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第3品「買い物に利用したことないんすよ、ここ」
ソヨギショッピング……その選択が運命を分けた
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……面白かったー。
サムライドオンの最終ページはソースカツ丼のドンブリを綺麗に洗ったところで終わった。なんと言っても描写がいいのだ。ワキザ氏がさも叩き割りそうないきおいでドンブリを振りおろし、ジャシャアッ! と水桶に浸けるのである。
それはそれとして、ソヨギは紀○國屋書店の雑誌コーナーで、あぐらをかいていた。ちゃっかり寝具売り場からクッションを持ってきていて、底冷え対策も万全である。
ソヨギは改めてデッドプリズン――もとい、なんちゃらスポットガーデンなるデパートを見まわした。基本的には白っぽい感じで、薄暗いのは電灯がついていないからである。電気は止まっているのだ。ガラス張りになってるところや、火事のとき煙を逃がす窓から太陽光がはいってくるので、内部をなんとなく見ることができる。ちなみにソヨギのいる雑誌コーナーには、光をいれる細長い窓があった。ソヨギはそれを背にしてサジャジンを読んでいた。
デパート内部は変な造りになっていて、壁があるところとないところがあり、おそらくは構造上の問題で、壁がないと建物を支えられないのかもしれない。それとやたら太い柱が四本くらいはある。そのせいですべてを見渡せそうで、それができない。
そして広い。どんくらいかと言われても分からないが、棚とか全部どかせばサッカースタジアムくらいあるんじゃないだろうか。言いすぎかもしれないがとにかく広いので、隠れるスペースはたくさんあった。
紀○國屋書店だけでこの広さである。まるで大規模な図書館みたいだ。まあつまり、どこにモンスターが潜んでいるかも分からない。
と、ソヨギはそのことに気づくと、メッシちゃんの一巻を読み始めた。モンスターなんかどうでもいいのだ。
ほう……メッシちゃんは真っ暗な空間にただよう意思だったらしい。何千年と存在し続けて、滅失界を管理していたのだが、あるとき閻魔大王に言われ、擬人化して地上にいる罪人を送りこむように命令されたのだ――と、ソヨギはメッシちゃんに夢中である。
大満足のソヨギ……だがここで、ソヨギには過酷な試練が待ち受けていた。
「ニンゲン! なんでいる!」
「……うっす」
ソヨギは背後からの声に振り返った。漫画雑誌からガーデニング雑誌にコーナーが変わるところに、猿の人型モンスターが立っていたのだ。距離はだいたい五メートルくらいだろうか。
「グキャキャキャ! うまそう!」
「うっす、あざっす……」
ソヨギはペコリと頭をさげて礼をのべた。どうにかしてこのサルモン(略した)を撃退しなければならない。いや、そんなことより……
ぐーきゅるる。ソヨギは空腹だ! コンビニから強制フライトでここまで運ばれてしまったのだ。なのでお昼ごはんはおあずけな感じだった。
しかし食品売り場は一階に集中している。しかもまともなお昼を食べられるのか? デパートとは言え商品モデルの調理器具など使いものにはならないだろう。調理手段が見つかるまではどうしようもない! まさに過酷な試練である。
「グキャキャキャ! 死――!」
「……ちょっとタイムで」
ソヨギがメッシちゃんを左手にして右手をだすと、サルモンは石のように固まった。ソヨギはテキトーに無視して、よいしょと立ちあがる。どうせサルモンの勘違いが発動したんだろう。ソヨギは借りていたクッションを持った。なぜならクッションはお試し用なのだから返却だ!
