白すぎる女神と破滅と勇者

イヌカミ

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第3品「買い物に利用したことないんすよ、ここ」

新章・ソヨギ……ソロプレイ?

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  その――

  魔空戦隊の城は、とても暗く陰湿だった。広さはかなりあり、見渡すこともできないほどだ。広大な建物の階下には、墓標とも思える長方形の物体が並んでいた。

「モタモタするな!  おまえ!」
「……ちっす」

  ソヨギの背中をどついたのは、顔が犬みたいな人型モンスターである。ソヨギはその黒く禍々しい階段を昇らされていた。

  ――ソヨギはひとりだった。なぜならモンスターに捕まり、この高き堅城デッドプリズンと呼ばれている場所に連れてこられてしまったのである。豆腐たちの姿はない。まったくのひとりである。

  ソヨギは不吉な空間に伸びた黒い階段を昇っていた。背後にいるイヌモン(略した)のせいか、ひどく息苦しい。ソヨギは不安から激しくなる鼓動を抑えるのに必死だった。

  このままもしかしたら……そうやって生存本能が警鐘けいしょうを鳴らしている。

  タン……タン……と、黒い階段は不気味に足音を反響させた。ソヨギは死刑囚になったような、そんな絶望じみた時間のなかにいる。このうえにはなにがあるのだろう……こんな魔物たちの巣窟そうくつで、自分は果たして理性をたもっていられるだろうか……だがソヨギにその自信はまったくなかった。

  タン……!  最後の段差を強く踏む。そこもまた、階下と変わらない不吉な印象だった。

「歩け!  おまえに地獄をやる!」

  イヌモンに背中を押され、ソヨギはたたらを踏んだ。ソヨギは震えた瞳でイヌモンを見あげる。イヌモンは下品な笑いを浮かべていた。逃げることはできない……ソヨギは確信していた。イヌモンは笑う。

「グワワワワ!  おまえの地獄はそこだ!」

  イヌモンがさも楽しそうに、ソヨギをこえたさきにある地獄を指さした。ソヨギはそちらを向く。あまりの恐ろしさに心臓がドクンと鳴った。

  ――寝具しんぐ売り場だ!  そこにはお試し用のベッドが置いてあった。ソヨギはあまりの恐怖に唾を飲みこんだ。あ……あんなところに寝かされたら……快眠してしまう!

「グワワワワ!  あれ、おまえの嫌いな綿わた属性のやつだ!  さあ、寝ろ!  それとも紙属性がいいか!」

  や……やめてくれ!  ソヨギはイヌモンが指さした奥のほうを見た。本屋がある!  しかもラインナップに定評のある紀○國屋書店だ!  あそこに行けばメッシちゃんもサジャジンもあるじゃないか!  ソヨギの理性が悲鳴をあげていた。

「さあ選べ!  どっちの地獄だ!」
「……どうせやるなら徹底的にやってください」

  こ……この俺にベッドのなかで本を読ませるのか!  ソヨギは絶望的に頭をかかえた。最高だ!  いままさに望むものすべてがそろっている!  で……デッドプリズンめえぇ。俺の弱点属性をすべてそろえているというのか。なんて恐ろしさだぁ……

  そのソヨギのもだえっぷりを見て、イヌモンがグワワワワと笑った。この俺を苦しませてそんなに楽しいか……あ……悪魔だ! 

 ――とまあ、ソヨギが楽しそうにしている場所は、デパートの二階でした。

                       ※

  いっぽうそのころ――

  その建物がデパートという商業施設だとはツユも知らない三人と一丁がいました。デパートの敷地はかなり広く、その周囲は植樹とかされていて、まるで彼らの世界で言うところのお城みたいでした。

