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第4章 憧れのレオン様
第29話 宿場町にて1
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ウォルノーツを出て2日。今私はアルノーブルに最も近い位置にある宿場町に辿り着いていた。
この世界、馬車での旅になるので街道沿いには大抵宿場町がある。見通しの良い草原なんかは餌もないため、魔物がうろつくこともあまりないのそうだ。そのため魔物の襲撃も滅多にない。しかし盗賊団なんかには標的にされるので兵士はいるけどね。
そして宿場町にも冒険者ギルドがあり、先ずはそこに寄ることにした。理由は良い宿屋を紹介してもらうためと情報収集である。こんなとこでも依頼とかあるんかね?
ギルドの建物は結構大きく、解体場が必ず併設されているようだ。建物の中も結構広くて受け付け窓口が5つもある。近くに狩り場があるのかもしれない。そういや地図によるとここからアルノーブルに向かう途中には森があるんだっけ。ちなみに地図はカインさんから餞別代わりにもらったのだ。これは本当にありがたかったなぁ。なんせ地図って市販されていないからねぇ。
そして今はもう昼時を少し過ぎた時間なんだけど結構人がいた。テーブルで話をしている者もいれば依頼の張り出しを見ている人、受け付けで話をしている人と様々だ。そんな人たちも私が入ってくると一斉に視線を向けた。多分依頼人と思われたのかな?
私はそんな好奇の視線を無視し、真っ直ぐ窓口へと向かった。
「あの、すいません。ここでオススメの宿ってどこですか? 安くてご飯の美味しいところがいいです」
受け付けで銅板のギルド証を見せる。ギルドに登録した冒険者のサポートが受け付けの仕事なので、こういった紹介も受け付けの立派な業務なのだ。
「Hランク……ですか。何名様でしょう。まさか一人ではありませんよね?」
ギルド証を確認した受け付け嬢が愛想笑いを浮かべつつ聞いてくる。まぁ、普通10歳の女の子が一人旅してるなんて思わないよね。私が町の者で無いのはギルド職員なら見当がつくだろうし。
「いえ、一人です」
「護衛の方は?」
「いませんし要りません」
「そ、そうですか。失礼しました。それでしたら白狼亭はどうでしょう。一泊銀貨20とこの辺りでは安い方ですし料理も悪くないと思います」
一泊銀貨20枚が安い方か。ウォルノーツより相場が高いのは宿場町だからかな?
所持金は余裕あるからもう少し高くてもなんとかなるけどね。ここでそれを伝えてお金持ってますアピールは馬鹿のすること。そんなことしたら襲ってくださいと言っているようなもんだろう。
「そこでお願いします」
「はい、場所はですね……」
受け付けのお姉さんは丁寧に場所を教えてくれた。そして礼を言って私が立ち去ろうとすると、ガラの悪そうな冒険者達が立ち塞がる。ああ、なんてベタな展開!
「嬢ちゃん、ちょっと聞きたいんだが、なんで嬢ちゃんの荷物は宙に浮いてるんだ?」
「あ」
指摘を受けて思わず言葉が漏れた。
おお、そういや荷物を神と悪魔の手で持っていたんだった。他の人から見たら宙に浮いてるようにしか見えないんだよね。それで注目されていたのか。
「魔法みたいなものと思ってください。それより他所の冒険者の能力を聞くのはマナー違反ですよ」
「そりゃ悪かったな。それよりその服は治癒院のものだよな。てことは嬢ちゃんは治癒士ってことでいいか?」
「怪我の治療でしたら有料でお引き受けいたします。もちろん正規の料金を請求させて頂きますけど」
この町にも治療院はあるでしょ。治療院の仕事を奪う気はないからね。当たり前の返答だ。
「そうか、治癒士なんだな。だったら俺達のパーティーに入れてやるよ」
勧誘かい。悪いけど旅の途中とか関係なしに組みたいとは思わないな。つか私Hランクなんだけど。
「お断りします。というより私Hランクなんで外に出る依頼とか受けられませんし」
「そんなもん黙ってればばれねーよ。いいから来い!」
男が私の腕を掴んだ。もうこれ正当防衛だよね?