「きさま……なにした……」
サルモンは腰に提げている剣に手をかけてはいたが、抜くことができないようだった。なんか汗を流しながらカタカタと震えている。この一瞬のうちになにがあったのか分からない。まあでも、利用するか。
「動かないほうがいいですよ」
「はうっ……や、やっぱり! 呪術師なんだな!? それ、魔導書だ!」
ソヨギはそれを聞いて、ようやく理解した。サルモンにはメッシちゃんが魔導書に見えてるのか。
「……呪術師に見えます?」
「ギャキャ! 俺、ダマされないぞ……その格好そうだろ!」
「……えー」
ソヨギは自分を見おろした。黒いフードつきのダウン。したは黒いスウェット。だがバッシュは白い……白くないか。たぶんビデガンの魔装銃を受けとめたときに、墨属性がかかったのだ。なんかところどころ黒い。うん、ソヨギは黒ずくめです。じゃあもう呪術師で。
「やりますね。でもサルモンさんは動きたくても動けないっすよね?」
「そ……そうだ! 頼む、殺さないでくれ……」
「どーしよっかなー……」
ソヨギはクッションを指先でクルクルする。するとサルモンはギャヒィと悲鳴をあげた。恐怖による勘違いで動けないらしい。てゆーかこれは自己暗示の類いかな。勝手に術中にハマっているのだ。
「この低反発クッションを食らいたいですか?」
「て……テイハンパ・ツクッション! 怖い名前! イヤだ!」
どこで区切ってるんだ? まあいいか……せいや。ぽふっ。
「ガキャキャ! グホッ……!」
サルモンはその顔面に低反発クッションを食らった。そして白眼になり、泡を吹きながら倒れていく……ドスンッ! ソヨギはサルモンを倒した!
「……なんだかなー」
ソヨギは頭をぽりぽりと掻いた。勘違いってここまで通用するかなフツー。恐怖で失神なんてのはよく聞く話だが、さすがにクッションで気絶はないでしょ。さすがに異世界にもクッションくらいはあるよね? まあ……ちょっと面白いからいいけど。
ソヨギは深くは考えないようにして、クッションを戻しにテクテクと歩いた。デパートはひと気――モンスターっ気はないように思える。けっこうな範囲でカーペットが敷いてあるので、足音なんかも響かないのだ。
テクテク……ご飯どうしようか。
テクテク……そういえばなにしに来たんだっけ。
テクテク……うーん……そうそう、買い物だ。
テクテク……スーツと、クツと……あ!
「グケケケケ! なんでニンゲンいる!」
「こんちわー」
だいたいエスカレーターのあたりである。うえの階から鳥の人型モンスターがあらわれた! ソヨギはなんとなくエンカウントした気分になった。
「グケッ! どこ行くニンゲン! 逃げるな!」
無視。クッションを返さなきゃいけないので、それを終わらせてから遊ぼう。ほとんどトリモン(略した)の目のまえを歩いていき、ダブルベッドを横目にしながらクッションコーナーへ。背後からはドタバタとトリモンがせまっている。ソヨギは通路がわにある冬のセール的な場所にクッションを返した。
「グケケァ! 死んで食われろニンゲン!」
「……シーツ見たいんですよ」
トリモンの攻撃! ソヨギは無視してシーツコーナーに向かった。トリモンを見たときに思いだしたのである。トリモンの上段からの剣は、カーペットを切りつけていた。ソヨギお得意のジャスト回避である。
まあそんなことよりシーツだ。豆腐の戦闘行為により、布団のシーツが汚れている。だが替えがないので買っていかなくてはならない。けっこうまえに替えのシーツは捨てていたのである。
豆腐……? ソヨギはなんか忘れてる気がしていた……いやいや、それよりもシーツである。ソヨギはシーツコーナーにたどり着いた。
ふむ……なんという豊富な品ぞろえだ! ビニールに包まれて洋服みたいにハンガーでかけてあったり、なんか四角に固めてあったり、SとかSDとか書いてある。そのシーツコーナーだけでも、だいたい十メートルかける十メートルくらいのは広さである。シーツ選びは時間がかかりそうだ。ソヨギのお買い物が始まる……だが、
「グケェッ! 逃げるな!」
トリモンがダッシュでせまっていた。ソヨギは無視する。SDってなんだろ。あ、見本もあるのか。ちょっと広げさせてもらいます。ブワァサ。ちょっと大きめな白いシーツが広がる。
ちょうどそこでトリモンが走ってきて、その足が広げたシーツをちょっと踏んだ。ん? なんかカタカタしている。地震が来たぞ遊びかな? ソヨギもたまにやるのだ。見あげてみる。
「グケッ……お……おまえいまなにした……」
「え? いや、SDってなんだろうって。トリモンさん知ってます?」
「知らない……」
「Sはシングルですよね。SD?」
「おまえが言うこと分からない! そ……それまさか呪文!?」
「呪文じゃなくて略称じゃないすかね。だってSDですよ? シングルデスヨかな……ソンナニデカクナイ? サクラダイコン、ソレハドウカナ、スマンデスギタ、シカタナイヤツダ……なんだと思いますか?」
まるでトリモンを、一緒にショッピングしに来た友達扱いである。しかしトリモンは聞いているのかいないのか、カタカタがガタガタへとレベルアップしていた。一緒に考えてくださいよー。
「ちょっと……聞いてます?」
「おまえ、魔方陣だした! さっきから呪文言ってる!」
「違いますが……あ!」
ビクゥッ! トリモンは強烈にビビった。クチバシなんかはアワワワ……みたいになっている。でも分かった。ソヨギはポンと手を打った。
「セミダブルだ」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
トリモンは白眼になり、泡を吹きながら倒れていく……ドスンッ。ソヨギはトリモンを倒した!
