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二章「温泉取材、クロフギヒメ」

ドーマくん、なんじゃこりゃあぁぁぁ!

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  ウツシガミとの戦闘を終えた二日後――



  日曜日。今日はさすがに私服だ。わたしはスカートのサロペットにジージャンにサンダル。ドーマくんは白いシャツにジーパンにブーツ……という格好をしていた。設定としては日曜デートをする高校生カップル。まあ、いつもと同じく変わったデート内容だけど。

  まわりは鬱蒼うっそうとした森のなかだけど、ちょっと空き地みたいになったスペース。わたし達はそこで、いつも通りにニエモノ狩りをしていた。場所は空海高校裏手の、山に面した森だ。この森を抜けていくと、以前戦闘をした田んぼがある。

「あ!  嘘だろ!  どこに行きやがった!」

  ドーマくんが森の木々をキョロキョロとしながら叫んだ。その声にびっくりして、近くにいた鳥たちが飛んでいく。

  そのクチナワ型のニエモノ――つまり蛇型のニエモノは、しげみや木のうろに姿を隠しつつ、毒液や噛みつきや締めつけ攻撃をやってくる。人間のサイズを蛇に変えているのだから、アナコンダ並みに大きい……でも、隠れる技術に優れているため、『見る』だけではなかなか見つけられない。

  わたしと違ってドーマくんは、ニエモノを視線で追うしかない。わたしは飢餓感でニエモノを捉えることが可能だから、いま姿を隠したクチナワが――ニョヘビンが地中を移動しているのが分かっていた。ちなみにわたしは倒れた木に腰をかけ、ドーマくんの戦いぶりを拝見している。

「ドーマくん手伝おうか?」
「いやいや、ここは俺に任せてもらうぜ!  なんせサントノアザを極めたっぽいからな!」

  と、言いつつドーマくんはわたしの脚をチラ見する。わたしは片足をぷらーんとしながら、逆の足を木に乗せて、その膝に肘を置き、そこに顎を乗せている。ちゃんとスカートは押さえているけど、 なんかキワドイ感じなんだろう。まったくもう……集中しなさい!

「ドーマくん、下だよ」
「なんだとバカな!  まだ反応するほど眺めてはないのにっ!?」
「なに言ってるんだか……」

  わたしは真顔でふぅと息を吐いた。ドーマくんは案の定、地面をぼごっ!  と割って出てきたニョヘビンに、片腕を裂かれてしまう。痛いぞバカヤロウとか叫びながら、ドーマくんは跳んだ。ニョヘビンは頭上の枝に絡みつき、しゅおっと高速移動で見えなくなる。ドーマくんの拳がスカッとくうを切る。

「だぁクソ!  速すぎるぞコイツ!」

  ドーマくんは着地すると負傷した左腕を押さえた。着ている白いシャツにも血が飛んでいる。

「ニエモノにはいくつかタイプがある。俊敏移動型、攻撃特化型、特防堅固型などなど……ニョヘビンは俊敏移動型。あらゆる動作のなかで移動行動が速いんだよ」
「それは初耳だ。なるほど……知識不足のせいで押されてる感が出てたわけだ!  ではその知識を得たことにより、俺はコイツを瞬時に倒せる展開だぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

  ドーマくんは上から降ってきたニョヘビンに巻きつかれた。戦いに集中しないからだよ?  ニョヘビンは移動したと見せかけて、すぐに戻って来たんだ。そして隙だらけのドーマくんを締め上げている。

「ドーマくん手伝おうか?」
「い……や……い……や……ここ……はぁぁぁ!」

  お、スゴい力だ。ドーマくんはサントノアザで腕力を強化し、ニョヘビンの締めつけから脱け出そうとしている。でもニョヘビンの攻撃は止まらない。チロチロと舌を出しながら、くわっと口を開いた。ドーマくんはかなりビビった様子でそれを見上げる。

「ちょい待てそれはダメだろ!  毒液とか卑怯だろ……危なあぁぁぁいっ!  いま近かったぞ!  きゃあぁぁぁ!  かかるかかるうぅぅぅぅ!」

  ジュシュウゥゥゥ……と嫌な臭いのする毒液が、ドーマくんに迫っていた。うん、こりゃダメだ。わたしはぷらぷらさせていた足で、空気を蹴った――ドンッ!

