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第2品「じつは時間経過って、思ってるより遅かったり早かったりする」
迎え酒……ソヨギはフリーランスになった
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ソヨギはなんだか久し振りに時間を確認した。びっくりの9:21。現在コンビニを物色中で、豆腐とウィッグ女がまとわりついている。目のまえにはサンドイッチが並んでいる。
「ねえ、ソヨちゃんて二日酔いなの?」
「……うっす。でも酸属性攻撃とかなんとかで、だいぶ調子はいいです漫喫」
「メガ美の見たかぎりでは、特に睡魔の影響が色濃いようなのです」
「……頭もだいぶボーっとしますけど漫喫」
「ふ~ん……とりあえずさ、メガ美ちゃんのアニミス補給のメニューを考えててよ。ここでそろえて常備してたほうがなにかと便利なんだから」
「……うっす漫喫」
「ソヨギさま、ミールディアンの腕の見せどころですね」
「……そっすか漫喫」
ウィッグ女はトテテッとどこかに行った。豆腐はなぜか鼻(?)歌まじりで浮遊している。
だがなぜだ! なぜ「語尾に漫喫をつけて、僕は早く寝たいんですけどアピール」攻撃が通用しないのだ! 女というのは鈍感な生き物なのかもしれない。だが早く寝たいのだ……あーもうほんと眠い。
ソヨギはフラフラとした足どりで物色していた。メニューを考えろと言われても、かなり思いつきでやっていることだから、なにも浮かばない。
「……メガ美さん、いまのアニミスの倍率は? 漫喫」
「ルストアルムスに昇格したことにより、二百倍くらいにはなっていますね」
「にひゃ……もうひとりでなんでもできませんか? 漫喫?」
「魔物を排除することは容易いかと思います。ですが向上したのはアニミスのみです。神技ならいざしらず、ほかの能力が向上したわけではないので……索敵もままなりません。そして以前にも言いましたが、こうしているだけでもアニミスは消費しています。まあ昇格したことでそれもだいぶマシに――ソヨギさま?」
「ぐー……漫……喫……」
ソヨギは立ち寝をするのだった……が、頭をぺしりと叩かれる。
「ソヨちゃん、寝ちゃだめ~」
「……寝てませんが?」
「いやいや、だいぶガッツリ寝てたよ。はい、二日酔い対策!」
「……漫喫?」
もはや語尾につけることも大変だった。ウィッグ女が差しだしたのは漫喫ではなく、ビールである。
「大人の二日酔い対策と言えば迎え酒! これで眠気もばっちりカイショー!」
「……いや、迎え酒は迷信……」
「でも目覚まし効果はあるし、じっさいに頭のボーッはカイショーできます!」
まあ迎え酒はアルコールのおこす錯覚なのだが、確かに脳に血がかようので目が覚めたような気もするし、二日酔いのボーッはふたたび酔うことにより解消される。
でも体調が回復するわけではない。二日酔いのときは異常な状態であり、それが通常になっている。なので回復していくと、逆にそれが異常になってしまうのだ。迎え酒はふたたび異常になることにより、症状を緩和させるのだ。ややこしいが、それが迎え酒の正体である。
「……今日は休肝日なんで」
ソヨギはお断りした。二日酔いのときは、もう酒は飲まないという誓いをたてるものなのだ。でも今後も飲み会とかあったら行くのだ!