「……意味分からん」
さっきのクッションはまだいい。だがなぜセミダブルに気づいただけで倒れる! SDがセミダブルだという事実がそんなにショックだったのだろうか?
まあでもセミダブルは大きいな……そうそう、敷きパッドなる簡単取りつけアイテムを試してみたいのだ。普通のシーツはいちいち手間がかかるのだ。あっちかな? テクテク……ソヨギは歩きだした。
敷きパッドコーナーに着く。だいたいは袋にはいっているが、安価なものはハンガーでかけられている。試供品的なものはないので、そのハンガーにかけられた安価な敷きパッドをながめる。
ふむ、四隅のゴムを布団の四隅に引っかければいいのか……なんてお手軽な構造なのだ! これならば毎日の家事に忙しくしている主婦も助かる! チャチャっとはずしてチャチャっと洗えるじゃないか。よし……これだ!
ガラはなににしようかな……汚れが目立たないベージュにしよう。んー……血溜まりに寝てると思われちゃうかな? やはり青年向けな水色? いや、清潔感ならアイボリー的なのもいい。
ま……迷う! なんでこんなに種類が豊富なのだ! まさか罠か! 俺を足止めしていろいろ悩ませたあげく、何色か買っていかせる罠なのか……え? このちょっと起毛っぽいのが九九九円? ああ……もう……しかたないか。ソヨギはデパートがわの策略にはまった!
ソヨギはベージュと水色を手にしてレジに向かった。コンビニとは違い、四方を囲んでいる広めなレジである。レジスターはみっつ。しかし店員さんはいない。しかたあるまい……やるしかないのだ。
「いらっしゃいませー」
ソヨギはレジのなかに侵入した。
お……デパートのレジスターはコンビニとはちょっと違うな。よく分からない項目が増えている。ソヨギはなんか面倒になり、店員さんゴッコを諦めた。袋を適当に探して、お金は置いていく。細かいのがないので二千円札をだしてあげる。二千円札なんてよく持ってたねと褒めてあげたい。
ソヨギは敷きパッドとメッシちゃんを袋にいれて持ち歩くことにした。ガッサガッサとさせながらエスカレーターに向かう。お昼ごはんはなににしようかな……サンドイッチとかよりラーメン食べたいな。ラーメン……? ソヨギは思うところがあり、案内板へ方向を変えた。
あがってきたエスカレーターを過ぎて、最初に見た案内板を見る。やはり……五階のおもちゃ屋と駄菓子屋のあるフロアには、フードコートも存在している。
デパートがわの策略は明白である。つまりは家族連れが食事をし、その足で子供たちを釣りあげようという魂胆なのだ。しかしソヨギは大人である。だからそんな策略には引っかからない……はずであるっ!