「ギャアアア!?」
男が悲鳴を上げ私の腕を離す。何をしたかっていうと男の腕を悪魔の手で握り潰してやったのだ。さすが石壁を破壊するパワー。強く握ったらゴキンて音がしたわ。
「な、なにをした!?」
床に膝をつき、苦悶の表情を浮かべる。
「乱暴されたから抵抗しただけです。ていうかなんで私をパーティーに入れようとしたのかわかんないんだけど」
治癒士の制服着てるからヒーラーやれるのは見当ついたんだろうけどね。いくらなんでもこんな幼い女の子をパーティーに誘うとか怪しさ爆発でしょ。
「いやその、荷物を宙に浮かせて運べるなら荷物持ち兼ヒーラーとして有用だなと思ってよぉ。それより腕折れちまったじゃねぇかよ!」
男は涙目で私に訴える。確かに男の右腕は赤く腫れ上がり歪んでいた。ホントに骨折してそうだ。
「治すなら正規の料金いただきますが。それか、そうですね。アルノーブルに関する情報があるならそれを対価でもいいです」
「あ、アルノーブル? わ、わかった。話すから早く治してくれ!」
「わかりました。じゃあ先ずは整復しますね。まともにやると痛いから部分的に感覚を麻痺させますが、ご了承ください」
骨折の治し方は実は専門の知識が必要になる。ただのヒビなら回復魔法をそのままかければいいが、ポッキリいった場合は話が変わってくるのだ。
回復魔法を使えば確かに骨はくっつく。しかし骨を曲がった状態でくっつければそのまま曲がったままなのだ。当たり前といえば当たり前なんだけど、回復魔法は断裂した組織をくっつけるものであって、バラバラになった骨の破片を元の位置に戻す力はない。それができるのは相当な高位の治癒魔法に限られるのだ。
そして骨の整復を行うには手術が必要な場合だってある。つまり切り開いて整復しなければならないのだ。当然痛いし、この世界に麻酔という概念もない。そこで私が編み出したのが部分麻痺の異能だ。全身麻酔なんてしたらこの世界じゃ命を落としかねないため使えないからね。
この世界、馬車での旅になるので街道沿いには大抵宿場町がある。見通しの良い草原なんかは餌もないため、魔物がうろつくこともあまりないのそうだ。そのため魔物の襲撃も滅多にない。しかし盗賊団なんかには標的にされるので兵士はいるけどね。
そして宿場町にも冒険者ギルドがあり、先ずはそこに寄ることにした。理由は良い宿屋を紹介してもらうためと情報収集である。こんなとこでも依頼とかあるんかね?
ギルドの建物は結構大きく、解体場が必ず併設されているようだ。建物の中も結構広くて受け付け窓口が5つもある。近くに狩り場があるのかもしれない。そういや地図によるとここからアルノーブルに向かう途中には森があるんだっけ。ちなみに地図はカインさんから餞別代わりにもらったのだ。これは本当にありがたかったなぁ。なんせ地図って市販されていないからねぇ。
そして今はもう昼時を少し過ぎた時間なんだけど結構人がいた。テーブルで話をしている者もいれば依頼の張り出しを見ている人、受け付けで話をしている人と様々だ。そんな人たちも私が入ってくると一斉に視線を向けた。多分依頼人と思われたのかな?
私はそんな好奇の視線を無視し、真っ直ぐ窓口へと向かった。
「あの、すいません。ここでオススメの宿ってどこですか? 安くてご飯の美味しいところがいいです」
受け付けで銅板のギルド証を見せる。ギルドに登録した冒険者のサポートが受け付けの仕事なので、こういった紹介も受け付けの立派な業務なのだ。
「Hランク……ですか。何名様でしょう。まさか一人ではありませんよね?」
ギルド証を確認した受け付け嬢が愛想笑いを浮かべつつ聞いてくる。まぁ、普通10歳の女の子が一人旅してるなんて思わないよね。私が町の者で無いのはギルド職員なら見当がつくだろうし。
「いえ、一人です」
「護衛の方は?」
「いませんし要りません」
「そ、そうですか。失礼しました。それでしたら白狼亭はどうでしょう。一泊銀貨20とこの辺りでは安い方ですし料理も悪くないと思います」
一泊銀貨20枚が安い方か。ウォルノーツより相場が高いのは宿場町だからかな?