  すると、ヒュゴッ!  と空気の弾丸が疾り、ニョヘビンの顔を横殴りにする。ニョヘビンは拘束を解きながら、ゆっくりと倒れていった。ドーマくんはすかさず跳躍し、ニョヘビンから距離を置く。

「よ……よし!  なんかオナラしたら助かった!  つまり貴様の弱点は匂いだ!」
「ドーマくん……」

  わたしは本気であきれてオデコを押さえる。だけどもドーマくんのその勘違いが、ある種の確信を与えたのは事実だ。ドーマくんは右手をひたいにかざした。いまのわたしと同じような格好で叫ぶ。

「――これがお前にざんを課す!」

  ドーマくんがいつものセリフを言うと、サントノアザから黒いモヤが現れて広がった。それは瞬時に集束し、ドーマくんの手には武器が握られる。自信満々だったドーマくんは、その武器を見て叫んだ。

「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!」
「誘導灯じゃないかな。警備員さんの」

  ピカピカ光る赤い棒だ。工事現場でよく見かけるアレが、今回のドーマくんの武器みたい。

「それは分かっている!  おかしいぞ、いまの俺ならもっとまともな武器が出せるはずなのに!  なるほどこれは……己を戒めよ、というお告げ的なアレか!  そう、俺はサントノアザを極めたことに慢心していた……だから亡き師匠がこんなこともあろうかと、俺のために用意した自己啓発アイテム!  目覚めよと師匠が言っているのだ!  よし、師匠!  俺はこれをどうすればいいんですかねえぇぇぇぇぇ!」

  ドーマくんは横から跳んできたニョヘビンの噛みつき攻撃をかわした。よしよし、とっさの攻撃にも反応するようになったね。ドーマくんは武器を出すまでが長い。確信を得るまで武器を出せないからなんだけど、そこに至るまでは戦闘にも集中出来ないみたい。

  なんにせよドーマくんは、ニョヘビンの攻撃を見極め始めていた。ついこないだ覚えたのだろう高速移動まで使ったりしている。ドーマくんは攻撃を喰らわない……その代わりに攻撃も出来ない。

「てやあぁぁぁ!」

  ドーマくんはニョヘビンに切りかかった。ぺこっ。ニョヘビンは尻尾を振りかぶった。ぶおんっ。ドーマくんはそれをかわして攻撃。ぽこん。ニョヘビンは毒液を吐く。ぶしゃっ。ドーマくんは高速移動でかわして攻撃。ぱこっ。

「使えねえぇぇぇ!  なんだこれ『攻撃力1』の経験値二倍武器なのか!?」
「使いかた分かったの?」
「これの使いかたはヒーローごっこで極めている!  危ねっ!」
「倒せると思って出したなら、一撃で倒せるはずだけど」
「すんませんした!  調子こきました!  全っ然分かりません!」
「早く終わらせないとランチタイム終わるよ?  人間のほうがお腹空いちゃったんだから」
「なに?  くっそおぉぉぉぉ!  古来よりエスコートは男の役目えぇぇぇぇ!」

  独自の正義感を振り絞りながら、ドーマくんはニョヘビンを切りつけた。ぺこぽ。可愛らしい音がする。今回の武器、わたしは嫌いじゃない。

  でもさすがのクイモノでも、その武器の使いかたは分からない。サントノアザの武器はドーマくんの独創性が現れたものだから、わたしには理解が出来ないわけだ。わたしに分かるのは、それらの武器を使用するにはいくつかの要素を必要とするということだけ。

  内撃心鉄ココロガネもその一つ。これは威力の増強に必要だ。力を高める、込めることに相当する。先日の武器をドーマくんが撃てたのは、トリガーを引く行為と力を込める行為を同様だと認識したから――あくまでも無意識にだけど。それらは確信で一つに結合され、武器として成立した。あのときトリガーを引くだけでは力が不十分で武器は機能しなかったわけだ。じつのところココロガネなどの『文言もんごん』も、サントノアザの武器を使用するためのアプローチの一つ。まあ文言は扱いが難しいんだけど。

  実体の無い光弾は、ドーマくんがウツシガミを翻弄した『風』のアヴアターラ。つまりは化身のようなモノ。このアヴアターラはドーマくんの力の礎でもある。現在ドーマくんが手にしている警備員さんの誘導灯は、恐らく『火』のアヴアターラだろう。じっさいに炎を生み出すかまでは分からないけど、クイモノはそのアヴアターラを感じることが出来る。ただし望洋ぼうようとしたイメージのなかで、完全に把握可能なわけじゃない。そうかなと思うくらいだ。

「分かった!  じつは相当なダメージが蓄積してるんだろう!  そうだと言ってください!」
「ココロガネが出来てないよ」
「あれは撃つための心得じゃないのか!  いや、そうか!  あの時の俺は力を込めようとしたんだ……しゃあっ!  使いかた分からないのに力を込めるってどういう意味ですか!?」
「うーん……なんて言ったらいいのかな」

  ドーマくんがぺこぺこぽこんと攻撃するのを見ながら、わたしは思考する。やっぱり文言で伝えるべきじゃなかった。サントノアザを極めるためには、言葉や理屈で説明出来てはいけない、もっと別のアプローチが必要だ。文言はそのアプローチを阻害してしまう。ただし『考えるのではなく感じる』という名文句は、サントノアザを操るためにピッタリな文言だ。何が言いたいかと言うと、つまり安易で分かりやすい言葉はタメにならない。