「ソヨギさまは大丈夫でしょうか……」

  豆腐は心配そうです。皿に乗って浮いています。絹ごしです。

「でてくるのが遅すぎる。魔物に見つかり、捕らえられたのかもしれないわ」

  シンディラも心配そうです。全身が灰色の、十歳前後の少女な見た目です。でも濃い灰色のアイラインや口紅をしているようにも見え、立ち居振舞いも大人っぽいです。

「……ちとまずいか?  いくらトリックスターでも、数には負けるだろうしなぁ」

  ビデガンも心配そうです。黒いテンガロンハットとロングコートを着用したデビロイドです。耳からしたの皮膚は青かったりしますが、顔は肌色で人間にも見えます。

「潜入しちゃおうよ。さすがに遅すぎるよ」

  勇者フィアも心配そうです。異世界の少女です。デニム生地のジャケットとミニスカ、黒スパッツの十歳です。腰には大樹をもした長剣を提げています。

  みんなが心配そうでした。三人と一丁は、ソヨギが侵入した鉄の扉を、近くの茂みに隠れてうかがっています。

  彼らの時間の概念は希薄きはくでした。なのでソヨギがフラフラと建物にはいっていき、それから十分くらいだとは分かりません。正確な時間が分からないと、数分でもかなりの時間に感じてしまうのです。

  シンディラが舌打ちしました。

「飾神とデビロイドの陽動がうまくいくまで、待機するべきだったんだ」
「ソヨギさまのお考えですシンディラ。デッドプリズンに捕らえられているだろう人間に紛れこむという、これも作戦です」
「豆腐の女神よぉ……そりゃ成り行きでそうなったらってぇ話だろ?  ソヨギはアニミスと魔力がねぇから、なにやっても敵にゃあ気づかれねぇ。だから民間人よそおって、敵情視察が目的だったろ」
「そうだよ。最下層のようすなんてすぐに分かるよ?  帰ってこないのおかしいよ!」
「お嬢ちゃん、声がでけぇぜ?」

  ビデガンに怒られて、フィアはぺこりと頭をさげます。

  しかし三人と一丁は動けません。飾神が考えた作戦なので、命令を守っているのです。

  ちなみにシンディラとビデガンは、中位護神となった豆腐の部下という立ち位置です。しかしシンディラは同時に大樹の護神王アルラの属神なので、基本的には勇者フィアにつく護神になっています。ビデガンの魔装銃は神装銃になっていて、彼は大空の護神王ゼファーの属神です。もちろんほかのデビロイドたちもです。

「魔空戦隊に動きはない……まだ陽動が効いていないということだ……遅い!」
「あせってはなりませんシンディラ。ソヨギさまは大丈夫です。なにせソヨギさまなのですから」
「へっ……妙な説得力がありやがる。トリックスターだからなぁ」
「とりっくすたぁってなんだよ?」 
「俺たちの王さまさぁ」

  フィアはそれでも分からずに、ハテナと小首をかしげました。ビデガンは意地悪く、クックック……と笑います。

  ビデガンは言います。

「……前言撤回するぜ。虚実の王なら――ソヨギならなんともねぇってなぁ」
「まあ……そうだと祈るばかりだわ」

  シンディラはそれでも心配そうに、ソヨギが侵入した鉄の扉を睨んでいました。

                        ※

  いっぽうソヨギ――

「く……ぐうぅ……」
「グワワワワ!  苦しいか!  そのまま死んでしまえ!」

  ソヨギはあせっていた。

  なんてやわらかなマットなんだ!  ソヨギはいつもペタンとした固い布団で寝ているので、ベッドの弾力に負けてしまいそうになっていた。

  イヌモンに寝かされたのである。しかもダブルベッドであり、なんとしたの部分は収納になっているのだ!  これなら幅を取ってしまうだろうダブルベッドでも、小物なんかをしまうのにも有効ではないか!

「グワワワワ!  俺、死んだ肉が好きだ!  グワワワワ……これ、とどめだ!」
「……やばいそれ」

  イヌモンのワサァとした攻撃である。ソヨギの体を羽毛布団が包みこむ!  ぐ……ぐはぁ!  これでは体内から発する熱量が逃げず、真冬の寒さもなんのそのではないかぁ!

