白すぎる女神と破滅と勇者

イヌカミ

文字の大きさ
12 / 43
第2品「じつは時間経過って、思ってるより遅かったり早かったりする」

セラフVSダムンディアボロス

しおりを挟む
  ソヨギがタバコを片手にいろんなポージングを楽しんでいると……キュアオッ!  となにかが空から降ってきて、道路を突き破った。ブワッと爆風がおこり、ソヨギの髪がわささーっとなる。さらに、

   ――キュアオッ!  キュボンッ!  ボゴァドドドドドドッ!  ドゴンドゴンドゴアァッ!

  いきなりシャワーのように青い光線が降ってきた。その破壊はコンビニまえにとどまらず、道路や周辺の家屋なんかもめちゃくちゃに粉砕されていく。だがなぜか、コンビニの敷地には降ってこない。

  青い光線が着弾するたびに爆発がおこり、粉塵や砂煙、土煙が吹きあがっている。その光景はまるで爆撃されているかのようだった。

  そんななか、今度は灰色の物体が空から降ってきた。まるで巨大な雪玉のような物体は、コンビニまえの破壊されつくした道路に衝突すると、ボウンッ!  と破裂し、周囲にあった瓦礫やなんやらを吹き飛ばしてしまう。

  ソヨギはその突風をさけるように、喫煙所からちょい奥へと身を隠した。なにもかもを吹き飛ばす風には、灰が大量に混ざっていたのだ。灰の風は一瞬で吹き抜けて、すぐにとまる。それにあわせて空爆もとまっていた。

「なにごとであるか!」

  ウィッグノリさんの声が聞こえた。ソヨギは気になったのでひょこっと顔をだす。コンビニからティアラ係長、ツケマB系、豆腐も続いてでてくる。そしてソヨギは唖然あぜんとしていた。

  空中に舞っていた灰がいきなり、サーっという感じで晴れていく。地面に衝突した巨大な雪玉はどうやら灰でできているようで、さらさらと灰が上部からこぼれたりしていた。と、その巨大な灰の塊がぼふっと崩れる――なんと、そこからでてきたのはひとりの女だった。全身が灰色の、まさに灰っぽい女だ。

「は……灰の女神!」

  豆腐が叫んだ。だがソヨギは唖然とタバコを見おろしていた。

  強風のせいでタバコが燃えつきていたのだ。うまいこと灰の女神とやらに灰にされていたのである。まだ半分しか吸っていないのに……こうなると物足りなくなるのが喫煙者の深き業である。ソヨギはダウンのポケットをゴソゴソとし始めた。よおし……もう一本吸おう!

「ごきげんよう、飾神の方々……それにソフラ」

  女はスカートをつまみあげながら会釈をした。なんだか高貴な雰囲気である。

「豆腐の女神よ、あやつは護神か?  アニミスとは違うなにかを感じるぞ」
「ウィッグさま……彼女は護神ではありません。護神とは勇者パーティーに影ながら尽力する神のこと。灰の女神シンディラは……無属の神の一柱なのです」
「無属の……では善でも悪でもない、中道神ニュートラルであるか。どおりでアニミスを追っていても見つけだせぬはずよ」

  専門用語は果てしない……全部の理解は諦めよう!  そう決意したソヨギは取りだした一本に火をつけた。連続の喫煙は肺への負担を強めるが、まだ吸い足りないのだからしょうがない。

「ソフラ……あなたとはこうなる運命だったのよ」
「いまさら私怨など!  いまこうしているあいだにも、破滅が――!」
「黙れ!  すべてが灰塵かいじんすと言うのなら、わたしは破滅を待望たいぼうする女だ!  それが灰の妖女!  それがわたしだソフラ……!」

  よくは分からないが因縁の相手らしい。シンディラが腕を振りあげた。その手からびゅおぉっ!  と灰の風が吹き荒れる。

「障壁魔法!」

  豆腐の障壁はコンビニの敷地をつつみ、灰の風を受けとめた。障壁の外はビュオォォォォッ!  と、まるで嵐である。だがソヨギは無事に火をつけることができた。豆腐さまさまである。

