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一章「俺がやらなきゃ誰がやる!」
惚れた弱みは強さの証!
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ウツシガミが消える。今度はきっちり高速移動で翻弄する気らしい。だがいまの俺には通用しねえぜ?
「サントノアザ……!」
俺は額に触れた。見えないなら見えるようになればいいだけなんだよ。その動体視力の向上はうまくいき、俺の目はウツシガミを完璧に捉えていた。
(武器は風だ。オーコを傷つけないままウツシガミを捌く!)
ほんの数秒でウツシガミが目前にまで迫る。高速移動さえ把握できてれば、攻撃なんざ止まってるようなもんだ。
右――と思わせて左! フェイントまで使うのか。だが攻撃が遅けりゃ意味ねーぞ? 俺はウツシガミの拳を暴風で受け止める。攻撃自体もワンパターンだから、たいした苦労もせずにウツシガミを吹き飛ばすことが出来た。俺は確信する。てめえはもう敵じゃねえ。
(さて……また考える時間が出来たが……)
オーコのようすを確認してみる。相変わらずいい眺めなのはとりあえず置いといて、さしたる変化はなく、安静にしてれば命がどうってことにはならないだろう。
(起こすか? うーん……俺がイコンを解放した瞬間に食ってもらうか? 心臓が破壊されてもそれができるか?)
できればそんなイチかバチかみたいなことはしたくない。もっと安全で確実な方法はないのか。
(イコンを俺が造り出すってのはどうだ?)
チートっぽいが確実なのは確かだ。でもクイモノの存在に悪影響がないとも限らないよな。なにせ偽物を与えようってんだ。じっさいクイモノの存在がつまったイコンはウツシガミのなかだろ。
(お……そうだよ。ウツシガミを傷つけないでイコンを取り出せばいいじゃねえか。サントノアザでなんとかなるんじゃないか?)
いや、出来そうだけどどうなんだそれ。サントノアザが勘違いするってのもありえる。 取り出すってのを瞬間移動させるようにじゃなく、ただ引き寄せるみたいな結果になったら、心臓は壊れるんじゃないか? じっさいイメージは後回しにして確信に力を注いでるわけだよ。それってけっきょくはいつもの俺と変わらないし、解放なしで取り出せるものなのか?
(それならオーコに直接食ってもらうほうがいい。解放なしでイコンを取りこめるんだからな……って、だめだろ。ウツシガミの傷はオーコに返るんだから。食いながら死んだらどうする)
「ダメだな。一発で確信出来ないことはやらないほうがいい。そういう系はいままでだいたいミスって来たんだ。自分が確実だと思ってるやりかたしかない」
最初のイメージだ。『速さ』だ。一瞬で奴に近づき、イコンを解放し、手にとってオーコに食わせてやる。なんでそれを選択するかと言うと、やることの単純さと明解さ。俺自身がただ速ければ成功するプランだからだ。どんくらいの速さが必要だ?
「オーコが物を食べられる時間以内だ。心臓が止まってもまだ普通にいられる時間……まだクイモノなわけだからその時間は人間よりかは長いはず」
俺はサントノアザに左手をかざし、ウツシガミが起き上がるのを待った。成功率を上げるために奴には接近してて欲しい。
俺は集中力を高めてその時を待つ。相変わらずノロノロノロノロ……んで、やっと起きる。んで、高速移動。早く来いよな。ウツシガミは左右に動きながら迫ってきた。思考能力でもあるのかいろいろ試してる感じがしないでもない。
俺は奴が近づいて来るとイメージを膨らませた。高速移動よりも、なんか瞬間移動のほうがしっくり来る。ウツシガミの動きを読み、到達地点に先回りする感じだ。その場所にいきなりあらわれる! あいつが出てきた時みたいに! ウツシガミが一回で移動する距離をつかみ、そこに自分がいるような感覚を得る。俺は確信した。
(跳べる――!)
――うおっ! 近いぞ! びっくりするわ! 俺はウツシガミの真ん前の空間に移動していた。ちょうど胸の位置に移動したみたいで、泥の壁が鼻先すれすれにある。いきなりなもんで攻撃には移れなかった。ちょい練習するか……。
ウツシガミが左に動いたのを察知してサントノアザに触れる。奴の移動距離はだいたい三メートルくらいだ。次には――
――俺はふたたびウツシガミの真ん前に浮かんでいた。左手を貫手のように突き出す。ぐきっ。痛あぁぁぁぁぁい! 武器忘れてんぞバカ! ウツシガミがまた左に移動する。
――俺はみたびウツシガミの前に移動した。今度こそは! 武器は風だ。風穴を空けてやる! 俺は左手を突き出す! よけられる! なんでだあぁぁぁぁぁぁぁぁ! しかもかすりもしねえ! いや、かするくらいなら当たらないほうがいいんだよ。オーコが怪我しちまう。
「なんだよくそ! 再考の余地ありですか!?」
ウツシガミが後ろに高速移動して拳を降り下ろしてきた。拳に左手を合わせ、暴風を叩きつける。ウツシガミは後ろに倒れていった。もう見飽きたんだよねそれはっ!