  しかもイヌモンは羽毛布団なのに中身が綿だと思いこんでいる。フェザー(羽根布団)とダウン(羽毛布団)を勘違いするならいざしらず、異世界発想はスゴい。まあとにかく、

「……ぐー」
「グワワワワ!  もうすぐ肉食べれる!」

  ソヨギはマジ寝にはいりました。

                  ※

  ――いっぽう三人と一丁は。

「む……内部が騒がしくないか?」
「つぅより最上階のほうだな」
「あ、魔物が飛んでいくよ」
「――!  陽動部隊のほうでも敵影を捉えたようですね。監視の翼魔獣をあの距離から狙撃するとは腕がいい」

  デパートのなかからは、カンカンカンカン……と、警鐘が響いていました。

  コンビニからデパートまでは、おそよ八キロの距離がありました。しかし陽動部隊のデビロイドが、一発で撃ち抜いたのです。なんにせよこれで、デパートの魔物たちが少なくなっていくはずです。

  ちなみにゼファーの決定により、シエルネットワークは閉じられています。しかし短距離から中距離ならば、送通信が可能です。つまりは一方的な短文での通信……メールみたいなものです。ゼファーはシエルネットワークを傍受されていたことを、反省したのでした。

「行くわよソフラ」
「まだですシンディラ。まだ監視役である地上派魔兵がでていません」
「大暴れするわけにはいかねぇってんで、この作戦なんだろぉ?  ちったぁ落ち着きやがれ」
「さきほどハイヴォルトをかましてみるかと言ったのはどこのどいつ?  デッドプリズンごと吹き飛ばそうとしただろう」
「……へぇへぇ。誰かさんは灰の嵐で掻きまわすとか言ってたっけなぁ……」
「なんだと!  ハイヴォルトよりは遥かに威力はないんだ。人質になっているだろう人間の生存率だって高くなる。ハイヴォルトよりは遥かにな」
「ふたりともいい加減にしてください。この作戦では大技禁止ですからね!」
「一番熱くなりやすいソフラが――」
「――なに言ってやがる」
「わたしがいつ熱くなりましたか!」
「いまだよ?」

  豆腐はぐぬぅ……とか言いながら、黙りこんでしまいました。フィアに言われては返す言葉もありません。三人と一丁のなかで一番冷静なのは、最年少であるはずのフィアでした。

  もともとが魔剣士であったフィアなので、魔力を読むことに長けていたのです。デパートの二階あたりで不自然な動きをしている魔物に気づいていました。フィアはおそらくソヨギが一緒にいるのだろうと、理解していました。

  フィアは冷静です。いまその事実を告げれば、ふたりと一丁が助けに向かってしまうと思ったのです。そして、

(ベアフロンティアの激しい魔力が一帯をおおっている。でもそれに隠れるようにして、このデッドプリズン最上階のあたりにも、とてつもない魔力を感じる……)

  つまり、ベアフロンティアに匹敵する魔族がいることに、フィアだけが気づいていました。あの流浪の魔神デスケテスはすでにいません。だとすると、魔力をおさえながら息を潜めているなにかがいるはずなのです。

(言うべき?  いえ……当初の作戦はこちらの世界の人間を救うだけ。それならそちらに集中しないと失敗する)

  告げるのは人間を助けてからだ……そうフィアは判断しました。気づかれずに任務を遂行すること。そのための陽動作戦であり、潜入作戦でもあるのです。さらには、

(姿が消えた飾神のアニミスも感じる。だからこれは、小さな聖戦だよ!)

  魔空戦隊の狙いは分かりません。しかしなにかをしようとしていることは、フィアにも分かっているのでした。

                    ※

  いっぽうそのころのソヨギ。

「……なんで起こすんすか」
「グワワワワ!  俺はいたぶるのも好きだ!」

  まあさっきからカンカンうるさくて寝れないが……

  デパートの店内に、鐘を鳴らす音が響いていた。いろんな種類のモンスターがドタバタと黒い階段――電力がなくて動かないエスカレーターを昇ったり降りたりしている。とにかくうるさい。ソヨギは静かじゃないと寝れないのだ。

「なにかあったんじゃ?」
「知らない!  俺はおまえ食いたいのがさきだ!  おまえを苦しめるの持ってきた!  紙属性だ!」

 な……なにぃ!?  イヌモンが手にしているのはサジャジンである。見つかったときにいろいろと吹きこんでおいたのだ。『わたしは綿と紙に弱い、こちらの世界の人間です……』みたいな。

  嘘はついていない。なぜなら人類みんなが弱いに決まっている。冬のお布団と、とっても楽しい本に目がないはずだ!  しかしソヨギの意見は片寄っている! 

