白すぎる女神と破滅と勇者

イヌカミ

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第5品「勘違いしないでください。俺は俺、彼らは彼らなんで」

科学で魔法をなんとかしよう――と、豆腐VS真核デスケテス

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  雷はいまにも落ちてきそうだった。カノリにはいますぐ回避できるものが必要だった。

「リ……リストレイント!」

  とっさに手を突き出して神技を使う。ほとんど落雷が発生する直前で、一台の車がカノリと落雷のあいだに割って入った。

「セブンリングス!」

  ついでに車を避雷針へと変化させる。周囲に変化不可能なタイヤやらダッシュボードが落ちてきた。

  それを避けながら考えてみる。さきほどの衝撃は、どうやら避雷針に落ちた雷がこっちにまで飛んできたようだ。どういう理屈かは分からないけど。

(とにかく避雷針だけじゃ足りない。もっと確実に雷を避けられる方法を探さないと)

  屋上のさほど離れていない空で帯電現象が起きていて、落雷は鳴りやまない。そのため考えている時間もない。避雷針の近くにはいられないし、いま屋上はどこにいても危険だった。

  どんな思考を巡らせてもソヨミスの反応がないということは、この落雷地帯になることまでは想像できなかったからだ。おかげでなにかヒントを得ようとしてもムダである。

(アニミスにも限界がある!  鉱石アニミスが使えないなら、車を際限なく避雷針にするのもムリがある……それに意味がない)

  カノリが頼ったのはウィッグの知識だった。そもそもカノリにある鉱石属性のアニミスは、雷属性と相属性そうぞくせいの関係にある。つまり反属性とは逆で、相性がよい属性アニミスということだ。

  カノリの持つ鉱石属性が雷を誘うのだ。そういえばという感じで思い出すのは、雨を避けようとして木の下にいたら雷に打たれた、そんな事件があったことだった。避雷針にももちろん安全圏が存在する。だから避雷針では無意味だ。避雷針から近くても遠くても落雷は避けられないから。

(車のなかなら安全だとか聞いたことあるけど……車に乗って動かす?  カタマリまでは百メートルくらい?  やることが器用になる分、アニミス消費が激しいから――バクチは嫌い!)

  カノリに向かって二回目の帯電が見えた。カノリはふたたび車を呼ぼうとして、

(ウィッグはゼファーの属神。なら、わたしも雷を操れない?)

  一瞬だけ迷う。そしてカノリは車を呼んだ。落雷が車に落ちたのを見て、車を投げる。

(ムリ。他者のアニミスを操ることは難しいし、この雷はメガ美ちゃんの大気アニミスと水アニミスの成れの果てだもん。ようするにこの雷はメガ美ちゃんの力で発生してるけど、神技じゃない……雷の熱、そして蒸発から雲、さらに見えない雷雲が発生……帯電。んで落雷。つまり神技の影響を受けた自然の雷に等しい。メガ美ちゃんはこちらの世界のアニミスを使ってるから鳴りやまないだろうし……ってぇ!)

「ああっ!?  バカだわたし!?」

  カノリは重大な見落としに気づいた。ちょうど三回目の帯電を見あげたときだった。 

「とりあえず防いで……あとは鉄の量が必要だけど――リストレイント!」

  車で雷を受けつつ屋上を見渡す。ひぃふぅみぃ……呼べる範囲にあるのは十台。これじゃあ足りない。せっかく思いついたのに!

  カノリはキョロキョロして鉄を探した。とりあえず雷が頻繁ひんぱんに発生しているのは、豆腐がもっとも力を発揮したカタマリ付近で、距離が広がるにつれて落雷の頻度ひんどがなくなっていくみたいだ。

  豆腐と真核デスケテスの戦いは小競こぜいのようになっていた。真核デスケテスの体は豆腐によって削られるが、そもそもが肉体ではない。なので四肢ししなどを砕いても効果が薄いのだ。核の浄化が必要なのだが、大技を使う隙がないんだろう。真核デスケテスのほうは技術がない代わりに強力な攻撃――イレースヴェノムカノンがある。豆腐の大技に溜めが必要なのは、マヨギとソヨミスも考えていたことだ。かわってイレースヴェノムカノンに溜めはほとんど必要ない。豆腐は止まれない。

「早くソヨちゃんの源晶を回収して手伝ってあげないと」

《カノリさんは何もしないでください》

「いや、やらしてるからね!?」

  まったく困った奴である。まあとにかく、早くカタマリに近づかなくてはと視線を送ったとき、カノリは鉄を発見していた。

  問題はどこまで

「リストレイント!」

  カノリはバンッ!  と両手を屋上に叩きつけた。するとゴゴゴゴゴ……とデッドプリズンが鳴動する!