俺はオーコのいる位置へと瞬間移動で戻る。ザッと地面に立つとウツシガミを睨みつけながら左手で頭を抱える。なんでうまくいかないかなぁ! こういう時はだいたいサッと救ってラブラブな展開になるもんだよねえ! カッコよく終わろうよ。たまにはカッコよく終わらしてよ!
「……あ……そうだよ。あいつの回避の速さを考えてなかった。高速移動する時は回避もなんだよ」
攻撃が遅けりゃ意味がない。さっきウツシガミに言った言葉を自分に聞かせてやる。あーもうこれだからドーマくんはぁ、とか寝ているオーコにも非難されてるような気がした。
「奴よりも速くだ。しかも距離を短縮するだけじゃなくて俺そのものを速くする。どれくらい速くなればいいんだ?」
そうだな……イコン解放から『食事』までを考えたら、それこそコンマゼロ以内にやらなきゃならねえんじゃねーか? イコンを取り出した時にはすでに食べさせてるくらいの速さだ。かつウツシガミによけられないで、一回で成功させる速さ。イコンの解放はオーコの死だからな。
「速さ……速さ……イメージは湧くが確信には遠い……だがそれしかないならやる。俺がオーコを守る……」
ウツシガミが起き上がろうと動き出す。俺は左手を額に触れさせた。用意しとかなくちゃならない。運動能力の向上をここまで意識的に行うのは久しぶりだった。もうだいぶ馴れちまって、サントノアザが出れば自然にやってることも多い。
ウツシガミが拳を地面につけて上体を起こそうとする。武器はまだ効果を終わらせてない『風』でいい。実体はないが存在は感じる。それでイコンを目指しつつ解放させる。貫けばいいんだ。左手が真空波そのものになったような感じで。
ウツシガミが顔を上げた。イコンを手にしてオーコに食わせる。解放からそれまでは時間の経過すら許されない。つーか俺が許さねえ。失敗なんかしたらサントノアザで粉々にしてやる。使えねえなら消えちまえ。
ウツシガミが上体を起こす。俺は指と指の隙間からそれを睨みつける。正確には心臓の位置にあるイコンをサントノアザで可視にする。やったこともないことが、こうも簡単にできるのは不思議だった。
ウツシガミが立ち上がる。右腕はこのままでかまわない。余計なことはしたくない。それに負傷してればご褒美のチューが待っている。いまからすげー楽しみだ。
ウツシガミが移動を始めた。あのスピードを超える速さが必要だ。回避されたら失敗だからな。高速でも超速でも光速でもない……もっと速い『神速』……時間を超越する速さだ。
「やってやる……!」
左手と額のサントノアザが黒い霞みを放ち始めた。キイィィィィン……という甲高い音は、力の収束を思わせた。
「オーコ……待ってろよ。もうすぐだからな」
本当に神速が得られるかは分からない。だが決めなきゃオーコが……
「いや、やるんだよ。一回で決める」
出来る。確かにそれを確信してる。だけど考えかたが間違ってたら?
「大丈夫だ……飢餓に耐えられなくなったオーコも見てる。イコンを吸収できる」
オーコ。失敗したらオーコがいなくなる。本当にこれで大丈夫なのか?
「出来る。やれる。やっと来たかウツシガミ……!」
間違ってないか? やれるのか? オーコは死なないか?
「…………なるほどな。まだ敵がいる……」
ウツシガミが拳を掲げた。渾身の一撃が来る。倒せなかったらオーコが拳で攻撃される。本当にそれで大丈夫か? 本当にこれで――
「――敵は理性だ!!」
ウツシガミが攻撃するのと同時に、俺は自分の額を思い切り殴った。
ゴヅンッ! ――意識が薄れる。それどころか意識を失いそうになりながらも、俺は――
――――――――――――――――。
――――――――――――。
――――――――。
――――。
……。
「……ごほっ! ごほっ! はぁはぁはぁ……!」
「は?」
俺はオーコの口元でイコンを握りしめていた。目の前には脱水症状で水を口にした俺のように咳こむオーコがいる。そして――俺がもう二人いた。
オーコの足元で額を殴る俺。
ウツシガミに左手を突き刺してる俺。
それに気づいた瞬間に俺達は消え、ウツシガミが仰向けに倒れようとしていた。
キュゴォォォォォォォォォォォンッ!
直後には落雷が近くであったような轟音が響き渡った。そして超がつくくらいの突風が吹く! 俺は思わずオーコに覆い被さった。く……飛ばされそうだ!
突風はウツシガミをバラバラに吹っ飛ばした。まるで風化していく砂山みたいだ。ウツシガミはボロボロに崩れ落ちていき、風のうなり声とともにゆっくりと沈んでいった。
ウツシガミを形成していたクラウドは、イコンを失ったのをきっかけにして大地へと戻っていく。ただの土に戻っていく……やった……! うまくいった! 意識がないから実感わかないけどな!