「どうだ!  大量の紙属性を食らえ!」

  ぎゃあぁ!  ソヨギはサジャジンを胸のあたりに置かれた。そしてすぐさま手に取ると、パラパラとサムライドオンを探す。

  ……そしてソヨギはガックリとしていた。顔を横に向け、サジャジンを持ったままの手を、力なくパタンと落としたのだ。それを見たイヌモンが笑う。

「グワワワワ!  死んだか!  グワワワワ!」

  ソヨギは魂が離れていくのを感じていた。なぜなら――

  ――これは別冊サジャジンじゃないか!  別冊にはサムライドオンは掲載されていないのだ!  確かに立ち読みのさい、ソヨギも間違えて手に取ったことがあるのだ。あの絶望感……昇天しそうなほどのショックだったのである。コンビニ店員に確認したところ、新人が間違えて発注したのだそうだ。

  まあそんなことより、ソヨギはイヌモンに対して恐怖を覚えていた。ぬか喜びにより、こちらの精神力を削る気か……!  で……できる!  ソヨギは確実にダメージを与えられていた。イヌモンはまさに、いままでで最強の相手である。と、

「警鐘が聞こえねえのかコボルト!  なに油売ってやがるんだ!」
「ワワワ……リザードマンの旦那……」
「監視を少数だけ残してでるんだよ!  さっさと来やがれ!」
「ワワワ……分かりましたぁ!」

  ふむ……イヌモンは単細胞のようである。かなりあせりながらバタバタと、ソヨギを忘れて走っていった。

  カンカンカンカン……警鐘が鳴り響いている。

  ソヨギは寝てもいられないので、ダブルベッドからむくりと起きあがった。

                    ※

「派魔兵がでてきましたね」
「ああ……だが移動が遅いな。指揮官がいないのかもしれないわ」
「おそらく様子見だろうな。ザコを向かわせて斥候でもさせんだろ。デッドプリズンのなかには強者がわんさかってぇわけだ」
「うん……外観から見てもかなり広いし、だいたい七階くらいまであるよ。どれだけモンスターが残ってるか分からないよ。気をつけよ」

  デパートからは次々にモンスターたちが移動していきます。この移動が終われば、みんなで突入です。ここで三人と一丁には、考えなければならないことがありました。

「さて、今後の動きですが……二ー二で別れるか、ひとりずつで潜入するか迷うところです」
「そうだな。わたしはフィアを守りたいところだが……奴らに気づかれないようにするには、パーティでいるというのはリスクが高い」
「みんなでいたほうが楽しいよ?」
「そうだなお嬢ちゃん。だが見つかっちまったら陽動作戦の意味がねぇ……俺に考えがあるんだがなぁ」

  ビデガンの発言に、みんなが耳を傾けます。

「まず、豆腐の女神のアニミスを補給しなくちゃ話にならねぇ。それにゃあソヨギが不可欠だ。できれば一瞬で、かつ一発でザコを片づける力が必要だ。なぜなら見つかっても声をあげるまえにしとめられれば、俺たちのことは気づかれねぇからな」
「となると……ソフラはまずソヨギを探すことを優先するのね。ではわたしたちは?」
「クリアリングだ。豆腐の女神が動きやすいように先行する。時間はかかるが一階層ずつ確実に綺麗にしていく。なんなら、なかから施錠しちまえばいい。その過程でソヨギが見つかればもっといいがなぁ」
「よい考えですね。三人が個々に広がって動くのなら、見つかりにくいでしょう。かつフォローもすぐにできます」

  それから三人と一丁は話しあいを進めて、ビデガン、シンディラ、フィア、豆腐という順番で潜入することになりました。すると話しあいが終わるころには、デパートからでてくる派魔兵がいなくなりました。さあ……潜入ミッション開始です!

