白すぎる女神と破滅と勇者

イヌカミ

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第2品「じつは時間経過って、思ってるより遅かったり早かったりする」

灰の妖女の執念……と属性相性

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  ソヨギは――

(……助かっちゃった)

  ガックリしていた。起きちゃいけないことが起きちゃったのである。腹に仕込んだ月刊サジャジンが、見事にハイヴォルトの一撃を受けとめてました。

  なんでかな。これはダメでしょ。いくら異世界の常識がこっちとは違うと言っても、これはダメだと思います。ソヨギ的には完全にナシである。アスファルトとかそこらじゅうをメチャクチャにするのに、雑誌で防げるのはなんでかな。あー……まあ、助かっちゃったならしょうがないんだけど。

  顔をあげると、ビデガンは戦闘の光景を見ながらとても苦しそうな顔をしていた。とりあえずここは……痛かったし殴ってみよう。ソヨギはちょっとプンスカしてるのだ!

  ビデガンがそっぽを向いているのをいいことに、ソヨギはそーっと立ちあがり、肩にかけていたライフルを手に持った。銃身だと弱そうだ。ここは銃床で……銃口がこっち向きだけど大丈夫かな?  しかし、背後からいきなり行くのは失礼じゃないだろうか……よし、呼びかけてこちらを向いたら殴ろう。ちょっと多めに殴ろう。ソヨギは銃身を持って振りかぶった。

「……ビデガンさん」

  呼んだ瞬間にライフルで殴りかかる。

「な、てめ――!」

  ガヅンッ!  ナイスなタイミングでビデガンのおでこを打つ。ほお……なかなかスカッとしますね。

「えい、えい、てや」

  ゴンッガンッドコッと体を殴る。ビデガンは腕で防ぎながらしゃがんだりする。とても痛そうだ。やりすぎかな?

  ……よし、泣くまでやろう。喧嘩は泣いたらそこで終わりなのだ。

「せい、はあ、えい」
「――分かった!  もう充分だソヨギ!  賭けはてめぇの勝ちだ!」
「ほんとに?  せいや」
「痛っ!  追加で殴るな馬鹿!  終わりだ終わり!」
「まだ泣いてないのに……」

  ソヨギは物足りなさが残るものの、しかたなくライフルをおろした。ビデガンが殴られたおでこをさすりながら立ちあがる。ちょっと半泣きである。

「泣くまでが喧嘩なので、終了ですね。ちぇっ」
「どんなルールだそりゃ……しかし、殺しあいが喧嘩ていどかよ。こいつぁたまげたぜ。おーいてぇ」
「……そういう意味じゃないんですけど」

  周囲の勘違いはいまに始まったことじゃない。いまやソヨギは大物感がまんさいだ。望んでもないのになぁ。

  それはそうと、魔装銃が効きませんでしたが?  とソヨギは穴の空いたダウンをめくって月刊サジャジンを取りだした。

  表紙にぽっかりと穴が空き、黒い液体がびしゃっとなっている。黒い液体は表紙をつたってしたに垂れていた。血だと思ったけど違うらしい。ソヨギも勘違いーズの仲間いりである。

「……これって」

  それをビデガンに見せると、はっはぁ!  とか笑いだした……いや、渾身こんしんのギャグではないです。

「クックックッ……なるほどな。ソヨギてめぇ、俺が身をひそめていることも、なにをしでかすかも読んでやがったな?  だからその防具を身につけてたってわけだ。たいした策士だよまったく」
「……始まった」
「俺のハイヴォルトが――デビロイドの技がすみ属性だと知ってたわけだ。そして紙属性防具をすでに装備していた……そりゃ技の傾向を見切ってりゃあ余裕だわな……クックックッ」
「しっかり置いていかれてますが……」

  そもそもすみとか紙が属性ってのはおかしいっしょ。すみが紙に弱いってなんだ……染みこむから?   ……ジャンケンのパーがグーに勝つくらいに理解しがたい。包むから勝つってどんな理屈?  異文化交流の難しさを、強く実感するソヨギである。

「まあいい、賭けはてめぇの勝ちさ。負けた俺は命を捨てるぜ……さてと、じゃあ行くかねぇ。バカな奴らのバカを、やめさせなきゃなんねぇ」
「お疲れっす……」

  と、ビデガンの眼光が鋭くなる。テンガロンハットを深くかぶり直し、それから歩きだす。吹く風が砂ぼこりを立たせ、そのなかを歩くビデガンは、まるで荒野のガンマンそのものだった。