「はい、あ~ん」
「……聞いてます? 特に漫喫の部分とか」
「ちょっと、世界を救う戦士がなに言ってるの! 漫喫なんて世界救ったらまた行けるでしょ」
「聞こえてるじゃないっすか……それに俺は一般人なんすけど」
「そんなわけないでしょ。護神がついてるんだから、守護賢人でしょうが」
「いえ……残念ながらソヨギさまは、まだセラフではないのです」
「な……なんと! おぬしはまだセラフではないと言うのか!」
「いきなりチェンジしないでください……」
なんかいきなりだと気持ち悪い。
とりあえず神の種類についてだが、食神は食べられることでセンスを与えることができる。飾神は身につけることで力を与える。職神は職業――職位を司り、そのままでも人間に憑依しても神技とやらを使え、憑依すれば至業と呼ばれる技能を与える。そして嘱神は大元の神である大地の神から自然を司ることを任された神である。こちらの世界では雷神とか風神、水神みたいな立場のようだ。気になったのは把握しちゃうソヨギである。
つまりこの誰だか分からない女は、髪神さまに装着を許したこちらがわの人間である。そのときに精神の統合とかいうのがおこり、なんとなく二重人格なのだ。
「ソヨギさま、なんにせよその状態ではマンキツとやらにはたどり着けないのではありません? ここはひとつお試しになってはいかがでしょうか」
「……漫喫に行けないのは問題ですね……でもいやです」
「ソヨギさま……殿方らしくここは!」
「いや……コー○を飲んだんで」
「またその流れですかソヨギさま!」
いいのだ。それがソヨギスタイルなんだから!
そのとき、ウィッグ女が背後にまわりこんだ。護神の力なのだろう、かなり早い。そしてガッと羽交い締めにしてくる。なんかいろいろ背中にあたるが、興味ない女は全部が興味ないのだ! ていうかなにするんです。
「……なぜ?」
「いまよメガ美ちゃん。ソヨちゃんに飲ませちゃって」
「はい! では……これはかなりアニミスを消費するのですが、ここはソヨギさまのためにも! 豆式念力!」
豆腐からモヤモヤッとした綿菓子みたいなのがでる。それがウィッグ女の手にしていたビールに巻きつき、ふよーんと動かす。
「……もっと凄いのやってましたよね?」
「ソヨちゃん、神技には得意不得意ってのがあるわけなの」
「……そっすうぶっ」
むりやり開かれたソヨギの口にビールが流しこまれていく。ペッてしてやろうとするが、ウィッグ女が鼻をつまんできたりする。これは拷問なのでは……口で息をしようとするのでビールを飲むしかなくなる。しかしぬるいな。不味いなーゴクゴク……いや、一気はダメですよね? とか思いつつあっさり飲みほす。
「……げっぷす」
「やだ~ソヨちゃん男らしい~」
「ソヨギさま、ホレボレいたします」
「……うっぷす」
コー○とビールのダブルパンチでお腹が大変だ。と、そんなことをしているとコンビニの入口のほうでガシャガシャという足音が聞こえてきた。ウィッグ女が手を離し、豆腐が紫のオーラを発したりしている。敵さんかな?
「ウィッグよ、なかなか戻らぬので心配したぞ」
「おおティアラ」
「これウィッグや。巨大なアニミスを検知したので来てみれば、それは食神ではないか」
「ツケマよ、この者はルストアルムスに任命したのだ。我らとおなじ中位である」
「……異世界にもツケマが?」
ふむ……しかしあれだ。人選がテキトーである。王女さまが身につけてそうなティアラを頭にのせているのは万年係長的なサラリーマンだし、ツケマをしているのはB系な格好をしたスキンヘッドだ。女装癖をカミングアウトできないひとたちみたいである。
「ほかの護神はどうしたのだティアラ」
「マスクとグローブは別のアニミスを追っておる」
「え……キャッチャー?」
「ハットとステッキは邪気の追跡をやっているよ。ま、成果はないがね。ベアフロンティアなんかの軍師クラスの邪気が強すぎるんだ」
「……紳士?」
「ティアラさま……裏切り者を追うにあたり、なにか手がかりなどはないのでしょうか」
豆腐が聞くとティアラが動い――係長が身ぶり手ぶりを始めた。
「あるにはある……と言ってもただの推測なんだが……」
「なんでしょうか」
「デビロイドが関与しているのではないか、というものだ。なぜならきゃつらは半魔半人、それゆえに護神が憑依することもできなくはない。仮説はふたつだ。裏切り者がデビロイドと手を組み、アニミスの魔力変換支援をしている。もしくはデビロイドにセンスや神技を与え、新たなる存在として猛威をふるっている。結果としてアニミスや邪気を追っての探知ができぬ力が生まれてしまい、捜索を困難にしているのだ」
「それはつまりシエルネットワークを使うことも可能にしているのですか!」
「……恐らくはな。だがこれらの仮説は護神をデビロイドごときが倒せる答とも考えられるし、こちらの情報が漏洩することにより、動きが読まれているとも言える」
「こ……姑息な!」
豆腐が怒りによってぷるぷると震えている。ソヨギはなんだか寒気がしてぷるぷると震えた。これは風邪をひいたかな……早く寝なくては! 二日酔いのときに無理をすると、体調は悪化するのだ。しかし迎え酒の効果なのか、めんどくさい話もちゃんと聞いていたのだ。興味ないのにー。
「ソヨちゃんどこ行くの?」
「……ちょっと」
ソヨギは元聖域に戻り、月刊サジャジンを腹のあたりにしまった。手に持つには重すぎるからだ。そして立てかけてあるライフルの肩紐を肩にかけた。これも重いがせっかくなのでもらっておく……カッコいいのだ! あとはテキトーに食材を集める。最近はコンビニでもエコバッグがあるのでいただきます。カップ系のインスタント食品とか飲みもの、あとはホッカイロ! 寒いのだ!