「ティアラよ!  別動隊に援護を要請するのだ!  ツケマ!  嵐がやみしだい討ってでる!  アニミスを高揚させるのだ!」
『おおぉぉぉぉぉぉぉ!』

  ソヨギはふぅーと煙を吐きながら目を閉じた。なんか凄いビカビカしていて、なんとか現象をひきおこしそうなほどのやばそうな発光が目に痛いのだ。

  高揚の光がおさまっていくと、そこらへんでシュワンシュワンという音が聞こえてきた。目を開くとウィッグノリさんとツケマB系がオーラをまとっていた。それにあわせたように灰の嵐も弱まっていく。

「豆腐の女神よ、障壁を解くのだ。準備はよいかツケマ」
「いつでもいける」

  完全に灰の嵐の放出が終わったところで、豆腐が障壁魔法を解除した。外は、まるで灰の霧が立ちこめているようだった……そこで、ソヨギは予感めいたものが胸にあらわれるのを感じていた。これではダメなんじゃないか……?

「――破魔煌飾神技ホーリーチェイン!」

  ウィッグノリさんとツケマB系が、光で紡がれた鎖のような一撃を放った。灰の妖女がいたあたりに着弾し、チュゴォッ!  とかん高い爆発がおきる。その爆発が立ちこめていた灰の霧を晴らす――と、そこにいたのは灰の妖女ではなかった。

「デビロイドがいつのまに!?」

  豆腐が驚愕する。目のまえにいたのは十数名のデビロイドたちだったのだ。灰が視界をふさぎ、そのあいだに包囲を完了したのだろう。それぞれがビデガンと似たような外見であり、角の数や首からしたの色はマチマチだったが、なぜかテンガロンハットとコートは一様に黒だった。デビロイドのうち五人は地上で扇形おうぎがたの陣形をとり、残りの十人くらいは家の屋根や上空に浮遊したりしている。

「やっぱりな……」

  ソヨギはそれを見て、確信からつぶやいていた。

  なんと吸っていたフィリップモリスは1mgだったのだ!  3mgを取ったつもりが間違えていたらしい。ソヨギの胸が――というか肺が感じていた、これじゃあダメな予感は的中していたのである。どおりで満足しないはずだ!  ソヨギは肩にかけているライフルとエコバッグをよいしょとかけ直し、ちゃんと灰皿まで行ってタバコを消し、それからコンビニの店内に向かった。取りかえてもらおう。

「なんと……灰の妖女にしてやられたというわけか……」

  ウィッグノリさんが悔しそうに言った。

「このやりかたで護神を潰していったのだな……」

  ティアラ係長が舌打ちする。

「だが本当にデビロイドなのか?  魔力をまったく感じさせぬぞ」
「護神が裏切ったのではないのなら、むりやりに取りこまれたと考えるべきです……!  かすかに食神たちのアニミスを感じるのです……わたしには分かる!」

  ツケマB系に、豆腐は絶望的に答えた。

「……品切れしてる」

  ソヨギも絶望的につぶやいた。入れ間違いによるタバコの取り間違いではなかった。3mgがないから1mgをケースにいれていたのだ。これでは恐らくカートンのストックもないに違いない。発注はこまめにしてくれないと困ります!  しかたない……こうなったらアレをやるしかない。

「こうなったらやるしかありません」

  ソヨギの胸中を語るように豆腐が言った。その物言いからして、二百倍のアニミスをもってしてもやりにくい相手なのだろう。

「だが豆腐の女神よ……」
「ウィッグ神さま。なぜ奴らが優位に立っていながら攻撃してこないのかお分かりですか?  こちらが動くのを待っているのです。なぜなら――」

  豆腐の長いセリフをまとめると、食神を得たデビロイドたちは中位神の飾神を倒せるほど強く、こちらが攻撃したら魔装技巧トリックというやつでその隙をつくつもり……だそうだ。

「その狙いに乗ります。少なくとも二三体はわたしの速攻で倒せるはず……」
「ここは援護を待つのも手ではないか。うまくいけば挟撃きょうげきも可能である」
「ティアラ神さま。消極的な仕掛けではデビロイドは倒せません。死中に活を見いだすような、無鉄砲のなかで運をつかむようなやりかたでなければ……そうでないとすべて読み切られてしまいます。それに、灰のめ……いえ、妖女シンディラもいるのですから」