  ソヨギはとりあえずわけが分からない。ビデガンは自分を殺そうとしていたはずだったのに、ひとりでスッキリしてしまったようだ。痛いぞんのような気がして、もうすこし殴っちゃえばよかったなと後悔する。

  まあいいか、ソヨギはぽりぽりと頭を掻いた。敵はいなくなったことだし、漫画でも読もう!  なにせ移動は不可能なのだ。戦闘が終わるまで待つしかない。

  豆腐と飾神とデビロイドたちの戦いは拮抗きっこうしていた。デビロイドが飾神を倒せる力を得たと言っても、どうやら同じ土俵に立ったというだけらしい。それでもデビロイドは数で勝っている。なのに決着がつかないということは、デビロイドはたいして強くないんじゃないだろうか?

  ……まあいい。そのうち解説が始まるのを待とう。ソヨギは月刊サジャジンをパラパラとめくろうとして、開けないことに気づいた。サムライドオンの最後のページ読んでない……

  そんなことをしていると、ビデガンはソヨギが遊んであげた四人組のひとりに近づいていった。

「ビデガン、いまさらなにしに来やがった!  おまえの役割は狙撃だったはずだ!」
「いいやぁ……違うね!」

  どかっ!  と四人組のひとりを、ビデガンが蹴りつけた。嘘だぁ……と言いたくなるくらいの勢いで、デビロイドが吹っ飛んでいく。そして蹴られたベイカーは動かなくなった。

「よくもウィンチェスターを……!  どういうつもりだビデガン!」

  ……また間違えちゃった。見分けつかないんすよね。

  そんなことよりダメだ!  月刊サジャジンはすみのパリパリによって封印されてしまった。あーもう最後のページ!

「よぉベイカー。デビロイドってなぁいったいなんなんだろうなぁ……」
「気でも狂いやがったか!?  俺たちはデビロイドを捨てた真勢力ダムンディアボロスだ――ごはっ!」
「……泣かせるねぇ」

  同じように本物ベイカーが蹴り飛ばされた。そしてズサァと地面をすべっていき、動かなくなる。

  んー……ひょっとしてビデガンさんて強いのかな?

  しかしダメだなこのサジャジンは。まったく開かない。まだコンビニにあるかなサジャジン。けっこう売れ残って本棚と前面ガラスのあいだに落ちてる系なんだよなぁ……面白いのにな。ソヨギは荷物を放置して店内に向かう。

「なにを考えてやがんだビデガン!  狙うのは仲間じゃねえだろうが!」
「仲間?  へぇ……まだ俺と同族だって?  違うね。てめえらはイカれちまった哀れなピエロだよ」
「なにを言ってるんだ……まさかおまえ、俺たちを裏切るつもりじゃねえだろうなぁ!」

  残ったデビロイドのふたりが立ちあがり、ビデガンに魔装銃を向けた。もう名前は間違えるから呼ばない。ビデガンは魔装銃を向けられても平然と歩く。なんだ……?  ひょっとしてカッコいいキャラなのか?

「撃ちたきゃ撃ちな。そのかわりに魂を死神にくれてやることになるぜ?」
「見くびるなよ……俺はアニミスを使えるんだぜ?」

  デビロイドがにやりと笑う。ビデガンの返答は溜め息だった。

「来な……」
「裏切りは万死だ!  死ねビデガン!」

  デビロイドが撃つ――と思いきや消える!  だが同時にビデガンも消えていた。そして、

「ぐあっあがっ!」
「へっ……しみったれた奴にはお似合いの、お粗末なトリックだなぁ」

  ふたりは三メートルほど上空にいた。一瞬の移動なのでよく分からないが、デビロイドが上空から狙撃しようとしたのをビデガンが読み、同じ高さにあらわれて腹を蹴りあげた……そんな感じである。急所を捉えたビデガンの蹴りで、デビロイドはあっさり気を失っていた。ここまで来ると食神の力ってなにが?  である。