所持金は余裕あるからもう少し高くてもなんとかなるけどね。ここでそれを伝えてお金持ってますアピールは馬鹿のすること。そんなことしたら襲ってくださいと言っているようなもんだろう。
「そこでお願いします」
「はい、場所はですね……」
受け付けのお姉さんは丁寧に場所を教えてくれた。そして礼を言って私が立ち去ろうとすると、ガラの悪そうな冒険者達が立ち塞がる。ああ、なんてベタな展開!
「嬢ちゃん、ちょっと聞きたいんだが、なんで嬢ちゃんの荷物は宙に浮いてるんだ?」
「あ」
指摘を受けて思わず言葉が漏れた。
おお、そういや荷物を神と悪魔の手で持っていたんだった。他の人から見たら宙に浮いてるようにしか見えないんだよね。それで注目されていたのか。
「魔法みたいなものと思ってください。それより他所の冒険者の能力を聞くのはマナー違反ですよ」
「そりゃ悪かったな。それよりその服は治癒院のものだよな。てことは嬢ちゃんは治癒士ってことでいいか?」
「怪我の治療でしたら有料でお引き受けいたします。もちろん正規の料金を請求させて頂きますけど」
この町にも治療院はあるでしょ。治療院の仕事を奪う気はないからね。当たり前の返答だ。
「そうか、治癒士なんだな。だったら俺達のパーティーに入れてやるよ」
勧誘かい。悪いけど旅の途中とか関係なしに組みたいとは思わないな。つか私Hランクなんだけど。
「お断りします。というより私Hランクなんで外に出る依頼とか受けられませんし」
「そんなもん黙ってればばれねーよ。いいから来い!」
男が私の腕を掴んだ。もうこれ正当防衛だよね?
「ギャアアア!?」
男が悲鳴を上げ私の腕を離す。何をしたかっていうと男の腕を悪魔の手で握り潰してやったのだ。さすが石壁を破壊するパワー。強く握ったらゴキンて音がしたわ。
「な、なにをした!?」
床に膝をつき、苦悶の表情を浮かべる。
「乱暴されたから抵抗しただけです。ていうかなんで私をパーティーに入れようとしたのかわかんないんだけど」
治癒士の制服着てるからヒーラーやれるのは見当ついたんだろうけどね。いくらなんでもこんな幼い女の子をパーティーに誘うとか怪しさ爆発でしょ。
「いやその、荷物を宙に浮かせて運べるなら荷物持ち兼ヒーラーとして有用だなと思ってよぉ。それより腕折れちまったじゃねぇかよ!」
男は涙目で私に訴える。確かに男の右腕は赤く腫れ上がり歪んでいた。ホントに骨折してそうだ。
「治すなら正規の料金いただきますが。それか、そうですね。アルノーブルに関する情報があるならそれを対価でもいいです」
「あ、アルノーブル? わ、わかった。話すから早く治してくれ!」
「わかりました。じゃあ先ずは整復しますね。まともにやると痛いから部分的に感覚を麻痺させますが、ご了承ください」
骨折の治し方は実は専門の知識が必要になる。ただのヒビなら回復魔法をそのままかければいいが、ポッキリいった場合は話が変わってくるのだ。
回復魔法を使えば確かに骨はくっつく。しかし骨を曲がった状態でくっつければそのまま曲がったままなのだ。当たり前といえば当たり前なんだけど、回復魔法は断裂した組織をくっつけるものであって、バラバラになった骨の破片を元の位置に戻す力はない。それができるのは相当な高位の治癒魔法に限られるのだ。
そして骨の整復を行うには手術が必要な場合だってある。つまり切り開いて整復しなければならないのだ。当然痛いし、この世界に麻酔という概念もない。そこで私が編み出したのが部分麻痺の異能だ。全身麻酔なんてしたらこの世界じゃ命を落としかねないため使えないからね。
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