「……こちらでお会計しまーす」
ソヨギがお買いものしているあいだにも、護神たちがケンケンガクガクとしていた。たまたまコンビニで出会ったご近所さんな感じで、サンドイッチの棚のまえで今後の作戦とか豆腐のオーバーリミットを有効に使う方法などを話しあっている。サラリーマン、B系の若者、変なファッションの女、豆腐……大学のサークルでも、もうすこし統一感があると思う。趣味があわなそーな集団である。
ソヨギはレジでピッピッと言いながら、足りるだろうと思われるお金を置く。ちゃんと払わないのはお買いものじゃないのだ。よし……あとは漫喫に向かうだけだ。
――だがソヨギはとりあえず、タバコを吸いに喫煙所をめざす。なぜならお酒を飲むとタバコが吸いたくなる。飲酒七不思議のひとつである。
が、外にでようとするとガシッと肩をつかまれた。
「ソヨちゃん?」
「……ちっす」
「どこに行くの?」
「とりあえず一服を」
「あ~まだ吸ってるんだ。やめなさいって言ったのに~」
「……記憶がありません」
「やっぱり……ソヨちゃんわたしのこと忘れちゃったんだね……」
「……忘れる記憶もないわけで」
ウィッグ女は寂しそうな声だった。だがそれ以上に口が寂しいので離してください。
「わたしの名前も分からないんでしょっ」
「……あざっす」
「誉めてないけど。じゃあほら、これなら分かるかな」
ウィッグ女が手を離し、ウィッグを取りはずしてただの女になる。女はふわっふわっの髪ではなくなり、短めの茶髪になった。ソヨギはそれを見てハッとしていた。髪神さんて着脱可能なんだ! それはそれとして、
「……え?」
「もうひど~い。中学のときに半年くらいつきあいましたけど。わたしが勝手についてまわっただけで、恋愛なんかじゃなかったけど」
「えーと……あ、なんか久しぶりですね」
「うそくさ~い。磯之夏紀だよ。ノリさんて呼んでたじゃん。ほんとに分からない?」
「……あ、もしかしてノリさんじゃないですか?」
「それはいま聞いた情報でしょ! まあ、高校も一緒だったけど、入学してからはつきあいとかあんまりなかったし……当然かもしれないけどさ。大学にあがってからの同窓会とかでも会ってるのにっ! ま、そのうち思いだしてくれればいいよ……もうっ、ほんとに変わらないねソヨちゃんはっ」
ノリさんとやらは怒っているようで、どこか嬉しそうである。ウィッグをきゅぽんとかぶり、ウィッグノリさんはコンビニのなかに戻っていった。会話イベントを無事にクリアして、ソヨギは思った。よし、一服タイムだ。
ソヨギは喫煙所でタバコに火をつけた。ライフルを背負っているので、なんか戦場の兵士が一服しているようにも見える。ちょっとカッコいいんじゃないだろうか。もしかしていま、ソヨギくんはサマになっちゃってるのでは?