と――俺はいきなり、ぐいっと頭を引きよせられていた。バランスを崩して尻餅をつくと、額に温かさをともなったやわらかい感触がして――キスか?――きわどい胸部が目の前にあった。
「オーコ……復活か?」
「うんっ! ありがとう……ドーマくん……」
おデコへのキスなんざ子供じみているが、俺には最高のご褒美だ。
でもそれで終わらなかった。俺は正面からオーコに抱きしめられた。おい……オーコ。さすがにそれはマズイんじゃないか? 胸が顔に当たるんだけど。
「ごめんねドーマくん……」
「なにがだよ。ニエモノ狩るのは俺の役目だろ。確かに大変だったけど、謝るのは違うんじゃないか?」
俺はドキドキしながら聞いてみる。オーコは俺を抱きしめたまま首を横に振った。
「ウツシガミに依代がなかったのがなんでか分かる? 人間が依代になるのは通常のニエモノ……でもウツシガミはまったく違うモノを依代にして現出する……それはわたし。クイモノが放ったマガツココロを依代にするの。わたしの食欲が人間のそれとは違うように、わたしのマガツココロも別のものなんだよ。だから依代にされちゃったの」
「おまえのマガツココロがウツシガミを造ったって?」
「うん。わたしね……怒ってたの」
「なにに?」
「ロイヤルヒル……」
ロイヤルヒル? え、ああ……もしかしてあれか? こんな自然のど真ん中に建造しやがったからか? それが依代になるってどんだけの怒りなんだそれ。
「……この国だと昔から言うでしょ。『神の祟り』って。ロイヤルヒルの建造がどれだけの被害をもたらしたかドーマくんは知ってるかな?」
「いやまったく……」
「じゃあ見て」
オーコが俺から離れて田んぼを手で示した。サービスタイムは終了か……なんて冗談にも口に出来ない顔をしていた。
俺達の周囲には稲穂がたくさん生えている。実を重くして頭を垂れた稲穂達は、少しは冷たくなってきた秋らしい風に揺られている。そして俺達の戦いの痕跡もそのなかにはあった。広大な田んぼのなかでもメチャクチャにされた稲穂達が痛々しかった。ほんの一部だと言える損傷でも、それを育ててきた苦労はとんでもない。それが分かってるからこそ痛々しかった。でもそれはそれとして、オーコの怒りの根本みたいなものは見つけられなかった。
「まだ収穫されてない稲穂がある……それしか分からん」
「そう……『この子達』は収穫されない。食べられなくなってるから」
「はい? まじかよ! どんくらいあると思ってんだ! 空海市がひと冬越えられるぞ! しかもおまえ品種だって一級品だぞ! この米達は糖度も充分にあり、整粒割合だってそうとう高く、水分も多く含んでいます! 香りやら粘りやらの食味検査で特Aだ! この空海市が誇る『そら味たことか』はいい米だ! それを――」
俺は米が好きだ。なんならファミレスの注文はラージライスにライスセットでいい。白米の袋の裏にある製品表示だって熟読してる。収穫できないってのはなんだとこら!
「――ロイヤルヒルが出来たくらいで食べれないってなんでだ!」
「不法投棄。塗料なんかの化学物質が水田に流されてた。この子達はドーマくんが言ったようないい物にはなれなかったの。死米ってやつだよ。そして人体の影響を考慮してすべてが廃棄処分になったの。それがロイヤルヒルに怒っちゃった理由――それと新聞部を利用してオーナーに近づいた理由でもある。じつは証拠の隠蔽を暴こうとしたんだ。まあ、はぐらかされたけどね。わたしは土地神だから……空海が汚されたのが我慢できなかった。でも……」
オーコは自分を責めるような怒りをあらわにし、唇を噛んだ。手をぎゅっと握りしめて、口惜しいと表情だけで語る。すげえいたたまれない……。
「わたしは自分では手を降せない。それが守り神としての理――それと律だから。自然と人間は相反してるようで同一だから……わたしは直接的にはどうしようもないけど、大地の意志と同調すれば感情が湧いてしまう。それが怒りだった。それがウツシガミになった。ドーマくんが大変な思いをしたのもわたしのせいなんだよ……」
「アホか、そんなことねえだろ」
俺は泣き出しそうな顔のまま微笑みを浮かべたオーコに、なにか言ってやりたかった。守り神を人間がなぐさめるなんておかしな話だ。それにどっちかって言えば、俺は『壊す』側の人間なんだ。おこがましいにもほどがあるが、俺にとってオーコはオーコ。俺が惚れてる一人の少女なんだよ。
「逃げ出そうとすればできたくせに、勝手に背負いこんだから苦労になっただけだろ。それと俺は大変な思いなんてしてねえぞ。俺は守れるもんなら全部守りたい。守りたいって自分勝手に戦って、痛めつけられて、あげくにオーコがその責任を被って死にかけた。俺がおまえに大変な思いをさせたんだよ。オーコは俺を助けはしたが、困らせることはしてねえだろ。それに守りたいもんメチャクチャにされたら怒るに決まってんじゃねえか」
「違うよ……ウツシガミが現出したのはわたしのせい。ウツシガミは特殊な条件でしかあらわれない。わたしに成り代わろうとする土地神なの」
「え? 土地神っつったら……ウツシガミはクイモノみたいなもんだったってことか?」
やばいよ俺。神を倒したのか。大丈夫なのか? 土地に影響しないのかそれ。
「ウツシガミはクイモノを喰らう。クイモノが犯してはいけない律を破った時……つまり定められた規則を守れなかった時に粛清のために出てくるの。それは守り神としての資格を剥奪されるってことだよ。本来なら消えなければならないのはわたしのほうだった」
「い……いや、そんなことねえ! オーコが間違ってるわけないだろ? 全部ロイヤルヒルに原因があるんじゃねえか。地球意志だかなんだか知らないけど、俺的にオーコは間違ってない! だから間違ったのはウツシガミだ! とんでもねえ勘違いヤローだ! そんな神は俺的にはいらん!」
オーコを消そうとする奴にいいも悪いもねえ! いや、悪い! すげえ悪い! 悪い神なら倒して正解だ! 悪い神を倒せてよかったわ!