  ふたりは同じ速度で地面におりた。もちろんデビロイドは落ちた感じだ。そのおり立ったビデガンを、残ったデビロイドが狙っていた。

「くたばれビデガン!」
「……無様だぜ?」

  魔装銃の光線が放たれる。しかしビデガンは瞬時に消え、光線は灰の霧の向こうへと飛んでいく。トリックって便利だな、とソヨギはコンビニの瓦礫をどかしながら思った。

  ビデガンはデビロイドの真正面に移動していた。すかさず右の拳を打つが、デビロイドの前方に魔法障壁が出現し、それを受けとめた。

「これが食神の力だぜビデガン。敵の攻撃を防ぎ、魔装銃で撃つ!  これがダムンディアボロスの戦法よ!」
「……トリックもくそもねぇ、つまり誇りがねぇ。てめぇの背中にゃ死神が立ってるぜ?」

  ビデガンは打った右の拳を開き、キュアオッ!  と魔装銃を放つ!  しかしその一撃は簡単に防がれる。

  だが、デビロイドの背後からも青い光線がせまっていた。光線はデビロイドの背中にあたるとはじけ、 デビロイドを昏倒こんとうさせる。デビロイドは地面に降り積もった灰を広げながら倒れ、動かなくなった。

  ビデガンはその仲間たちを見おろしながら舌打ちした。

「こんな昼日中ひるひなかにお寝んねかぃ?  ブラザーズ……たいそうなご身分じゃねぇか。えぇ?  このバカヤロウどもがあぁぁぁぁぁっ!」

  ビデガンは空に向かって絶叫した。その声にその場の全員(ソヨギ以外)が反応し、時がとまったような瞬間がおとずれる。ビデガンはハイヴォルトを構えた。すると豆腐が驚いたような声をあげた。

「ビデガン!?」
「てめぇらがやってるのはシンディラのおママゴトだ!  灰の妖女にまんまと騙されやがって!  気づかなかった俺もマヌケだが、てめぇらはデビロイドの面汚しだ!」
「蒼き憤墨のビデガン!  勝てぬ戦いと見て我らをあざむくつもりだろうが、そうはいかぬぞ!」

  ウィッグノリさんが久しぶりに喋った。しかしビデガンはデビロイドだけに語りかける。

「俺たちの敵は護神か?  勇者か?  それとも破滅王か?  ちげぇだろうが!  俺たちはなによりも誇りと向きあってなきゃいけねぇ。魔族からさげすまれ、人間からうとまれても、忘れちゃならねぇ誇りがあんだろうが!  俺たちは半人半魔のでき損ないだ……俺たちはデビロイドってぇ半端な生き物だ。薄汚ねぇ存在だ……それでも!」

  ビデガンは歯を食いしばり地面をにらみつけた。なんか悔しそうだ。

「俺たちは半人半魔の生きざまを捨てちゃならねぇ……魔物みてぇに人間は襲わねぇし、人間みてぇに弱々しく生きちゃいけねぇ。俺たちは半人半魔だ、俺たちには俺たちのやり方があんだろ!  どっちにもなれねぇなら俺たちの生きざまを、その誇りを、きっちり背負って死ぬのが筋じゃねぇのか!  半端もんだが、しっかり血のかよったデビロイドだろうが!」
「違うぜビデガン。俺たちはダムンディアボロスだ。もうデビロイドじゃねぇ!」

  ビデガンに反発したのは豆腐のほうにいたデビロイドである。ちなみに豆腐も飾神も、ちゃんと話を聞いているようだ。いまやっちゃえば勝てるのに。

「それがシンディラのおママゴトだって言ってんだ!  半人がセラフなんざになれてたまるかってんだよ。いいかてめぇら、シンディラの狙いは豆腐の女神だ!  灰の妖女は俺たちを駒にして、恨みを晴らしてぇだけなんだよ!  破滅軍に対してもそうだ!  あいつも俺たちと似たような存在――半神半魔だからな。半端もんの抱いた嫉妬しっとらしにつきあわされてるだけだ!」
「俺たちは灰の妖女の意見に賛同さんどうしたんだ!  俺たちは魔族の犬じゃねえ!」
「だったらせめて、デビロイドとしてやるべきじゃねぇのか?  食神をいたぶって、勝手に取りこんで、そんなクソみてぇなやり方で満足かよ。俺たちは腐ってもデビロイドだ。なにかやるならよぉ……そのまんまの俺たちでやるべきなんじゃねぇのか。こんなつまんねぇ方法で、誇りを失ってまでやることに意味なんかあるか?  ねぇだろ!」
「まんまの俺たちじゃかなわねえだろ……だからこんなことやってんだろうが!」
「だったら――!」