  でもやっぱり口にしたいのは、世話焼き女房的な感覚なのかな?  それよりもちょっとじれったいのかも。

玄鋼翁博ツヅチガネだよ」
「言葉よりも意味をください!」
「ココロガネの前段階。ドーマくんこのあいだは無意識にやってたでしょう」
「意識してないなら覚えてないよね!?」
「じゃあアレ、その武器が最強だったころの少年の心を思い出す」
「なに……幻影走馬刀をやれと!  いやしかし、あれは戦隊もので言うならシルバーの立ち位置でしか使えないんだよ。だからほら、メインの五人は一つのロボに乗るんだけど、俺は一人で寂しく超高性能なロボに乗るわけだ。そして五人がピンチになったところで幻影走馬刀おぉぉぉぉぉぉぉっ!」

  ドーマくんの手にしている警備員さんの誘導灯が、スイッチを入れたかのように光りだした。ちょっと点滅したりしている。ドーマくんは、これで交通整理でもすんのかあぁぁぁぁ!  と叫びながらニョヘビンを切りつける。だけどしっかり効果は現れていて、誘導灯で切りつけた胴体が燃え上がったりしている。

「ツヅチガネは発動の確信。そしてココロガネは強化の確信。そこらへんを確実に出来ないと、極めたとは言えないよ」
「調子乗ってすいませんでしたあぁぁぁぁ!」
「ちなみにイコンはヤコブソン器官にあるから」
「さすがはオーコ!  いつもながら的確だ!  そのヤコブ・ソンさんはどこにお住まいの人!?」

  ドーマくんはニョヘビンの攻撃をかわしながら、なんども切りつけている。だけど弱点であるイコンを狙わなければ、いつまでも動くのがニエモノだ。もしくはわたしが以前やっていたように、クラウドをすべて処分してしまえば、とりあえず行動不能には出来る。でも『食事制限』がドーマくんとの契約なのだ。だから基本的にニエモノの単独現出の時は、傍観することにしている。

「口内の上部を狙って」
「やっぱりな!  そこだと思ってたぜ!」

  ドーマくん?  思いっきり尻尾のほうに行ってたよね?  ドーマくんは意気揚々いきようようとニョヘビンの頭のほうに標的を変えた。

  ドーマくんはこの短時間で、ニョヘビンの俊敏な動きに反応するようになっていた。ウツシガミとの一戦で、なにかコツを得たんだろう。ただその状態に至るまでが長すぎる。ウツシガミ以上のニエモノが出てきたとしたら、なんとかする前に殺されてしまうだろう。強さにムラがありすぎるのだ。まあそれが人間なんだけど。

  ドーマくんはニョヘビンが見えなくなってもうろたえず、周囲に視線を這わせていた。まあニョヘビンは攻撃瞬速型ではないのでよけるのは簡単なはず。攻撃の速さは通常の蛇と大差ないから。ちなみにニョヘビンはドーマくんの真後ろにある茂みに隠れている。

「そこらへんも探知出来るといいんだけどね……」

  ドーマくんは頭が固いのか、そういう柔軟な発想に欠けているのだ。『敵の位置が分かる』確信があれば、サントノアザが教えてくれるのにね。

  ドーマくんは腰を落として武器を構えていた。ニョヘビンがどこから来るのかを、あまりキョロキョロとはせずに気配を探っている。ドーマくんは一旦いったん『倒すぞモード』に入ると、わたしがビックリするような結果を出す。

  ドーマくんの背後から、ニョヘビンがゆっくりと近づいていた。知能があるというか、狩りの本能なんだろう。音を立てずに近づき、背後から丸飲みにするつもりか。ドーマくんはそれに気づいていないようだ。ニョヘビンが鎌首をもたげ、ドーマくんに凶悪なあごを開いた――

  ――はい、甘い。ドーマくんはニョヘビンが口を開いた瞬間に高速移動する。フィニッシュエンブレードオォォォォッ!  と叫びながら口内上部を刺し貫いた。幻影走馬刀じゃなかった?