「……お昼はラーメンにしよう」
ソヨギは決断し、エスカレーターへと歩いた。エスカレーターはもちろん二本並んでいる。二階にあがってくるのと、三階にあがるほうだ。反対がわも同じで、あちらはくだりのエスカレーターだとソヨギは認識していた。
……この決断が運命を分けた。一階に行く予定だったはずのソヨギは、やっているわけがないフードコートを目指した。それが運命だった。
じつはソヨギ……いつのまにか迎え酒効果が切れていて、頭がボーッとしていたのだ。
ひさしぶりの二日酔い設定でお送りします。
続く
サムライドオンの最終ページはソースカツ丼のドンブリを綺麗に洗ったところで終わった。なんと言っても描写がいいのだ。ワキザ氏がさも叩き割りそうないきおいでドンブリを振りおろし、ジャシャアッ! と水桶に浸けるのである。
それはそれとして、ソヨギは紀○國屋書店の雑誌コーナーで、あぐらをかいていた。ちゃっかり寝具売り場からクッションを持ってきていて、底冷え対策も万全である。
ソヨギは改めてデッドプリズン――もとい、なんちゃらスポットガーデンなるデパートを見まわした。基本的には白っぽい感じで、薄暗いのは電灯がついていないからである。電気は止まっているのだ。ガラス張りになってるところや、火事のとき煙を逃がす窓から太陽光がはいってくるので、内部をなんとなく見ることができる。ちなみにソヨギのいる雑誌コーナーには、光をいれる細長い窓があった。ソヨギはそれを背にしてサジャジンを読んでいた。
デパート内部は変な造りになっていて、壁があるところとないところがあり、おそらくは構造上の問題で、壁がないと建物を支えられないのかもしれない。それとやたら太い柱が四本くらいはある。そのせいですべてを見渡せそうで、それができない。
そして広い。どんくらいかと言われても分からないが、棚とか全部どかせばサッカースタジアムくらいあるんじゃないだろうか。言いすぎかもしれないがとにかく広いので、隠れるスペースはたくさんあった。
紀○國屋書店だけでこの広さである。まるで大規模な図書館みたいだ。まあつまり、どこにモンスターが潜んでいるかも分からない。
と、ソヨギはそのことに気づくと、メッシちゃんの一巻を読み始めた。モンスターなんかどうでもいいのだ。
ほう……メッシちゃんは真っ暗な空間にただよう意思だったらしい。何千年と存在し続けて、滅失界を管理していたのだが、あるとき閻魔大王に言われ、擬人化して地上にいる罪人を送りこむように命令されたのだ――と、ソヨギはメッシちゃんに夢中である。
大満足のソヨギ……だがここで、ソヨギには過酷な試練が待ち受けていた。
「ニンゲン! なんでいる!」
「……うっす」
ソヨギは背後からの声に振り返った。漫画雑誌からガーデニング雑誌にコーナーが変わるところに、猿の人型モンスターが立っていたのだ。距離はだいたい五メートルくらいだろうか。
「グキャキャキャ! うまそう!」
「うっす、あざっす……」
ソヨギはペコリと頭をさげて礼をのべた。どうにかしてこのサルモン(略した)を撃退しなければならない。いや、そんなことより……
ぐーきゅるる。ソヨギは空腹だ! コンビニから強制フライトでここまで運ばれてしまったのだ。なのでお昼ごはんはおあずけな感じだった。
しかし食品売り場は一階に集中している。しかもまともなお昼を食べられるのか? デパートとは言え商品モデルの調理器具など使いものにはならないだろう。調理手段が見つかるまではどうしようもない! まさに過酷な試練である。
「グキャキャキャ! 死――!」
「……ちょっとタイムで」
ソヨギがメッシちゃんを左手にして右手をだすと、サルモンは石のように固まった。ソヨギはテキトーに無視して、よいしょと立ちあがる。どうせサルモンの勘違いが発動したんだろう。ソヨギは借りていたクッションを持った。なぜならクッションはお試し用なのだから返却だ!