  ビデガンはハイヴォルトを構える。デビロイドたちは一瞬で緊張する。きっとものすごく強いんだろう。

「かなわねえならまっすぐ死ねや。まっすぐ生きて、前のめりに死んでけよ……それが誇りってもんだ。魔族にかなわねぇ運命だって言うなら、かなわねぇまんまでいい。それがデビロイドだって誇りながら死にゃあいい。それともデビロイドやめてまで、ちたまんまで死にてぇか?  だったら俺が引導くれてやるまでよ。勝ち負けにこだわるあまりに誇りを捨てちまうんなら、なんもできねぇまま……腐ったまま死ぬのがお似合いだぜ!  死にてぇ奴からかかってきやがれ!」

  ……だが、デビロイドたちはなにもしなかった。魔装銃を構えたりもしない。迷ってる感じである。おそらく答が見つからないのだろう。月刊サジャジンが見つからないように……どこかなー。

「……どうした?  来ねえならこっちから行こうかぃ?」
「仲間内でもめてる場合じゃねえんだ……こんなことやってんのもデビロイド一族のためなんだよ!  誇りがねえだの腐ってるだの、そんなことにこだわってる場合じゃねえんだよ!」
「なら証明しなぁ。てめぇが間違ってねぇってなら、この蒼き憤墨なんざ屁でもねぇよなぁ……!  セラフ気取ってなんも誇れねぇクズが、俺の誇りをぶっ壊せんのか証明してみやがれ!」

  デビロイドのひとりが消えた。ついに決断をしたようだ。ひとりの瞬間移動にあわせ、デビロイドたちは次々にビデガンへせまった。

  とりあえず動いたのはデビロイド五人。ほかは動かずに浮遊しながら傍観していた。五人は示しあわせたわけではないだろうが、ビデガンの立つ上空に展開した。魔装銃による一斉射撃はしかし、ビデガンにはあたらない。ビデガンは着弾するよりも以前に消えていた。

「かはっ……!」

  空中にあらわれたビデガンの蹴りで、ひとりが唾液を飛ばしながら地面に叩きつけられた。ビデガンは落下していくが、そこへひとりが瞬間移動し、拳の攻撃をしかける。ビデガンは落下しながらもしゃがむ動作で拳をかわし、ハイヴォルトから光線を放った。その一撃はデビロイドの右肩をつらぬいたが、ビデガンはさらに拳を降りあげる。腹に深く刺さるような拳打により、そのデビロイドは落下しながら失神した。

「セラフってのはそのていどだったか?  あぁ!?」
「ふざけやがってえぇぇぇぇ!」

 ビデガンの着地と同時、残りの三人が瞬間移動で攻めた。ビデガンは拳や蹴りや魔装銃の攻撃を体勢を変えたり瞬間移動でかわし、デビロイドたちを翻弄ほんろうし、そして圧倒した。気づけば――

「ごあ!  かっはっ……!」
「なんでぇなんでぇ――」

  ビデガンの瞬間移動からの肘が、デビロイドの腹に刺さる。デビロイドがゆっくりと倒れていくなかで、ビデガンはテンガロンハットを直す。

「――ハイヴォルトのなんたるかも教えられねぇじゃねぇか……お強いねぇ、ダムンディアボロスってなぁよぉ……」

  どさっ……

  最後のデビロイドを倒し、ビデガンは舌打ちした。ビデガンの正確かつ強烈な一撃により、デビロイドたちはお昼寝タイムに突入していた。

  いや、強すぎるでしょ。ソヨギも思わずパチパチしちゃうほどに鮮やかな勝利だった。その強さは茶化すコメントもいれられないほどだ……さて、サジャジン捜索を再開します。ダムンディアボロスって意味ないねと思いつつ、大きめの瓦礫をどかす。

「おめぇたちはどうすんだ?  俺の魔力をちったぁ削れるかもしんねぇぞ?」

  ビデガンの挑発に、残ったデビロイド五人はゆっくりとおりてきた。食神の力を得て強くなったはずなのに、のまんまのビデガンにやられちゃったのだから無理もない。まあそもそも、食神で強くなる理屈も分かりませんが。