  だけどドーマくん、ちょっとイコンから外れてる。ニョヘビンはフィニッシュエンブレードを喰らいながらも、ドーマくんを飲み込もうとしていた。

「食べないでぇ!  んぎぎぎぎ……頼むサントノアザァァァァ……!」

  ドーマくんはニョヘビンの閉じようとした口に、頑張って力で対抗していた。両足を下顎につき、片腕は上顎を支え、片手で誘導灯を持っている。

「オーコオォォォォ……イコンはどこだあぁぁぁぁ……」
「もうちょっと奥じゃないかな?」
「全っ然っ分からなあぁぁぁぁ……こうなったらあぁぁぁぁっ!」

  ドーマくんは誘導灯を一度引き抜いた。ブシャアッ!  と鮮血がドーマくんに降りかかる。でもドーマくんはふざけた絶叫をあげたりはせず、

「全部吹き飛んじまえぇぇぇぇ!」

  ……うん、勝ちだね。ドーマくんはココロガネに成功し、強力な一撃を放つ。それは空中から着地する際に放ったブースターと同じようなこと。一点に集約された力の解放。突き出された誘導灯の先端から、火花に似た小さなキラキラが拡散し、爆発する。ドゴオォォォォン!  と爆発はニョヘビンの頭部を吹き飛ばした。その瞬間、ゴグン……とニョヘビンは黒い球体に包まれた。

「アチチチチッ!  燃えてます燃えていますよおぉぉぉぉぉ!」

  ドーマくんは地面に落ちて、引火した白いシャツを手でバタバタと払っていた。うーん……もう少し上手く力を使えれば、こんなことにはならないのにね。わたしは倒木とうぼくから降りると、ドーマくんに近づいた。

  ドーマくんに動かないでとお願いし、燃えている肩を軽く撫でる。消火はすぐに完了し、火傷はあとでねと待っていてもらう。ドーマくんはかなりビックリした様子で、おう、と答えた。

  わたしはニョヘビンの姿を見上げた。頭部は破壊されて、その代わりに黒い球体が頭の部分に乗っている。わたしは飛術ひじゅつで体を浮かせると、黒い球体に爪を突き立て、イコンを取り出す。

「……やっぱりね」

  わたしの手にはビー玉くらいのイコンがあった。イコンの通常の大きさは拳くらいのはず。ようするにこのニョヘビンはかなり特異なニエモノだったわけだ。そもそもオーマガトキも訪れていない昼日中。まだランチに間に合ってしまう時間なのに、ニエモノが現出すること自体が間違っている。わたしはとりあえずイコンを飲み込んで着地する。

「なんか分かったのか?」
「まだだよっ。ちょっと考えなくちゃいけないかも」

  わたしは満面の笑みでドーマくんの火傷した場所にキスをした。すると赤くなっていた皮膚が再生し、綺麗な肌色になる。さすがに焼け焦げて穴の空いたシャツまでは直せないけどねっ。

「ごくろうさまっ」
「おう……なあオーコ。クラウドに侵された人間は死んでるんだよな?」
「そうだよっ。ココログルイが完全に発症したら意識とか魂とか食べられちゃうし、クラウドがとりついたら臓器とかもダメにされちゃうから。でもなんで?」
「いや、あれさ、生きてないか?」

  ドーマくんが指を差した。わたしはそっちを振り向く。ニョヘビンを形成していたクラウドは大地に還り、そこには一人の男性が横たわっている。金髪にピアス、Tシャツにハーパン、やんちゃな感じのお兄さんだ。そしてあろうことか、お兄さんは意識を失っているものの、呼吸をしていた。

「生きてるよな?」
「うん……なんでだろう」
「オーコにも分からないのか?」
「うん。ごくたまにだけど生存者が出ることはある。わたしは『改心カエシゴコロ』って呼んでるんだけど、ココログルイされた後でどういうわけか、それ以上の進行が止まる場合がある。これが起きると肉体への侵食も止まるから、生き残ることが出来るの……でも、その場合ここまでニエモノは現出しないよ。カエシゴコロが起きればクラウドを寄せつけないから、そもそもクラウドも取りつかない」
「矛盾してるってことか。ニエモノになってるのに生き残ってるわけだもんな。それであの人はどうすんだ?  もしかしたら記憶とかあったりするんじゃないか?」
「いちおー、改心者の記憶は消すことにしてる。ちょっと待っててっ」

  わたしはお兄さんに近づいた。まるで胎児みたいに膝を抱えた姿勢でうずくまっている。

「……生きてる。外部の損傷も無い。こんなこといままでなかったのに」

  お兄さんは寝息をたてるような呼吸をしていた。うーん……アッシュクラウドの感覚はしなかったし、ジボシンのわたしにも分からないことがあるのか……それもまた矛盾のように感じながら、わたしはお兄さんのオデコに中指をつけた。梵字ぼんじのような印を描き、忘術ぼうじゅつを使う。幻惑なんかにも使える印だ。お兄さんは頭痛を我慢するように顔を歪める。うぅぅ……とうなってしばらくすると、お兄さんのオデコからフッと煙が出て来て霧消むしょうした。これでクイモノやニエモノに関係するすべてを消却完了!

  と、ドーマくんが近づいてきた。そしてハーパンのポケットを漁る。盗みは良くないよっ!