  豆腐はむしろそちらのほうが問題だとでも言いたげだ。確かにあの灰による攻撃はつかみ所がない。そのくせシンディラの姿が見えなくなっているのが、なにやら不気味だった。

  豆腐がアニミスを高揚させると、紫のオーラが炎のように揺らめき、豆腐を包みこむ。

  ソヨギがタバコを一本解放すると、ライターの炎が揺らめき、先端を包みこむ。

大豆式超速激化ソイソフリッパー!」
「……フィルターカッター」

  ソヨギがフィルターを半分ちぎるのと同時、豆腐が先陣を切って飛びだした。はっきり言って速すぎて見えない。そのせいでデビロイドたちも反応が遅れる。というか、

「フェイクス――!」

  と叫びながら地上にいた真正面のふたりが豆腐に吹っ飛ばされる。なにか技を使おうとして、失敗したような印象だ。豆腐の超速特攻により、ふたりのデビロイドは反対側のブロック塀や家屋にドゴオォォォォンッ!  とつっこんだ。豆腐は紫に発光すると、

破魔必殺導神技ローソフラボニウス!」

  テュンッ!  と紫色をした拳くらいの光の球が発射され、デビロイドふたりが落ちたあたりに飛んでいく――ボグゴワァァァァッッ!  紫の光がドーム状に広がり、ちょうどデビロイドが落ちた範囲のなにもかもを消滅させた。ソヨギは――

  ――瞬時にうしろを向いた。なぜなら爆風がおしよせてきたのだ。またタバコが燃えつきるのは勘弁である。ソヨギはフィルターカッターのおかげで口あたりが増加し、ずいぶんマシになったタバコを吸い続けた。

「行くぞツケマよ」
「ティアラ、支援要請は!」
「届いたはずだ。これで安心して散ることもできるな……」

  気になって振り返ると、ティアラ係長がふっと笑っていた。ソヨギは思う。カッコいい……

「我は護神!  我は勇者と世界のためにある!」
「我『ら』だ!」
「デビロイドどもよ覚悟しろ!」

  三人がアニミスを高揚させながら飛翔した。豆腐ほどではないが、その動きは早い。それを見てデビロイドたちも応戦する。無数の青い光線が三人に飛んでいくが、飾神の力なのか当たることはない。回避や防御、または障壁を作って三人は突進する!

  豆腐はと言えば、ふたりを倒してからは空中戦を繰り広げていた。撃って守って回避しての三拍子だ。だがなかなか決め手にならないらしい。だいたい一丁対四人くらいか。

  飾神たちを見る。こちらの戦闘は少年誌的である。殴って殴られ、よけたり受けたり、吹っ飛ばされて吹っ飛ばす……その動きは早い。こちらは三人対五人。つまり、

「……ですよね」

  十五人-二-四-五=……まあ四人ですね。それがソヨギのほうに右手を構えていた。なんか手に穴が開いていて気持ち悪い。そのうちふたりはこちらに歩いてくる。まさかの永眠チャンスふたたびである。

「貴様も忌々いまいましいセラフだな!」
「……ひと違いです」
「見るからに弱そうな奴だ」
「フリーランスという名の一般人っす」
「ははは!  こいつは違うぜ、異世界の人間だ。アニミスも魔力も感じねえ」
「なるほど」
「魔装銃なんかもったいねえな。俺が殴り殺してやる」
「痛いのは嫌です」

  まあなんかジリジリとつめよりながら、適当に喋っている四人。ソヨギはタバコの煙を吐きだした。まだ半分なのでもったいない。あの手の空洞が魔装銃なんだろう。

  しかしどうするかな。豆腐も飾神も忙しそうだ。戦うしかないのかな……やだ、めんどくさい。迎え酒で調子はいいが、酒がはいっている状態で動きまわるのはよくない。過剰な血流により頭痛が発症したりするのだ。せっかくおさまったのに動きたくはない。なんかいいものないかなぁ……エコバッグをちょっと開いて見てみる。水、コー○、カップラーメン、ちっちゃい醤油、ホッカイロ、小麦粉――小麦粉?  最近のコンビニはなんでもそろうなぁ……ちがくて。なぜ小麦粉?  なんで小麦粉?  まあいろいろ使えるし、いいか。

「おい人間、ずいぶんと余裕じゃねーか、ああ?」
「うっす、忘れてました」

  ソヨギのその余裕を見て、デビロイドたちは包囲をせばめることを中断していた。ちょっと警戒しているようだ。しかしメン○スコー○で遊んでもらうタイミングではないし……と、そこでソヨギはタバコを吸い終えた。