「わたしが怒った原因はね……ロイヤルヒルを造ったこと、自然が破壊されたこと、この子達がちゃんと大きくなれなかったこと……それともう一つあるの。それが一番だったかも……」
「なんにしろ全部ロイヤルヒルのせいだってことじゃねえか」
「ち……違うの。わたし……許せなくて……」
オーコは怒りがおさまらないのか顔を真っ赤にしていた。少しだけうつむき、自分を抱きしめるように両腕をまわす。い……怒りが爆発すんのか? 局地的な大地震とか起きないか? オーコは視線を泳がせながらポツリと言った。
「ドーマくん……お米好きなのにっ……て」
「……へ?」
俺はさすがにキョトンとしてしまった。俺が米好きだから怒った? 稲が不作になったら確かに食えないな。え? そこ? そこに切れちゃったの?
なんて可愛い奴だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 待て! トリップしないで冷静になれ! ああくそ可愛いオーコ! だから落ち着けって!
「ドーマくん?」
「ぜえ……ぜえ……いや、なんでもない」
俺は両手で頭を抱えてもだえていたらしい。あ、さっきのキスで右腕も治してくれたんだな。
「ようするにあれだな? 純粋な怒りじゃなかったからウツシガミが出てきたわけだ」
「そ……そうなの。でもあれだよ、ドーマくん一生懸命だからお米食べれなくなったら落ちこんじゃうって思ったからだからね」
「お……おう。なんか言葉がおかしいけど納得した」
「べつにおかしくないっ。とにかくわたしのせいなんだからごめんねってことっ」
オーコは赤い顔のまま頬を膨らませた。いきなりなにを怒ってるんだかわからん。
「でも浄化には成功したわけだよな? オーコの仕事は完遂できたんだろ?」
「まあね……でもロイヤルヒルの影響は凄いよ。お客さんの心にある物欲がマガツココロになっちゃうと思う。ウツシガミはそうとうなモノだったけど、それを回帰させても足りないくらいのモノをまだ感じるの」
「いいことなしかよロイヤルヒル……そうなると便利ってのも考えもんだな。シャータもクラウドに狙われるんじゃないかってくらいに敵意剥きだしだったし……こいつらも可哀想だよな……」
「ドーマくん……」
俺は稲穂を育んでくれる大地に両手をついた。そこに生えてきてくれた稲穂達にも悪い気がした。まあ、土下座くらいしかしてやれないけど。どうか今回は勘弁してください。そしてまた来年にはうまい米を食わしてください。人間代表して謝ります! だって米ないと生きてけないもの! 米サイコー! オーコの次に大好きです!
――え?
「な、な、な……なにが起きた!」
よくわからんが稲穂が輝いている! そこらじゅうの稲穂がキラキラと光り、フワァッと波が立つように波紋を描いていく。その現象はすげえ勢いで何ヘクタールという敷地に広がっていった。戦闘で踏まれ、ちぎられた稲穂もその光の波のなかで息を吹き返し、田んぼは実りの秋を謳歌していた。ダメだ。まったくついていけない! でもこれ稲が復活したんじゃないか?
「オーコ!」
「……サントノアザ、発動してるみたい。凄い……元気なかったのにみんな……」
オーコはその光景を嬉しそうに眺めていた。たぶんだがサントノアザの力で大地が浄化されたんだろう。それこそ汚染していた化学物質なんかも根こそぎどっかにやっちまった。いや……サントノアザって戦うためのもんじゃないのか? 俺にはまったくわけ分からん!
「ありがとう……清浄な清明心で満たされたみたい。ドーマくん優しい……」
「おう、米への愛情は誰にも負けねえ! よく分からんが……」
オーコはキラキラと光る稲穂達を見回しながら、それよりもっとキラキラとした瞳で、本当に嬉しそうに笑っていた。
だからまあ、いっか……。
※
でも俺には不安が残ったのも事実だ。
サントノアザっていったいなんなんだ……?