「違うわい!  身元確認するんだよ。お……財布発見。免許証を拝見します。光浦さん、二十四歳、住所は……え?  こいつ隣県からお越しだぞ。ここから百キロは離れてるはずだ」
「良く住所だけで分かるねっ」
「小学校の低学年の時は隣の県に住んでたんだよ。俺はほら、『港組みなとぐみ』だから」
「そっか、空海の港が出来てからこっちに来たんだねっ」
「そ。地元組とは仲が悪かった。そんなことよりこいつをどうする?」
「そうだね……警察に連絡する。せっかく助かったのに死んじゃったらイヤだもんっ」
「よし、じゃあ……って圏外だよ。このへんじゃあ連絡不可だな」
「なら学校まで行こうよ。だけどこの前みたいに変な理由にしないでよ?」
「変なって?」
「ツワリとか!」

  ドーマくんはへいへいとか言いながら立ち上がった。本当に分かってくれたのかなっ!?

  わたしは半信半疑のままさっき座っていた倒木に行き、置いてあったバッグを拾った。白のショルダーバッグは、カゲチョンに貰ったおさがりだけどブランド物。ドーマくんはカバンとかは持たない主義で、ケータイと財布はポケットのなかだ。わたしはいつも、落としちゃうよ?  と注意している。

  二人で獣道を登っていく。ドーマくんには良く分からない男気があって、先行して枝とかをどかしてくれたりする。わたしはなんとなく嬉しくなるけど、枝や葉っぱがわたしをよけるから意味無いよ?  田んぼの稲たちが倒れなかったのはそのせいだ。『自然』に気を使わせるのは申し訳なくて、わたしはあまり森とかには立ち入らない。ニエモノがいたら別だけど。

「あー……オーコさん?」
「なにその不自然なのっ」
「いや、じつはその……フリの彼氏彼女なんだよな、俺達は」
「?  そうだけど、なにいきなりっ」
「いやほら、フリはフリでさ、なんかちゃんとしたほうがいいかなあと……」
「うん。だから今日はランチするじゃんっ」
「そうだな。おう、大正解です……」
「もう……なんなのドーマくんっ」

  ドーマくんは見てないけど、わたしはほっぺを膨らませたりする。う~……じれったい!  わたしに気を使ってるつもりなのかもしれないけど、ハッキリしてくれないとわたしのほうが気を使っちゃうのっ!  お誘いならちゃんと誘いなさい。迷惑だなんて思いません!

「あー……ほら、最近ちょっと流行ってるやつがあるだろ?」
「なあにそれ。流行りなんていっぱいあるじゃんっ」
「だからほら、ゲゲさんも彼女と行ったし、カゲチヨは一人で観たとか観ないとかで、シャータはそもそも興味がなくてだな」
「うん、それで?」
「それをちょっと思い出してごらん。さあ」
「さあと言われても、さあ……なんですっ」
「だからアレだって。彼氏彼女だったら、あー俺たちも行ったわーってなる暗いところでだな」
「おばけ屋敷?」
「惜しい。てかニエモノ見てるからおばけ屋敷なんざ怖くないだろ。そうじゃなくて――」

  ――ガサッとドーマくんが木々を抜けた先は道路。緩やかな坂道になっていて、片側一車線の道路からは空海市の田園風景が一望出来る。ガードレールから先は崖で、その向こうには高い山々がどっしりと構えている。まだ陽は高く、アスファルトの照り返しとかでかなり暑くなる。わたしにはあまり関係ないけど、ドーマくんは顎まで垂れた汗を腕で拭った。ハンドタオルくらい持ちなさいっ。

「ドーマくん、たしなみは重要だよ。はいっ」
「あ、悪い。洗って返す」

  ドーマくんは渡したハンドタオルで汗を拭いた。洗って返す気づかいは出来るのに……と、わたしは男の子の気持ちが分からなくなる。なんだろ、デートに誘って嫌がられるのが嫌なのかな。それともデートに誘ってわたしが気を使って、いいよ行こうよ、みたいなのが嫌なのかな。まあ社交辞令みたいなノリはちょっと嫌だろうけど……と、『桜子』の女子的な感性は囁くのだっ。

  わたしたちは左に曲がって空海高校へと向かう。歩くペースでなら十五分くらいだろうか。わたしはドーマくんの後ろを歩く。ドーマくんは頭を掻いたりケータイを開いたりと、ソワソワして落ち着かない。もうっなんでそこは男らしくないかなっ。

「そうそう、んで、さっきの話なんだけど。現在時刻は十二時半くらいなわけだ。そんでまあいろいろと飯食ったりなんだりしたら、多分なんだが二時くらいはなるんじゃないかと」
「ふんふん。それでっ?」
「そしたらほら、二時半から始まるやつにちょうど間に合うっつーかなんつーか」
「間に合うやつっていうのがハテナなんだけどっ」