「鉄ならたくさん使ってるよね!」

  そう、鉄骨がある。それは蜘蛛の巣のように屋上のコンクリートの真下に通っている。とにかく巨大な建造物であるため、その強度を確保するために使用している鉄骨はとてつもないだろう。

  そして神技に必要なアニミスを気にする必要などない。豆腐がこちらの大気やそれに含まれる水分を操り、吸収可能なように、カノリも鉄骨や車から鉱石アニミスを吸収可能なのだ。

  真下にあったコンクリートが割れ、鉄骨に触れた。吸収するという感覚は未知だったが、手の先から点滴を受けるように、アニミスが体内に入っていくのが分かった。その充足感はお腹が満たされていくというより、シャワーで体を洗ったような爽快感に近かった。なんだかシャキッとする感じだ。

「必要以上に壊してカタマリ落としたらバカだからね。端っこもらうね?」

  カノリは立ち上がり、両手を横に広げた。髪や着ているコートが、アニミスの高揚によってはためいている。

  ガゴッ――バギョンッ!  なんとも言えない音はデッドプリズンの悲鳴にも聞こえた。コンクリートを突き破り、何本もの鉄骨が宙に浮く。どこまで壊せばいいか分からなかったので、カノリはオモチャの積み木を想像しながら鉄骨を外していった。屋上が崩れたら大変だし、車もあるため同じ場所から大量に鉄骨を抜けば、荷重に耐えられずに崩れるかもしれない。

「使ったら元に戻せばいいわけだしね。リストレイント・リングス!」

  鉄骨を変形させ、組む。まず支柱となるものがガンガンガンッ!  とカタマリまで並んだ。次いで鉄板にしたものを天井と壁になるものにはめていく。カノリの能力を使えば溶接とか必要ない。同化させれば済む。

  カノリの建築はすぐに終わり、目の前には高さ三メートル、幅が四メートルほどの鉄のトンネルが出来ていた。あとは進むだけ。

「雷が外壁を通るからね……そうじゃなければ『飛び火』みたいな現象は起こらないはずだもん」

  カノリは車内なら落雷から身を守れる、という知識を元に造ってみたのである。まあ、鉱石アニミスの吸収が可能になったので、誘導物デコイのように鉄を空中散布させて雷の方向を変えることも可能だが、それは時間がかかりそうなのでやめた。

  カノリはちょっとドキドキしながら鉄のトンネルを歩いた。たまにゴガァンッ!  と落雷が発生するが、雷はトンネルをアースにして内部には届かない。でも怖いから小走りになる。しまいには走っていた。

  トンネルの出口にはカタマリがあった。それに近づくと異臭のようなものが鼻についた。魔力の装甲のはずだが、どうやら通常の魔物のような肉体のようだ。カノリは背中にある亀裂をマジマジと見つめた。

「……この中にあるの?」

  なるほど、つまり死体に手を突っ込むわけね。カノリは飼育係の掃除を思い出す。フンを片づけるのとかけっこう苦手なタイプだったのだ。トイレ掃除とかも。

  でも今はそんな場合じゃないと、嘆息しながらかがみこんで、恐る恐る手を突っ込む――寸前でソヨミス。

《たぶんですけどデスケテスさんの装甲の内部は、破滅属性でいっぱいです。キケン》

「熱っ!  早く言ってよ!」

  カノリが思わず引き戻した右手の指先から、ぶすぶすと煙が昇っていた。手を守らなければムリである。

  というわけで右手にブレイサーを装着。鉱石属性をできる限り排除し、浄化の純粋化もほどこす。浄化と破滅は反属性の関係にあるため、ただブレイサーを使用するよりも長い時間が確保できる。カノリは右手を入れた。

  ぐちゃり……にちゃり……。

「あうぅ……ものっそい嫌な音と感触とがさぁ……てゆーか源晶ってどんなもんなのよ。ウィッグも見たことないみたいなんだから」

《おそらく源晶の形は球体……なんでかって言われてもただのかんですよ?  もっとも自然てものに近い形が球体だからっていう、そんな考えからなんで》

「無責任すぎる……」

  カノリはいろいろと思うところはあったが、情報に文句を言ってもしかたがないといろいろ諦めた。

  うんざりしながら気持ち悪い感触と戦う。想像したくないなにかに触れたりするが、頑張って想像しない。だが源晶のありかに、ある程度の見当をつけることは可能だったので、カノリはそれだけに意識を集中することにつとめた。

  ソヨミスのアニミス波長をわずかだが感じていたのである。破滅属性のるつぼでかすかに感じられる波長だ。優しい波長がどこからか発せられているのだ。それを追って手を動かす。

  ブレイサーにアニミスを集中させながら探し物をするのは、強敵と戦うことよりも遥かに大変だった。アニミス波長を感じようとするとブレイサーを形成するアニミスが弱くなる。集中する目標を変えることは、すでに集中が出来ていないのと同じだからである。カノリは内包しているアニミスを使いきれば、右手が破滅されるだろう緊張感とも戦っていた。まるで失敗が許されない手術のようである――と、