「サントノアザ……!」
俺は額に触れた。見えないなら見えるようになればいいだけなんだよ。その動体視力の向上はうまくいき、俺の目はウツシガミを完璧に捉えていた。
(武器は風だ。オーコを傷つけないままウツシガミを捌く!)
ほんの数秒でウツシガミが目前にまで迫る。高速移動さえ把握できてれば、攻撃なんざ止まってるようなもんだ。
右――と思わせて左! フェイントまで使うのか。だが攻撃が遅けりゃ意味ねーぞ? 俺はウツシガミの拳を暴風で受け止める。攻撃自体もワンパターンだから、たいした苦労もせずにウツシガミを吹き飛ばすことが出来た。俺は確信する。てめえはもう敵じゃねえ。
(さて……また考える時間が出来たが……)
オーコのようすを確認してみる。相変わらずいい眺めなのはとりあえず置いといて、さしたる変化はなく、安静にしてれば命がどうってことにはならないだろう。
(起こすか? うーん……俺がイコンを解放した瞬間に食ってもらうか? 心臓が破壊されてもそれができるか?)
できればそんなイチかバチかみたいなことはしたくない。もっと安全で確実な方法はないのか。
(イコンを俺が造り出すってのはどうだ?)
チートっぽいが確実なのは確かだ。でもクイモノの存在に悪影響がないとも限らないよな。なにせ偽物を与えようってんだ。じっさいクイモノの存在がつまったイコンはウツシガミのなかだろ。
(お……そうだよ。ウツシガミを傷つけないでイコンを取り出せばいいじゃねえか。サントノアザでなんとかなるんじゃないか?)
いや、出来そうだけどどうなんだそれ。サントノアザが勘違いするってのもありえる。 取り出すってのを瞬間移動させるようにじゃなく、ただ引き寄せるみたいな結果になったら、心臓は壊れるんじゃないか? じっさいイメージは後回しにして確信に力を注いでるわけだよ。それってけっきょくはいつもの俺と変わらないし、解放なしで取り出せるものなのか?
(それならオーコに直接食ってもらうほうがいい。解放なしでイコンを取りこめるんだからな……って、だめだろ。ウツシガミの傷はオーコに返るんだから。食いながら死んだらどうする)
「ダメだな。一発で確信出来ないことはやらないほうがいい。そういう系はいままでだいたいミスって来たんだ。自分が確実だと思ってるやりかたしかない」
最初のイメージだ。『速さ』だ。一瞬で奴に近づき、イコンを解放し、手にとってオーコに食わせてやる。なんでそれを選択するかと言うと、やることの単純さと明解さ。俺自身がただ速ければ成功するプランだからだ。どんくらいの速さが必要だ?
「オーコが物を食べられる時間以内だ。心臓が止まってもまだ普通にいられる時間……まだクイモノなわけだからその時間は人間よりかは長いはず」
俺はサントノアザに左手をかざし、ウツシガミが起き上がるのを待った。成功率を上げるために奴には接近してて欲しい。
俺は集中力を高めてその時を待つ。相変わらずノロノロノロノロ……んで、やっと起きる。んで、高速移動。早く来いよな。ウツシガミは左右に動きながら迫ってきた。思考能力でもあるのかいろいろ試してる感じがしないでもない。
俺は奴が近づいて来るとイメージを膨らませた。高速移動よりも、なんか瞬間移動のほうがしっくり来る。ウツシガミの動きを読み、到達地点に先回りする感じだ。その場所にいきなりあらわれる! あいつが出てきた時みたいに! ウツシガミが一回で移動する距離をつかみ、そこに自分がいるような感覚を得る。俺は確信した。
(跳べる――!)
――うおっ! 近いぞ! びっくりするわ! 俺はウツシガミの真ん前の空間に移動していた。ちょうど胸の位置に移動したみたいで、泥の壁が鼻先すれすれにある。いきなりなもんで攻撃には移れなかった。ちょい練習するか……。
ウツシガミが左に動いたのを察知してサントノアザに触れる。奴の移動距離はだいたい三メートルくらいだ。次には――
――俺はふたたびウツシガミの真ん前に浮かんでいた。左手を貫手のように突き出す。ぐきっ。痛あぁぁぁぁぁい! 武器忘れてんぞバカ! ウツシガミがまた左に移動する。
――俺はみたびウツシガミの前に移動した。今度こそは! 武器は風だ。風穴を空けてやる! 俺は左手を突き出す! よけられる! なんでだあぁぁぁぁぁぁぁぁ! しかもかすりもしねえ! いや、かするくらいなら当たらないほうがいいんだよ。オーコが怪我しちまう。
「なんだよくそ! 再考の余地ありですか!?」
ウツシガミが後ろに高速移動して拳を降り下ろしてきた。拳に左手を合わせ、暴風を叩きつける。ウツシガミは後ろに倒れていった。もう見飽きたんだよねそれはっ!