「きさま……なにした……」
サルモンは腰に提げている剣に手をかけてはいたが、抜くことができないようだった。なんか汗を流しながらカタカタと震えている。この一瞬のうちになにがあったのか分からない。まあでも、利用するか。
「動かないほうがいいですよ」
「はうっ……や、やっぱり! 呪術師なんだな!? それ、魔導書だ!」
ソヨギはそれを聞いて、ようやく理解した。サルモンにはメッシちゃんが魔導書に見えてるのか。
「……呪術師に見えます?」
「ギャキャ! 俺、ダマされないぞ……その格好そうだろ!」
「……えー」
ソヨギは自分を見おろした。黒いフードつきのダウン。したは黒いスウェット。だがバッシュは白い……白くないか。たぶんビデガンの魔装銃を受けとめたときに、墨属性がかかったのだ。なんかところどころ黒い。うん、ソヨギは黒ずくめです。じゃあもう呪術師で。
「やりますね。でもサルモンさんは動きたくても動けないっすよね?」
「そ……そうだ! 頼む、殺さないでくれ……」
「どーしよっかなー……」
ソヨギはクッションを指先でクルクルする。するとサルモンはギャヒィと悲鳴をあげた。恐怖による勘違いで動けないらしい。てゆーかこれは自己暗示の類いかな。勝手に術中にハマっているのだ。
「この低反発クッションを食らいたいですか?」
「て……テイハンパ・ツクッション! 怖い名前! イヤだ!」
どこで区切ってるんだ? まあいいか……せいや。ぽふっ。
「ガキャキャ! グホッ……!」
サルモンはその顔面に低反発クッションを食らった。そして白眼になり、泡を吹きながら倒れていく……ドスンッ! ソヨギはサルモンを倒した!
「……なんだかなー」
ソヨギは頭をぽりぽりと掻いた。勘違いってここまで通用するかなフツー。恐怖で失神なんてのはよく聞く話だが、さすがにクッションで気絶はないでしょ。さすがに異世界にもクッションくらいはあるよね? まあ……ちょっと面白いからいいけど。
ソヨギは深くは考えないようにして、クッションを戻しにテクテクと歩いた。デパートはひと気――モンスターっ気はないように思える。けっこうな範囲でカーペットが敷いてあるので、足音なんかも響かないのだ。
テクテク……ご飯どうしようか。
テクテク……そういえばなにしに来たんだっけ。
テクテク……うーん……そうそう、買い物だ。
テクテク……スーツと、クツと……あ!
「グケケケケ! なんでニンゲンいる!」
「こんちわー」
だいたいエスカレーターのあたりである。うえの階から鳥の人型モンスターがあらわれた! ソヨギはなんとなくエンカウントした気分になった。
「グケッ! どこ行くニンゲン! 逃げるな!」
無視。クッションを返さなきゃいけないので、それを終わらせてから遊ぼう。ほとんどトリモン(略した)の目のまえを歩いていき、ダブルベッドを横目にしながらクッションコーナーへ。背後からはドタバタとトリモンがせまっている。ソヨギは通路がわにある冬のセール的な場所にクッションを返した。
「グケケァ! 死んで食われろニンゲン!」
「……シーツ見たいんですよ」
トリモンの攻撃! ソヨギは無視してシーツコーナーに向かった。トリモンを見たときに思いだしたのである。トリモンの上段からの剣は、カーペットを切りつけていた。ソヨギお得意のジャスト回避である。
まあそんなことよりシーツだ。豆腐の戦闘行為により、布団のシーツが汚れている。だが替えがないので買っていかなくてはならない。けっこうまえに替えのシーツは捨てていたのである。
豆腐……? ソヨギはなんか忘れてる気がしていた……いやいや、それよりもシーツである。ソヨギはシーツコーナーにたどり着いた。
ふむ……なんという豊富な品ぞろえだ! ビニールに包まれて洋服みたいにハンガーでかけてあったり、なんか四角に固めてあったり、SとかSDとか書いてある。そのシーツコーナーだけでも、だいたい十メートルかける十メートルくらいのは広さである。シーツ選びは時間がかかりそうだ。ソヨギのお買い物が始まる……だが、
「グケェッ! 逃げるな!」
トリモンがダッシュでせまっていた。ソヨギは無視する。SDってなんだろ。あ、見本もあるのか。ちょっと広げさせてもらいます。ブワァサ。ちょっと大きめな白いシーツが広がる。
ちょうどそこでトリモンが走ってきて、その足が広げたシーツをちょっと踏んだ。ん? なんかカタカタしている。地震が来たぞ遊びかな? ソヨギもたまにやるのだ。見あげてみる。
「グケッ……お……おまえいまなにした……」
「え? いや、SDってなんだろうって。トリモンさん知ってます?」
「知らない……」
「Sはシングルですよね。SD?」
「おまえが言うこと分からない! そ……それまさか呪文!?」
「呪文じゃなくて略称じゃないすかね。だってSDですよ? シングルデスヨかな……ソンナニデカクナイ? サクラダイコン、ソレハドウカナ、スマンデスギタ、シカタナイヤツダ……なんだと思いますか?」
まるでトリモンを、一緒にショッピングしに来た友達扱いである。しかしトリモンは聞いているのかいないのか、カタカタがガタガタへとレベルアップしていた。一緒に考えてくださいよー。
「ちょっと……聞いてます?」
「おまえ、魔方陣だした! さっきから呪文言ってる!」
「違いますが……あ!」
ビクゥッ! トリモンは強烈にビビった。クチバシなんかはアワワワ……みたいになっている。でも分かった。ソヨギはポンと手を打った。
「セミダブルだ」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
トリモンは白眼になり、泡を吹きながら倒れていく……ドスンッ。ソヨギはトリモンを倒した!