《それです》

  カノリの指先が、破滅属性以外のものに触れた。カノリは源晶を見つけたことで緩みかけた気持ちを締めなおし、慎重にその源晶をつまんだ。源晶をつまんだ指先が、周囲の破滅属性から守ってくれているかのような、そんな暖かみを感じる。カノリは落とさないように、ゆっくりと右手を引き抜いていった。

「これが……ソヨちゃんの源晶?」

  引き抜いた右手を顔の高さにもってくる。その源晶を見て、カノリが抱いた感想は『ビー玉みたいな物体だな』だった。

  まるでラムネに入っていそうな球体である。大きさもそのくらいだろう。源晶はときに明るく、ときに暗い色を発していた。ホタルの灯火のように、淡く儚い輝きを放つ源晶の内部は、陰陽道で見るような白と黒があった。その勾玉まがたまのような白と黒は、いきなりクルクルと回って混ざりあおうとして、うまくいかずにまた同じ配色に戻るということを繰り返していた。そのたびに発光しているようだ。

「白はアニミス、黒のほうには魔力を感じる……源晶ってもしかして、魂そのものなんじゃないの?」

《源晶ってなんだろ。そうソヨギも疑問に思ってたんすよね。ソヨギの考えは、源晶っていうくらいだからアニミスや魔力のみなもとってことだよね、うん……て感じです》

  カノリはそのソヨギの考えに、素直に賛同していた。魂が結晶化する理屈は分からないが、肉体を失ったら残るのは魂だろうと、それっぽい引き算から納得が可能である。というかアニミスと魔力を同時に持つのが人間の魂なのだから、対極にあるふたつの属性がお互いを消さずにひとつの結晶になっているということが、人間の魂を表しているように感じるのだ。

  善にも悪にも染まる人間の魂。中道や矛盾を抱えた人間の魂――それはおそらくこうして、ときに明るくときに暗く、環境によって選択され、状況によって変化するのだろう。善行も悪行もすれど、どちらにもならない魂は、こうして混ざろうとしては中道に戻るのだ。

  カノリは源晶をまじまじと見つめ、くるりと裏側を見てみた。そしてギョッとする。

「半分だけ真っ黒だ……」

  源晶はちょうど球体の半分が真っ黒になっていた。今度はその黒いほうをまじまじと見つめる。そちらには鮮やかな変化はまったく起きておらず、黒い渦が巻いている。だがよく目を凝らすと、その中心には針の穴くらいの小さな白があった。

「ええと……陰中いんちゅうようだったっけ?  それみたい」

  その源晶の小さな白は、よく見る勾玉の黒いほうにある白に似ている――少なくともカノリはそう感じた。陽にも陰の部分があるし、陰にも陽の部分があるというような意味だが、源晶にあるそれも同様に見えた。

  しかしこれは人間の魂には感じない。そのほとんどが魔力に満ち、しかしその中心には善意を持つ。これはだから、ティンダルスにされたヒキュウ族の魂なのかもしれない。

「ほんとに?  これ、完全にひとつの魂になっちゃってるわけだよね?  これをさらにどうにかしろってこと?  まったく見当もつかないよ!」

  ――ゴガアァァァァァン!  

  と、ひときわ強く落雷が起こると、カノリはハッとしてコートのポケットに源晶をしまった。いまここで悩んでいてもしょうがないことでもあるし、戦闘に勝たなければ進むこともできないのだ。

  カノリは鉄のトンネルの入り口から空を見上げた。豆腐と真核デスケテスの戦いは激化している。帯電現象はデッドプリズンの敷地以上に広がり、町のあちこちに落雷がふりそそいでいた。やむことのない落雷の間隙かんげきに豆腐の罵声ばせいが混じるが、聞き取ることはできない。

  真核デスケテスは豆腐の飛翔攻撃で、その姿を削られていた。しかし破壊された腕や脚は、瞬く間に修復される。肉体ではない魔力の集合体だから、ダメージを与えることが難しいのである。カノリは豆腐とシンディラの一戦を思い出した。

「弱点属性を――それも膨大な出力の神技を当てるしかない……」

  不死身に近いシンディラにさえ、属性効果は有効である。だがシンディラと真核デスケテスには明確な違いがあり、真核デスケテスはアニミスさえあれば浄化が可能なことだ。小麦粉とかは必要ない。

  豆腐は止まれない。これはさっきも考えたことだ。いくら膨大なアニミスを持つ豆腐でも、イレースヴェノムカノンを食らえば終わりである。いや……でも、

「純粋化が勝っていれば、破滅属性も回避できる……」

  今しがた体験したばかりの、破滅を上回る浄化があればいい。イレースヴェノムカノンの正体は、純粋化された破滅属性の奔流ほんりゅうだ。真核デスケテスの魔力と純粋破滅に対抗する、豆腐のアニミスと純粋浄化があれば――上回るアニミスがあれば身を守ることは可能であり、かつ倒すことができる。