  まあ、どこに誘いたいのか分かってるけどね。じつはちょっと気になってはいたんだ。『ミツバチ』っていうアウトローな恋愛モノの映画でしょ?  やっぱりこうダークな恋愛モノってハラハラするから、余計に主人公の想いが切ないっていうかね。はい、ドーマくんっ。わたしは観たいので言ってごらんなさいっ。映画に行かない?  って誘ってごらんなさいっ。

「だからさ、イスがたくさんあって過去には活動写真と呼ばれていた、暗い部屋で大勢の人々と一つの物語を観つつ、登場人物たちの視点を介し、主人公の哀しみや喜びをともに感じて分かち合うものはなーんでしたか」
「えー分かんなーい」

  だから映画でしょおぉぉぉぉっ!  活動写真って言えたんなら映画って言えるでしょ!  なんでこの子は意気地がないんでしょっ!  よし、ドーマくんが映画って言わない限りはわたしは絶対に分からないフリなんだからっ。

  そんなドーマくんと駆け引きをしていると、いつしか空海高校に着いていた。たっぷり十五分間、ドーマくんは妙な言い回しで分からそうと試みてきた。でも絶対に分かってあげないっ。

  ドーマくんは校門に到着すると、ケータイで警察に連絡をした。たまたま彼女とタケノコ狩りに行ったんですよ、とか言って。今は九月だよ!?  タケノコの旬は春ですよ!  しかしその理由が通ってしまうんだから、人間の世界は複雑だ。ドーマくんは二言三言の会話をしてケータイを切った。

「おまわりさんはなんて?」
「正確な場所を知りたいから案内しろって。でも予定があるから最寄りの交番に伝えときます、で終了」
「ふーん……予定って?」
「ああ、映画の予約をし――へいあーっ!?  ちちちちが違うぞ!  けしてこれは事前準備からのことではなく、偶発的な偶然が偶然に重なった偶然のことだ!」
「……いいけど」
「偶然なのにか!?  こりゃまた偶然ですねっ!」
「もうっ、偶然なのは分かったから。それでなんの映画?」
「お……おうっ!  なんかミツバチとかいう不良モノ?  みたいな?  だからほら甘酸っぱい恋愛モノとかじゃないから、気軽に楽しめる手はずが整っている?」
「はいはい。じゃあ、エスコートをお願いしてもよろしいかしら?」
「よ、よし……!  なんか知らんが上手くいった……!」

  ドーマくんは真顔でこそっとガッツポーズをする。まあ聞こえちゃってるけども。でもとても嬉しそうだ。ちょっと可愛らしい。

  わたしたちは坂をくだり始めた。空海高校を通りすぎ、坂のしたにあるバス停を目指す。歩道は狭くないんだけど、わたしはドーマくんの後ろをついていく。背中を見ているのがなぜか好きだから。

「な……なんか予定とかなかったのか?」
「今日はカゲちょんはバイトだし、新聞部はお休みだし、例のあのことを考えなくちゃいけないし」
「あ、そうか……一人が良かったならそれでいいんだぞ?」
「今日中に答えが出るとは思えないから……それよりも映画が観たいな」
「まぢか!  そうなんだよ俺も映画が観たくて!  いやもうほんとミツバチって映画が気になりすぎて、米にハチミツをかけて食べたくらいだわっ!」
「それは嘘だよね?」
「はいっ嘘です」
「意味のない嘘が好きだよねドーマくんは」
「おうっ、三度の飯の次くらいに好きだからな」
「それも嘘だよね?」
「そうなんだよ、嘘なんだよ。不思議だよな自然に嘘ついちゃうんだよ」
「じゃあ映画が偶然も嘘なのかな?」
「嘘ですね。典型的な嘘です……いやいやいやいや!  あれはほんとに偶然にも予約がされていてだな……」
「は~いっ」
「あ!  おまえ信じてないだろ!  映画の予約が勝手にされる七不思議知らないの?  オーコさんともあろう人が空海七不思議知らないんだぁ……もうほんと困る」

  わたしはドーマくんの下手な照れ隠しに吹き出してしまった。ドーマくんは顔を赤くしながら、なに笑ってやがる、と怒鳴る。わたしはドーマくんのこういう不器用なところが好き。なんとも言えず可愛らしい。

  わたし達は坂の下の交番に寄って発見した男性の位置を伝えた。それからバスに乗り、都心部に向かう。ドーマくんは隣に座ればいいのに、二人用の座席でも後ろとかに座る。彼氏彼女なら隣同士だと思うんだけど?  なんでか照れ屋なんだよね。だからわたしはイジワルのつもりで、ドーマくんの隣に移動する。すると赤くなりながら飯どうする?  とか聞いてくる。エスコートはどうしましたか?

