腕を透過モードにしてキルーイに接近させた。2本は私の護衛だ。

「ぬうっ?」
「なんだ?」

 キルーイが私の腕を躱し始める。私の手が視えていないカインさんからしたらキルーイが変な動きをしているように見えるかな。

「変な動きで惑わすつもりか。舐めるな」

 カインさんが私の腕を躱し続けるキルーイに斬りかかる。キルーイは私の手が石壁をも破壊しているところを見ていた。相当なパワーがあるのは理解しているはずだから避けるしかあるまい。

「ちぃっ、うざったいな!」

 キルーイがカインさんの剣をしゃがんで躱し懐に飛び込もうとした。しかしカインさんをすり抜けて私の手が現れたことに驚いたのだろう。またも後ろに飛び退き距離を取った。透過モードだからすり抜けるんだけどキルーイにはわからないからね。

「なるほど、本当に厄介だなその腕は。ますます欲しくなったぞ!」
「ったく、何の話だよ。ちょっとは説明しやがれってんだ!」

 うんまぁ、カインさんには何のことだがさっぱりだよね。まぁ、ここは説明しないと不誠実な気もする。

「あの、私の能力のことです。私の能力は神と悪魔の手と言いまして、人の目には見えない手を操っているんです。なぜかそこの暗殺者には視えてるみたいですけど」
「そんな能力があったのか……。ツインベアーを持ち上げていたし相当なパワーがあるんだな。つかこいつ暗殺者だったのかよ」

 私が説明している間、何故かキルーイは手を止めていた。興味があったのかな?

「なるほど、神と悪魔の手と言うのかね。それより困るな、私の正体をバラされては。おかげでそこの剣士も殺さないといけなくなったではないか」

 困ったと言いながら全く困った顔をしていないじゃん。むしろニヤけた面を見せているし。

 それにどうせ殺すつもりだったくせに。逃げた子達も殺すつもりのはずだ。少なくとも先輩は居場所バレてるから絶対に狙われると思う。

「暗殺者かよ。ニヤけた面見せる暗殺者とか随分と珍しいな」
「そうだろうね、私は殺戮を愛している。君を殺す理由ができたことに喜びを感じてしまったようだ。もちろん理由なんかなくても殺すがね?」

 こいつはまた名前に負けないとんだサイコパス野郎だ。そういや設定資料には殺戮好きが高じて暗殺者になったとか書いてあった気がする。能力とかは書いてなかったからわかんないけど。

 しかしいいのかねぇ?
 実力的に勝っていると思ってそんな余裕かましているんだろうけど、私の能力全部知らないよね?

「その前にそっちこそ教えなさいよ。なんで私の手が視えているのよ」

 もう少し話を引き延ばそう。その間に私は手を2本地中にもぐらせた。

「ふむ、気になるかね? 私の奴隷になれば教えてやるぞ。君には暗殺者としての才能がある。私が殺戮の悦びと技術を教え込んでやろうじゃないか!」
「そんなのまっぴらよ」

 殺戮の悦び?
 知りたくないわよそんなもの。ただでさえ魔神の血という爆弾を抱えているんだ。あのメルデの村のときのような平気で人を殺せる自分にはなりたくない。

「だからあんたはここで倒す!」
「なに!?」

 地中から姿を現した手がキルーイの左足首を掴む。こうなったらもう私の勝ちだ!

「へし折れ!」
「ぐわぁっ!」

 石壁をも砕くパワーでキルーイの左足首をへし折る。ゴキン、という感触。これは完全にいったな。キルーイはうめき声をあげると膝をつく。その隙をついてカインさんが斬りかかった。

「はあっ!」
「ギャアアア!」

 カインさんの剣はキルーイの右肩に食い込み、骨の砕ける音がした。どうやら服の下に鎖帷子を着込んでいたようで、両断は免れたようである。しかし剣が食い込み右の鎖骨は折れ、血も流れていた。傷口は深くないようだが戦闘を続けるのは無理だろう。

「勝負あったな。お前が暗殺者なら騎士団に突き出してやる」
「ぐぬぬぬぬ……!」

 カインさんがキルーイの眼の前に剣を突きつける。キルーイは口惜しそうに唸り声をあげてカインさんを睨んでいた。

「嬢ちゃん、こいつを縛り上げるから俺のリュックから縄を出してくれ」
「はい」

 私は小走りでカインさんのリュックを取りに行くと、中から縄を取り出した。そしてそれを神と悪魔の手を1つキルーイの首に当てて抵抗を封じつつその体をぐるぐる巻きにして縛り上げた。ちゃんと両手を後ろにして小指同士も縛り上げてある。

「上手いもんだな。とりあえずこれでこいつも街まで運んでくれるか? 騎士団に突き出せば報奨金が貰えるかもしれん」
「ええ、もちろんです。報奨金が出たらそれは風の旅人で分けてください。それとは別に報酬も払いますから」

 親しき仲にも礼儀ありだ。風の旅人の協力がなければキルーイを排除することは困難だっただろうからね。こいつを突き出せば暗殺組織は壊滅だ。私が奴隷になる運命は消えてなくなる。

「いや、報酬はいいさ。金のために助けたわけじゃないからな」
「そんなわけにはいかないですよ。恩知らずにはなりたくありませんし、受け取って下さい」
「……嬢ちゃん本当に10歳か?」

 確かに子供っぽくなかったかも。でも別にいいのだ。子供であることを武器にあざといことはしたくないからね。

「ええ、2ヶ月前に10歳になりました」

 私はニカッ、と歯を見せて笑ってみせた。
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