「でも本当にそんなことできる?  魔技になれば破滅属性は増すはずだから、メガ美ちゃんのアニミスが少しでも下回っていたらやられちゃう――」
「――無益なことなんてない!  ダメージが一でも、一億回繰り返せばダメージは一億となる!  そうソヨギさまの魂が言ったのですから!」

  落雷の間隙かんげきに、豆腐の言葉が届いた。

  その言葉を聞いて、カノリは自分の顔が歪むのが分かった。

「メガ美ちゃん……」

  豆腐はソヨギのために戦っている。そこにはカノリのような戦略めいた計算など、入る余地などない。 

  豆腐はまっすぐ全力でぶつかる……想いをこめたアニミスを解放してぶつかる。アニミスは豆腐の想いに応えて強力になる。

  それは真核デスケテスを削るが、いまだ致命にはいたらない。

「どうすればメガ美ちゃんは神技を放てる?  あれだけのアニミスがあれば倒すことができるはずだよ……」

  豆腐はソヨギの言葉を信じているが、逆に信じすぎている。神技を放てなくても真核デスケテスを削り倒せると思っている。だがどうやら真核デスケテスは無尽の魔力を持っているのだ。倒すには真核とやらを浄化するまでの、豆腐の最大火力が必要なはずである。

「わたしがオトリになるのは……ダメ、わたしじゃ一秒すらもたない。聖鎖拘束だってすぐに外されちゃう。なにかできることがない?  わたしができる、メガ美ちゃんの全部を解放するようなこと――」

  なにかあったはずだ。コンビニでひと休みしていたときに、雑談混じりに聞いたはず。

「メガ美ちゃんがソヨちゃんの部屋に行って、魔物を迎撃した。そのなかにデスケテスもいた――」

  それを可能にしたのが醤油と聞いてビックリしたわけだが、それが異世界の存在である豆腐に、こちらのアニミスの感知を可能にさせたきっかけなんじゃないだろうか。

「公園でシーフちゃんを助けた。インナマッソとかいう隊長だか士官だか倒して――」

  豆腐は焼き豆腐にされている。このとき豆腐は水属性を失ったぶん、火属性を得ることになる。属性とかをソヨギが理解したときでもある。

「そのあとはコンビニへ。シンディラとデビロイドたち、ダムンディアボロスが蜂起――」

  ソヨギの知識がシンディラやダムンディアボロスを圧倒した。不死身であるシンディラを倒せたのはソヨギの発案があったからだ。ちなみにシンディラのことをシンディーちゃんと呼ぶと怒る。だから呼ばない。

「ソヨちゃんとメガ美ちゃん、ふたりの相性がいいのかな。それともソヨちゃんは、メガ美ちゃんの扱いがうまいのかな?  料理が好きだから……ソヨギワールドとメガ美ちゃんの思い込みの相性がいいのかな。分からないな……」

  カノリはそれが、ちょっとうらやましくなった。ソヨギと中学生のときに付き合っていたと言っても、しょせんは子供の恋愛だった。ソヨギを理解しようとしていたわけじゃない。とにかくソヨギが理解できなくて、浮かんでは消化されない疑問たちに振り回されていた。それが我慢できなくて離れた。駄々をこねる子供だったと思う。

  ソヨギと豆腐はお互いに理解しあってる気がした。それは信頼関係にあるんじゃないか。ソヨギはなんだかんだと豆腐を信頼している。ソヨギの代弁者であるマヨギとソヨミスが、豆腐のチカラを引き出してデスケテスを倒そうとしたのが証拠にも思える。豆腐もソヨギの言葉を信じて、こうして戦っている。

「信頼。想いはアニミスを強くする。メガ美ちゃんにしかない最強のアニミス――見つけたよ……ホーリーチェイン・セブンリングス!」

  カノリは鉄のトンネルを解体し、無数の聖鎖へと変化させた。さらにその聖鎖をつむぐ。一見すると鎖で作られた投網とあみのようである。

「ホーリーチェイン・リストレイント!」

  豆腐が超速突進で駆け抜けたタイミングで、カノリは聖鎖の網を、数十メートル上空にいる真核デスケテスへと放り投げた。自分がオトリになるのはムダだとしても、一時的に拘束することは可能だろう。豆腐の真のチカラを発揮させる――それは一瞬で完了するのだ。

「――!?  カノリさまっ!  離れていなくては危険です!」

  聖鎖の網が真核デスケテスにかかると、カノリはポケットからソヨギの源晶を取り出した。

「メガ美ちゃん!  これから――きゃあっ!?」

  カノリは落雷で弾き飛ばされた。自前の結界を解くにはタイミングが悪かったようだ。

  意識が瞬間的に途切れる。だがアニミスに守られてか気絶はしない。真核デスケテスが聖鎖の網を切り裂くところで、豆腐がこちらに飛んでくるのが見えた。

「大丈夫ですかカノリさま!」

(ちょっと失敗……でも大丈夫)