「わたしはなんでもいい」
「まぢか……ではここはイタリアンでも」
「バイト先にご招待でしょそれ」
「な……なんでそれを!?」

  ふふふ。ドーマくんのバイト先くらい知ってます。

  わたしと行動するようになってから、ドーマくんはバイトを始めた。なぜならニエモノ狩りはお金がかかる。いま着てる白いシャツだってダメになってるし、一番被害を受けるのは衣類だったりする。わたしが基本的に制服でニエモノ狩りをするのも、予備が何着もあるし定期的なクリーニングを寮でやっているからだ。なのでドーマくんは基本的にはスウェットとかで戦っている。部屋着ならある程度の汚れは気にしなくていいからだろう。

  まあそういったリアルな嘆きはさておき、バスは駅前に到着した。降りると同時にむわっとした熱気が体を包む。でもわたしは平気。伊達にクイモノやってないよ。ドーマくんは熱中症の経験があるせいか、早く行こうぜと急かしたりしてくる。

  わたしたちは駅から程近い場所にあるシービューワビルへと、雑踏を歩いていった。陽射しと照り返しと人々の熱気で、ドーマくんはノックアウト寸前。バスターミナルを過ぎ、大通りを渡り、商店街を抜け、空海港通りという片側三車線の道路に出る。ここは都市部で一番のにぎわいを見せる通りで、道路の両脇には雑貨屋とかレンタルショップとか、テナントビルが並びに並んでいる。そのため老若男女がごちゃごちゃと行き交う歩道で――あ、ドーマくんやらしい。さりげに手を取るなんてっ!

「こ、これはアレだ。空海市のかかげる『迷子の迷子の子猫ちゃん、あなたのお家はもといたお家』の標語にあやかってだな!」
「それは、みなしごペット撲滅運動でしょっ……まあ、いいけど……」
「そうだよな!  空海市民としてはやはり市のイメージアップに貢献をするべきだよな!」
「そういう理由ならしないっ」
「あーもうオーコの手って暖かいなぁっ!  ずっと触れていたいこのびちゃびちゃ感!」
「それはドーマくんの汗ですっ」
「はうあっ……や、やっぱり離そうか……不快な思いをさせてごめんなさい」
「……バカ?」

  あ、ごめん。思わずバカとか言ってしまった。ドーマくんは空いている手で目頭を押さえていた。泣くほどのことだったの?

  わたしはドーマくんが手を離そうとするので、逆にしっかり握ってやった。ドーマくんが目に涙をうっすらと浮かべつつ、ポカンとした顔をする。

  あのですね、汗がどーなんて以前に、手をつなぎたくもない人には、触られもしたくないわけですよ。上司に肩を触られて不快な思いをするように、許せない相手にはとことんなにも許せないのが女子という生き物なのですっ。嫌だったらすぐに、ごめんそういうのムリって言います。だって気持ち悪いもんっ。なんならすぐにありもしない用事とか思い出すよっ。

「なんで泣きそうになってるの?」
「だっておま……盆と正月が一気に来るって意味が分かるぜ?」
「そんなにありがたいのっ!?  ほら、タオルタオル……はい、これで気にならない?」
「……今のところは」

  わたしがハンドタオルで汗を拭き、しっかりと握ってあげる。ドーマくんは顔には出さずにニコッとした――じっさいに笑ったのではなく、そういう空気を発したのです。わたしには人の感情がなんとなく分かるの。そうじゃなければマガツココロの対象となる、『ヨクモノ』は見分けられません。わたしはそのおかげで、笑うことの出来ないドーマくんの表情を補完可能だ。例えばやらし~顔つきの半笑いとかも感じる。一日の流れでだいたいドーマくんは半笑いっ。思春期男子はみんなそうっ。

  駅からは十分くらいでシービューワビルに着く。メンズファッションのお店も入っているので、後でシャツを見てあげよう。ドーマくんはシャツが似合うからねっ。

  ビルは六階建てでけっこう広い。アウトレットの洋服店や雑貨店とか、まあいろいろと入っている。手はつないだままエレベーターに直行。入口に出来たクレープ屋さんも気になるけれど、早くしないとランチじゃなくなってしまう。目指すは六階にあってドーマくんがバイトしているイタリアンレストランだ。

「なあオーコ。ニエモノがなんで昼間から出てきたのか分からないんだよな?」

  一度エレベーターが五階で止まり、お客さんが降りていくとドーマくんが聞いた。わたしはうんと返事をした。

「マガツココロが人に憑いてココログルイを起こし、それにクラウドが憑依する。もしくはヨクモノにクラウドが憑依してココログルイさせてニエモノにする。またはココログルイを起こした人に、オーマガトキを経てクラウドが現出して取りつく。朝になって昼になって夜になるっていう、自然のサイクルと同じっ。とにかくオーマガトキ以前にクラウドが出てくるのはおかしいんだ……」