「消さなきゃ……」
「おいてめえ!  動くんじゃねえ!」

  デビロイドたちが怖い顔で右手を――魔装銃を突きだす。ソヨギはだが気にしない。タバコはちゃんと灰皿に捨てるのがマナーである。ポイ捨ては大人として恥ずかしいのだ。というわけで灰皿に向かう。

「動くなっつってんだろうがっ!」
「いや、動かないと消せないし」
「なめやがって!」
「――待てベイカー!」

  地上にいるひとりが向かってこようとすると、浮遊しているひとりが止めた。

「なんだガーランド!  なぜ殺らせない!」
「熱くなるんじゃねえ。こいつ……ソヨギだ」
「ソヨギ……?  ビデガンをあっさりあざむいたアイツか?  はっ!  そんなもん試してみりゃ分かるじゃねえかよ。そうだよな?  ウィンチェスター」

  ソヨギは会話を耳にしながらタバコを消した。なんだか有名人の気分である。そしてコンビニの裏から逃げようかと考えるが、灰の霧が立ちこめていて移動は無理そうだった。灰を吸いこんでしまえば致命的である。コンビニ周辺をぐるっと見てみると、どこもだいたいそんな感じである。なるほど、灰の妖女の役目はこれだったのか、と理解する。

「そうだぜガーランド。報告にあった爆発液体に気をつけてりゃなんでもねえ」
「馬鹿かてめえら!  俺たちはもう、ソヨギの射程圏内かもしれねえんだぜ」

  そう言ったのは浮いているもうひとりである。ソヨギはとりあえずホッカイロを取りだす。寒いのだ。

「リコイルレス、そりゃどういうことだ?  あいつはただ煙を吸ってただけじゃねえか」
「ああ……これが戦闘中じゃなければな!  ただの策士が戦闘中に、余裕かましてそんなことできるか?  できねえだろ。それにあいつの言葉だ!  動かないと消せない……そう言ったんだあいつは!」

  デビロイドたちの顔がサッと青くなった。そしてシーン……となる。耳に届くのはバシバシドゴンて感じの飾神たちの戦闘している音だ。

  なんにせよ、張ってもいない罠に勝手にはまったデビロイドたち。ビデガンが本隊にした報告がどんなもんかは知らないが……まあ、利用するか。ソヨギは貼ろうとしたホッカイロたちを手に歩いた。

「ばれちゃいましたか。せっかく起動したのに……」
「き……起動しただと!?」

  なんかザワッとする四人。ソヨギはデビロイドたちの弱点を見つけた。起動。

「これは起動すれば歩いてても浮いててもかかる装置なもんで……起動したから動かないほうがいいですよ。なんせ起動しましたから。起動はしたけど動かなければ発動はしません」

  ここぞとばかりにいっぱい言ってみる。地上にいるベイカーなんかはガクブルである。誰が誰かは分からないが左がベイカーだきっと。

「か……解除しろ!」
「えー、起動したのにー」
「ソヨギ!  俺たちは護神たちを葬りに来ただけだ。おまえには手をださないと誓う!」
「起動したのに?」
「だから!  いますぐ解除しろぉ!」

  ガクブルベイカーが魔装銃を撃つぞと、その手で空気を叩いた。でも撃ってはこないだろう。だってビビってるもの。

「俺に向けて撃てば発動します。ご自由にどうぞ」
「やめろウィンチェスター……動くんじゃねえ!」

  ウィンチェスターなの?  ベイカーさんごめんなさい。まあなんでもいいけど。ソヨギはホッカイロの袋を破って取りだす。六個いりを買ったのは正解だった。

「これは発動を抑制する装置です。これを散布して浴びれば罠の効果を受けなくなります」
「早くよこせ!」
「ちなみに熱くなったら成功なんで、逃げてくださいね。じゃあ……あとはお願いします」

  ソヨギはひとつを自分用に持ち、あとのは四人に放り投げてやった。

「最小威力で撃ち抜いて散布するんだ!」
「……お疲れっした」

  ソヨギは四人がホッカイロに向けて攻撃するのを見ずに、喫煙所に歩く。荷物たちをまた肩にかけて、とりあえず様子見である。チュンッ!  ピュンッ!  ぼふっ!  ざさぁ……たぶん顔とかにもかかったのだろう。四人は悲鳴をあげながら悶絶していた。