「最初は見えるところで合図を送る。シエル送信でもいいんだが、できるだけアニミス消費はさけてぇ」
「分かった。わたしとおまえはソヨギからアニミスソーマを貰っているからな。できるだけわたしたちでモンスターを倒すぞ」

  と、シンディラはタバコの灰がつまったビニール袋を示しました。腰に結んであるのです。ビデガンはコートのポケットに、六本のボールペンを持っています。

「よし……行くぜぇ」

  ビデガンが周囲をうかがいながら茂みからでました。ササッと壁に張りついて、鉄の扉からなかをうかがい、ササッと潜入しました。

「フィア。わたしのあとでモンスターがいたら頼むぞ……なにかあったらすぐにシエル送信するのよ?」
「うん、だよ。背中は任せてよ。わたしの聖剣強いよ?」
「無理してはダメよ?  いい?」

  シンディラはフィアの頭を優しくなでました。フィアは嬉しそうにエヘヘと微笑みます。じつはシンディラは、魔力がアニミスに変異したことにより、だいぶ女神らしい母性があふれているのです。もうフィアのことは猫可愛がりです。だいぶ過保護です。

「シンディラ、そろそろ行ったほうがいいのでは?」
「分かっている……ソフラも気をつけるのよ?  あなたはわたしとの戦闘でアニミスを消費して――」
「わたしは子供ではありませんシンディラ。早く行かないとビデガンが動けませんよ?」
「まったく……本当に気をつけるのよ?  いいわね?」

  シンディラはうしろ髪を引かれながら鉄の扉に向かいました。じつはシンディラ。妹である豆腐にも過保護感がハンパないのです。見た目は十歳前後の少女なのですが、その母性は大樹の護神王アルラに匹敵していました。

「フィアさま。シンディラはだいぶ過保護ですね」
「うん……でもお母さんみたいで嬉しいよ。わたし、お母さん知らないんだよ……」
「そうでしたね……お可哀想に……よしよし」
「エヘヘ。豆腐の女神も優しいよ」

  豆腐は優しくお皿をこすりつけました。固そうですがその愛は、フィアにしっかりと伝わっていました。なんなら豆腐も過保護なのです。女神です、イチオー。

「そろそろ行くよ?」
「そうですね。あまり離れない、かつ近すぎない距離がよいでしょうから。なにかあればすぐにシエル送信を――」
「灰の女神も言ってたよ?  だいじょうぶだよ」
「そうでしたね。ですが充分にお気をつけください」
「分かったよ~」

  フィアは遊びに行くかのように、手をブンブン振りながらデパートに向かいました。豆腐はフィアが無事に潜入をすると、ほっと胸(?)をなでおろしました。

  そしてここでカンカンと鳴っていた警鐘がやみました。もうモンスターがでてくることはないでしょう。豆腐はふよよーんと進みました。もちろん周囲を警戒しています。

(ソヨギさま……ご無事ですよね……ソヨギさま……)

  豆腐は心配のあまり、くすんと鼻(?)を鳴らしました。ものすごく心配なのです。ソヨギがいくらレアーズとは言え、人間であることに代わりはありません。

(ソヨギさまは苦しんだりしていませんか?  つらい目にあったりもしてませんか?  ソフ――メガ美はそればかりが気がかりです……)

  豆腐はだいぶ不安を感じながらデパートに潜入しました。風のアニミスを使って鉄の扉を閉めます。そして念力で鍵をかけました。これでこの場所からは侵入できません。壊されても派手な音で気づけます。

(ソヨギさま!  待っていてください!  メガ美が助けに行きますからね!)

  豆腐は静かにへよーんと、暗い暗い廊下を進んでいきました。

                        ※

  いっぽうソヨギは――

「広いなー……」

  エスカレーターの近くにあった太い柱――そこについている案内板を見ていた。二階は生活のフロアになっていて、寝具やら洋服やらがいっぱいあるらしい。あと紀○國屋書店や百円ショップとかだ。マップを見る限りでは、デパートというより商業複合施設みたいである。つまりはデカいのだ。

  ソヨギは効率よくお店をまわる計画を練っていた。まずは紀○國屋書店だが、ビデガンにやられたダウンを買い替えたい。そして三階にあるスーツ系のショップも見たい。冠婚葬祭とか、二十歳を過ぎるといろいろあるのだ。安価なリクルートスーツも欲しい。四階の雑貨……あまり興味はないが流行りのアイテムなどはチェックしておきたい。

  とまぁ、モンスターが徘徊しているがソヨギには関係ないのだ。五階にあるオモチャ屋とか駄菓子屋あたりが一番気になる。六階の映画館……最近は映画とか観てないなー。ソヨギはいつにもまして余裕なのだ! 

  という感じで潜入ミッションは開始されたのだった。

                                        続く
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