俺はオーコのいる位置へと瞬間移動で戻る。ザッと地面に立つとウツシガミを睨みつけながら左手で頭を抱える。なんでうまくいかないかなぁ! こういう時はだいたいサッと救ってラブラブな展開になるもんだよねえ! カッコよく終わろうよ。たまにはカッコよく終わらしてよ!
「……あ……そうだよ。あいつの回避の速さを考えてなかった。高速移動する時は回避もなんだよ」
攻撃が遅けりゃ意味がない。さっきウツシガミに言った言葉を自分に聞かせてやる。あーもうこれだからドーマくんはぁ、とか寝ているオーコにも非難されてるような気がした。
「奴よりも速くだ。しかも距離を短縮するだけじゃなくて俺そのものを速くする。どれくらい速くなればいいんだ?」
そうだな……イコン解放から『食事』までを考えたら、それこそコンマゼロ以内にやらなきゃならねえんじゃねーか? イコンを取り出した時にはすでに食べさせてるくらいの速さだ。かつウツシガミによけられないで、一回で成功させる速さ。イコンの解放はオーコの死だからな。
「速さ……速さ……イメージは湧くが確信には遠い……だがそれしかないならやる。俺がオーコを守る……」
ウツシガミが起き上がろうと動き出す。俺は左手を額に触れさせた。用意しとかなくちゃならない。運動能力の向上をここまで意識的に行うのは久しぶりだった。もうだいぶ馴れちまって、サントノアザが出れば自然にやってることも多い。
ウツシガミが拳を地面につけて上体を起こそうとする。武器はまだ効果を終わらせてない『風』でいい。実体はないが存在は感じる。それでイコンを目指しつつ解放させる。貫けばいいんだ。左手が真空波そのものになったような感じで。
ウツシガミが顔を上げた。イコンを手にしてオーコに食わせる。解放からそれまでは時間の経過すら許されない。つーか俺が許さねえ。失敗なんかしたらサントノアザで粉々にしてやる。使えねえなら消えちまえ。
ウツシガミが上体を起こす。俺は指と指の隙間からそれを睨みつける。正確には心臓の位置にあるイコンをサントノアザで可視にする。やったこともないことが、こうも簡単にできるのは不思議だった。
ウツシガミが立ち上がる。右腕はこのままでかまわない。余計なことはしたくない。それに負傷してればご褒美のチューが待っている。いまからすげー楽しみだ。
ウツシガミが移動を始めた。あのスピードを超える速さが必要だ。回避されたら失敗だからな。高速でも超速でも光速でもない……もっと速い『神速』……時間を超越する速さだ。
「やってやる……!」
左手と額のサントノアザが黒い霞みを放ち始めた。キイィィィィン……という甲高い音は、力の収束を思わせた。
「オーコ……待ってろよ。もうすぐだからな」
本当に神速が得られるかは分からない。だが決めなきゃオーコが……
「いや、やるんだよ。一回で決める」
出来る。確かにそれを確信してる。だけど考えかたが間違ってたら?
「大丈夫だ……飢餓に耐えられなくなったオーコも見てる。イコンを吸収できる」
オーコ。失敗したらオーコがいなくなる。本当にこれで大丈夫なのか?
「出来る。やれる。やっと来たかウツシガミ……!」
間違ってないか? やれるのか? オーコは死なないか?
「…………なるほどな。まだ敵がいる……」
ウツシガミが拳を掲げた。渾身の一撃が来る。倒せなかったらオーコが拳で攻撃される。本当にそれで大丈夫か? 本当にこれで――
「――敵は理性だ!!」
ウツシガミが攻撃するのと同時に、俺は自分の額を思い切り殴った。
ゴヅンッ! ――意識が薄れる。それどころか意識を失いそうになりながらも、俺は――
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――――。
……。
「……ごほっ! ごほっ! はぁはぁはぁ……!」
「は?」
俺はオーコの口元でイコンを握りしめていた。目の前には脱水症状で水を口にした俺のように咳こむオーコがいる。そして――俺がもう二人いた。
オーコの足元で額を殴る俺。
ウツシガミに左手を突き刺してる俺。
それに気づいた瞬間に俺達は消え、ウツシガミが仰向けに倒れようとしていた。
キュゴォォォォォォォォォォォンッ!
直後には落雷が近くであったような轟音が響き渡った。そして超がつくくらいの突風が吹く! 俺は思わずオーコに覆い被さった。く……飛ばされそうだ!
突風はウツシガミをバラバラに吹っ飛ばした。まるで風化していく砂山みたいだ。ウツシガミはボロボロに崩れ落ちていき、風のうなり声とともにゆっくりと沈んでいった。
ウツシガミを形成していたクラウドは、イコンを失ったのをきっかけにして大地へと戻っていく。ただの土に戻っていく……やった……! うまくいった! 意識がないから実感わかないけどな!