  チン……と六階に着く。シービューワビル六階は、海側にフード系のショップ、エレベーター側にはケータイショップや旅行代理店なんかが入っている。わたし達はもちろん海側に歩き出す。見てみたかったドーマくんのバイト先!  わたしはワクワクしていた。

「俺にもなにか手伝えるか?」
「うーん……どうかな。クイモノとしての知識を、どこまで口にしていいか分からないんだよね」
「そうか。でもやっぱり原因はウツシガミなんじゃないのか?  あれってかなり特殊なニエモノだろ」
「うん……そうだね」

  ドーマくんの言うとおり、ウツシガミはわたしと成り代わっていなければならないモノだ。自然の摂理を歪めてしまったがために、昼にニエモノが現出することになった……そうも考えられる。

  だけど、たったそれだけのことで、何十億年と続いてきたサイクルが乱れるだろうか。ほころびを生じさせてしまったのは分かる。でも地球意思がそれを許さず、わたしを亡き者にしようとしているのなら、再度のウツシガミ登場ということになるんじゃないかな?  クラウドの異変という結果になるのはちょっと違う気がする。

  わたしがそんなふうに考え込んでいると、ドーマくんのバイト先である『ペル=ウン=ポ』というレストランに着く。どこか地中海の感じがする内装。お店の奥はガラス張りで、空海の都市から海までが展望出来るというオシャレなお店っ……という噂。まだ入ったことはないんだよね。

「下澤さん、お疲れ様です」
「あ、斗真くん!  なになに?  これが例の彼女~?」

  ドーマくんが受付にいた女性に挨拶する。大学生くらいだろうか。ちょっとぽっちゃりな体型に、黒のエプロン姿が妙にマッチしている。あ!  ドーマくん!  下澤さんの胸のあたりチラ見したっ!  後で怒るからねっ。

「初めましてっ、芦屋桜子と言います。オーコって呼んでくださいね♪」
「やばっ、チョー可愛い!  オーコちゃんヨロシクね。では……窓側の席にどーぞー」

  下澤さんが高い声でわたし達を案内してくれる。さすがはランチタイムというだけあって、席はほとんど埋まっていた。

「わ♪  キレーだねぇ……」
「窓側が空いてるなんて奇跡だな。いや、ほんとビックリだな」

  視界の下半分はビルや民家だけど、上半分は太陽をキラキラと反射させる大海原、そして大きな青い空っ。着席する前にわたしが景色にハシャいでいると、ドーマくんがいそいそと席に着いた。あー……なるほどっ。わたしのために予約したんだね……うんうん、健気でポイントアップ!  だけど胸チラ見したからプラマイゼロだからねっ!

  そのあとは下澤さんが接客してくれた。わたしは冷製パスタなんて頼んでみる。写真のトマトが美味しそうだったから。ドーマくんは……ちょっと?  リゾットにアランチーニ?  またライスライスしたものばっかり!  太るよもう……まあ、ドーマくんらしくていいけどさっ。 

  ドーマくんは運ばれてきた水をイッキ飲みする。喉が渇いてたんだねっ。わたしもチロッと飲む……あ、美味しい。水道水ではなくミネラルウォーター……違うな。伏不義山ふふぎやまが水源の湧き水かっ。

「水が美味いって思うだろ?  店長がわざわざ湧き水を汲みに行ってるんだぜ」
「うん、美味しい。これはフフギ山水源の水だね」
「……すげーな。そんなことまで分かるのか。まるであの料理漫画、美味辛抱びみしんぼうだな」
「全然分からないけど……」

  このタイミングでわたしにフフギ山を思い出させるとはね。これは『誘い水』かな……一度顔を出しなさいっていう、彼女のアドバイスかもしれない。

(フフギ山に行こうかな。クロフギヒメなら、クラウドの異変がなんで起きてるのか分かるかも……)

  うーん……どうせなら新聞部で行っちゃおうか。温泉もいくつかあるし、小旅行には最適な距離だし、なんなら地域活性化的な狙いがありますって感じでっ。連休前にやるべきだったけどねっ。

「ドーマくん、新聞部集合っ」
「なに!?  映画はどーする!」
「映画を観た後でいいよっ。ちょっと行かなくちゃいけないから」
「どこにだよ。だっておまえ、映画を観た後はコーヒーショップで映画についての話をしてだな、その後は夕陽を眺めながら海沿いの散歩とかしたくなる予定だろ?  なんかしたくなるよね!」

  ドーマくんが必死だ。どうやら一から十までデートプランを考えていたらしい。本当にごめんなさい。でもちょっとつめ込みすぎじゃないかな?  なんか夜景も楽しむみたいだけど、移動にムリがありそうなプランを次々に口にしている。

  ドーマくんにはもうしわけない。でもやっぱり会わなくちゃならない。ドーマくんも見たことのある、銀髪と着物の女――クロフギヒメに……

                             ※
  
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