  カノリ的には、その大丈夫にはふたつの意味をこめた。自分が無事なことと、豆腐が真核デスケテスを倒すという確信だった。

  豆腐は屋上に倒れたカノリに駆けつけた。水雷すいらいの鎧を解除したのは、カノリのそばに寄るためだろう。

(メガ美ちゃんを冷静にさせちゃったか……でも大丈夫)

「お怪我はありませんかカノリさま!  わたしのチカラの余波でカノリさまが……」

  豆腐はカノリを見おろしていた。カノリは正直に女神ってスゴいなと思った。ソヨギの仇をまえにしていながら、誰かが傷つくのを放っておけないとか……どんなときでも誰かに気を配るところは、尊敬するうえに感激すら覚える。

「メガ美ちゃん……防がないと負ける……」

  しかしその向こうでは、真核デスケテスが聖鎖の網を完全に切り裂き、こちらに指先を向けていた。瞬時に魔力が高まる――イレースヴェノムカノンである。

「カノリさま、お逃げください!  魔法障壁ぃっ!」

  水属性を多く含むただの魔法障壁では、イレースヴェノムカノンは防げないだろう。しかし豆腐は無意識にアニミスを純粋化させている……いや、そもそも属性攻撃力と浄化属性攻撃力が並ではない。すでに純粋化が必要のないほどに、アニミスが高まっているのだ。アニミスが増加したぶん、浄化属性も普通ではなくなっている理屈である。

「……ムエキ」

  イレースヴェノムカノンが放たれる。豆腐は魔法障壁を展開し、巨大な光のドームがそれを迎えた――力が衝突する。

  デッドプリズンごと覆うような魔法障壁が、イレースヴェノムカノンを弾き、拡散させた。その影響で空の雲や、デッドプリズン外の樹木やら道路やらが破滅させられ消去されていく。超常的なチカラが衝突し、局地的な地震や空気の振動が起きる。そこらじゅうに雷が落ち、空振くうしんによる圧力波が発生し周囲の建物が破壊されていった。破壊と消失、それは終末の世界のように見えた。

「やはり大きすぎる力など、なにも……もたらさない……」
「使い方じゃないかな……」
「カノリさま!  早くお逃げください!」
「体が動かない。それと、いま出たらわたしも消されちゃう……」
「そんなぁ!  わたしはどうしたら……どうすれば……」

  豆腐のなかで新たに生まれた迷いがアニミスを弱めていき、魔法障壁が少しずつ小さくなっていった。カノリを助けるためには戦っていられない、そういうことだろう。

  まあしかし、これはカノリが想定したものと近い状況だった。あとは豆腐のやる気しだいである。まさかこんな大破壊が起きるとは思ってなかったけども、そこを気にしたら負けである。なにに負けるかは分からないが、とにかく、

「メガ美ちゃん……神技を撃って」
「でも!  イレースヴェノムカノンを抑えきれなければデッドプリズンごと消えてなくなります!」
「だから倒すの。デスケテスを倒すんだよ。メガ美ちゃんはイレースヴェノムカノンと撃ち合って、勝ってるんだからさ」
「ですが!  神技を放ち当たらなかったら……撃ち合いのさなか回避も可能なのです!  二番煎じでは――」
「大丈夫。あれはメガ美ちゃんの倒したデスケテスとは違うと思う。どっちが本物かは分からないけど、メガ美ちゃんが最初のデスケテスに勝った方法なんて知らないと思う」
「可能性で挑むには危険すぎる相手です!  わたしは神技を放ったらアニミスを完全に消費してしまいます!  もしも浄化ができなかったら、そのあとは……」
「地獄だね。いまのデスケテスに知性とかなさそうだし。でもデスケテスは逃げないよ。そんな性格じゃない。そもそも逃げるって選択を植えつけられずに誕生した魔神なのかもね」
「でも……」
「メガ美ちゃん、あんまりキツいことは言いたくないんだけどさ、ここできっちり倒さないとさ、ふたりが命をかけたのが、無益になっちゃうよね?  メガ美ちゃんはそれがイヤで戦ってるじゃない?  迷ってちゃダメじゃん」
「わ……わたしが負けてしまえばカノリさまもいなくなってしまいます!」
「うん、メガ美ちゃんは護神だから、みんなを護らなきゃいけないもんね。いいよねメガ美ちゃんは、チカラがあるから迷えるんだもん。わたしには逃げるか死ぬかしか、選択肢がないんだよ?  いいよねメガ美ちゃんはさ……戦えるんだからさ。わたしはソヨちゃんがいなくなったのに、なんもしてあげらないんだから」
「わたしはそのようなつもりは……」
「イヤミに聞こえちゃうよね。だってイヤミだもん。わたしにはウィッグたちの仇討ちすらできなかったんだから……メガ美ちゃんずるいよね。できるかもしれないのに、やらなくてもいいんだから。わたしには感情をぶつける選択肢しかなかったんだから……倒すなんてできなかったんだから。メガ美ちゃんはいいよねホント」
「カノリさま……わたし……」