と――俺はいきなり、ぐいっと頭を引きよせられていた。バランスを崩して尻餅をつくと、額に温かさをともなったやわらかい感触がして――キスか?――きわどい胸部が目の前にあった。
「オーコ……復活か?」
「うんっ! ありがとう……ドーマくん……」
おデコへのキスなんざ子供じみているが、俺には最高のご褒美だ。
でもそれで終わらなかった。俺は正面からオーコに抱きしめられた。おい……オーコ。さすがにそれはマズイんじゃないか? 胸が顔に当たるんだけど。
「ごめんねドーマくん……」
「なにがだよ。ニエモノ狩るのは俺の役目だろ。確かに大変だったけど、謝るのは違うんじゃないか?」
俺はドキドキしながら聞いてみる。オーコは俺を抱きしめたまま首を横に振った。
「ウツシガミに依代がなかったのがなんでか分かる? 人間が依代になるのは通常のニエモノ……でもウツシガミはまったく違うモノを依代にして現出する……それはわたし。クイモノが放ったマガツココロを依代にするの。わたしの食欲が人間のそれとは違うように、わたしのマガツココロも別のものなんだよ。だから依代にされちゃったの」
「おまえのマガツココロがウツシガミを造ったって?」
「うん。わたしね……怒ってたの」
「なにに?」
「ロイヤルヒル……」
ロイヤルヒル? え、ああ……もしかしてあれか? こんな自然のど真ん中に建造しやがったからか? それが依代になるってどんだけの怒りなんだそれ。
「……この国だと昔から言うでしょ。『神の祟り』って。ロイヤルヒルの建造がどれだけの被害をもたらしたかドーマくんは知ってるかな?」
「いやまったく……」
「じゃあ見て」
オーコが俺から離れて田んぼを手で示した。サービスタイムは終了か……なんて冗談にも口に出来ない顔をしていた。
俺達の周囲には稲穂がたくさん生えている。実を重くして頭を垂れた稲穂達は、少しは冷たくなってきた秋らしい風に揺られている。そして俺達の戦いの痕跡もそのなかにはあった。広大な田んぼのなかでもメチャクチャにされた稲穂達が痛々しかった。ほんの一部だと言える損傷でも、それを育ててきた苦労はとんでもない。それが分かってるからこそ痛々しかった。でもそれはそれとして、オーコの怒りの根本みたいなものは見つけられなかった。
「まだ収穫されてない稲穂がある……それしか分からん」
「そう……『この子達』は収穫されない。食べられなくなってるから」
「はい? まじかよ! どんくらいあると思ってんだ! 空海市がひと冬越えられるぞ! しかもおまえ品種だって一級品だぞ! この米達は糖度も充分にあり、整粒割合だってそうとう高く、水分も多く含んでいます! 香りやら粘りやらの食味検査で特Aだ! この空海市が誇る『そら味たことか』はいい米だ! それを――」
俺は米が好きだ。なんならファミレスの注文はラージライスにライスセットでいい。白米の袋の裏にある製品表示だって熟読してる。収穫できないってのはなんだとこら!
「――ロイヤルヒルが出来たくらいで食べれないってなんでだ!」
「不法投棄。塗料なんかの化学物質が水田に流されてた。この子達はドーマくんが言ったようないい物にはなれなかったの。死米ってやつだよ。そして人体の影響を考慮してすべてが廃棄処分になったの。それがロイヤルヒルに怒っちゃった理由――それと新聞部を利用してオーナーに近づいた理由でもある。じつは証拠の隠蔽を暴こうとしたんだ。まあ、はぐらかされたけどね。わたしは土地神だから……空海が汚されたのが我慢できなかった。でも……」
オーコは自分を責めるような怒りをあらわにし、唇を噛んだ。手をぎゅっと握りしめて、口惜しいと表情だけで語る。すげえいたたまれない……。
「わたしは自分では手を降せない。それが守り神としての理――それと律だから。自然と人間は相反してるようで同一だから……わたしは直接的にはどうしようもないけど、大地の意志と同調すれば感情が湧いてしまう。それが怒りだった。それがウツシガミになった。ドーマくんが大変な思いをしたのもわたしのせいなんだよ……」
「アホか、そんなことねえだろ」
俺は泣き出しそうな顔のまま微笑みを浮かべたオーコに、なにか言ってやりたかった。守り神を人間がなぐさめるなんておかしな話だ。それにどっちかって言えば、俺は『壊す』側の人間なんだ。おこがましいにもほどがあるが、俺にとってオーコはオーコ。俺が惚れてる一人の少女なんだよ。
「逃げ出そうとすればできたくせに、勝手に背負いこんだから苦労になっただけだろ。それと俺は大変な思いなんてしてねえぞ。俺は守れるもんなら全部守りたい。守りたいって自分勝手に戦って、痛めつけられて、あげくにオーコがその責任を被って死にかけた。俺がおまえに大変な思いをさせたんだよ。オーコは俺を助けはしたが、困らせることはしてねえだろ。それに守りたいもんメチャクチャにされたら怒るに決まってんじゃねえか」
「違うよ……ウツシガミが現出したのはわたしのせい。ウツシガミは特殊な条件でしかあらわれない。わたしに成り代わろうとする土地神なの」
「え? 土地神っつったら……ウツシガミはクイモノみたいなもんだったってことか?」
やばいよ俺。神を倒したのか。大丈夫なのか? 土地に影響しないのかそれ。
「ウツシガミはクイモノを喰らう。クイモノが犯してはいけない律を破った時……つまり定められた規則を守れなかった時に粛清のために出てくるの。それは守り神としての資格を剥奪されるってことだよ。本来なら消えなければならないのはわたしのほうだった」
「い……いや、そんなことねえ! オーコが間違ってるわけないだろ? 全部ロイヤルヒルに原因があるんじゃねえか。地球意志だかなんだか知らないけど、俺的にオーコは間違ってない! だから間違ったのはウツシガミだ! とんでもねえ勘違いヤローだ! そんな神は俺的にはいらん!」
オーコを消そうとする奴にいいも悪いもねえ! いや、悪い! すげえ悪い! 悪い神なら倒して正解だ! 悪い神を倒せてよかったわ!