「と……投降する。あんたの言ったとおり、俺たちはデビロイドとして死にてえ!」
「俺は間違ってねえ……だが、誇れる強さじゃなかった!  こんな借りもんの力でなにやったって、確かに誰もデビロイドを認めねえよな……」
「ビデガン、俺たちは死ぬぜ!  だがそれはまっとうな半人半魔としてだ!」

  五人のデビロイドたちはそれぞれの想いを口にしながら着地すると、ビデガンの元へと集まってきた。ビデガンは舌打ちしながらも、どこか嬉しそうな顔を見せる。

「へっ……バカヤロウどもが。おい護神ども、ちぃっとばかし顔貸してくんねぇか?」
「ふざけておるのかビデガン!  きさまたちがやったことを不問にせよとでも言うのか!」
「ダムンディアボロスはすでに我ら護神の仇である。粛清しゅくせいすべき仇敵きゅうてきに、貸すものなどないわ!」

  そもそも飾神に顔がないしね、とソヨギが突っこんだところで、豆腐が会話に割ってはいった。ふよよーっと移動したのは、飾神とデビロイドたちのちょうど中間である。

「お待ちください飾神さま!  彼らは確かに悪逆非道あくぎゃくひどうのおこないを繰り返しました――ですが!  彼らは灰の妖女シンディラにたばかられた被害者です。シンディラがこんな策を練らなければ、彼らは別の方法で破滅軍に反旗はんきをひるがえそうとしたはず……シンディラが間違った方法を、希望をあたえたのです!  彼らはしかしその方法にすがるしかなかった!  ともすれば我らもまた、灰の妖女により被害を受けた者!  いまや護神とデビロイドは立場をともにする者同士ではありませんか!」
「言葉で納得できるのなら、そもそも我らとて戦いなどするものか。言葉ですむのなら、このような異世界で聖戦などおきようはずもなかった。そうだろう豆腐の女神よ……そなたの言葉はまさしく詭弁きべんである!」
「待ちなぁ!  誰も俺たちを許せなんざ言ってねぇぜ!」

  ビデガンはみずからにハイヴォルトを向けた。その胸に銃口を突きつけたのだ。

「俺の命を護神たちにくれてやる。だからよぉ……せめてこの戦争が終わるまで、デビロイドを放っておいちゃくれねぇか?  俺たちに誇りを示させちゃあくれねぇか?」
「ビデガン……」
「やめろビデガン!  そんなことしねえでくれ。元はと言えば俺たちが灰の妖女を頼ったからじゃねえか!」
「おまえら……」
「ふふっ……茶番もそろそろ飽きたわねえ……」

  ――誰もそれを予想だにしていなかった。ビデガンの近くにいたひとりが一瞬で灰になったかと思うと、灰の嵐が吹き荒れた。しかもその灰には物体を切り裂く力があった。爆風のように広がる灰の嵐に切り裂かれ、ビデガンたちは鮮血を散らしながら吹き飛ばされた。

  飾神たちも同様だった。その高速の嵐をまともに浴びていたのだ。灰の嵐はノリさんやサラリーマン、B系の青年を切りつける――が、人間たちにダメージはない。その代わりに飾神たちが傷ついていく。偽物の毛がちぎれた。装飾そうしょくが欠け、ツケマが寸断される。そして三人は適当な方向へ墜落していった。

「そんな……そんなぁ!」

  ゆいいつ無事だった豆腐が情けない声をだす。瞬時に展開した魔法障壁により、難をのがれていたのだ。灰の妖女シンディラの声が響く。

「はっはっはぁっ!  ソフラ!  これでようやくあなたと戦える……この進化したわたしの技をくらいなさい!  魔装偽鏡反射光トゥーハイヴォルトリッカーアァァァァ!」
「やらせるものですか!  魔法障壁最強度!」

  ドーム状にこの場所を包んでいる灰の霧から放たれる全方位からの閃光攻撃を、展開された豆腐の巨大魔法障壁が受けとめた!  ゴキャキャチュンダゴドアボボボゴアガァッッッ!  と、わけの分からない擬音が連続し、魔法障壁の外面は閃光で埋めつくされている。

  こうして豆腐と妖女の対決が始まった。

  ちなみにソヨギは月刊サジャジンが見つからず、地面にガックリしてたらなんか平気でした。

                                  続く

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