  ……ちょっとイジワルだったかな。つい本心が出てしまった。こんなことが言いたいわけじゃなかったんだけど。

  会話をしているあいだも、イレースヴェノムカノンは放ち続けられている。真核デスケテスは魔法障壁を破りたいのかもしれない。白黒つけなきゃ気持ち悪い性分しょうぶんなんだろうか。

  いや、いま真核デスケテスにあるのは、眼前の強大なアニミスを消去してやりたい、その願望だけなんだろう。恐ろしいが、むなしい存在だなと思う。

  カノリは体を起こした。握った手を差し出し、微笑んでみせる。

「メガ美ちゃん、魔法障壁の解除と同時に神技を放って。いまのメガ美ちゃんならなんでもできる」
「イソフラボニアを?  ですがあれには時間がかかってしまいます……」
「そう思いこんでるだけ。いまある魔法障壁のアニミスを一点に集めて防御しながら放つの。そんな技があったじゃない」
「ソイソフランダでは威力が――」
「すでにあるアニミスを防御に使って時間を稼ぐ。そのあいだにアニミスを溜める。メガ美ちゃんならできる。ソヨちゃんはね……」

  カノリは手を開いてソヨギの源晶を見せた。

「メガ美ちゃんのこと信じてた。魂を預けていいくらいに信じてた。だからメガ美ちゃんは、その信じてた気持ちを、信じたらどうかな」
「カノリさま……わたし……」

  豆腐はどこか、目を覚ましたような声を発した。そして豆腐はアニミスを高揚させ、真核デスケテスを見上げた。

(うーん……やっぱソヨちゃんみたいにはできないな。軽いノリとかムリっす。まあでも、女同士腹割って話さないとね)

  もとより豆腐はソヨギの言葉を信じている傾向にある。それにカノリも嘘はついていない。つまり背中を押してやっただけである。それだけで豆腐の迷いは晴れ、そのアニミスはまた究極に近づいていった。

「一転集中のソイソフランダを放ち、イソフラボニアを……!」

  カノリは感じている。豆腐にある、想いに応えようとする強い想いを、カノリは感じている。その想いは時として、歴史すら変動させたりする。その想いはえてして、奇跡を起こしたりもする。カノリも真核デスケテスを見上げた。

「あんたにはそれがない。あんたたちって言ったほうがいいかな――だからきっと、いつか負けるんだよ。この世には悪が栄えたためしなしって、これは真実だよ?  だって世界は、悪だけじゃ支えられないんだからさ!」
「ソイソフランダアァァァァァ!!」
「まあでも、あんたが負けるのはだけどね……」

  ブワッ!  と、魔法障壁が傘を閉じるように一点に集中される。豆腐の考えは明白であり、イレースヴェノムカノンの拡散を抑えるために、覆うつもりなのだ。

  だが弱い。一瞬とは言わないまでも、数秒ほどでソイソフランダの消失が始まる。ビニールが燃えるように、ところどころが黒く変色して穴が開く。

「く……早い!」
「メガ美ちゃん、大丈夫だよ」

  カノリが言うと、豆腐は落ち着いたようである。そして構えたような雰囲気をだす。

「イソフラボニア!」

  ソイソフランダが消える寸前、豆腐は神技を放った。イレースヴェノムカノンがソイソフランダを突き破り、その破滅が届くところギリギリで、神技が弾ける。

  その浄化力は十分だった。神技に触れたやさきに、イレースヴェノムカノンの破滅属性が完全に浄化されている。その浄化は魔技に侵食し、数メートルの空間を無の状態にしていた。

  イレースヴェノムカノンも同様である。破滅が侵食し、イソフラボニアを消去している。その結果が数メートルの無を作り出しているのである。

「く……くうぅ……!  やはり充分ではなかった!」
「そんなことない。充分だよ」
「ですが徐々に圧されています!」

  確かに無の空間がわずかだが、こちらに迫っているようだった。

  しかしながら威力は同等。負けているのは放出力のみである。そもそもが浄化と破滅には威力などない万能属性。このふたつは絶対量の差でどちらが優位か決まる反属性なのだ。そして豆腐には、まだ隠された力が存在している。