ちょっとコンビニの壁によりかかる。これもよいポーズなのではないだろうか。あ、ライフルの銃床を地面につけて、銃身を片手で持つ。そして片膝を曲げて壁に足の裏をつける……ふぅ~……いいんじゃないか? なんかドンパチしてる最中に、ひとりだけ一服する余裕がある兵士みたいなのでは? じつは『サムライドオン現代ワールド編』で、ワキザ氏がこんなことをしていたのだ。
そう……ソヨギはなにを隠そう、ひとり遊びが好きなのである。と、豆腐がひよよーんとソヨギのまえにあらわれた。
「ソヨギさま~」
「……うっす」
「あ、お休みのところすみません。そろそろ出発するようなのですが」
「……別行動で」
「ダメです! 裏切り者がうろついているのですよ? ソヨギさまも危険なのです」
「……自分、フリーランスなんで」
ソヨギはいま、傭兵気分なのだ!
「いつから雇われになったのです。マンキツとやらに向かうにしても、新たな情報によれば、ソヨギさまはすでに破滅軍からマークされているのですよ?」
「……ビデガンさんが言ってましたね」
「ビデガン? あのデビロイドならばわたしが倒しました」
「……ウィッグノリさんが来るまえにコンビニ来ましたけど……あ」
しまった……なんかめんどくさいフラグを立てた気がする。案の定、豆腐が驚いた声をあげる。
「馬鹿な! こちらに戻るまえにビデガンを倒したのに! これは報告しなくては!」
「……まあいいか」
豆腐がひゅーんと報告に向かうのを見ながら、ソヨギはタバコをぷはーっとふかした。百戦錬磨の傭兵は、こんなことでは動じないのだ。
でもけっきょくは護神たちと行動することになり、漫喫に行けなくなるソヨギだった。こっそり出発しようと思ったのに……
――その護神たちを遥か上空から監視している女がいた。灰色の髪、白い肌に灰色のアイラインやルージュなどをひき、着ているのも灰色を基調にしたドレスのようだ。女は不気味な笑みを浮かべながら右手をあげた。
するとそこらへんの空間がうよよんと波紋を広げた。そこから姿をあらわしたのはデビロイドたちである。
女は右手を振りおろした。告げる。
「……行くぞ!」
続く
「ねえ、ソヨちゃんて二日酔いなの?」
「……うっす。でも酸属性攻撃とかなんとかで、だいぶ調子はいいです漫喫」
「メガ美の見たかぎりでは、特に睡魔の影響が色濃いようなのです」
「……頭もだいぶボーっとしますけど漫喫」
「ふ~ん……とりあえずさ、メガ美ちゃんのアニミス補給のメニューを考えててよ。ここでそろえて常備してたほうがなにかと便利なんだから」
「……うっす漫喫」
「ソヨギさま、ミールディアンの腕の見せどころですね」
「……そっすか漫喫」
ウィッグ女はトテテッとどこかに行った。豆腐はなぜか鼻(?)歌まじりで浮遊している。
だがなぜだ! なぜ「語尾に漫喫をつけて、僕は早く寝たいんですけどアピール」攻撃が通用しないのだ! 女というのは鈍感な生き物なのかもしれない。だが早く寝たいのだ……あーもうほんと眠い。
ソヨギはフラフラとした足どりで物色していた。メニューを考えろと言われても、かなり思いつきでやっていることだから、なにも浮かばない。
「……メガ美さん、いまのアニミスの倍率は? 漫喫」
「ルストアルムスに昇格したことにより、二百倍くらいにはなっていますね」
「にひゃ……もうひとりでなんでもできませんか? 漫喫?」
「魔物を排除することは容易いかと思います。ですが向上したのはアニミスのみです。神技ならいざしらず、ほかの能力が向上したわけではないので……索敵もままなりません。そして以前にも言いましたが、こうしているだけでもアニミスは消費しています。まあ昇格したことでそれもだいぶマシに――ソヨギさま?」
「ぐー……漫……喫……」
ソヨギは立ち寝をするのだった……が、頭をぺしりと叩かれる。
「ソヨちゃん、寝ちゃだめ~」
「……寝てませんが?」
「いやいや、だいぶガッツリ寝てたよ。はい、二日酔い対策!」
「……漫喫?」
もはや語尾につけることも大変だった。ウィッグ女が差しだしたのは漫喫ではなく、ビールである。
「大人の二日酔い対策と言えば迎え酒! これで眠気もばっちりカイショー!」
「……いや、迎え酒は迷信……」
「でも目覚まし効果はあるし、じっさいに頭のボーッはカイショーできます!」
まあ迎え酒はアルコールのおこす錯覚なのだが、確かに脳に血がかようので目が覚めたような気もするし、二日酔いのボーッはふたたび酔うことにより解消される。
でも体調が回復するわけではない。二日酔いのときは異常な状態であり、それが通常になっている。なので回復していくと、逆にそれが異常になってしまうのだ。迎え酒はふたたび異常になることにより、症状を緩和させるのだ。ややこしいが、それが迎え酒の正体である。
「……今日は休肝日なんで」
ソヨギはお断りした。二日酔いのときは、もう酒は飲まないという誓いをたてるものなのだ。でも今後も飲み会とかあったら行くのだ!