「……意味分からん」
さっきのクッションはまだいい。だがなぜセミダブルに気づいただけで倒れる! SDがセミダブルだという事実がそんなにショックだったのだろうか?
まあでもセミダブルは大きいな……そうそう、敷きパッドなる簡単取りつけアイテムを試してみたいのだ。普通のシーツはいちいち手間がかかるのだ。あっちかな? テクテク……ソヨギは歩きだした。
敷きパッドコーナーに着く。だいたいは袋にはいっているが、安価なものはハンガーでかけられている。試供品的なものはないので、そのハンガーにかけられた安価な敷きパッドをながめる。
ふむ、四隅のゴムを布団の四隅に引っかければいいのか……なんてお手軽な構造なのだ! これならば毎日の家事に忙しくしている主婦も助かる! チャチャっとはずしてチャチャっと洗えるじゃないか。よし……これだ!
ガラはなににしようかな……汚れが目立たないベージュにしよう。んー……血溜まりに寝てると思われちゃうかな? やはり青年向けな水色? いや、清潔感ならアイボリー的なのもいい。
ま……迷う! なんでこんなに種類が豊富なのだ! まさか罠か! 俺を足止めしていろいろ悩ませたあげく、何色か買っていかせる罠なのか……え? このちょっと起毛っぽいのが九九九円? ああ……もう……しかたないか。ソヨギはデパートがわの策略にはまった!
ソヨギはベージュと水色を手にしてレジに向かった。コンビニとは違い、四方を囲んでいる広めなレジである。レジスターはみっつ。しかし店員さんはいない。しかたあるまい……やるしかないのだ。
「いらっしゃいませー」
ソヨギはレジのなかに侵入した。
お……デパートのレジスターはコンビニとはちょっと違うな。よく分からない項目が増えている。ソヨギはなんか面倒になり、店員さんゴッコを諦めた。袋を適当に探して、お金は置いていく。細かいのがないので二千円札をだしてあげる。二千円札なんてよく持ってたねと褒めてあげたい。
ソヨギは敷きパッドとメッシちゃんを袋にいれて持ち歩くことにした。ガッサガッサとさせながらエスカレーターに向かう。お昼ごはんはなににしようかな……サンドイッチとかよりラーメン食べたいな。ラーメン……? ソヨギは思うところがあり、案内板へ方向を変えた。
あがってきたエスカレーターを過ぎて、最初に見た案内板を見る。やはり……五階のおもちゃ屋と駄菓子屋のあるフロアには、フードコートも存在している。
デパートがわの策略は明白である。つまりは家族連れが食事をし、その足で子供たちを釣りあげようという魂胆なのだ。しかしソヨギは大人である。だからそんな策略には引っかからない……はずであるっ!
「……お昼はラーメンにしよう」
ソヨギは決断し、エスカレーターへと歩いた。エスカレーターはもちろん二本並んでいる。二階にあがってくるのと、三階にあがるほうだ。反対がわも同じで、あちらはくだりのエスカレーターだとソヨギは認識していた。
……この決断が運命を分けた。一階に行く予定だったはずのソヨギは、やっているわけがないフードコートを目指した。それが運命だった。
じつはソヨギ……いつのまにか迎え酒効果が切れていて、頭がボーッとしていたのだ。
ひさしぶりの二日酔い設定でお送りします。
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