  ここらへんだろうと、カノリは判断した。偽のビデガンになりすましたシンディラの証言。ソフラのアニミスが、いきなり膨れ上がったんだ――

「メガ美ちゃん、ソヨちゃん生き返るみたいだよ?」
「…………………………………………………………え?」

  だいぶ長い沈黙のあと、豆腐がこちらを向いてぽかんとした。

「これを戻せば復活します」
「ソヨギさまが生き返るのですか!?」

  豆腐の驚きと歓喜の声。カノリは確かな手応えを感じた。神技と魔技が拮抗したのである。

「いろんな障害はあるけど、メガ美ちゃんがいればきっと大丈夫だよ。だってソヨちゃんが信じた女神だもん……ね?」
「もちろんですとも!  そうですか……ソヨギさまが……よかった……本当によかった……」

  豆腐はなんだか感涙かんるいしているようだった。ムリもないことだが。

「つまりわたしは全力を出し切ってよいのですね?」
「そうよ。ソヨちゃんが生き返るんだから」
「消費しても、ソヨギさまに回復していただけるのですね?」
「そうよ。ミールディアンなんだから」
「ならば……カノリさまをお守りし続けることができるのですね?」
「そうよ。アニミスが回復できるからね……え?」

   ドンッ!  と豆腐がアニミスを爆発させた。なのに、高揚の余波がカノリを吹き飛ばすような現象は起きなかった。しかし、変化が起きていた。

「ウィッグさま亡きいま、カノリさまを全力でお守りしていこうと誓っておりました。しかしアニミス回復ができぬなら、それは叶わないと思っておりました」
「メガ美ちゃん……」

  その姿が完全に現れていた。豆腐の姿に重なるように、見たことのない女性が見える。今度はすぐには消えず、白く輝く長い髪と、どこか神聖を思わせるローブのようなドレスを着た――それはまさに女神だった。

  カノリはその後ろ姿を見ていた。豆腐の女神は背筋を伸ばし、真核デスケテスとそれから放たれているイレースヴェノムカノンと対峙していた。アニミスが膨れ上がる。

「ソヨギさまがいてくれるだけで、それがわたしの力になる。ウィッグさまは低位であるわたしに、武勲を授けてくださった。神の位は絶対であるにも関わらず、ウィッグさまはわたしを中位護神として迎えてくださった……わたしはそれを受け入れてしまった!  低位のわたしでもお役に立てるのだと、ただ馬鹿みたいに喜んだだけ……でもウィッグさまは神の禁を犯しながらも、わたしを必要だと言ってくれたお方でした!」

  ゴァンッ!  とデッドプリズンごと周囲が震動した。豆腐の女神のかかげた手に、さらなる膨大なアニミスが集束していく。

(イソフラボニアを放ってるのに、さらに神技を放つの!?)

「なのに!  あなたの力が、不必要な力がウィッグさまを……さらには希望を得たデビロイドたちを無情にも消し去った。だから――」

  豆腐の女神はひと差し指を真核デスケテスへと向けた。表情は見えないが、泣いているような背中だった。

「これは神罰ではない。ウィッグさまの与えたその優しさと、デビロイドたちの希望――デビロイドたちに光明を授けたのはウィッグさまなのですから……その魔をも許す優しさより産まれた、あなたを滅する一撃です!  秘奥武神式ルストアルムス――!」

  豆腐の女神のかかげた指先が輝く。輝きから感じるのはアニミスの強力さや強大さではなく、ソヨギの源晶からも感じたような優しげな感覚だった。

  それはまさに、純粋なアニミスのありかたである。

「――破魔鏖殺滅神技イソフラボニアァァァァァ!」

  ヴンッ……ドゴアァァァァァァッ!

  巨大な日輪にちりんのような光のが豆腐の女神の指先から広がったかと思うと、神技と魔技を消し去りながら極大の閃光がはしった。

「ムエキ……」
「デスケテス、もういちど言います。無益なものは……なにも産み出すことのない力です」

  豆腐の女神の神技はイレースヴェノムカノンをあっさりと消し、真核デスケテスへ到達する。真核デスケテスは最後の抵抗を見せたが、その頃には体の半分以上が消失している。絶叫が響く。

「グオォォォォ……オゴアァァァァァッ!」
「さようならデスケテス……虚無きょむさいなまれし魔神よ」

  ――豆腐の女神の神技が、真核デスケテスを浄化する!  

  真核デスケテスの絶叫すらも掻き消し、そのまま神技は空の彼方へと消えていった――

  と、神技が通った空間から、光の粒子が雪のようにひらひらと舞い始めた。粒子の雪は大気へと溶け、

「メガ美ちゃん強いね。デスケテスなんて相手じゃなかった……」

  ……そして、空に明るさが戻った。巨悪の邪気が晴れ、通常の世界が帰ってきたのである。なにごともなかったように雲が流れて、暖かい陽射しと、穏やかな休日のような機嫌が戻ってきていた。

  カノリはふぅと息を吐いた。まるでマラソンコースを全力疾走したような疲労感を覚え、目を閉じてゴロンと寝転がる。実際そこまで疲れてはいないが、緊張感が抜けていったのである。