  ホッカイロの中身は鉄粉、塩類、活性炭などである。ホッカイロをクシャクシャっとして使うのは酸素を含ませて酸化をうながすためだ。酸化したときの発熱で暖まるのである。なので空気中にばらまけば充分に酸素を取りこんでかなり熱くなる。七十度くらいにはなるから火傷もするだろう。ソヨギには高校の科学実験での知識があったのだ。

「なんか可哀想……」

  うひゃあとかいいながら四人は転げまわっている。浮遊していたふたりは落下したようだ。いまのうちにコンビニのなかにでも隠れようかな。

  豆腐と飾神の戦いは続いていた。デビロイドが護神と互角に渡りあえるのが凄いことなのかは分からないが、まだまだ時間はかかりそうである。いっそのことここで寝るか……ソヨギは外では寒いのでコンビニにはいろうとした。しかし、すぐに足をとめる。

「……やるじゃねえか。さすがは策士」
「あざっす……」

  どこからともなく聞こえてきた声。ソヨギはハァと溜め息をついた。このひともデビロイドだし、いても不思議はないか……めんどい!  ソヨギは背後を振り向いた。

「てめえは本当に『虚実の王トリックスター』を名乗る資格があるのかもな」
「……いりません」

  ビデガンが魔装銃を構えて立っていた。いや、ハイヴォルトとか言ってたかな?  なんにせよ霊級とやらはお腹いっぱいだ。いりません。

「だがよ、トリックスター……この状況はどうする?  てめえが戦える奴だとはこれっぽっちも思えねえ。いまこのとき、てめえに残された選択肢はひとつだ。死……それしかねえよな?」
「まあ、そうっすね。じゃあそれで」
「なんだと……?」

  ビデガンがぴくりと頬を動かした。なにか気にさわったのだろうか。

「死が怖くねえのか?」
「じつはかなり眠りたいので……漫喫にも行けないし、別にいっかなーみたいな」
「マンキツ?  修練場かなんかか?」
「ブレないっすねー……」

  分かった。異世界語なんだきっと。もしくはマンキツって修練場みたいなのがあるのだ。もうそれに決めた。

「死なんざ覚悟してるってわけか……おそれいったぜソヨギ。てめえみたいな奴がいるとはな……」
「……なんかまえにも聞いたような」
「提案だ。俺と賭けでもやらねえか?  俺が勝ったらてめえは死ぬ。だがてめえが勝ったら俺が死ぬ……どうだ?」
「いいっすよ」
「けっ、軽く受けてくれるじゃねえか。言っとくが俺は死ぬのがこえぇ……だから、マジで行くぜ」

  ていうか会話が長いと眠くなっちゃうのだ。やるなら早くしないと、立ち寝の準備はほぼ完了してますよ?

「お好きにどうぞ。早めに」
「クックックッ……いいねえ。ゲームは単純だ……!」

  そこでビデガンが消えた――と思ったら顔がくっつくくらいの近くにあらわれる。

「これで死ななきゃてめえの勝ちよ!」
「……ツバ飛んでます」

  直後、ソヨギの体に魔装銃が突きつけられ、キュオッ!  とかん高い音が聞こえた。ソヨギはその一撃をくらい、コンビニの壁にドガッ!  と叩きつけられていた。

「ぐあっ!」

  ソヨギにはめずらしくマジな悲鳴がもれる。消えそうな意識のなかで腹部を見おろすと、ダウンにポッカリと穴が空いていた。そこから冗談のように黒々とした液体が流れていた。

「……痛い」
「けっ……つまんねえ殺しだぜ……」

  ソヨギが脱力し、ズルズルと壁をすべるなか、ビデガンはテンガロンハットをおさえてうつむいた。

  背中も痛い。打ちつけた痛みなのか魔装銃の一撃が貫いたせいなのかは分からない。ひとつ言えるのは、アスファルトを簡単に突き破る攻撃なのだということ。だから間違っても、腹にしこんでいる月刊サジャジンが受けとめてました、みたいなことにはならないだろう。

「さて……後片づけでもするかねぇ」

  ビデガンがつまらなそうにつぶやく。ソヨギはその声を耳にしながらも、サムライドオンの最後のページ見てないなぁとか思っていた。

  まあいっか、やっと寝れるし……

  ソヨギはゆっくりと瞼を閉じた。

                                                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...