「はい、あ~ん」
「……聞いてます? 特に漫喫の部分とか」
「ちょっと、世界を救う戦士がなに言ってるの! 漫喫なんて世界救ったらまた行けるでしょ」
「聞こえてるじゃないっすか……それに俺は一般人なんすけど」
「そんなわけないでしょ。護神がついてるんだから、守護賢人でしょうが」
「いえ……残念ながらソヨギさまは、まだセラフではないのです」
「な……なんと! おぬしはまだセラフではないと言うのか!」
「いきなりチェンジしないでください……」
なんかいきなりだと気持ち悪い。
とりあえず神の種類についてだが、食神は食べられることでセンスを与えることができる。飾神は身につけることで力を与える。職神は職業――職位を司り、そのままでも人間に憑依しても神技とやらを使え、憑依すれば至業と呼ばれる技能を与える。そして嘱神は大元の神である大地の神から自然を司ることを任された神である。こちらの世界では雷神とか風神、水神みたいな立場のようだ。気になったのは把握しちゃうソヨギである。
つまりこの誰だか分からない女は、髪神さまに装着を許したこちらがわの人間である。そのときに精神の統合とかいうのがおこり、なんとなく二重人格なのだ。
「ソヨギさま、なんにせよその状態ではマンキツとやらにはたどり着けないのではありません? ここはひとつお試しになってはいかがでしょうか」
「……漫喫に行けないのは問題ですね……でもいやです」
「ソヨギさま……殿方らしくここは!」
「いや……コー○を飲んだんで」
「またその流れですかソヨギさま!」
いいのだ。それがソヨギスタイルなんだから!
そのとき、ウィッグ女が背後にまわりこんだ。護神の力なのだろう、かなり早い。そしてガッと羽交い締めにしてくる。なんかいろいろ背中にあたるが、興味ない女は全部が興味ないのだ! ていうかなにするんです。
「……なぜ?」
「いまよメガ美ちゃん。ソヨちゃんに飲ませちゃって」
「はい! では……これはかなりアニミスを消費するのですが、ここはソヨギさまのためにも! 豆式念力!」
豆腐からモヤモヤッとした綿菓子みたいなのがでる。それがウィッグ女の手にしていたビールに巻きつき、ふよーんと動かす。
「……もっと凄いのやってましたよね?」
「ソヨちゃん、神技には得意不得意ってのがあるわけなの」
「……そっすうぶっ」
むりやり開かれたソヨギの口にビールが流しこまれていく。ペッてしてやろうとするが、ウィッグ女が鼻をつまんできたりする。これは拷問なのでは……口で息をしようとするのでビールを飲むしかなくなる。しかしぬるいな。不味いなーゴクゴク……いや、一気はダメですよね? とか思いつつあっさり飲みほす。
「……げっぷす」
「やだ~ソヨちゃん男らしい~」
「ソヨギさま、ホレボレいたします」
「……うっぷす」
コー○とビールのダブルパンチでお腹が大変だ。と、そんなことをしているとコンビニの入口のほうでガシャガシャという足音が聞こえてきた。ウィッグ女が手を離し、豆腐が紫のオーラを発したりしている。敵さんかな?