「わたしが怒った原因はね……ロイヤルヒルを造ったこと、自然が破壊されたこと、この子達がちゃんと大きくなれなかったこと……それともう一つあるの。それが一番だったかも……」
「なんにしろ全部ロイヤルヒルのせいだってことじゃねえか」
「ち……違うの。わたし……許せなくて……」
オーコは怒りがおさまらないのか顔を真っ赤にしていた。少しだけうつむき、自分を抱きしめるように両腕をまわす。い……怒りが爆発すんのか? 局地的な大地震とか起きないか? オーコは視線を泳がせながらポツリと言った。
「ドーマくん……お米好きなのにっ……て」
「……へ?」
俺はさすがにキョトンとしてしまった。俺が米好きだから怒った? 稲が不作になったら確かに食えないな。え? そこ? そこに切れちゃったの?
なんて可愛い奴だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 待て! トリップしないで冷静になれ! ああくそ可愛いオーコ! だから落ち着けって!
「ドーマくん?」
「ぜえ……ぜえ……いや、なんでもない」
俺は両手で頭を抱えてもだえていたらしい。あ、さっきのキスで右腕も治してくれたんだな。
「ようするにあれだな? 純粋な怒りじゃなかったからウツシガミが出てきたわけだ」
「そ……そうなの。でもあれだよ、ドーマくん一生懸命だからお米食べれなくなったら落ちこんじゃうって思ったからだからね」
「お……おう。なんか言葉がおかしいけど納得した」
「べつにおかしくないっ。とにかくわたしのせいなんだからごめんねってことっ」
オーコは赤い顔のまま頬を膨らませた。いきなりなにを怒ってるんだかわからん。
「でも浄化には成功したわけだよな? オーコの仕事は完遂できたんだろ?」
「まあね……でもロイヤルヒルの影響は凄いよ。お客さんの心にある物欲がマガツココロになっちゃうと思う。ウツシガミはそうとうなモノだったけど、それを回帰させても足りないくらいのモノをまだ感じるの」
「いいことなしかよロイヤルヒル……そうなると便利ってのも考えもんだな。シャータもクラウドに狙われるんじゃないかってくらいに敵意剥きだしだったし……こいつらも可哀想だよな……」
「ドーマくん……」
俺は稲穂を育んでくれる大地に両手をついた。そこに生えてきてくれた稲穂達にも悪い気がした。まあ、土下座くらいしかしてやれないけど。どうか今回は勘弁してください。そしてまた来年にはうまい米を食わしてください。人間代表して謝ります! だって米ないと生きてけないもの! 米サイコー! オーコの次に大好きです!
――え?
「な、な、な……なにが起きた!」
よくわからんが稲穂が輝いている! そこらじゅうの稲穂がキラキラと光り、フワァッと波が立つように波紋を描いていく。その現象はすげえ勢いで何ヘクタールという敷地に広がっていった。戦闘で踏まれ、ちぎられた稲穂もその光の波のなかで息を吹き返し、田んぼは実りの秋を謳歌していた。ダメだ。まったくついていけない! でもこれ稲が復活したんじゃないか?
「オーコ!」
「……サントノアザ、発動してるみたい。凄い……元気なかったのにみんな……」
オーコはその光景を嬉しそうに眺めていた。たぶんだがサントノアザの力で大地が浄化されたんだろう。それこそ汚染していた化学物質なんかも根こそぎどっかにやっちまった。いや……サントノアザって戦うためのもんじゃないのか? 俺にはまったくわけ分からん!
「ありがとう……清浄な清明心で満たされたみたい。ドーマくん優しい……」
「おう、米への愛情は誰にも負けねえ! よく分からんが……」
オーコはキラキラと光る稲穂達を見回しながら、それよりもっとキラキラとした瞳で、本当に嬉しそうに笑っていた。
だからまあ、いっか……。
※
でも俺には不安が残ったのも事実だ。
サントノアザっていったいなんなんだ……?
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