「終わったねえ……」

  終わってみればアッサリだった気もする。そんなことはないのだが、そう感じさせるほどに豆腐の神技は強烈だった。

「そうですねカノリさま。ウィッグさまとデビロイドたちが、善神さまへ無事にたどり着けるよう、その旅路を祈りましょう……あの、ところでそれはなんです?」
「ん?  もしかしてソヨちゃんの源晶のこと?」

  カノリが豆腐を見ると、元の豆腐に戻っていた。皿に乗った絹ごしである。カノリは夢か幻を見たような、キツネとかに化かされたような、そんか気分になった。

「ソヨギさまの源晶?」
「そ、つまりソヨちゃんの魂の結晶かな。ただヒキュウ族の魂と同化してるからこのままじゃ戻せないかも……て、メガ美ちゃん?  源晶のこと知らないの?」
「はい……そもそも強制回帰などの自滅行為は神にとって禁忌です。なのでわたしたちにとっても希少な存在なのです。その知識があるのみで、恐らくウィッグさまも」
「だからウィッグの知識にないのかぁ。あれ、そういえば頭痛が消えてる?」

  正確にはウワンウワンな感じは残っている。それでも痛みや気持ち悪さを感じるほどではない。

「デスケテス倒したよ」

《……メガ……からね……勘違……デスケテ……魔力を集め……車……》

「情報アニミスが消えかかってるんだね……」

  それはどこか成仏じょうぶつみたいである。それはそれとして、

「デスケテスの魔力を集めた車って?」

  カノリはキョロキョロして、魔力収集車みたいなものを探した。見つからない――当たり前だろう。市区町村に魔力収集日なんてない世界である。

  だがしかし、ソヨミスの言葉は片言ながら、その意図を理解するには充分だった。戦いながらコッソリと、デスケテスの魔力を集めていたってことで、それはきっと魔導師の輝石に必要なぶんである。

「カノリさま、独り言ですか?」
「あー……うん。ちょっと野暮用があるんだけど、そこらへんの鉄の箱に魔力を溜めこんだなにかがないかな?  一緒に探してくれる?」
「?  どういうことでしょう?」
「ふたりが集めた魔力があるみたい。魔導師の輝石に必要なんだと思う」
「そんなことまでしていたのですか!  戦いながら……さすがはソヨギさまの魂を持つおふたりさま!」

  なんだかややこしい表現をしながら、豆腐はへよーんと近くの車に向かっていった。カノリもよいしょと立ち上がり、別の車に向かう。

(確かにねえ……どんな強敵でも、ソヨちゃんにとっては利用できるなにかでしかないんだから。鈴木くんたちのビックリも分かるよ。ソヨちゃんにしたら魔物なんてそこらへんの通行人と変わらないんだろうな)

  ソヨギが生きていたら、真核デスケテスをどう倒していただろうか。それこそ理解不能なやりかたでアッサリ、ということもあり得る。

  カノリはリストレイントやリングスで、車のドアやトランクを破壊していった。ついでにアニミス補給などをしつつ、あらかた車を確認して終わる。あと未確認なのは、屋根のある駐車場である。

「カノリさまー。魔力が貯蔵されているのはどのような形状のものですか」
「ごめん、それは分からないんだ。見つからない?」
「はい。魔力を発する物質などはまったくです。それと……」

  カノリはすでに屋根のある駐車場に歩きかけていたが、豆腐の声音に不安をあおられて足を止めた。振り返ると、うつむき加減の豆腐である。

「どうしたの?」
「いえ、魔精回帰です。デスケテスの朽ちた体が消えているので……しかし、なぜわたしはその事実が不自然だと感じたのでしょうね?」
「魔精回帰……」

(それっておかしくない……?)

  倒された魔物が魔精回帰するのは自然の定めである。だからおかしくないはずである。なのにつじつまが合わない気がしてならないのはなぜだろう。

  カノリはデスケテスの亡骸があった場所を見た。豆腐の言葉のとおり、亡骸は消失していた。

  ソヨミスにも聞くが、返事は要領を得ない。途切れ途切れの情報が、脳内で騒ぐだけだった。

  風が吹き抜けた。凶悪な魔力や異常なアニミスによる、自然の崩壊現象はすっかり収まっていた。そんな陽気を感じていると、それが逆に不気味さを覚えさせた。

「大丈夫……メガ美ちゃん、魔力の貯蔵物を探そう。それがないとソヨちゃんを戻せない。魔力を得るほかの方法があれば別だけどね」
「分かりました。あとは屋根のあるほうだけですね」

  豆腐がほよーんと飛び、カノリはそれを追いかけた。不安はあったが、それよりもソヨギの復活が優先事項である。

  ひとりと一丁は失念していた。ヒキュウ族の放つヤードゥの特性を、忘れてしまっていた――それが新たな魔神を産み出したのは言うまでもなかった。

                                          続く

                                         
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