「ウィッグよ、なかなか戻らぬので心配したぞ」
「おおティアラ」
「これウィッグや。巨大なアニミスを検知したので来てみれば、それは食神ではないか」
「ツケマよ、この者はルストアルムスに任命したのだ。我らとおなじ中位である」
「……異世界にもツケマが?」
ふむ……しかしあれだ。人選がテキトーである。王女さまが身につけてそうなティアラを頭にのせているのは万年係長的なサラリーマンだし、ツケマをしているのはB系な格好をしたスキンヘッドだ。女装癖をカミングアウトできないひとたちみたいである。
「ほかの護神はどうしたのだティアラ」
「マスクとグローブは別のアニミスを追っておる」
「え……キャッチャー?」
「ハットとステッキは邪気の追跡をやっているよ。ま、成果はないがね。ベアフロンティアなんかの軍師クラスの邪気が強すぎるんだ」
「……紳士?」
「ティアラさま……裏切り者を追うにあたり、なにか手がかりなどはないのでしょうか」
豆腐が聞くとティアラが動い――係長が身ぶり手ぶりを始めた。
「あるにはある……と言ってもただの推測なんだが……」
「なんでしょうか」
「デビロイドが関与しているのではないか、というものだ。なぜならきゃつらは半魔半人、それゆえに護神が憑依することもできなくはない。仮説はふたつだ。裏切り者がデビロイドと手を組み、アニミスの魔力変換支援をしている。もしくはデビロイドにセンスや神技を与え、新たなる存在として猛威をふるっている。結果としてアニミスや邪気を追っての探知ができぬ力が生まれてしまい、捜索を困難にしているのだ」
「それはつまりシエルネットワークを使うことも可能にしているのですか!」
「……恐らくはな。だがこれらの仮説は護神をデビロイドごときが倒せる答とも考えられるし、こちらの情報が漏洩することにより、動きが読まれているとも言える」
「こ……姑息な!」
豆腐が怒りによってぷるぷると震えている。ソヨギはなんだか寒気がしてぷるぷると震えた。これは風邪をひいたかな……早く寝なくては! 二日酔いのときに無理をすると、体調は悪化するのだ。しかし迎え酒の効果なのか、めんどくさい話もちゃんと聞いていたのだ。興味ないのにー。
「ソヨちゃんどこ行くの?」
「……ちょっと」
ソヨギは元聖域に戻り、月刊サジャジンを腹のあたりにしまった。手に持つには重すぎるからだ。そして立てかけてあるライフルの肩紐を肩にかけた。これも重いがせっかくなのでもらっておく……カッコいいのだ! あとはテキトーに食材を集める。最近はコンビニでもエコバッグがあるのでいただきます。カップ系のインスタント食品とか飲みもの、あとはホッカイロ! 寒いのだ!
「……こちらでお会計しまーす」
ソヨギがお買いものしているあいだにも、護神たちがケンケンガクガクとしていた。たまたまコンビニで出会ったご近所さんな感じで、サンドイッチの棚のまえで今後の作戦とか豆腐のオーバーリミットを有効に使う方法などを話しあっている。サラリーマン、B系の若者、変なファッションの女、豆腐……大学のサークルでも、もうすこし統一感があると思う。趣味があわなそーな集団である。
ソヨギはレジでピッピッと言いながら、足りるだろうと思われるお金を置く。ちゃんと払わないのはお買いものじゃないのだ。よし……あとは漫喫に向かうだけだ。
――だがソヨギはとりあえず、タバコを吸いに喫煙所をめざす。なぜならお酒を飲むとタバコが吸いたくなる。飲酒七不思議のひとつである。
が、外にでようとするとガシッと肩をつかまれた。
「ソヨちゃん?」
「……ちっす」
「どこに行くの?」
「とりあえず一服を」
「あ~まだ吸ってるんだ。やめなさいって言ったのに~」
「……記憶がありません」
「やっぱり……ソヨちゃんわたしのこと忘れちゃったんだね……」
「……忘れる記憶もないわけで」
ウィッグ女は寂しそうな声だった。だがそれ以上に口が寂しいので離してください。
「わたしの名前も分からないんでしょっ」
「……あざっす」
「誉めてないけど。じゃあほら、これなら分かるかな」
ウィッグ女が手を離し、ウィッグを取りはずしてただの女になる。女はふわっふわっの髪ではなくなり、短めの茶髪になった。ソヨギはそれを見てハッとしていた。髪神さんて着脱可能なんだ! それはそれとして、
「……え?」
「もうひど~い。中学のときに半年くらいつきあいましたけど。わたしが勝手についてまわっただけで、恋愛なんかじゃなかったけど」
「えーと……あ、なんか久しぶりですね」
「うそくさ~い。磯之夏紀だよ。ノリさんて呼んでたじゃん。ほんとに分からない?」
「……あ、もしかしてノリさんじゃないですか?」
「それはいま聞いた情報でしょ! まあ、高校も一緒だったけど、入学してからはつきあいとかあんまりなかったし……当然かもしれないけどさ。大学にあがってからの同窓会とかでも会ってるのにっ! ま、そのうち思いだしてくれればいいよ……もうっ、ほんとに変わらないねソヨちゃんはっ」
ノリさんとやらは怒っているようで、どこか嬉しそうである。ウィッグをきゅぽんとかぶり、ウィッグノリさんはコンビニのなかに戻っていった。会話イベントを無事にクリアして、ソヨギは思った。よし、一服タイムだ。
ソヨギは喫煙所でタバコに火をつけた。ライフルを背負っているので、なんか戦場の兵士が一服しているようにも見える。ちょっとカッコいいんじゃないだろうか。もしかしていま、ソヨギくんはサマになっちゃってるのでは?
ちょっとコンビニの壁によりかかる。これもよいポーズなのではないだろうか。あ、ライフルの銃床を地面につけて、銃身を片手で持つ。そして片膝を曲げて壁に足の裏をつける……ふぅ~……いいんじゃないか? なんかドンパチしてる最中に、ひとりだけ一服する余裕がある兵士みたいなのでは? じつは『サムライドオン現代ワールド編』で、ワキザ氏がこんなことをしていたのだ。
そう……ソヨギはなにを隠そう、ひとり遊びが好きなのである。と、豆腐がひよよーんとソヨギのまえにあらわれた。
「ソヨギさま~」
「……うっす」
「あ、お休みのところすみません。そろそろ出発するようなのですが」
「……別行動で」
「ダメです! 裏切り者がうろついているのですよ? ソヨギさまも危険なのです」
「……自分、フリーランスなんで」
ソヨギはいま、傭兵気分なのだ!
「いつから雇われになったのです。マンキツとやらに向かうにしても、新たな情報によれば、ソヨギさまはすでに破滅軍からマークされているのですよ?」
「……ビデガンさんが言ってましたね」
「ビデガン? あのデビロイドならばわたしが倒しました」
「……ウィッグノリさんが来るまえにコンビニ来ましたけど……あ」
しまった……なんかめんどくさいフラグを立てた気がする。案の定、豆腐が驚いた声をあげる。
「馬鹿な! こちらに戻るまえにビデガンを倒したのに! これは報告しなくては!」
「……まあいいか」
豆腐がひゅーんと報告に向かうのを見ながら、ソヨギはタバコをぷはーっとふかした。百戦錬磨の傭兵は、こんなことでは動じないのだ。
でもけっきょくは護神たちと行動することになり、漫喫に行けなくなるソヨギだった。こっそり出発しようと思ったのに……
――その護神たちを遥か上空から監視している女がいた。灰色の髪、白い肌に灰色のアイラインやルージュなどをひき、着ているのも灰色を基調にしたドレスのようだ。女は不気味な笑みを浮かべながら右手をあげた。
するとそこらへんの空間がうよよんと波紋を広げた。そこから姿をあらわしたのはデビロイドたちである。
女は右手を振りおろした。告げる。
「……行くぞ!」
続く
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戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
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三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
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春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
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